本日の都内の天気
曇り、ときどき雪。
ところによっては濃い霧が出るでしょう。
急な落雷や泥、溶岩にもご注意ください。
◆
東京二十三区は北西に位置する板橋区。住宅地の付近に屹立する給水塔に、ひとつの影が降り立っていた。
武骨な蒼の鎧で覆われた幼い矮躯。遥か上空の雲から時折漏れる陽光を浴びるそれは、まるで湖面のようにきらきらと煌いている。
影の正体は竜のランサー、
メリュジーヌ。
彼女は眼下に広がる街並みに視線を向ける。
聖杯戦争がついに前奏を終え、本戦を迎えたというのに、街は平穏を保っているように思えた──少なくとも、今のところは。まだ。
辺りに視線を巡らせてみても、剣呑な箇所は見当たらない。
しかしメリュジーヌは、この付近に聖杯戦争の参加者が潜伏していると考えていた。
正確に言うと、その推測は彼女のマスターであるハルゲントによるものだ。
彼は予選期間中、日夜拠点に引き籠り、顰め面で電子端末と悪戦苦闘を繰り広げていたのだが、その甲斐あってか目ぼしい情報をいくつか拾えていた。
都内に突如として現れた電鋸頭のヒーロー『チェンソーマン』や、勢力を急激に伸ばしつつある不良集団『関東卍會』といった、今や東京を生きるものにとって一般常識と言えるほどに名の知れた存在については勿論のこと。
童女と共に出没する黒騎士や、刀を携えて夜道を歩く金髪の麗人といった根や葉があるのか疑わしい怪異譚に至るまで──慣れない電子機器を駆使してかき集めた情報は多岐に渡る。
噂話は殆どが話半分に聞き流されそうな街談巷説だったが、中には信憑性を伴って語られているものもあった。
そのひとつが、板橋区の魔法少女だ。
──見たまえランサー。複数の情報源に裏付けを取った上で確証を得た、有力な情報だ。
拠点にてハルゲントが電子機器の画面を示しながら少し得意げな表情で言っていたことを、蒼の槍兵は思い出す。
彼曰く、板橋区の住宅地を中心とする一定の範囲内で、魔法少女が人助けをしている光景が何度か目撃されていたらしい。
どうして少女ではなくわざわざ魔法少女と言い切られているんだ? と不思議に思ったが、黒い衣服に身を包み、とんがり帽子を被って空を飛んでいたからだと聞いて、呆れた。
そりゃ魔法少女そのものだ。
聖杯から与えられたステロタイプな現代知識しか持ち合わせていないメリュジーヌでも、納得せざるを得ない。
この『異界東京都』において、そんな目立つ格好で目立つことをしでかす輩は、十中八九聖杯戦争の関係者だろう。
しかも、やっていることが聖杯戦争に関係ない人助けだなんて……、暢気すぎる。遊びに来てるのか?
隙を晒してお待ちしておりますので誰でも襲いに来てください、と言っているも同然じゃないか。
……一応、魔法少女の側に立ってフォローすると、隠蔽工作らしきものを施した形跡もあるらしい。
見た目の派手さの割に目撃談が異様に少ないのが、その証拠だ。
きっと彼女なりに気を使って、自らの活動が露見する手がかりを限り限りまで減らしていたのだろう。
そうでなければ、こんなエキセントリックの塊みたいな人物、前奏の段階でハルゲントがとっくに把握していたはずだ。
──ああ。その通りだ。そして実際、数少ない目撃例を私より先に聴き付けた者がいたのだろうな。
そう言ってハルゲントが示したのは、ニュースサイトの記事だった。数日前の深夜に板橋区内のとある路地裏がまるまるひとつ吹き飛んだ、と報じられていた。現場からは都内在住の女子高生の遺体が見つかっている。事故の原因としては目下、ガス爆発が疑われており、東ガスの責任者が取り調べを受けているらしい。
夜分遅くに起きた不審な破壊から、サーヴァント同士の交戦を連想するのは、考えすぎではあるまい。
それに板橋区で事件が起きている以上、件の魔法少女が関わっている可能性は大だ──そして。
ハルゲントが持ち出した資料によると、路地裏の事件以降、魔法少女は一度たりとも目撃されていない。
元から少なかった目撃例が、完全にゼロになっている。
聖杯戦争の最中であっても頑なに続けていた人助けを、まったくやらなくなっているのだ。
それが意味することはつまり。
──死んだんじゃない?
