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  • さよなら旧い自分

さよなら旧い自分

最終更新:2012年10月11日 03:00

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だれでも歓迎! 編集

さよなら旧い自分 ◆hqLsjDR84w



 ◇ ◇ ◇


「……さて」

 もうすっかり昇りきった日の下で、憲兵番長こと伊崎剣司が誰にともなく呟く。
 河原に向かったギイとシルベストリを見送ってから、とうに十分ばかし経過している。
 その間、いったいなにをしていたのかといえば、ひとえに『仕込み』をしていたのである。
 彼は人を斬る音色を愉しむことこそ最上の快楽としているが、しかしあくまで最上であって唯一ではない。
 単に人体に刃を滑り通せればそれでよいのではなく、むしろその過程をも堪能するべく趣向を凝らすタイプなのだ。

 その憲兵番長の視線の先には、地べたの上で横たわる少女――魔物の子・チェリッシュ。
 すぐ横で一人の命が奪われた事実も知らずに、未だ意識を取り戻す素振りすら見せていない。
 眠ったままの彼女に雷神剣の刃を突き刺してやるというのも、決して憲兵番長の趣向から外れていない。
 脳が鳴らす激痛という名の警笛によって目覚めたとしても、いったい自身になにがあったのかすぐには分からないだろう。
 結局理解できぬままであれば呆然としたまま息絶え、仮に理解できたとしても結局は絶望を抱いて死んでいく。
 それはそれで相当に滑稽であり、かつ身体を貫く音色も存分に味わえるであろう。

 ――が、憲兵番長は脳内に浮かんでいたその案を却下した。

 というのも、ほんの少し前に同じことをやったばかりなのだ。
 自らを鉄人と称していた西洋人――パルコ・フォルゴレを斬る際、まったく同じ手順を取っていた。
 それからまだ大して時間も経っていない以上、また異なる方法を考えねばなるまい。
 そう思い立ったがゆえに、憲兵番長は十分ほどかけて『仕込み』を行ったのだ。

 つまり――いま現在チェリッシュが生き延びているのは、ある種フォルゴレのおかげと言えるだろう。

 そのように見た場合、フォルゴレはたしかにチェリッシュの命を守ったと言えるかもしれない。
 はたしてそれが幸運であるのかどうかはさておき、だが。

「そろそろ起きてもらえないかな?」

 声をかけながら、憲兵番長はチェリッシュの脇腹を足で小突く。
 起きないのであればこのまま思い切り蹴り上げてしまってもよいが、少なくとも現段階でする気はない。
 注意深く観察したので分かっているが、まだチェリッシュの身体に目立った外傷はない。
 無傷の獲物であるにもかかわらず斬る前に傷をつけてしまうのを、憲兵番長はよしとしない。
 とはいえ、憲兵番長の身体能力は非常に高い。
 本人としては軽く小突いているつもりであっても、軍用ブーツの爪先はチェリッシュの腹に深く喰い込む。
 ほどなくしてチェリッシュは目覚めたものの、起きるや否や盛大にむせ込むのだった。

「ふふ、小生としてはそこまで力を籠めたつもりはなかったのだがね。
 いやはや、本当に申し訳ない。身体に傷がついてしまったら大変なことだ」

 わざとらしい口調ではあっても、これは間違いなく憲兵番長の本心だ。
 そんな事実に気付くはずもなく、覚醒したチェリッシュは憲兵番長を睨みつける。
 周囲の景色が切り替わっているのも、眼前にいたはずの二人が消えているのも、そもそもいつ眠ってしまっていたのかも、当然疑問ではあったが振り払った。
 思考は混乱しているが、それでも取らねばならない行動は分かった。
 むせ返る自身を眺める憲兵番長の暗く冷たい瞳が、チェリッシュの取る選択肢をたった一つにしたのだ。

「ギガノ――」

 傍らに置かれていた魔本を手に取って、呪文を唱える。
 混乱していると言っても、先ほど金剛番長を相手にしたときほどではない。
 いったん意識を失った分だけ、僅かに落ち着きを取り戻しているのだ。
 全力とはいかないにしても、先刻の張りぼて同然のものとはほど遠い。
 たしかに力の籠められた巨大な宝石が、なにもなかった空中に出現する。

