先日、とうとう幸子のやつも初体験しやがった。
相手は合コンで知り合った大学生だとか。
サッカー部の橋本くんはどうした、尻軽め。
これで仲間内のヴァージンは私だけになってしまった。
まだ高校生ですよ、みなさん。
私だってもてないわけじゃない。言い寄ってくる男の1人や2人いる。
でもしょうがないじゃないか。全然まったくちっとも興味がわかないんだから。
そりゃ性的な行為に興味がないわけじゃない。
ただ私の場合は大っぴらに話せないというか……。
12歳前後の女の子にしか欲情できません、なんて。社会的にまずいというか。
だけどやっぱり興味はあるわけで。
まあだからこそ、1人でお祭りなんかに来ちゃったりして。
こういう時はナンパの成功率があがる……と、遊び人の田中くんが言ってました。
でも田中くんはウソつきだ。10人声かけて1人も相手にしてくれない。
そもそも1人で歩いてる女の子なんかいやしない。
2、3人連れの子を狙ってみるものの、成果はさっぱりだ。
せっかく出店でなんでも買ってあげようと思ってたのに、へこむ。
それとも私は、そんなに怪しく見えるんだろうか。
……見えるか。
もう帰ろうかな。
道端にしゃがみこんで、ぼんやりと眺める。
バカップルの多いこと……いいなあ。
ふと、隣からの視線を感じて顔を上げる。
ポニーテールに細い手足、くりっとした大きな目の女の子がこちらを見ていた。
あ、かわいい。
でも惜しいな。たぶんあと3年くらいしたらストライクゾーンなのに。
だけど、よれよれのトレーナーにほつれの見えるミニスカートという格好はどういうわけだろう。
ちょっと腑に落ちない。
おめかしして遊びに来たという感じでは絶対ないな。
「1人なの?」
気づくと話しかけていた。
女の子は特に驚くでもなく、「うん」と短く答える。
「楽しそうだったから……でも来なきゃよかった」
「あは、私もおんなじこと考えてたとこ。お嬢ちゃん、なんてお名前?」
「日向子」
「お年は?」
「10歳だよ。ねえ、これってナンパ?」
「えっ」
「お姉さん、さっきからこどもばっかり声かけてたよね」
「み、見てた?」
「見てた。かわいい子ばっかりだったね」
「かわいくなきゃ声かけないもん」
「そっか。ナンパだもんね」
「うん……って、意味わかってんの?」
「エッチなことするんでしょ?」
「な……」
なんてストレートな子だ。
身も蓋もない。
たしかに、できればエッチなことだってしたいけど。
こういうの初めてだし、そんな露骨に言われると困る。
「……変なの」
日向子は私の隣にしゃがみこみ、綺麗な瞳をきらきらさせた。
「ナンパって男が女にするもんだと思ってた」
「うん、お姉さんは変なの」
「へえー」
好奇心に満ち溢れた様子である。
危ない。いろいろと教えてあげてしまいたくなる。
「ね、変なお姉さんはなんて名前なの?」
「ゆかり。縁日の縁でゆかり」
「縁結びとかの縁?」
「そうそう」
「いい縁があるといいね」
「ホントに」
可愛らしいことを言う日向子に、思わず頬が緩む。
人懐こい子だな。寂しいのかな。1人だし。
「日向子ちゃん、お友だちと一緒に来なかったの?」
「うん、いないもん」
うわー。地雷、踏んだかな。
顔をしかめた私に、日向子は薄く微笑んだ。
「わたしとは遊んじゃいけないんだってさ」
「なんで」
「うーん……なんでだろ。貧乏だからかな。クラスで物がなくなるとわたしのせいになるくらいだからね」
「なにそれ、ひどっ」
「わたしのお母さん、あちこちで評判悪いから。あれの子どもならしょうがないってよく言われるよ」
「んなっ」
親のしたことと子どもは関係ないでしょ!
私はその怒りをすんでのところで喉の奥に押しこめた。
この子相手に叫んだってしょうがない。
「むかつくね」
代わりにそれだけつぶやく。
「慣れたよ」
慣れたって、慣れたって……そんなわけないじゃん。
子どもにそんなこと言わせるって、なんなんだ。
頭にくる。腹がたつ。イライラする。あー、やだやだ。
「日向子ちゃん、たこ焼き食べない?」
私は立ち上がり手を差し伸べた。
「わたし、お金もってない」
少し恥ずかしそうにうつむく日向子を引っ張って、強引に立たせる。
「おごってあげる」
「どうして?」
「日向子ちゃんがかわいいから」
「それってナンパ?」
「ダメ?」
「エッチなこと、するんでしょ?」
日向子私の手をきゅっと握りしめる。緊張してるみたいだった。
だから否定しようと思ったのだけど、下心は抑えようもなかった。
我ながら正直者。
「今日はいいよ。えっと……あと2年くらい、たったらね」
「2年も?」
「予約よ、予約。日向子ちゃんは私のだって、唾付けとかないと」
「わたし、ゆかりさんの?」
なんでか日向子は、私の腕にしがみついてくる。
たこ焼きが嬉しいのか、エッチが先延ばしになったのが嬉しいのか、よくわからない。
「育てる楽しみがあると思えばなんてことないわ、2年くらい」
「そうなの?」
「そうなの」
お人形さんみたいに無垢な顔した日向子が下から覗きこんでくる。
やっぱり、チュ-くらいは前払いでもらっておいてもいいだろうか。
早くも自分の発言に自信をなくしつつ、私は日向子の手を引いて屋台を目指した。
最終更新:2009年08月14日 22:14