sideM

神様、私は穢れています。
「真理亜さん……聖香は?」
私の部屋に入るなり、智恵子が真っ先に確認したのは妹のことだった。
私の妹、聖香。智恵子にとっては幼なじみである。
「さあ。見てないな」
私は素っ気なく答えた。
妹との関係は最悪と言っていい。私がそうしたからだ。
家族の中で誰より私に懐いていた聖香。
あの子をまともに見られなくなったのは、いつからだろう。
胸が膨らみ始めて一緒にブラを買いに行った頃か、それとも初潮を迎えたことを相談された頃か。
ともかく、聖香が単なるこどもから『女の子』になるにつれ、私は自分が狂っていくのを自覚せずにはいられなかった。
いつものようにまとわりついてくる聖香をうっとおしいと追い払い、話しかけられても適当な相槌ですませるようになった。
聖香も最初は私の機嫌が悪いだけかと思っていたようだが、そのうち諦めたように私と距離を置き始めた。
今では顔を合わせても、会話なんてほとんどない。
それでいい。私が近づけば、あの子を傷つける。
「あ……真理亜、さん」
私は服を脱ぐのももどかしく、智恵子をベッドに押し倒した。
小学生の、それも妹の親友の身体を求めるという背徳感は、何度味わっても慣れるものではない。
「好きだよ」
私の言葉に、智恵子が緊張をとく。
「あたしも。あたしも好き」

智恵子とこういう関係になったのは、私が聖香を意識しはじめて間もない頃だった。
もともと私に対して憧れめいた感情を隠そうとしていなかったので、堕とすのはわりと簡単だった。
聖香がいない時に家に呼び出し、あとは好きだ愛してると囁きながら優しく触れてやるだけで、智恵子はあっさりと私を受け入れたのだ。
「あ、あ……ダメ。ああ……」
私の愛撫に、智恵子が逼迫した声をあげ始める。
たまらない。頭がおかしくなりそうだった。
私が智恵子を狙った理由。それは、単に身近な存在だったからではない。
智恵子は、聖香によく似ていた。
本当の姉妹のように。私なんかよりも、ずっと。
140センチほどの背丈、肩まで真っ直ぐに伸びた綺麗な黒髪、小さく可愛らしい目鼻立ち。
そして、耳に心地よい柔らかな声。
まるで、聖香を抱いている気分になる。
「真理亜さん……」
キスを求められ、私は智恵子の舌を貪った。
聖香……聖香、聖香、聖香聖香聖香!
「ぅあっ!」
短くうめいて智恵子は達した。それを感じて私も達した。
「真理亜さん……」
智恵子が甘えて私にしがみついてくる。
私は抱きしめてやったが、その顔を見ることはできなかった。
「好きだよ……」
私は高校を出たら県外の大学へ進学する。そして、もう二度とこの家には戻らない。
それが、私が聖香を守るための唯一の方法だった。


sideS

神様、わたしはきっと地獄に落ちますね。
「あっ……あっ……」
壁に耳を押し当てると、智恵子の声が漏れてくる。
親友が姉に抱かれてる声。
そんなものにわたしは興奮している。
大好きなお姉さま。
お姉さまがわたしを避けるようになったのは、いつからだろう。
わたしは自分の身体が成長していくのが嬉しかった。
お姉さまにつりあう自分になっていくようで。
そんなよこしまな気持ちを、お姉さまは見抜いたのかもしれない。
やがてお姉さまは、まるで汚いものを見るような目でわたしを見、わたしを遠ざけるようになった。
しかたないと思う。
わたしは、お姉さまと愛し合いたいと考えるような頭のおかしい子なのだから。
「好きだよ」
お姉さまの声に、わたしは震えた。
わたしに向けられた言葉ではないのに、わたしはすごく反応してしまったのだ。
右手を下に伸ばして、自分のいけないところを慰める。
「お姉さま……お姉さま……」
智恵子がお姉さまとこういう関係になったのはどうしてなのか、わたしにはわからない。
でもそんなことどうでもよかった。
止めようという気も起こらない。
わたしには、お姉さまにエッチなことをされて声をあげる智恵子に、自分を重ね合わせることの方が大事だった。
お姉さまに触ってもらえないわたしには。
「ぅあっ!」
智恵子があの時の声を出すのが聞こえた。
わたしもすぐに追いついた。
お姉さま、大好き……。
わたしは、いつか、できるだけ早く、修道院へ行こうと思った。
お姉さまのいないところへ。二度と会えないところへ。
そして、神様にこの汚らしい気持ちを消してほしかった。
それが、わたしがお姉さまを傷つけずにすむたったひとつの方法だと思った。


sideT

あたしの親友の聖香は、自分のお姉さんが好き。
聖香の姉の真理亜さんは、自分の妹が好き。
たぶんだけど、あたしの勘はよく当たる。
そんなあたしが一番好きなのは真理亜さん。
真理亜さんになら、なにをされてもいいんだ。
あたしみたいなこども、本当は真理亜さんに相手なんてされるはずないのに。
きっと、あたしが聖香の友だちだから。そして、聖香に似てるから。
だからいい。
これは、どっちかって言うとラッキーなことなんだ。
好きな人が抱いてくれんるんだもん。
理由なんかどうだっていい。
二人の関係は聖香にバレてるだろうなって、あたしは思う。これも勘だけど。
聖香の、あたしを見る目が前と違うから。
でもいい。
聖香はあたしの一番大切な人。
聖香はあたしに自分をダブらせてる。
絶対に結ばれないって思ってるから、あたしを使って自分を慰めてる。
聖香の幼なじみでよかった。真理亜さんが聖香のお姉さんでよかった。
あたしはきっと、二人のためならなんだってしてあげられる。
いっそ、まだるっこしいことはもうやめて、聖香の見ている目の前で真理亜さんとエッチできればいいのに。
神様、そんなこと考えるあたしは悪い子ですか?

  • 続きがよみたいな -- 名無しさん (2009-11-02 18:30:33)
  • GJ!亀なのは自覚しているが、書かずにはいられなかった。 -- 名無しさん (2011-03-03 01:54:13)
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最終更新:2011年03月03日 01:54