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ありえない話をしよう

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streetpoint

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ありえない話をしよう













 私は、きっと間違いなく、第三者から見ても柳蓮二という男が嫌いなはずで、柳蓮二も私の事を嫌いなはず……

 だった。

 何故過去形かというと、今、私の中に芽生えた感情を表現するなら、私は柳の事を嫌いではなくなっている。というか、気になり始めている。



 見えているのかいないのか分からない一本線の目。

 仏頂面で笑っている顔を見た事がない。

 テニスがすごく上手らしいが、私は知らない。

 口を開けば人をバカにしたような見下したような物言いをする。

 驚くという感情を成長過程でなくしている。



 ……どう考えても、私が好きになる要素が見当たらないのだけど。 

 でも、一月程前に起こった出来事によって、私の柳に対する見方が変わった。

 それは、修学旅行の最後の夜だった。














 私は班長なんていう面倒くさい仕事を押し付けられ、それでも責任感が強いものだからしっかりと仕事をこなしていた。

 先生達との班長ミーティングの後、連絡事項をメモした紙をぶつぶつ読みながら部屋へ戻る途中、混雑したエレベーターを避けて階段へと向かった。


「汐屋」


 名を呼ばれ足を止めると、後ろから柳がやって来た。

 一瞬、

 うげ。

 なんて思ったけど、あからさまな態度を取らないよう心がけている大人な私は、普通に柳を迎えた。


「なに?」

「いや、今少し時間、いいか?」


 何事だろうかと私は一瞬腕時計に目をやって、小さく頷いた。

 隣りに並んだ柳が、相変わらず何を考えているか分からない顔で私を見下ろす。

 背の高い柳に並ばれると、見上げる格好になるので非常に首が疲れる。

 私は階段を2段昇った。

 すると柳も同じように2段昇る。

 ムッとした私は、また無言で2段昇る。

 柳もまた2段昇る。

 また私が2段昇る。

 柳が昇る。


 ……

 …………

 ……………………


「ーーーちょっと、私が話しやすいようにと思って階段昇ってるのに、何で柳まで一緒に昇るのよ。あんたでかいんだから、しゃべる時並ばれると首が痛くなるんだけど」


 とうとう次の階まで昇りきってしまった所で私が言うと、柳が少しだけ申し訳なさそうに言った。


「そうだったのか。すまない。お前が逃げているのかと思って……」


 いや、逃げるんだったら声掛けられた瞬間にダッシュで4階まで駆け上がってるから。


 と心の中でツッコミながら、私はため息を吐いた。


「で? なに?」


 何も言わない柳は、じっと私を見つめている。

 怖い。

 もうこの一言しかない。

 しばらく柳の無言のプレッシャーに耐えて、私が根負けして視線を逸らすと、そこで柳が漸く口を開いた。


「汐屋。お前、俺の事を避けていないか?」

「……いや、別に避けてはないけど」


 嫌いなだけだ。


「そうか? 俺にはずっと避けられているように感じるのだが……もし、知らずにお前を傷付けるような事をしていたのなら、謝ろうと思ってな」


 正直私は驚いた。

 柳がそんな事を考えていたなんて、まったくこれっぽっちも予想していなかったのだ。

 というか、柳も私の事を嫌いだとずっと思っていたのだから、そんな言葉が柳の口から出た事に衝撃を受けている。


「あ、いや……本当に全然そんな事ないよ」


 ものすごく柳に悪い事をしていたような気分になって、私は思わず顔を赤くしてしまった。

 そんな私の様子を見て、どう思ったか柳が突拍子もない事を言い出した。


「俺はお前に嫌われたくない」

「いや、だから嫌ってるわけでは……」


 いやいや、嫌ってたけどさ……


「俺はお前の事が好きだから」

「はあ、そりゃごめんーーーーーーーーえ?」


 柳の口から発せられた言葉に、私は目が点になった。

 驚きすぎて間抜け面になっている。

 柳は続けた。


「もし、その……お前が俺の事を嫌いじゃないというのなら、もっとお前の事を知りたいのだが……」


 どう解釈すればいいのか分からないその申し出に、私は混乱する頭を必死で整理した。


「え? いや。あの、うん……別に話すくらい全然いんじゃない? ……かな?」


 自分で言っている言葉はもう支離滅裂だ。


 それでも柳はほっとしたように小さくため息を吐いた。


「ーーーそうか。では一つ提案があるのだが」

「なに?」


 声がうわずっている。

 格好悪い。


「修学旅行が終わった最初の休日に、映画でも行かないか?」


 私の心臓は爆発しそうだった。

 そして無言で頷いている自分に驚いた。




 おかげで私はその日から毎日柳の事を考えるようになっていたのだ。






 ありえない話をしよう。

 もしかしたら、私は柳連二を好きになるかもしれない。


 ーーーいや、もう、好きかもしれない。






                          END





※あとがき※

どうもー。最後までお読みくださり、ありがとうございます!
プロフェッサー柳……
でもこの人どんな人なのか良く分からん。。というか、つかめん。
目、開いたらどうなの? やっぱりカッコいいの?(まあ、どっちでも好きだけどさ〜)
ヒロイン視点ですが、まあ、なんですかね。
最初「この人自分とは合わない!」って思ってる人でも、話してみたら案外「いい人!」みたいな時ってありますよね。
そんな感じですw(どんなだ…)
このお題は乾と柳生と比嘉中の知念と悩んだんですけど、柳にしてみました。
それでは、またお会いしましょう!




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