ハルゲントの報告を聞いた当時、メリュジーヌは率直な推論を言った。
──うん。うむ。私も、その可能性が高いと考えている。
頷くハルゲント。
悪目立ちしていた参加者があっさりと倒される。バトルロワイアルの定石のような展開だ。そこに意外性や驚きは欠片もない。
しかし、それならそれで疑問が残る。
魔法少女を倒した何者かは、今どうしているのだろうか?
魔法少女と相打ちになった?
あるいは次なる敵を求めて他の区に移動した?
液晶画面越しでは、探れる範囲に限度がある。
これ以上知りたければ、現地に赴くほかあるまい。
それに──だ。
あくまで魔法少女は死んだ可能性が高いだけで、確実に死んだとは言い切れない。
『目撃されない』と『存在しない』は、必ずしもイコールで結ばれるとは限らないのだから。
襲ってきた敵を返り討ちにした後で雲隠れした、なんて可能性も考慮しなければならないはずだ。
そんな低い可能性にまで思いを巡らせるのは、些か考えすぎかもしれないが、これまで周到かつ悪辣な鳥竜(ワイバーン)を何体も相手にしてきたハルゲントにとって、やって当然の想定である。この程度の警戒心を有していなければ、彼は鳥竜(ワイバーン)狩り一筋で黄都第六将の座を得ていない。
──……奴らは路地裏の事件を境に、それまで余裕を持っておこなっていた遊びをぱったりとやめて、影を潜めているのかもしれない。
──子供じみた遊びから、戦争への積極的な参加に、スタンスを大きく変えた……ってことかい?
──ああ、うん。そういうことだ。……むう。しかし。
ハルゲントは眉を顰めて言った。
──そうなると厄介だ。なぜなら、
メリュジーヌの回想はそこで打ち切られた。
彼女の意識が数分前の過去から現在へと引き戻されたからだ。
周辺の空気が、いつの間にか白く濁っている。
この気象現象は──
「霧……?」
咄嗟に「ありえない」と判断する。
早朝ならともかく、時刻はとうに正午を過ぎていた。今日の天気が曇りとはいえ、太陽が一番高い位置にあるこの時間帯に、霧の自然な発生条件が満たされるとは思えない。つまり、この不自然な霧は、なんらかの魔術か道具を用いて生み出さ視界の端で鋭利な光が瞬いた。
「ッ!?」
刃物が投擲されたのかと思ったが、違った。
飛来してきたのは刃物よりももっと悍ましい攻撃──呪いである。
何千何百人の怨念が凝縮し、可視化したかのような黒の瘴気。それが突如として出現し、霧によって純白に染まりつつある風景を切り裂きながら、メリュジーヌ目掛けて駆け抜ける。
間近に迫る黒の瘴気を目にし、メリュジーヌは先ほど回想していたハルゲントの台詞の続きを思い出した。
──しかし、そうなると厄介だ。なぜなら……竜族であれ、人族であれ、余裕を捨てた相手ほど、油断ならない敵はいないのだから。奇襲に躊躇が無くなり、最初から出し惜しみをせず全力で立ち向かってくるぞ。
「……君が言っていた通りだったな、マスターッ!」
今から飛んで避けられるか? 無理だ。飛行速度が足りないからではない。空中最速の竜に所縁があるメリュジーヌは、たとえ音速を越える攻撃であっても、その起こりを見てから避けることが可能だ。しかし今、彼女に害を為さんと迫る黒い瘴気は、銃弾や投げナイフといった物理的な範疇に収まる攻撃ではない。
それは呪い。
条件を満たすことによって威力が跳ね上がり、因果を捻じ曲げて必中の効果を得る術式だ。
メリュジーヌを取り囲む霧が、条件をいくつか満たした敵の領域である以上、これを避けることは不可能である。
故に当然の結果として、正体不明の襲撃者が放った呪いの一撃は、蒼の槍兵に命中した。
全身を走る衝撃に、体がぐらりと揺れる。
しかし──
「……ふふっ」
メリュジーヌは笑った。
その表情には、身を蝕む呪いに対する恐怖も、怯懦も見られない。
