「なっ……!?」


呆然とするはようやくタスクを抜けられたシンだ。
目の前で起きた爆発にシンは驚きを隠せない。
先程スレードゲルミルを包んだものとはまた違う。
遥か前方、ビッグデュオの後方から紫のビームのようなものが伸びていた。
紛れもなく長距離からの狙撃だ。ビッグデュオは一瞬よろけあっけなく海へ落ちていく。
そして更に何らかの兵器を撃ちながら此方へ向かってくる機影が一つ。
ブースターから噴き出す火の色は青く、その軌道がはっきりと判別出来た。
ガンダムとは違う、蒼の機体が目に見張る機動性をもってして向かってくる。
それはかつて仲間達と共に築いた栄光の日々を取り戻さんと願われた機体。
スフィア――ただ奪われるしか出来なかった乙女の悲しみに触れ、その動力は更なる進化を遂げている。
グローリースター、“栄光の星”の名を負わされた機体の名はバルゴラ。
バルゴラ・グローリーが今しがた狙撃したビッグデュオへ肉迫する。


「護るんだ……俺は、護るんだ……!」


蒼穹から零れ落ちたような青に彩られたバルゴラ・グローリーに乗る操縦者の名は春日井甲洋。
その悲しみの深さ故にバルゴラ・グローリーに見こまれた女は段々と大事なものを
失った。
彼もまたその女と同じく失った。ただしバルゴラ・グローリーに乗る前に既に。
悲しみの末に大事な存在の思い出を失くした男。
専用兵装、ガナリー・カーバーから伸びたビーム刃がビッグデュオへ振りかぶられる。


◇     ◇     ◇





気がつけば地球に居た。
エリアa-1で奇妙な装置を調べようとした直後の事だった。
面食らった。どういう原理なのかと考えるよりも先ず困惑が先だった。
別に宇宙にこだわりがあったわけじゃない。
寧ろ馴染みのない宇宙はどこか居心地が悪く、地球の方が馴染み深い。
ただどこまでも広がっていそうな、青とも黒とも取れる宇宙空間はアレを連想させた。
遠見と溝口さんを助けるために、フェストゥムと共に沈んだあの光景を――。

(そうだ。俺はあの時に……)

やっぱりだ。
記憶は戻っている。
あの日のことだけじゃない。
フェストゥムが侵攻した直後の事も、その前のことも大抵のことは思い出せる。
一騎と総士が許せなくてファフナーで戦うことを決めた。
護りたかった。あいつらがあっさりと見放したものを護りたかったから。
だけどそれが、それだけが思い出せない。
大事なものだった筈なのに、大事なものであった事は痛いほど覚えているのに。
だけど――どうしようもなく思い出せない。何故だかそれが悲しかった。
それだけを考え出鱈目に飛行を続けた途中、一つの戦闘を見つけたのはあくまでも偶然だった。


(戦っている……見たこともない。ファフナーともフェストゥムとも違う……俺の知らない兵器……!)

共に大型機だ。
ファフナーやフェストゥムよりも大きい。
それは自身に支給された機体と較べても言えた。
しかし、甲洋に迷いはない。
やれるかやれないかの問題じゃない。
やる。ただそれだけだ。自分は一騎や総士とは違うのだから。
見捨てやしない。何かを、大事な何かを護り通すために戦う。
鉄のように固く、そして閉ざされた意志の元にガナリー・カーバーを構えさせた。
見る見るうちに銃身が展開していくガナリー・カーバーに奇妙な満足を得る。
まるで自分のペットが上手く自分の言う事を聞いてくれた時のような感覚。
家の裏で飼っていたショコラが自分の言う事を――そういえばなんでショコラって名前をつけたのだろうか。
何かの名前を少し変えて筈だろうけども、思い出せない。
また一つわからないことが思い出せないことが増えてしまった。
同時に悲しくなってくる。いつから自分はこんなに涙もろくなったのだろう――やはりわからない。
だけど、今はそんなことを考えている時じゃない。
虚ろ気であった甲洋の顔が再び戦士のそれに戻り、ガナリー・カーバーが緑色の輝きに包まれる。

(捉えた。そこだ、いけ……!)