「コファルッ!」

 ――それが憲兵番長の思惑通りなどと知る由もなく、チェリッシュは呪文を唱え切った。

 チェリッシュの傍らに、どうして魔本しか置かれていなかったのか。
 フォルゴレの死体も、チェリッシュのリュックサックも、なぜ片付けられていたのか。
 そもそもの話、憲兵番長はなぜそのような行為に時間を費やしたのか。
 それは、チェリッシュが単なる少女でないと分かっていたからである。
 地面に散らばっていた魔本とその説明書を読み、彼女が戦う力を所持していると知っていたのだ。
 憲兵番長は人を斬る音色を最上の快楽としているだけで、それ以外に愉しみを知らぬ人間ではない。
 戦うに足るだけの能力があるのならば、それを正面から打ち倒したいとも思う。

 そんな――戦闘狂としての性質も、持ち合わせているのだ。

 ゆえに、魔本以外の道具を回収した。
 他に戦闘に使えそうな道具はなかったのだから、武器となる魔本以外を傍らに置く意味はない。
 フォルゴレの死体を民家の陰に隠したのは、チェリッシュが心を乱さぬためである。
 魔本の説明書によって、魔物の術には『心の力』が必要なのは判明していた。
 ならば、余計な障害は取り除くべきだと考えたのだ。

 歓喜の念を隠そうともせず、憲兵番長の口元が弧を描く。
 雷神剣の柄に手をやると、昂る期待に呼応するように雷神剣が『鳴いた』。
 無数のスズメバチが羽ばたいたような音を立てて、青白い火花が飛び散らせたのだ。
 放出された電撃は刀身を覆い尽くし、眩い光を放つ雷刃を形成していく。
 この使い手の意図するままに形状を変える刃で、迫りくる巨大な宝石を両断してくれる。
 そんな憲兵番長の思いに反して、ギガノ・コファルは霧となって大気に溶けていく。

「……なに?」

 眉を潜める憲兵番長の眼前で、チェリッシュはへたり込んでいた。
 手元から滑り落ちた魔本を拾おうともせず、ただ茫然としている。
 目は見開いたまままばたき一つせず、半開きの口は小刻みに痙攣している。

 この殺し合いに巻き込まれる以前、チェリッシュはゼオン・ベルに電撃による拷問を受けている。
 雷神剣が放った電撃によりそのトラウマが蘇ったのだが、そんなことを憲兵番長が知るはずもない。
 それでも、戦闘など行えるコンディションでないのは容易に見て取れた。

「さすがに、この結末は予想していなかったな」

 淡々とした口調とは対照的に、憲兵番長は憮然たる面持ちだ。
 一瞬前までの昂揚感は完全に消え失せ、満たされぬ思いだけが胸中を渦巻いている。
 わざわざ手間をかけて準備などしたのもあって、余計に不完全燃焼だ。
 このまま震えているチェリッシュを両断したとて、到底この不満が解消されることはないだろう。
 そのように考えつつ歩み寄っていくなかで、憲兵番長はようやく気付く。
 チェリッシュの視線が憲兵番長自身ではなく、雷神剣に向けられていることに。
 怪訝に思い、雷刃の刀身を数メートル伸ばす。
 すると、チェリッシュの視線は伸びた切っ先に向けられていることが分かる。
 ここに至ってようやく、憲兵番長はチェリッシュが電撃に対して潜在的なトラウマがあることを悟った。

「なるほど」

 わざわざ口に出して大きく頷くと、憲兵番長は雷刃を解除する。
 雷神剣の刀身を覆う電撃がなくなり、その外見上は単なる日本刀と化す。
 チェリッシュの震えが僅かに治まり、過呼吸気味だった呼吸が落ち着いている。
 その動作で、憲兵番長は脳裏に浮かんだ仮説が正しかったことを確信し――地面を蹴った。
 一気にチェリッシュとの距離を詰めると、防御なぞする隙を与えずに鳩尾に軍用ブーツの爪先を抉り込む。

「ガふッ!」

 チェリッシュは凄まじい勢いで吹き飛んで行き、民家の壁に盛大に背を打ってようやく止まる。
 整いつつあった呼吸は、先ほどより遥かに乱れてしまっている。
 どうにか呼吸を整えようとしたチェリッシュは、民家の陰に隠れたものを見つけてしまう。
 上半身と下半身で綺麗に切断された――パルコ・フォルゴレの亡骸を。
 影になっておりよくは見えなかったが、それでも死んでいるのは明らかだった。