「ふはっ、あはははっははははははははははははははははははははははっはははははははっ!」
笑う、笑う、笑う──大声で、笑う。
かわいらしい声でありながら、その音量は絶大。
まるで竜の咆哮のごとき大音声が霧を震わせ、空間を軋ませる。
その佇まいから見て取れるように、蒼の槍兵は呪いを真正面から浴びたにもかかわらず、戦闘不能に陥っていなかった。
「はははっ──いいね。最初から大技を仕掛けてきたか!」
メリュジーヌのクリムゾンの瞳が、霧の向こうにいるであろう敵を睨む。
その双眸には生気が漲っており、呪いを受けたばかりだとは思えない。
それもそのはず。
冠位の竜であるアルビオンの細胞から生まれ落ち、ブリテン最悪の魔女であるモルガンから妖精騎士の名を賜ったメリュジーヌは、その存在そのものが神秘の塊。
凡百のサーヴァントとは格が違う。
言うならばトップサーヴァント。
そんな彼女が──全ての条件を満たした十全なものだったり、あるいはモルガン本人から放たれたものだったりしたのならともかく──この程度の呪いで戦闘不能に陥るわけがない。
人なら殺せたかもしれないが──竜は殺せない。
「本戦開始直後の初陣だ。景気づけになるよう、こちらも派手にいこう」
蒼の槍兵は両の拳を握り、構えを取った。
最強が、迫る。
◆
室田つばめは奇襲の失敗を悟った。
動揺で息が乱れる。いま自分の頬を濡らしてる液体が、肌に付着した霧か、冷や汗なのかさえ定かでない。
焦りすぎたか。否。これが最善策だったはずだ。
あのサーヴァントは元から確固たる意思を持ってこのエリアを訪れている様子だった。都内を無作為に散策していたら偶然通りがかっただけ、なんて風には見えない。
おそらく先日のバーサーカーとの一戦を聞きつけて、どこかからやってきたのだろう。
奴の狙いがこのエリアにあるのが明白である以上、ここを拠点としているつばめたちと会敵するのは時間の問題だ。それでもジャックの宝具が十全に効果を発揮できる夜になるまで隠れ続ける案があったが、その案は敵の姿を一目見た瞬間消えた。
聖杯戦争のマスターは、サーヴァントのステータスを視認することができる。つばめの目に映ったメリュジーヌのステータスは圧倒的だった。加えて、竜の炉心をその身に宿すメリュジーヌは全身から絶え間なく生体エネルギーを発露しており、その有様はまさに恒星。前奏段階から風の氏族長が彼女の存在を感知していたのも納得の存在感だ。あんな目立つサーヴァントが外をうろちょろしていれば、つばめたちが戦わずとも、血気盛んな他所のサーヴァントが察知して、いそいそとやってくるかもしれない。
隠れ潜む戦いをメインとするアサシン主従にとって、大乱戦に繋がりかねない火種は、断じて同じエリアに長時間いることを許容できる存在ではない。
アイツはマズい。
短期決戦で終わらせるしかない。
そう考えた結果、先ほどの奇襲がおこなわれ、そして──失敗に終わったのだ。
「ハイアングル──」
つばめが被る魔女のとんがり帽子。その庇に隠された上空から声が響く。咄嗟に上を向く。視界の先でメリュジーヌが跳んでいた。
右の拳を高く掲げ、そこから伸びるアロンダイトの鞘をヘリコプターのプロペラのように高速で回転させている。そうすることで、とてつもない推進力を生み出しているのだ。
「──トランスファー!!」
叫びと共にメリュジーヌがおこなったのは、非常にシンプルな攻撃だった。先程の意趣返しのように呪詛を放ったのでなければ、何条もの光線を発射したのでもない。
ただの落下。
飛び蹴りだ。
たったそれだけで──地面が爆ぜた。
轟音が鳴り響き、世界が揺れる。あまりの衝撃で、近場に植えられていた街路樹は根元から吹き飛んだ。着地点を中心として発生した暴力的な風圧に全身を叩かれながら、つばめは帽子の鍔をおさえつつ、自身のサーヴァント──ジャックザリッパーを庇うように抱きかかえる。
