チェンジ・ザ・ワールド☆
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ユウキはアレクセイの私室に呼ばれ、ドアの前に立っていた。
「ユウキ、お前に一つ提案がある」
「はい」
「もし、お前が私の側近として城に戻ると言うなら、コアを提供しよう」
会議を開くと言っていたが、本当に開いたかどうかは疑わしい。
目の前の男の顔をじっと見つめる。
「ーーー私に何をしろとおっしゃるのですか? 人魔戦争の時のようにあなたの命令にまた背くかもしれませんよ?」
7年前の恐ろしい出来事を思い出し、ユウキは一瞬眉をひそめた。
「スクワントの町民、そしてお前の部下の命がかかってもか?」
ワインに手を伸ばしたアレクセイに、思わず目を見張る。
この男は一体何を考えているのだろうか。
「なるほど、分かりました。私に選択の余地は無い、ということですね」
「私にはお前の力が必要だ。例え反抗的でも、お前には手足となって働いてもらわねばならない」
ゴクリとワインを飲むと、深く息を吐くアレクセイ。
ユウキは恐らくこうなるであろう事を予想していた。何を言っても仕方が無い。ここでアレクセイを殺す事は簡単だが、それでは何にもならない。
「それでは閣下、一つお願いがあります」
「なんだ?」
「フレン・シーフォを、私の副官として帝都へ呼んでください」
「フレン・シーフォ? ーーーああ、あの若い騎士か……」
先ほどユウキの後ろにいた金髪の青年を思い出し、アレクセイはもう一口ワインを飲んだ。
「フレンを私の副官にして下さると約束して頂ければ、どんな仕事でも引き受けます」
「いいだろう。約束しよう」
そしてアレクセイは立ち上がり、ユウキの前まで来て言った。
「では、ユウキ・オレスカ。ただ今よりこのアレクセイの手足となり、私の命令に絶対服従すると誓え」
「……ユウキ・オレスカ。アレクセイ閣下の命の下、全てにおいて絶対服従し、この命を捧げると誓います」
「ふう……」
アレクセイの部屋を出て廊下を歩いていると、無意識に溜息が漏れた。
「久しぶりだな」
「シュヴァーン……」
10年前、騎士団に入隊してすぐの頃、ユウキはアレクセイ隊に所属していた。
今ユウキの目の前に立っている男シュヴァーンとは同じ隊に所属し、共に戦う仲間だった。
「随分とおどされていたみたいだな」
「……少し老けたわね」
「久しぶりに会った先輩に向かってそりゃないぜ、相変わらずだな。……これからまた、一緒に働く仲間って訳か」
窓枠に手を置き、シュヴァーンがどこか悲しそうにそう言った。
ユウキもそれに倣い、窓枠に手を掛けて窓の外を見る。
「シュヴァーン、生きていてくれてありがとう」
「どうした? ……それに何で急にそんな事を言うんだ?」
「ずっと思ってた。シュヴァーンがあの戦争で死にかけた時、私は何も出来なかった。また一緒に仕事が出来るなら、あなたの役に立てるかも知れない。この10年、あなたと顔を会わせる事だってなかなか無かったし会えて嬉しいの。だから、生きていてくれてありがとう」
じっとこちらを見るユウキに、ふとシュヴァーンは表情を緩めた。
「ふっ……お前はやっぱり強いな」
「強い? 私が? いいえ、私は弱いわ。だからこうして仲間の命を危険に晒し、誰かを犠牲にして誰かを守る事しか出来ない。私は一人では何も出来ないの」
「一人では何も出来ない、か……」
ユウキはシュヴァーンの胸に手を当てた。
「あなたの命はあなたのものよ」
「オレのものーーー」
「さて、仕事に行きますか」
トン、と拳で軽くシュヴァーンの胸を叩くと、ユウキは笑った。
不思議だ。
シュヴァーンとフレンは同じ匂いがする。
顔や性格が似ているなどという匂いではない。何か特別なもの。
それが何かは分からなかったが、ユウキはその匂いに心臓の奥底が震える感覚を覚えた。
「今度、ゆっくり飲みながら話しましょ」
「ああそうか、お前ももう酒が飲める歳になったんだな。入隊してきた時から可愛げが無かったが、まだ14歳のガキだったんだもんなぁ」
「いつの話ししてるのよ。あなただってまだ若くて男前だったわよ」
「男前は今もだろ?」
「はいはい、年取るとそういう冗談が冗談に聞こえなくなるから気を付けた方がいいわよ」
ふいとシュヴァーンの前を横切り歩き出したユウキに、シュヴァーンは苦笑する。
「この格好してる時は真面目に仕事やってるよ」
「分かってるわよ、あなた、猫被るの上手いものね」
死線をくぐり抜けた仲間と、再び共に歩く事が出来る。その事は単純にユウキにとって嬉しい事だった。
望む、望まないに関わらずにやらねばならない事があるとしても、目的の為には己の感情を殺す事はやぶさかではない。
廊下に響く自分の足音に、ふと頬を緩めた。
仲間を守る事。
苦しんでいる人を助ける事。
自分が強くなるしかないのだ。
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