「ぅ、ぁ、ひぃぃぃぃぃぃっ」

 反射的に走って逃げ出そうとするが、鳩尾と背に走った衝撃が大きく立ち上がることすらできない。
 どうにか這いずってでも移動しようとして、チェリッシュの視界に影が差す。
 おそるおそる振り返ると、そこには自分を蹴り飛ばした白制服の男が立っていた。
 その顔面には先ほどと異なり笑みが張り付いていたが、やはり瞳だけは変わらず冷え切ったままであった。

「訊きたいことがあるのだが」

 憲兵番長が、チェリッシュのウェーブがかった金髪に手を伸ばす。

「ぁ――」

 悲鳴を上げる暇すら、チェリッシュには与えられなかった。
 チェリッシュの髪を掴むと、憲兵番長は――そのまま真下に叩き付けたのだ。
 モチノキ町は決して発展しているワケではないが、エリアD-4は繁華街である。
 いかに都会とは言えぬ土地であろうとも、さすがに繁華街の地面はアスファルトで塗装されている。
 その硬いアスファルトに、チェリッシュは顔面から打ちつけられることとなった。
 鈍い音が辺りに響き渡るが、しかしチェリッシュの聴覚をもっとも刺激したのはまた別の音であった。
 めきゃり――という、やけに軽い響きだ。
 それが鼻が折れた音だと分かったのは、再び持ち上げられた際に顔面から地面に通じる紅い滝が見えてからだった。

「ご……ぉ……」

 意図せず、チェリッシュからくぐもった声が漏れる。
 その間も紅い滝はだくだくと流れていき、アスファルトを赤黒く染める。
 塗装されているので地中に染み込んでしまうことはなく、地上に溜まっていく。
 数十秒と待たずして、地面に赤い水たまりができあがった。

「君に『刷り込んだ』のは、いったい誰なんだい?
 それは、この殺し合いに呼び出されている誰かなのかな?」

 尋ねながら、憲兵番長は再び手を上下させた。
 紅く温かな水たまりに、チェリッシュの顔面が叩き付けられる。
 再度持ち上げられてみれば、紅い滝の水勢は増していくばかりだ。

 チェリッシュは思考を巡らせる。
 『刷り込んだ』とはなにのことなのか。
 あまりに質問が端的すぎて、いったいなにを指しているのか分からない。
 しかし答えねばなるまい。
 早く答えねば――

「聞こえてるのかな?」

 僅かに苛立ちを孕んだ声とともに、憲兵番長が腕を上下させる。
 勢いよく変化する視界。
 襲いかかる落下感。
 浴びせられる風。

 ――轟音。

 アスファルトに打ちつけられる音以外にも、微かに聞こえるものがあった。
 折れた骨がさらに微細に砕ける。
 硬いアスファルトで肌が切れる。 
 アスファルトの破片が喰い込む。
 髪の毛が何本か引き千切られる。
 繋がっていたなにかが裂ける。
 口から空気が零れていく。

「う、ぐ、ぶ」
「まだ口を割らないのかい? 強情だねえ」

 軽口を叩くような口調とともに、またしても繰り返される。
 手放してしまいそうな意識を繋ぎとめて、チェリッシュはどうにか思考を巡らす。
 『刷り込んだ』の意味を見定めようとする。
 なにが憲兵番長の癇に障ったのか。
 思い返してみれば、彼が態度を変えたのはギガノ・コファルが消滅してからである。
 その際に関わりのある『刷り込まれた』なにかと言えば――

「ぇ、お……」
「聞き取れないな」

 何度目かになるアスファルトへの顔面ダイブ。
 もはや視界はほとんど効かず、聴覚は麻痺し、ただ落下感と痛みだけがある。
 どうにか言葉を発するべく、次に持ち上げられるときへと意識を集中させる。
 唇が震えている上に呼吸が乱れているが、どうにか搾り出すように言い放つ。

「ォ……ン! ……に……っ! 電撃の……きょぅ……ふをっ刷り込んだのは……! ゼオン・ベ――」

 最後まで言い切られることはなく、チェリッシュはアスファルトに顔面を叩き付けられる。
 答えれば解放されるという無意識のうちに抱いていた希望は、答え終わる瞬間を待たずして砕かれる。