メリュジーヌの飛び蹴りが見当違いの場所に落ちてくれて助かった。何もない地面にぶつかっただけでこの威力。もしこれが自分やジャックに直撃していたらと思うと、ぞっとする。
「くっ……!」
悔しさに唇を噛みながら、ズレかけた帽子を被り直すつばめ。
見れば、先ほどのメリュジーヌの攻撃(ハイアングルトランスファー?)で発生した爆風により、あれだけあった霧が八割ほど吹き飛んでいた。これでは丸裸も同然だ。
「一旦退くぞ!」
つばめは右手でジャックを抱き寄せたまま、左手に握っていた箒に跨った。
それはただの箒ではない。
魔法の箒。『ラピッドスワロー』。
それに乗った室田つばめ──魔法少女トップスピードは、絵物語の魔女のように自由自在な飛行を可能とする。
「逃げられると思ってる?」
晴れつつある霧の向こうから、妖精騎士の声が響く。
メリュジーヌは逃亡を図る獲物を追いかけるべく、飛行を開始した。一秒未満でマッハに到達できる彼女の飛行速度があれば、最新鋭の戦闘機とのかけっこだって楽勝だ──だが。
「……ッ!?」
メリュジーヌは目を見開いて──ともすると、先ほど呪いの奇襲を受けた時以上に──驚いた。
つばめが予想外に速かったからだ。
彼女たちが飛行を始めてから三秒が経過したが、両者の距離は縮まらない。
メリュジーヌの『現在の姿』が彼女の全力ではないとはいえ、空中において竜と速度で張り合えるなんて、常軌を逸している。
敵対者の速度に驚いたのはメリュジーヌだけではない。
つばめもまた、自慢の箒に追い縋る妖精騎士に、更なる脅威を感じていた。
「アサシ──」
つばめが言い切るよりも前に、ジャックは手元にランタンをアポートさせていた。骨董品のように古びており、煤だらけで、灯りがつくかどうかさえ怪しいが、それの用途は見晴らしを良くする照明ではない。
むしろ、その真逆だ。
「『暗黒霧都』」
ランタンの内部から霧が爆発的な勢いで噴出した。
それは十九世紀倫敦、地獄じみた霧の都の再現。結界で周囲一帯を包む宝具だ。
発生する霧には硫酸が含まれており、一般人が飲み込まれれば、ただでは済まない。サーヴァントであってもステータスへのデバフを免れないし、先ほどのメリュジーヌのように霧の幻惑で攻撃の軌道をしっちゃかめっちゃかにされてしまう。
発生した霧はつばめの足跡を白く塗りつぶしていき、彼女を追いかけるメリュジーヌを呑み込んだ。
「ごめんなさい、おかあさん……失敗しちゃった」つばめの胸元に顔を埋めたジャックが、先ほどの奇襲の件を詫びる。
「謝らなくていいさ。あんな規格外のサーヴァント、俺だって予想外だ」
言いながら、つばめは更に加速した。
真昼間から爆音が鳴り響いたこともあり、地上の住宅街には何事かと慌てて外に飛び出した野次馬が何人もいたが、そのうちの誰一人として、空を飛ぶトップスピードとメリュジーヌを見たものはいなかった。
両者の速度が既に、人間の動体視力の限界を超えていたからだ。
いま、板橋区の空は魔法少女と妖精騎士だけの戦場となっており、そこに割って入れる者など、いるはずが──光が、つばめの真横を掠めた。
遅れて轟音が鳴り響き、空気が裂ける。
直撃こそしなかったものの、唐突に発生した衝撃に、錐揉み回転を起こす。魔法少女の頑丈な肉体がなかったら、確実にブラックアウトしていただろう。
「雷!?」
崩したバランスを必死で元に戻しながら、今しがた発生した気象現象の名を叫ぶ。
馬鹿な。いくら今の天気が曇りとはいえ、雷が落ちるほど空は荒れていない。
まさか、あの追跡者が放った攻撃かと思ったが、幻惑の霧に呑み込まれている彼女が、つばめたちにニアピンな攻撃を放てるはずがない。
ならば、この現象にはどう説明をつける?