そして甲洋は引き金を引いた。
あっさりと、まるで自分の指を動かすように。
今しがたハイ・ストレイターレットによる撃ち放った光が眩い。
紫の極光を見つめ感傷に浸る暇はない。直ぐにバルゴラ・グローリーを指示を与える。
狙撃のために減速させていた速度をフルスロットルに。
容赦なく襲うGなど気にせずに、バルゴラ・グローリーをただ全力で飛ばす。
更にガナリー・カーバーをブイ・ストレイターレットに変形させ、落ちてゆく敵機へ銃弾を撃っていく。
標的がでかい分、面白いように弾丸は当たってくれる。
もう一方の機体は驚いているせいか特に動きを見せない。好都合だった。
ようやく此方を振りむいた赤い巨人と更に接近。
胸部の損傷が酷い。そう思った瞬間には既に狙いをそこに絞っていた。
どんなに頑丈な装甲だろうとも集中的に狙ってやればそうもいかない。
冷酷な判断。しかし、甲洋は自身の行為に特に感想も覚えずバルゴラ・グローリーを肉迫させる。



「護るんだ……俺は、護るんだ……!」


甲洋は初めて声を発した。
意志とは裏腹にそれは絞り出したような苦しげな声だった。
ファフナーに乗っている時は何もか違う。
もう一つの自己として受け入れ、自分の手足として扱うファフナーとはあまりに違う。
だが、やることは何一つとして変わっていない。
上手くやらなければらない。そうしなければ自分も一騎と総士と同じになってしまう。
もう失いたくない。大切なものは失いたくはないのだから。
ガナリー・カーパーの生物の眼球を模したような緑色の球体、スフィアが鈍く光りその姿を変えていく。
桃色の光の奔流が菱形状の刀身を形成する。
その刀身はあまりにも大きく、出力の高さを否応でも匂わせる。

「ちっ! また乱入者かよ!!」

しかし、ビッグデュオの反撃が叩きこまれる。
ガトリングミサイルでは間に合わないと判断したのだろう。
両目から撃たれたアークラインの光がバルゴラ・グローリーへ向かう。
ビックデュオへ斬りつけようとしていたバルゴラ・グローリーに避ける手だてはない。
そう、あくまでも“避ける”手段はない。
振りかぶらせていたガナリー・カーバーの刃の光が更に輝く。



「――俺はああああああああああああああああッ!!」



そして振るった。
力強く、何もかも薙ぎ払うように。
暴れ狂う光の粒子がアークラインの光を跳ね飛ばし、返す刃で再びビッグデュオへ斬りかかる。
甲洋がこれを狙ったのかは定かではない。
恐らく自分でもわかっていないのだろう。
そもそも甲洋はそんなことまで考えていない。
損傷が特に酷い胸部を斬り裂けば機能停止、コクピットがあればパイロットは即死だろう。
もう直ぐ自分が人を殺すかもしれない。
こんな状況でありながら甲洋はただそれだけを考えていた。
だが刃は止まらない、止まる筈がない――。






「護るんだあああああああああああああああああああああああああああああッ!!」



強烈な一閃がビッグデュオの胸部に走る。
生憎それは鮮やかな太刀筋とはいえなかった。
しかし、確かな力強さがあった。
たとえただがむしゃらに、酷くみっともない様子であっても甲洋の悲痛な叫びに呼応するかのように。
その侵攻がビッグデュオの堅牢な装甲に阻まれようともそれは押し進まれた。
ぶるぶると揺れるガナリー・カーバーをまるでへし折ってしまうかのような強引さで――断った。
損傷が酷かった部分を、攻撃を集中させていた部分を、そして必死に斬りつけていた部分を、両断した。
それはビッグデュオの胸部に存在していた部位。先程まで生体反応があった球状の部位だ。
爆発。やがてグラっと揺れたかと思うと、ビッグデュオは力なく海中へ落ちていく。
胸部から舞いあがった黒い煙はきなくさい臭いを帯びている。
バルゴラ・グローリーはただそれを黙って見下ろしていた。




◇     ◇     ◇




『護るんだあああああああああああああああああああああああああああああッ!!』


アークラインが跳ね返された。
信じがたい出来事だったが現に目の前で起きた。
今からではメガトンミサイルは勿論のことガトリングミサイルでも間に合わない。
認めなくてはならない。
自分は負けた。己の勝負運が尽きたのだ。


(おしまいか……あ~あ、俺ってかっこわりぃ……)


