卑劣な超闘士
森に近い砂漠の中に黒煙が上がっている。サーバインとの闘いに敗れた
ズワウスの残骸からのものだ。
その傍らには赤いマフラーを巻いた特機、大雷凰が立ち、
その足元にはひどく損傷したサーバインがコクピットを開いて横たわる。
倒れるサーバインと同じような格好でその下の砂地には先ほどまで
激しい戦闘を戦い抜いたゼンガー・ゾンボルトが眠っていた。
そしてその寝姿を碇シンジはじっと眺めて座っていた。
ゼンガーを守る、と決めたもののシンジの体力ではゼンガーの巨躯をコクピットから
引きずり出し、介抱できるような姿勢に寝かせるだけでも大仕事だった。
いつ敵が現れるか分からないこんな場所で長居する気は無いが、
息が切れてシンジ自身も動けそうに無い。そのための小休止といったところだ。
シンジに感銘を与えたサーバインとズワウスの戦闘から30分ほど経った所だろうか、
大雷凰によって出来た日陰の上にさらなる陰が現れた。
上を見上げると水色をベースにした戦闘機、というよりは爆撃機のような
特機――ウイングランダー――が飛んでいた。
「ゼンガー殿、ご無事ですか!」
突然機体のスピーカーから男の声が響く。
見知らぬ機体のパイロットがゼンガーの名前を知っていることに驚き
シンジは思わず立ち上がる。
「少年、今降りる、ゼンガー殿は生きているのか!?」
ウイングランダーは大雷凰の前に着陸すると、
そのコクピットから長髪の男が降りてきた。
「君がゼンガー殿の言っていた少年か。自己紹介が遅れたな、
私はウルベ・イシカワという。ゼンガー殿の仲間だ。
その様子を見ると君も仲間のようだな。名前は?」
「い、碇シンジです。僕を知っているようですが、あなたは?」
突然のことにやや怖気づきながらシンジは尋ねる。
「君が眠っている間に仲間になったのだよ。
ゼンガー殿から君の事は少しだけ聞いていた。
ふむ……気を失っているだけ、身体に特にこれといった負傷はなし、
機体も状態は悪いが戦闘不能というわけでは無さそうだな。
何があったのか話してくれないか。」
(ゼンガーが死亡、もしくは再起不能ならばこのガキを殺して置く所だが、
まだこいつらは使えるようだな。)
「ええ。それと、あなたとゼンガーさんの関係も…」
「そうだな、情報交換といこうか。」
シンジはつい先ほど目の前で起こった戦いと自分の心境の変化について話し、
ウルベは蒼い女神のような機体に乗った怪人がバルキリーに乗った
可憐な少女を辱めて殺したところを目撃、義憤に駆られたゼンガーが
それを追ったが逃げられてしまったことから仲間になったと告げた。
「それからすぐにでも行動を共にしようと思ったのだがね、
どうやら私は他の参加者と違って自分の機体から少し離れたところに
落とされたらしく、あの時点ではまだ機体を持っていなかったのだよ。
君の元へ帰らなければならないゼンガー殿を機体探しに付き合わせる
わけにもいかないのでね、後から合流しようということで分かれたのだ。
それがまさかこういうことになるとは……私がもっと早く着いていれば
この様なことにはならなかったのだろうが……申し訳ない」
(まさかバルキリーを落としたのが自分で、機体はその後すぐに
ガストランダー形態で地中に隠していたとは言えないな。
それにズワウスとの戦闘も眺めていて、近づいたのはゼンガーの
生死の確認のためだったこともな。)
「そんなに気を落とさないで下さいよ、逃げてばかりでゼンガーさんを
手伝えなかった僕も悪いんです。だから、意識を取り戻すまでゼンガーさんを
守らなければ……」
「そうだな、シンジ君。私もゼンガー殿がいなければ今頃はあの卑劣漢に
殺されていたかもしれない。一緒にゼンガー殿を守ろうではないか。
わたし達は仲間だな。」
「ハイ!」
シンジは思わず大声で答えた。突然ではあるが、信頼できそうな仲間が出来たのだ。
それはシンジの1人でゼンガーを守りきらねばならないという
プレッシャーを軽くするものであり、ゼンガーがいない間頼れる大人がいるという
安心感を与えてくれたからだった。
「私は少しこの辺りを哨戒飛行してくるよ。なにかあったらすぐ駆けつける。
ゼンガー殿が目を覚ましたら連絡してくれ。」
(随分と真っ直ぐな子供じゃないか。操るのは楽そうだな。
まだあいつらにこの機体の変形機能については秘密にしておく方が良いな。)
シンジの視界から離れると、ウルベはウイングランダーを変形させて地中に潜った。
ゼンガーが気づく前にまた誰かが襲ってきたら高みの見物を、
意識を取り戻したらあたかも実直な仲間を演じれば良い。
【碇シンジ 搭乗機体:大雷鳳(第三次スーパーロボット大戦α)
パイロット状態:良好(かなり安定)
機体状態:良好
現在位置:H-3
第1行動方針:気絶したゼンガーを守る
最終行動方針:???】
【ゼンガー・ソンボルト 搭乗機体:サーバイン(OVA聖戦士ダンバイン)
パイロット状態:極度の精神披露により気絶中。少なくとも数時間はサーバインを飛ばすことすら出来ない。
機体状態: 左腕欠損。
現在位置:H-3
最終行動方針:ゲームからの脱出】
【ウルベ・イシカワ 搭乗機体:グルンガスト(バンプレストオリジナル)
パイロット状態:良好
機体状態:良好
現在位置:H-3
第1行動方針:状況を混乱させる(裏切る為にシンジの信頼を得る)
最終行動方針:???】
最終更新:2008年05月29日 04:03