つばめは首から上だけを背後に振り向かせた。ジャックザリッパーのマスターである彼女は、『暗黒霧都』の硫酸による侵食や幻惑効果はもちろん、霧そのものの視覚妨害すら例外的に受け付けなくなっている。そのため視界は非常にクリアになっていた。
まず目に映ったのはメリュジーヌ。追跡者である彼女も、先ほどの雷撃の余波を浴びたのか、ややバランスを崩した危なっかしい飛行をしていた──そして、その更に後方。
霧の外側。
そこに、なにか、いる。
「……………………悪、魔?」
『それ』が背に生やした翼の禍々しい形状を目にし、つばめが連想したのは地獄の住民の名だった。
『地獄より』の一文で知られるジャックザリッパーの前に悪魔が現れる。なんともおあつらえ向きの展開だ。
だが実際は違う。現れたのは悪魔ではない。
それは鳥竜だった。
三本の腕を生やし、その内の一本にマスケット銃を握った、異形の中の異形。
「…………、雷轟の魔弾」
鳥竜は今し方撃った魔具の名を呟いた。
──それは欲望の果てに竜の領域さえ凌駕した、空中最速の生命体である。
◆
星馳せアルスが
オーロラから念話を受け取ったのは──“風の報せ”を持つオーロラは、その影響で通常のマスターよりも遥かに長大な念話距離を持つ──、彼ひとりで拠点を離れ、都内北西部を散策していた時のことだった。
『会場の中心にお城のような建物があるでしょう? 国会議事堂っていう、国作りの要所。あそこがね、迷宮になっているみたいなの』
関東卍會という組織がある。
現今の『異界東京都』において、最も勢力の強い不良集団だ。
その構成員のひとりと遭遇したオーロラは、とある情報を得ていた。
それが『迷宮化した国会議事堂』である。
まともな神経をしている者なら鼻で笑いそうな与太話だが、アルスはそれに食いついた。
『迷宮……?』
『ええ。関東卍會(かれら)の首領に召喚されたサーヴァントが魔術で作り上げたらしいわ』
できることなら、より詳細を知りたかった。
具体的にどういう迷宮なのか? 内部の構造は? 配置されている迎撃設備は? 衛兵の数は何人ほど? その防衛体制にどこか穴はないのか? ──しかし、それを探るのは不可能だった。
オーロラほどの妖精が力を振るえば、たとえ弱体化した現在であっても、脆弱な人間ひとりの意思くらい好きなだけ好き放題できるのだが、関東卍會の不良は違った。
おそらく、精神に魔術的な防衛をかけられているのだろう。搾り取る情報がある一定のラインを超えようとしたら動作不良を起こしたので捨てた。
『他人のお城を勝手に奪うどころか、迷宮に変えているなんて、どう考えても危険でしょう?』とある資産家から平和的に譲り受けたタワーマンションの一室で、有名な海外ブランド産の座椅子にゆったりと深く腰掛けながら、オーロラは念話で告げた。『同じ会場にそんな不穏分子がいるなんて、到底許容できません。このまま放っておいたら、私たちにとっては勿論、この会場にとっても有害な存在になるだろうし、早急に潰しておくべきなんじゃないかしら』
『……そういう判断は……おれには、よくわからないよ。──だけど…………、迷宮は、少し気になるかな』
アルスは言った。
それは平時と変わらない陰鬱な小声だったが、彼をよく知る者が聞けば、その心中にある好奇心を察せられる声音だった。
『それじゃあアルス、議事堂に──』
『うん……、行ってみる』
既に攻略されたものを除き、ゴールが空っぽの迷宮なんて存在しない。
迷宮が迷宮として防備を固め、内部を入り組ませ、番人を配置し、攻略難度を高めているのは、その最奥に重要な何かを秘めているからだ。
国会議事堂の場合、最奥にあるであろう『重要な何か』とは、そこを占拠した主従になる。それ自体には興味がない。
しかし、迷宮を作るほどの実力を持つサーヴァントが有する宝具──これには興味がある。とても。すごく。かなり。実に。非常に。
『……そこには、いったい何が……あるんだろうね』
『あら、それだけなら分かるわよ』
サンプルがひとりしかいないとはいえ、『彼女』の魔術を浴びた卍會の不良と接したオーロラは、知っている。
懐かしいブリテンの神秘を色濃く滲ませる術式。冬のように冷たい魔力。そんなものを自在に扱り、大規模な迷宮の作成すら可能とするレベルの魔術師なんて、オーロラが知る限りひとりしかいない。