脱力感は否めない。
ビッグデュオはその火力と装甲からかなりの当たり機体だったに違いない。
そこで運を使い果たしてしまったのか、はたまたその運を活かしきれなかったのか。
どちらにせよ自分が駄目だったのだろう。正直悔しいが仕方ない。
どうやら神様とやらはここからの大逆転は用意してくれなかったようだ。


(すいません、ヴィレッタ姐さん……ちょいと一抜けさせてもらうっす……)


ヴィレッタ隊長が気がかりだから仕方ない。
さすがの姐さんも死人を叱りつけることもないだろうから。
だが、思い残すことはある。少しじゃない。結構あるもんだ。
色々と浮かぶがやはり真っ先に浮かぶのはあいつの顔だった。
今頃何をしているだろうかとか、ちょいとは料理が上手くなっているだろうかとか些細なことだ。
とにかくあいつはこの場に居なくてよかったな。
それは確かだが、思うことはあった。


(なぁ、レオナ……いろいろあったけどさ。俺思うんだ……今更だけどさ、ホントかっこわりぃけどさ……)



ガナリー・カーバーの刃の光により目の前が一気に明るくなる。
どうやら最期の瞬間すらもゆっくりさせてくれないようだ。
少し不機嫌ながら、だがそれでいて確信を持ってタスクは想いを馳せた――



(お前のキスでも貰ってたら……勝ってたと思うぜ? こいつだけじゃなくてシャドウミラーにも。
だって、勝利の女神さまのキスだ……そりゃ御利益ってモンがあるさ。
それも俺だけの……俺だけの女神さまだから……レオナっていう女神だから…………)



きっとこんなことを聞いたら赤面するんだろうな。
何故だかそんなことすら思っちまう。余裕なんかないのに。
もうあの光の渦に消えていくというのに何故か。
答えは考えるまでもなかった、今更考えることがばかばかしいぐらいに。
俺は、タスク・シングウジはわかりやすい人間だから。




(好きだったぜ……レオナ、まあ、疑ったことなんかなかったけど……な…………)



そこで俺の意識は消えていった。





【タスク・シングウジ:死亡確認】



◇     ◇     ◇



(フェストゥムじゃない、相手も人間だった……同じ人間だった……! だけど、俺は…………!)

落ちてゆくビッグデュオを見つめる。
ジョーカーとして人を殺せといわれた。
人類の敵、フェストゥムを倒せとはまた違う。
彼らフェストゥムならば一切の抵抗はない。
竜宮島を襲ったという理由もあるがやはり彼らは異質なのだから。
だから自分の力を証明するために、一騎や総士とは違うことを証明するために戦える。
だが、自分と同じように赤い血が流れている人間とは違う。
生き残るということはこの場で他者を蹴落とすことだ。
そして実際、たった今一人の人間の命を奪った。
突然動きを止めたところあれがコクピットだったのだろう。
しかし、後悔はない。
そうしなければ大事なものを護れないのだから。
だけどどうしても気分が悪かった。

「くっ……がっ、げほ…………」

急に吐き気が催してきた。
覚悟は出来た筈なのに。
護ると誓った筈なのに。
今、自分の手で人間一人を殺したと考えれば我慢出来なかった。
今更ながらに人を殺してしまった自分を自己と認めたくないと思う。
しかし、慣れなければならない。
最低でもあと一人は殺さなければならないのだから。
たとえばこのもう一機を、自分の手で。
こうしている間にも襲われる可能性だってあるのだから、ぐずぐずなんかしていられない。
頭ではわかっているのに、身体がどうにも言う事を聞いてくれなかった。


お前……」

だが、シンはスレードゲルミルを動かそうとしない。
動きが止まったバルゴラ・グローリーをただじっと見据えている。
体調を抑えることに精一杯な甲洋なら簡単に殺せるだろうに。
ただ明らかに戦いなれていない様子の甲洋がどうにも気になっていた。


「……名前は?」
「……春日井、甲洋……」

何かの気まぐれか定かではないがシンが甲洋の名前を問う。
元々シンの狙いはヴィレッタが持つレイの情報だ。
襲われれば迎撃はするがそんな時間があればヴィレッタを追うのに費やしたい。
加えて憐れな姿を晒した甲洋を殺す気にはどうにもなれなかったのもある。
また、目の前であまりにもあっさりと命が奪われた事には驚いた。
だが、冷静に考えれば悩む必要はなかった。
自分もそうするつもりだったから。迷いは捨てたのだから。
ただ目の前の人間が代わりにやってくれた。
そのぐらいの印象でしかない筈だ。
だからというわけではないが今回は見逃してやる、とシンは考えていた。
それは苦行を代わりにやってくれた甲洋への僅かながらの感謝だったかもしれない。

