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8月上旬の強い日差しの中、いつもどおりお姉ちゃんの家に向かう。
たかが数百メートル。
それでも、背の低い私にはアスファルトからの照り返しがきつく、お姉ちゃんの家に着くまでには汗だくになっていた。
形の上だけチャイムを鳴らして直ぐに玄関のドアを開けて中に入る。
「こんにちはー」
「おーいらっしゃい。今日は暑いからもう来ないかと思ったよ」
声をあげながら中に入るとお姉ちゃんが棒アイスを片手にリビングから出てきた。
食べたいとか、思ってない。いや、ちょっとは食べたいけど。
そんなことよりももっと大事なことがあった。

「な、ななな―――」
「ん?どしたん?」
「なんてカッコしてんの!!」
お姉ちゃんの格好は、下は学校のものと思わしき半ズボン、上は下着のみという、女子高生らしからぬだらしなさ過ぎるものだった。
「やー今日は暑くってねー。いやはやまい」
「せめてなにか着ようよ!!」
「着てるよ?」
私が慌ててそういうと、お姉ちゃんは半ズボンをくいくい引っ張りながら首をかしげた。
あー、なんでこの人はこんなんなんだろ……
取りあえず、靴を脱いでからお姉ちゃんを部屋に押していく。
そしたら案の定、ベッドの上にTシャツが脱ぎ散らかしてあって、それをお姉ちゃんに突きつける。
「ほら、これを着る!!」
「えー暑いよー」
「クーラーつければ良いじゃない!」
「でも、地球温暖化がどうのこうのって言ってたのはみぃだよ」
「うっ。それでもそんなカッコはダメ!!絶対ダメ!!」
「大丈夫だよ。この家には家族しかいないし」
「私は家族じゃないけど」
へらへらと笑うお姉ちゃんにちょっと冷たくかえすと、お姉ちゃんは調子を変えずに、
「家族のようなものだよー」
なんて言った。
あまりの不意打ちに何も言えないでいるとお姉ちゃんはそのままへらへら、にこにこした笑顔を浮かべていた。
「と、兎に角着るの!!」
「ちぇーけちー」
お姉ちゃんは観念したのかTシャツを受け取って、ちょっと溶けたアイスを差し出してきた。
「ちょっともってて」
「うん」
「食べてもいいよ」
「あ、うん」
て、さっきこれ、お姉ちゃんがくわえてた……
「はっ!!しまった!!」

ちょっとドキドキしながら視線をアイスからお姉ちゃんにうつすと、
ちょうど眼鏡が服に引っ掛かっているところだった。
……なにやってんだろ。
そうこうしているうちに手にもったアイスが溶けてきて、慌ててそれを嘗めあげる。
「あはは。みぃだって行儀わるいぞー」
そしたら、いつの間にか着終わったお姉ちゃんにからかわれた。
「だ、だだだだって落ちたら拭くのは私なんだよ!?そ、それにこれは勿体ないからで……」
慌てて言い分けをする。あー絶対に顔赤いよー。
「そんなに焦らなくても……冗談なのに」
「うぅ……」
「まぁまぁ、みぃもアイス食べよー、こんなに汗かいてるし」
恥ずかしさに顔を俯かせていると、お姉ちゃんがそう言って頭を撫でてくれた。
自分の手に汗がつくのも構わずに、汗を確かめるかのように髪に手を差し入れる。
「う、うん……」
そのしぐさとその笑顔に思わずドキリとしてしまってそう返すのがやっとだった。
「うんうん。今日はちゃんとみぃの好きなチョコアイスを買っといたんだから」
アイスを受け取ったお姉ちゃんは溶けた部分をなめてから、またにっこりと笑う。
その笑顔と、暑がりのお姉ちゃんがわざわざ私のために買ってきてくれたことが嬉しくて、
ついついはしゃいだ声を出してしまった。
「本当!?」
「ホント、ホント。さぁ、リビングにいこう」
「あれ?でも今日は私は来ないと思ってたんじゃ……」
「そんなこと言ったっけなぁー」
「いった」
「まぁまぁ、細かいことはきにしない。
早くしないとアイスが溶け―――あっ」
お姉ちゃんの間抜けな声がしてすぐに、私の肩にアイスの塊が落ちてきた。
紫色のアイスが服にシミをつくっていく。
「う、うわー!?冷た!!というか、汚い!!」

「わわわ、は、早く洗わないと!!」
「え?ちょ、うわぁっ」
お姉ちゃんに抱き抱えられる。
「お、お姫様……」
「ほぉへぇんへぇ、みぃ」
そんなカッコよすぎることをやってくれたお姉ちゃんは、アイス棒をくわえていた。

あぁ、この人はどうしてこんなんなんだろう……

本当、お姉ちゃんは面白いなぁ―――



(おわり)

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最終更新:2009年08月14日 21:59