ブリテン最悪の魔女──
モルガン。
『それにしても──』
国作りの施設の支配者について自分が知っている情報をアルスに伝えている最中、オーロラはふと呟いた。
『また国を作ろうとしているなんて、よっぽど好きなのねえ。私と同じように、汎人類史で新しい生活を始めるつもりなのかしら?』
その後、オーロラから命を受けたアルスは、国会議事堂がある千代田区へと真っ直ぐに飛翔していたのだが、その中途で横切ろうとしたとある住宅地で羽を止め、視線の先を飛ぶトップスピードとジャックザリッパー目掛けて、歩兵銃から雷轟の魔弾を撃ち放っていた──そんな風に説明すると、まるで彼が、戦いがあると知るやいなや後先考えず喜び勇んで殴り込む戦闘狂みたいに思えるがそうではない。
そんな血気盛んな性格と対極にいるのが、星馳せという冒険者なのだから。
空中最速の妖精騎士と空中最速の魔法少女のデッドヒート程度では、空中最速の鳥竜が迷宮に向けている興味を惹き付けられない。
冒険者の興味を惹くのはいつだって、宝だけだ。
そしてその宝は、板橋区の空にもあった。
毒と幻惑に満ちた霧を噴出するランタン。『暗黒霧都』。
ジャックザリッパーの宝具であるそれが使用される場面を目にした強欲な鳥竜は
「あの宝が欲しい」
と思った。
ただそれだけを理由に、まるで外出中にふと空を見上げたら見つけた珍しい形の雲にスマートホンのレンズを向けるような感覚で、マスケットの銃口から雷撃を放ったのである。
そして今、アルスはつばめたち目掛けて更なる追撃をすべく、次弾を装填した。
一撃目は邪魔な霧を払うため。そして次の攻撃で決着を──
「…………ん」
再度マスケットの照準を合わせたところで動きを止める。自分とつばめの間に立ち塞がるようにして、影が浮いていたからだ。まだ『暗黒霧都』の霧が少し残っているため、その全貌は分からないが、シルエットだけで判断するなら 人間の子供のように見えた。
「……そこにいると、邪魔になるんだけど」
「邪魔してるんだよ、こっちは」
影は答える。
「先ほどの攻撃から、君の実力の高さは明らかだ。そんなサーヴァントを背中に感じながら、あの魔法少女たちを追い掛けるのは、さすがの僕でも面倒くさい──だから、優先順位をつけさせてもらうことにした」
「…………」
アルスは何も言わず、ただただ気怠そうに引金を引いた。
こうして、竜と鳥竜の戦いは幕を開けたのだった。
◆
雷轟の魔弾。
雷そのものを射出するそれは、威力も射程も、対城宝具に匹敵する。
サーヴァントひとりで受け止められるような代物では無い。
しかしメリュジーヌは、稲光の速度で迫る攻撃に、抵抗の意思を見せた。
「『今は知らず、無垢なる湖光』」
妖精剣アロンダイト。
汎人類史において円卓最強の剣士が振るった武器である。
自分の外皮と魔力からそのレプリカを精製したメリュジーヌは、目と鼻の先に迫る魔弾目掛けてそれを思いっきりたたきつけた。
メリュジーヌの迎撃を受けた雷は、鉈を振り下ろされた竹の如く縦に裂け、それぞれ明後日の方向に飛んでいく。真昼の空に鳴り響く雷鳴は、二体の最強の衝突を示すゴングのように聞こえた。
妖精騎士はアロンダイトを突き出した勢いのまま前に飛ぶ。
先の魔弾との衝突で霧は殆ど吹き飛んだ。あとはこのまま、外気に弱いアロンダイトが霧消する前に魔弾の射手を仕留めるだけだ──そんな風に考えながら僅かに残っていた霧を、完全に飛び出す。
その先に待っていたのは、視界いっぱいの炎だった。
「地走り……」
上空から響いたアルスの声と共に、灼熱がメリュジーヌを飲み込む。
「……自慢することにしてるんだ。これから……殺すやつにも」
地走り。地形に沿って走る超高熱の炎だ。
地形なんてあるはずもない空中戦において、まず使われないはずの魔具だが、それをアルスは地走りを取り出す壺から地面までの落下ルートにメリュジーヌを巻き込む形で、使用していた。
マッハを超える速度で三次元的に飛翔するメリュジーヌにこれを狙って当てるのは至難の業であるはずだが、彼はそれを当然のようにやってのけたのである。
無論、妖精剣の素材になるほどの外皮を持つメリュジーヌが、この程度の炎で痛手を負うことはない。