「ッ! 皆城が言っていた……今度は見逃さない、絶対にだ……!」

そんな時、シンの表情が豹変する。
時間も惜しいため今回だけ見逃すのは変わりない。
しかし、甲洋が皆城総士の知り合いの一人だということを知った。
何を考えているかわからなかった皆城の知り合いが目の前で殺して見せた。
そこまでの状況を作り出したのは自分だがそれでも思ってしまう。
あの羽佐間翔子もそうだ。これまで出会った皆城の知り合いは人を殺している。
これは偶然なのか。わからない、わからないが警戒に越したことはない。


(残りは真壁一騎に遠見真矢……こいつらは、どうなんだ…………?)


スレードゲルミルを反転させながらシンは残りの二人について疑問を抱く。
知っているのは名前だけだ。皆城との関係は一切わからない。
ただ、羽佐間翔子と春日井甲洋の件もあってあまり良い印象はない。
だが、ほんの少しの興味のようなものは確かにあるがそれも些細なことだ。
結局、自分の目的には関係がないことなのだから。


(邪魔するなら倒すだけだ……そうさ、俺がこの手で……!)



唯一信頼できる仲間、レイの情報を得るためにヴィレッタを追わなくてはいけない。
正確な方向は見失ってしまったが北の方角であるのは確かだ。
ただそれだけを頼りにシンはスレードゲルミルを再生させながら北上した。



【1日目 10:50】
【シン・アスカ 搭乗機体:スレードゲルミル(スーパーロボット大戦OGシリーズ)
 パイロット状況:疲労(中)、
 機体状況:マシンセル正常機能中、EN30%
 現在位置:C-2 南部
 第一行動方針:レイを探す
第二行動方針:ヴィレッタを追う
 第三行動方針:シ―ブックとドモンには会いたくない
 最終行動方針:優勝し、ミネルバに帰還する……?】
【備考】
※ヴィレッタの位置は見失っています。




◇     ◇     ◇




「ずいぶんと離れてしまったようね……」

ガルムレイド・ブレイズを上陸させ、ヴィレッタが呟く。
ガンダムアシュタロンHCにより海中に引き込まれたもののなんとか窮地は脱せられた。
戻ってきたヒオウとロウガの援護もあり、そこまでの損傷はない。
だがそれでも決して手放しでは喜べなかった。
タスクとの分断は明らかに戦力の低下を意味する。
それにタスクは今頃シン・アスカと戦っていることだろう。
ならば自分がレイ・ザ・バレルという参加者に反応してしまったことがタスクに知られたかもしれない。
タスクにその事を尋ねられたら、もう迷うわけにいかない。


(これ以上隠すわけにはいかないわね……)

待ち合わせ場所を決めたわけではないがこの灯台はタスクと合流した場所でもある。
タスクの帰還を願いながら暫くここで待つ事をヴィレッタは決断する。
それは今となってはあまりに遅すぎたものだった。



【1日目 10:50】
【ヴィレッタ・バディム 搭乗機体:ガルムレイド・ブレイズ(バンプレストオリジナル)
 パイロット状況:DFCスーツ着用、ちょっと恥ずかしい
 機体状況:良好 右肩に亀裂、胸部、両腕損傷 EN75%
 現在位置:D-1 灯台下
 第一行動方針:タスクとの合流
 第二行動方針:ギリアムを探し、シャドウミラーについての情報を得る。
 第三行動方針:出来る限り戦闘は避け、情報を集める。戦いが不可避であれば容赦はしない。
 第四行動方針:ノルマのために誰かを殺害することも考えておく。
 第五行動方針:そう、誰かを……?
 最終行動目標:生き残って元の世界へ帰還する】
 ※参戦時期はOG外伝終了後。





◇     ◇     ◇




「ぬかった……我ながら情けない……!」

以前として海中を進むガンダムアシュタロンHCの中でガトーが憤慨する。
タスクのビッグデュオによりヴァルシオーネRが撃墜された時に、彼は一時撤退を決めていた。
明らかに違うサイズ差。それに万全の状態とはいえないアシュタロンHCではたとえ勝利を収めたとしてもその後が厳しくなる。
それでも手ぶらで帰るつもりはなかった。
海中へ引き込めば水中戦を得意とするアシュタロンHCなら一機ぐらいは倒せる。
だが、その目論見は残念ながら芽を見ることはなかった。
奇妙な支援機の妨害を受け、あの青い機体がギガンテイックシザースから抜け出した。
その時点でガトーは己の引き際を悟った。
損傷が未だ残るこの状況でガルムレイド・ブレイズと真っ向から討ちあうには好ましくない。
判断した後の行動は実に早く、今に至っていた。