「ふむふむ、ゼオン・ベル。
 名簿には同じ姓のガッシュ・ベルという参加者がいるが、関係はあるのかい?」
「知らな――」

 またしても言い切ることは許されず、言わんとする内容が分かるや否や叩き付けられる。
 それからなにか尋ねられることさえなく、四回ほど地面にただ顔面を打ち据えられ続ける。

「なるほどなるほど。
 そのゼオンという輩は気になるところだ。小生の獲物に先に唾をつけておくとあっては」

 最後にいっそう強く叩き付けたのちそのまま十メートルほど地面に擦りつけられて、やっとチェリッシュは解放される。
 もはやその行為に憲兵番長が鬱憤を晴らす以外の意味がないことは、チェリッシュにも理解できていた。

「う、ぅぅぅぅ…………」

 手放されても、立ち上がることはおろか這うことすらできない。
 鼻は砕け、額は割れ、顎は折れ、さらに顔面全体余すとこなく傷付き、おびただしい量の血を垂れ流しているのだ。
 動けなくて当然であり、どうにか遠ざかろうとのたうつだけで十分凄まじい生命力である。

(魔物というだけある、ということか。
 いやはや、そんなものが存在するなんてねえ)

 などと他人事のように分析しながら、憲兵番長はこれまでに出会った参加者を振り返っていく。
 『帽子屋(マッドハッター)』キース・シルバー、炎術師・花菱烈火、サムライ・佐々木小次郎に宮本武蔵、人形遣い・ギイ、自動人形・シルベストリ。
 彼らを思えば、魔物くらいいてもおかしくはないのかもしれない。
 というか、憲兵番長の友人である日本番長など怪物の類と言えなくもない。
 そこまで考えたところで、ある考えが憲兵番長の脳裏を掠めた。

(下らぬ戯言と切り捨てていたが、『アレ』も真実かもしれないな)

 『アレ』とは、憲兵番長に支給されていた支給品のことである。
 元より、雷神剣すら説明書の文面を全面的に信用していたワケではないのだ。
 いざ手に取ってみて、雷神を前にしては信じるしかなくなったにすぎない。

「試してみるとしよう」

 あえて口に出して、地面の上でうごめくチェリッシュに歩み寄っていく。
 どうやら逃げようとしているようだが、その動きは羽を失った蝶よりも緩慢だ。
 先ほどまでと同じように髪を掴んで、無理矢理に顔面を引き寄せる。
 そうしてから、元の整った目鼻立ちが分からぬほど傷だらけの顔に向けて言い放つ。

「いやはや、少し訊くだけだというのに手荒い真似をして悪かったね」

 わざとらしい笑みを浮かべて、リュックサックから液体の入った小瓶を取り出す。

「『治して』あげるよ」

 その液体を飲んではならない。
 チェリッシュは、本能的に判断した。
 残った力を振り絞って口を閉ざす。

「遠慮しなくていいのだよ」

 そんなささやかな抵抗を、憲兵番長は嘲笑う。
 折れ曲がった鼻を潰すほどの勢いでつねられ、チェリッシュは気道を確保するために口を開くしかなくなる。
 そうして空いた口に、フタを開けられたビンが放り込まれた。
 吐き出そうにもそのまま口を掌で押さえつけられてしまい――ついには嚥下するしかなくなってしまう。

「…………え?」

 一瞬ののち、チェリッシュは呆けたような声を漏らした。

 というのも――本当に治ったのだ。

 砕けた骨は再生し、血管は繋がり、皮膚は塞がり、痛みは消し飛んだ。
 服は血塗れであるが、それだけだ。
 魔物の治癒力すら凌駕した速度で、肉体は完全に回復している。

「だから遠慮しなくていいと言ったじゃないか」

 微笑みながら、憲兵番長はチェリッシュにその液体の説明書を渡す。
 それに目を通すチェリッシュであったが、行を追うごとにどんどん顔色が青くなっていく。

 憲兵番長が飲ませた薬の名は――『神酒(ソーマ)』。
 服用すれば新陳代謝が異常加速し、老化が止まって若返る上にいかなる傷もたちどころに再生可能となる。
 まさしく、不老不死の妙薬。

 ――という触れ込みで売り捌かれた劇薬。

 実際のところ、異常加速した新陳代謝に身体がついていけるはずがない。
 膨大なエネルギーを消費してしまう上、効果が切れれば急激に老化してしまう。
 一度でも服用してしまえば、服用を続ける以外に生き延びる術はない。