「雷だけじゃなく、炎まで使うのか!」
「……泥も、あるよ」
メリュジーヌとすれ違った地走りが、重力に従って下界に落ちていく。その時点でアルスの次の攻撃は完了していた。
「腐土太陽」
表面に孔が幾つも開いた土塊がアルスとメリュジーヌの間の座標に設置される。それは無数の泥を射出し、メリュジーヌが顔を上げるよりも早く、アルスの姿を覆い隠した。飛び出したのはただの泥ではない。高い圧力を付加され、刃や弾丸に成形された泥だ。
まるでひとつの軍隊が一斉に放ったかのような絨毯爆撃が、ただひとりの妖精騎士へと殺到する。ここは空中であり、遮蔽物になるようなものはない。
メリュジーヌは再びアロンダイトを精製すると、泥の大群に向かって刃を走らせた。
「カットライン──ラーンスロットォ!!」
超高速の飛翔と超高速の剣閃が混ざった残像が、泥の中で光る。
体内で大量のアロンダイトを精製してはストックし、展開しては斬り、霧消しては展開し、展開しては斬りの繰り返し。
全ての泥を斬る必要はない。避けられるものは避け、避けられないものは裂けばいいだけだ。べつに、魔力で強化した鎧で受けてもいいし、それが一番楽なのだが、何が含まれているのか分からない泥にその選択はなるべくしたくない。それにそれは、あまり最強の騎士らしくない行動だし。
カットラインランスロットで腐土太陽の猛攻を文字通り切り抜けたメリュジーヌは、いよいよ敵対者の顔を見ようとし──
「……っ!?」
──再び地走りの炎に飲み込まれた。
まさか、アルスは地走りを複数持っていたのか。そんなはずはない。もしそうなら、もっと早く落としているはずだ。それに今回の地走りは、アルスがいるのとは真逆の下方から、メリュジーヌを襲っていた。
ならば考えられる可能性はひとつしかあるまい。
地走りが、空を走って戻ってきたのだ。
まずは地上にある標高が高めの建造物の壁面を走り、そのままてっぺんから空中に飛び出る。そして、その先にある、メリュジーヌから外れて落下中の泥の弾丸に空中で着地。一瞬後にはそれより少し上にある泥に飛び。さらにその一瞬後にはまた別の──それをひたすら繰り返し、メリュジーヌの元まで帰ってきたのである。
腐土太陽によって攻撃しながら地走りが走るための道を作るとは、いったいどれだけ深く魔具に慣れ親しめば、こんな曲芸じみた芸当が可能になるのだろうか。
もちろん先述した通り、地走りではメリュジーヌに致命傷を負わせられない。
だから、アルスが勝負に出るとしたら──予想外の炎でメリュジーヌが隙を見せた直後だ。
「ヒレンジンゲンの──」
ジュヂィッ、という音と共に、それは抜刀された。
「光の──」
雷よりも、炎よりも強烈な光が、メリュジーヌの視界を埋めつくす。
瞬間、メリュジーヌの竜としての本能が叫ぶ。あの攻撃は絶対に食らうべきではない、と。
それは最強を自負する彼女にとっては非常に珍しい警鐘だったが、だからこそ彼女は、それをすぐさま信じ、瞬く間にアロンダイトを再精製した。
「魔剣」
「『今は知らず、無垢なる──』」
魔剣と妖精剣が正面からぶつかり合う。
メリュジーヌが人から掛け離れた竜の妖精の身体構造を有していなければ、目が焼けていてもおかしくない光量を、魔剣から伸びる十メートルの剣身は放っていた。事実、彼女はこれだけ近くにいる魔剣の持ち主の姿すら、光に邪魔されて視認できていない。
汎人類史におけるアロンダイトは、決して刃こぼれすることのない伝説の剣として知られており、メリュジーヌが自身の外皮と魔力を組み合わせて模倣したレプリカもまた、オリジナルには及ばないものの、(外気に触れて霧消するまでの僅かな間だけだが)それなりの強度を有する。
だが、その程度では足りない。
竜鱗すら容易に切り裂く魔剣と、対等に打ち合えるはずがないのだ。
そして最強の妖精騎士は、魔剣が放つ眩い光を一目見て、その程度のスペック差を理解できない愚か者ではない。
だから──そこにさらに加重する。
「『──過重湖光』!」
元から構成要素に魔力を多量に含むアロンダイトにドラゴンハートから放出した魔力を更に上乗せする。その一撃が、どれほど桁外れな威力をしているかなど、言うまでもあるまい。
ふたつの剣が交差し、激突点を中心に球形の凄まじい衝撃波が発生する。二体のサーヴァントは互いに逆方向に弾かれた。