「だが、いつまでも退くわけにはいかん……ジオン再興のために、この身を未だ潰えるわけにはいかんのだ……!」



ガトーの戦いは未だ終わろうとはしていなかった。




【一日目 10:50】
【アナベル・ガトー 搭乗機体:ガンダムアシュタロンHC(機動新世紀ガンダムX)
 パイロット状況:疲労(大)
 機体状況:右腕欠落、全身の装甲と特に背部にダメージ、EN30%、マシンキャノン残弾60%
 現在位置:E-1 海中
 第1行動方針:敵は発見次第仕掛けるが、無理はしない。まずは補給する
 第2行動方針:コウ、カナードとはいずれ決着をつける
 最終行動目標:優勝し、一刻も早くデラーズの元に帰還する】




◇     ◇     ◇




海上の遥か上空でバルゴラ・グローリーが浮遊している。
両腕を下げ、ただ黙って真下に広がる海を眺めていた。
自分が撃破したビッグデュオが沈んだと思われる場所を。
そしてスレードゲルミルが消えていった場所をただぼんやりと。

「皆城……総士のことか。総士、やっぱり居るんだな、お前も……!」

甲洋の意識はシンが呟いた名前の方に向いている。
自分を知っている皆城という参加者。
間違いなく自分が知っている皆城総士だ。
やはり同姓同名の参加者という事ではないらしい。
彼らは名簿に書かれた自分の名前を見てどう思うだろうか。
少しだけ疑問に思うが、直ぐに意識の片隅に追いやる。
あいつらがどう考えようと生き残るためには関係ないのだから。
目の前に立ちふさがるようであれば戦うだけなのだから。
やがてバルゴラ・グローリーを大空へ向かわせ、どこへいくわけでもなく飛ばした。


「邪魔はさせない……俺は、今度こそ護るんだ……!」



未だ判りようのない存在を求め、甲洋はバルゴラ・グローリーにその身を預ける。




【一日目 10:50】

【春日井甲洋 搭乗機体:バルゴラ・グローリー(バンプレストオリジナル)
パイロット状況:同化により記憶及び思考能力低下&スフィアと同調することで思考能力の一部回復
機体状況:疲労(小) EN80%
現在位置:B3 北東部
第一行動方針:見敵必殺
第二行動方針:一騎と総士を倒す。真矢は……?
最終行動目標:守るんだ………………誰を?
※フェストゥムに同化された直後から参戦です。
※具体的にどのくらい思考能力や記憶を取り戻しているか、どの程度安定しているかはその場に合わせて一任します。
 好きなように書いてもらって構いません。




◇     ◇     ◇





ビッグデュオのコクピットブロックは破壊された。
よってタスク・シングウジの身体はビームの熱量に焼かれた。
THE BIGの内の一体も今では海底の置物でしかない。
だが、破壊されたコクピットブロックに――蠢くものがあった。
一つ、いや無数の生命の群れのようものがいる。
のそのそと動くそれらは徐々に広がっていく。
ビッグデュオのコクピットブロックを覆うように。
まるで新しい住みかを見つけたかのごとく、我が物顔に侵食している。
それの正体は先程の戦闘により付着したものだ。
良く見ればコクピットブロック以外にもそれは存在していた。
しかし、やはり一際集まっているのはコクピット。
大方そこが自分達の住処に一番都合がいいのだろう。
それはガトリングミサイルの爆風に全身を焼かれたスレードゲルミルの装甲表面に巣くっていた存在。
一人の天才科学者が外宇宙の技術から開発した代物。
機動兵器を取り込み、自己再生のみならず自己進化までをもたらす。
そいつは、そいつらの名は――










マシンセル、自律型金属細胞。


【ビッグデュオ(THE BIG・O)】
 パイロット状態:死亡
 機体状態:右腕切断、コックピットブロック破壊 マシンセル寄生
 現在位置:C-2 海中


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最終更新:2010年04月13日 17:15