算数の宿題を抱えて私が勢い良くゆみ姉の部屋の扉を開くのと、中で「ひゃっ」と小さく悲鳴があがるのが同時だった。
ベッドの上に座っていたゆみ姉は目元を押さえている。
良く見るとその目は赤く充血していて睫毛は濡れていた。
まばたきすると、その大きな瞳からひとしずく。
溢れて頬を伝う。
「ゆみ姉?・・・どうしたの?」
毎年、必ずこうして1年に1回はゆみ姉に会うけれど泣いてるところなんて初めて見た。
しっかりしていて隙なんて見せないクールビューティなゆみ姉もこうして一人で泣く夜があるのか、と素直に驚いた。
というか。
いつもの黒ブチ眼鏡を外して、少し赤い顔をしているゆみ姉は何だかあどけなくて無防備で。
でも18歳という年齢を感じさせるくらいには色っぽかった。
私の鼓動は早くなる。
「ゆみ姉・・・・?」
やっとこちらに気付いたゆみ姉は何故かキョトンとして私を見た。
「え?ああ、こより?ごめん、眼鏡ないとあたしほんとに分かんなくって。・・・どうかしたの?」
「どうかしたの、はこっちのセリフだよ!泣いてるなんてゆみ姉らしくないよ。・・・何かあったの?」
私が心配そうに尋ねると、ゆみ姉はやっぱりキョトンとして3秒くらい固まった。
そして、今度は豪快に笑いだした。
「あははは。もう、こより面白いんだから。コレね、目薬よ目薬。ドライアイ用でね、ちょっとしみるからさ。」
言い終わってまた笑いだす。
なんだ、私の早とちりだったのか・・・
ほっとした反面、本当に面白そうに笑うゆみ姉がちょっとムカつく。
「何よ、心配して損した!」
おもいっきりそっぽを向いてやる。
するとギシッとベッドが音を立ててゆみ姉が立ち上がったのが分かった。
そして、ゆっくり足音はこちらに向かってくる。
直後、私は大好きな温もりに身体中包み込まれた。
耳にゆみ姉の吐息がかかる。
「心配、してくれたんだ?ありがと、こより。」
ゆみ姉はふふっと笑う。
ゆみ姉はずるい。
だってこんな風に抱き締められるだけで私は胸がきゅーっとなって苦しくなるのだから。
でも。
さっきの光景がふと思い出される。
眼鏡を取って、泣いているようだったあどけなくて色っぽいゆみ姉。
――可愛かったな
なんて。
普段とのギャップがおかしくて、思わず私はくすくす声をあげて笑ってしまう。
「何急に笑ってるのよ。」
「別に。ただ、ゆみ姉って可愛いひとだったんだなぁって思ってさ。」
「なっ何いってんのよ///」
あ、ゆみ姉ちょっと照れた。顔が見えなくても声色で分かる。
そのことが何だか嬉しくて。
私はくるっと振り返って、思った通り少し赤い顔をしていたゆみ姉に唇に自分のそれを優しく押しあてた。
END
最終更新:2009年08月14日 22:01