「つまりだね、君は――」

 冷笑を絶やさずに、憲兵番長は続ける。

「もしも死にたくないのであれば、いま小生が持っている三本をなんとしても飲まねばならないのだよ」

 より笑みを深くして、憲兵番長は雷神剣をチェリッシュの太ももに突き刺す。
 傷は見る見る回復していくが、チェリッシュの表情に生気が戻ることはない。
 身体は生き生きとしているというのに、表情だけが死人のようであった。

「そうだな。とりあえず、四人殺すごとに一本、でどうだい?」

 チェリッシュの返事はない。
 ソーマの影響で血行はいいはずなのに、顔色はやたらと青かった。
 そんな困惑を露にするチェリッシュに対して、憲兵番長は笑みを向けたまま。

「ああ、そうか。さっきみたいになったら術は撃てないものね。
 他に殺すための手段が欲しいか。まったく、気が回らなくてすまないね。
 いやいや気にしなくていい。ちょうど使い道のない道具があってね。髪の長い君ならば、きっと使いこなせることだろう」

 違う――と。
 否定の声を出す前に、チェリッシュの胸には雷神剣の刀身が突き刺さっていた。

「は……?」

 事態を呑み込めぬチェリッシュが、気の抜けた声を漏らす。
 遅れて痛みがやってきたのか、表情が歪む。
 そんな様子を眺めながら、憲兵番長は口角を吊り上げた。

「うぇ、ぎぎぎぎぎぎィィィィィイィィッ!?」

 雷神剣の刀身を電撃が覆い、チェリッシュの身体に伝わっていく。
 ゼオンの拷問がフラッシュバックし、チェリッシュが体感する電撃は二倍。
 四肢が吊ったように張り上がり、眼球がぐるんと白目を剥く。
 傷口より溢れ出した赤黒い血液が、電熱で蒸発していく。
 当然、電熱を受けるのは血液だけではない。
 胸に突き刺さった雷神剣より電撃は放たれているのだから、チェリッシュは体内から焼かれていくことになる。

「ぎぎがあ゛あ゛あ゛ゔゔあああああお゛ァァァァ――ッ!?」

 張っていた手足がせわしなく動き出す。
 焼け焦げた血肉の臭いが辺りに立ち込めていく。
 数分ほど経って、ようやく憲兵番長は雷神剣を抜き取る。
 その際にわざわざ刀身を回転させたせいで、焼け焦げた肉が体外に抉り取られる。
 さながら操り糸の切れたマリオネットのように、チェリッシュはアスファルトの上にくずおれる。
 先ほどまで叩き付けられていた冷たいアスファルトが、いまとなってはやけに心地よかった。
 そんな彼女を見下ろすようにしながら、憲兵番長がしゃがみ込む。
 その右手には、内面に『髪』という漢字の描かれたソフトボール大の球体があった。

「いやはや。すぐに治る以上、これくらいしなくては『埋め込め』られないからねえ」

 チェリッシュは、脳内に浮かんだ可能性を否定する。
 さすがにするはずがないと、自分自身にそう言い聞かせる。
 そんな期待を裏切るように、憲兵番長はその球体を――チェリッシュの胸に開けられた刺し傷に押し付けた。
 そうして、そのまま傷口へと強引に押し込んでいく。

「いぎィィィィッ! あッ、げあッ、がッ、ぎいいいいいいいいいいいいッ!!」

 焼き切られて未だ熱を持っている肉体に、異物が挿入される。
 ソフトボール大と言っても、人体に埋め込むにはあまりに巨大すぎる。
 ぶちぶち音を立てて、再生しかけていた血管や肉が千切れていく。
 断ち切られた胸骨を強引に押しのけていくのだが、押しのけられた胸骨は行き場もなく肺に突き刺さる。
 呼吸をするだけで胸に激痛が走るが、その状態を保ったまま肉体は強引に再生をしていく。

「ふむ。入り切らないか」

 そう言うと、憲兵番長は足を大きく振り上げ――

 軍用ブーツの硬いカカトで、チェリッシュの胸に埋まった球を強引に押し込んだ。

「あごぉあああおおう、う゛う゛あ゛あ゛ア゛アア゛ア゛ォォエェ゛ィ゛ィィィ――ッ!!!」

 一際大きな悲鳴が上げると、チェリッシュはまたしても意識を失う。
 口の端から溢れるよだれは、次第に泡立ったものへと変化していく。


 ◇ ◇ ◇


 治癒が終わるのを待ってから、憲兵番長はチェリッシュを蹴り起こした。
 目覚めた彼女は、もはや一切の抵抗をしなかった。
 人を殺せと指示しているにもかかわらず、ただ頷くだけだ。

