チェンジ・ザ・ワールド☆
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「それじゃあカイ、留守中の事は頼むわ」
「ああ、2人とも気を付けて行って来い」
「隊長、フレンの事を頼みます」
「ヤドック、心配するな。ユウキはケンカだけなら誰にも負けない」
呆れたように言うカイに、ユウキは冷めた視線を送る。
「見送りのはずが、どうして私をけなす言葉にすり替わってるんだろ?」
「本当に隊長と副隊長って仲良しですよねー」
「ヤドック、あんまり滅多な事言うなよ。後で叱られるのは俺なんだ」
「まーまー副隊長! あっほら、隊長、そろそろ出発しないと!」
「なんかスッキリしない出発だけど……それじゃあ行って来る」
「「はい! お気を付けて!」」
「おう、行って来い」
カイと見張りの時間の隊員達に見送られ、ユウキとフレンは帝都を目ざしてスクワントを出発した。
山道を馬に乗って進みながら、フレンは昨日山で襲ってきた魔物の事を思い出していた。今日はエアルの放出も落ち着いているらしく、ユウキが設置したブラスティアの効力が発揮されているようだ。魔物が襲って来る事はなかった。
「隊長、ご自分のコアをこの山道のシルトブラスティアの為に使っていると聞きましたが」
「ああ。うん。ここは海と山に挟まれたスクワントの要だから、人の往来がしやすくないと皆大変でしょ? 魔物の心配をせず安心して通れるようになればもっと外から人も来られるようになるし、町にも活気が出るかと思ってね」
「ですがブラスティアを持っていないと魔術が使えませんし、困る事はないのですか?」
「まあ、確かにブラスティアがあれば戦いも楽になるかもしれないけど、今まで困った事ないし。それに、私はこの剣と体があれば十分かな」
強い敵と戦う時、ブラスティアは強力な武器になる。コアやブラスティアの研究をしているユウキならその事は十分承知しているはずだ。本人が自分ではなく人の為に使いたいと言うのなら、それが一番いいのだろう。
こうしてユウキは一人でも多くの人の助けになろうと努力している。
フレンも強くなりたかった。守られるばかりでなく、大切な人たちを守れるように。
スクワントから次の町までは魔物に教われる事無く、平穏に辿り着く事が出来た。帝都までの道のりはまだ長い、出来るだけ一日に長距離進みたいというのがユウキの考えだ。
「この町を出たらまた森を通らなきゃいけない。今夜は野宿になるから覚悟しておいて」
「はい。それでは食料を調達してきます」
「よろしく。私はちょっと町の人に話しを聞いて来る」
エアルの影響はこの町にも及んでいるようだった。山と森の間の平野に作られた小さな町は、凶暴化した魔物に畑を荒らされたり、人が襲われたりする事例がここ最近続いている。
残念ながらここは帝都の保護下に無い町だ。町民がそれぞれお金を出し合って、ギルドに町の護衛を依頼している。
先ほどからすれ違うギルドの構成員は、帝国騎士団に敵意をむき出しにした視線を寄越して来る。
少しでも早くエアルの放出を押さえ、魔物の凶暴化を食い止めなくてはいけない。こんな所でギルドの連中と喧嘩をしている暇などないのだ。極力目を合わさぬよう調査を終えると、フレンとの待ち合わせ場所で静かに空の様子を眺めていた。
「隊長、買い出し終わりました」
「ありがとう。すぐにここを出発するよ」
「はい」
何でもそつなくこなす若いフレンに、ユウキは安心する。合流すると、すぐに町を出発した。
町から随分進んだ森の奥深く。日が暮れて来ると、ユウキとフレンは荷物の中から小型のブラスティアを取り出して地面に設置する。
ブウン。と小さな音がなり、青白い光が周囲を包む。
「よしっ、私水を汲んで来るから、フレンは休んでて」
「いいえ、私が行きます!」
「いいから、火をおこしておいて」
「……分かりました」
ユウキはフレンが疲れている事に気づいているようだ。自分も疲れているだろうに、それをおくびにも出さずに自分とフレンの馬も連れて水場へと消えて行った。
薪を組み上げ火をつけると、フレンはやっとほっと一息吐いた。
騎士団に残ると決めたものの、何をすれば良いのか皆目見当もつかない。
ただ剣術の修行をするだけではいけない。任務を確実にこなし、信用と信頼も得なくてはならない。その為には嫌な事だろうと我慢してやり通さなければいけない時もあるだろう。果たして自分にそれが出来るのか。
そしてもし、目標を達成する事が出来なかったら……。
今からこんな事ではいけないと、じっと揺らめく炎を睨んで集中する。
「僕が今やらなくてはいけない事は、隊長を守り無事ザーフィアス城へ行く事だ。それだけを考えるんだ」
独り言を呟き、膝を抱えて目を閉じた。
静かな山の中の夜。フレンはふと目を覚ました。
深い森の中、木々の隙間から顔を覗かせる夜空に知らずため息がこぼれる。
ユーリ、僕は君と同じ道を歩くことは出来ない。少しだけ、君が羨ましいよーーー。
消されたたき火の向こうへ視線を移すと、そこにいるはずのユウキの姿がなかった。
「隊長?」
ゆっくりと体を起こし辺りを見回すが、人の気配はない。馬は2頭とも並んで寝ている。
まさか、気づかないうちに魔物にでも襲われたのだろうか?
嫌な考えが過り、フレンは剣を取って立ち上がった。取りあえず近くを探してみることにした。
獣道をかき分けながらゆっくり進むと、木々の間にキラキラと光るものが視界の先に映った。
「川か……」
光っていたのは川に映った月明かりで、思った以上に周囲を明るく照らしている。
「フレン?」
「隊長? こちらにいたんです……かっ!?」
名を呼ばれ安堵した矢先、フレンの目に飛び込んで来たのは裸のユウキだった。
真っ赤になって慌てて顔を背ける。
「すっ、すみませんっ! 目を覚ましたら隊長の姿が見えなかったので、何かあったのではないかとっ!」
月明かりの下、沐浴をしていたユウキはクスリと笑う。
「騎士団に入った時にそういう女としての羞恥心は捨ててるから別に恐縮しなくていいのに」
「そっ、そう言う訳には! あのっ……」
フレンはユウキの体が傷だらけであることをしっかりと見た。腕や体、足にも大小たくさんの傷があった。
「10年も騎士団にいたら、怪我もするよ。ーーーもう、服着たからこっちむいてもいいよ」
「はい……」
傷跡のことに気づいたフレンを気遣ってか、ユウキは勉めて明るく言った。
まだ濡れたままの髪をしぼり、ユウキはフレンに微笑む。
フレンは気づいた。ユウキの怪我は騎士団に入ってから付けられるより、もっと古いものだということに。
だが追求してはいけない。
「夜中に急にいなくなったりしないでください。何かあったらどうするんですか?」
「まあまあ、そう堅いこと言わずに。あ、何だったらフレンも水浴びする? 私魔物が来ないように見張っててあげるから、安心して入っていいよ」
「隊長!」
ユウキのこの明るさと笑顔の下に、一体どれほどの苦しみと涙が隠されているのだろうか。
強い。
ユウキの元へ配属されたことを感謝し、フレンは強くなることを改めて心に強く決めた。
何があっても隊長を守るのだと。
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