「ちょうどよかったじゃないか。
 君の持っていた花は、ソーマの原料でね。
 これだけあれば、十分長生きできるだけのソーマが作れるよ」

 とんだ出まかせである。
 憲兵番長がソーマの存在を知ったのはこの殺し合いの会場に来てからであり、精製方法など教えられていない。
 そのことに気付いているのかいないのか、チェリッシュはやはり頷くだけであった。

「…………」

 無言で頷いているだけの彼女が着ているのは、血塗れの衣服ではない。
 あの服は憲兵番長に脱ぐよう命令され、なにも言わずそれに従った。
 現在、彼女が着ているのは血塗れとはほど遠い純白のドレスだ。
 支給品を確認した当初、ほんの少しだけ舞い上がってしまった――そんなウェディングドレス。

 もしもこれを着るのならば、そのときに隣にいるのはいったい誰だろう。
 そう想像したとき、不思議と浮かんだのは長い付き合いのリーゼントの少年だった。
 彼はもうこの世にはおらず、彼の屈託のない笑みとは似て非なる冷笑を浮かべる男が隣にいるのだった。

(…………死にたくない)

 ただただ、チェリッシュはそう思った。



【D-4 路上/一日目 午前】

【伊崎剣司(憲兵番長)】
[時間軸]:居合番長との再戦前
[状態]:疲労(小)、胸元に真一文字の傷、制服ちょい焦げ
[装備]:雷神剣@YAIBA、死亡者詳細データ端末@オリジナル
[道具]:基本支給品一式×3、錫杖@うしおととら、神酒(ソーマ)×3@スプリガン、アンブロディア@スプリガン、ランダム支給品0~1
[基本方針]:人を斬る。おもしろいのでギイと行動。ギイとシルベストリの向かった河原に向かう。


【チェリッシュ】
[時間軸]:ガッシュ戦直前
[状態]:神酒服用済み
[装備]:チェリッシュの魔本@金色のガッシュ、ウェディングドレス@現実、式髪(体内)@烈火の炎
[道具]:なし
[基本方針]:憲兵番長についていく。死にたくない。



【支給品紹介】

【神酒(ソーマ)@スプリガン】
伊崎剣司(憲兵番長)に支給された。
古代植物『アンブロディア』を精製して作り出される飲み薬。
服用すれば新陳代謝が異常加速し、老化が止まり若返る上にいかなる傷もたちどころに再生可能となる。
まさしく、不老不死の薬である。
…………という触れ込みで売り捌かれていたが、そんなおいしい話があるはずもなく。
実際のところは異常加速した新陳代謝に身体のほうがついていけず、効果が切れれば急激に老化してしまう劇薬。
一度でも服用したが最後、死ぬまで服用し続けなくてはならなくなる。
なお新陳代謝が異常加速するだけであるので、丸ごと喪失した部位まで再生するワケではない。


【アンブロディア@スプリガン】
チェリッシュに支給された。
古代植物であり、またの名を甘露草。
すでに絶滅したはずであったが、残っていた種から復元に成功した。
仙道で言う仙丹の原料になる植物であり、本来は精神そのものを物質化するための薬となる。
しかし中途半端な知識で製造することで、神酒(ソーマ)のような劇薬となってしまう。
蓮によく似た水生植物であり、白い花を咲かせる。


【式髪@烈火の炎】
宮本武蔵に支給された。
毛を硬質化させることのできる魔道具。
本来は数本抜いた髪を杭とするなど、武器を持っていないと油断している相手の不意打ちとして用いられる。
しかし麗十神衆の一人・幻獣朗の研究によって、体内に埋め込めれば髪の毛全体を一つの武器として操作することも可能だと判明した。


【ウェディングドレス@現実】
チェリッシュに支給された。
白いアレ。
女の子の夢とかいうアレ。
こういう支給品を出す際に支給品説明は必要なのかと、書いているときにいつも思う。



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103:導火 チェリッシュ  :[[]]
伊崎剣司(憲兵番長

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