メリュジーヌは空中でバランスを取り戻し、アルスがいるであろう方角を向く。パン。パンパン。三発の銃声。同数の弾丸が飛んできた。鎧に包まれた部分ではなく、外気に晒されている僅かな地肌を的確に狙っている。空中で繰り広げる立体的な攻防の最中、針の穴に糸を通すような狙撃を当然のようにやってのける狙撃手はいったい何者なのだ。
先の雷轟の魔弾とは違い、今回は見た目こそ普通の弾丸に見える。
だが、これまで理外の魔具をいくつも見せてきた狙撃手が、まさか今更何の変哲もない武器で攻撃してくるはずがない。
そんな信頼にも似た感情に基き、メリュジーヌは迫る弾丸を回避する。
「ヒレンジンゲンの──」
再び、光が世界を塗り潰す。
メリュジーヌが避けた位置へアルスが先回りし、魔剣を走らせていた。ただの偶然ではない。三発の弾丸を撃った時点で、メリュジーヌが狙った場所に移動するよう誘導していたのだ。
妖精騎士は咄嗟に身を捻りつつ、アロンダイトを振り抜いた。
「光の魔剣」
「『過重湖光』ッ!」
魔剣と妖精剣の衝突。
数秒前の焼き直しのような光景だ。
きっと数瞬後にはまたあの衝撃波が発生して互いに吹き飛ばされ。また何度かの攻防の末に剣の衝突が再発し……の繰り返しになるのだろう。
だとしたら興醒めだ。もしもそうなるなら出力差で勝てる──そう考えたメリュジーヌの耳に、光の向こうから声が届いた。
「……地走り。腐土太陽」
それは走行する炎。
それは無限に湧き出す泥。
ヒレンジンゲンの光の魔剣でアロンダイトと打ち合ってからというものの、それらふたつはメリュジーヌを襲っていない。
ならば今──あれらは、どこで何をしている?
もしも。
本来なら泥を射出するために外部に向けられている腐土太陽の圧力が、内部への圧縮に用いられ。
酸素がなくとも燃焼可能な地走りが無限に圧と密度が上昇し続ける泥の中に放り込まれたら。
いったい、どうなるか?
ごぼり。
粘着質な何かが泡立つような、不快な音が聞こえた──メリュジーヌの背後から。
泥の沼地?
違う。
ただの泥沼が、こんな高熱を発しているはずがない──!
もしもアルスがヒレンジンゲンの光の魔剣によって世界を白く塗り潰していなければ、メリュジーヌは、圧力に耐えきれず沸騰し、赤熱して名前通りの太陽と化しつつある腐土太陽を発見することができていたかもしれない。
──それはかつて、ひとつの市街を一瞬にして焼き払った、ふたつの魔具の同時使用である。
「──ッ!」
このままでは腐土太陽が自身の圧力に耐え切れず爆裂し、メリュジーヌは無防備な背中に溶岩弾の嵐を浴びてしまう。かと言って回避を試みれば、どうしても隙を晒さずにはいられない。光の魔剣の所有者は、その僅かな隙を狙って致命打を放ってくるに違いない。
何よりこの位置関係は最悪だ。たとえ今、腐土太陽が爆ぜたとしても、この状況を作り上げた下手人だけは、メリュジーヌを盾に無事で済む。加えて、このまま魔剣と妖精剣の衝突が生んだ衝撃波でメリュジーヌが吹き飛ばされれば、灼熱の泥沼へのダイブに直結してしまう。いったいどんな里帰りだ。
どこを見ても絶望的な未来しか残されておらず、徹底的に詰まされている。
ここはいっそのことすべてを諦めて、潔く負けを認めるべき場面なのかもしれなかった──メリュジーヌが最強の騎士でなかったら。
「はあああーッ!! フンッ!!」
力のこもった叫び声を上げ、先ほど泥の弾丸と刃に対処した際に体内でストックしていたアロンダイトの残りを一気に展開した──背中から。
何十本もの剣が背中から飛び出すその姿は、まるで翼を広げた竜にも見える。しかし、それの目的は飛行ではない。
背後の腐土太陽を刺し貫くためだ。
ただでさえ爆発寸前の不安定になっていたところに、外部から妖精剣で文字通りの刺激を与えられた腐土太陽は、ハズレの穴を刺された黒ひげ危機一髪のように勢いよく吹き飛び、四方八方に溶岩弾と粉塵を撒き散らした。
当然、それで一番被害を受けるのは、至近距離にいたメリュジーヌなのだが、腐土太陽の本来の限界が来るよりも前に爆発を起こせた分、その衝撃と熱は軽微になっている。それに、背中から展開したアロンダイトが、そのまま盾の役割を果たしたため、メリュジーヌが負ったダメージは殆ど無いに等しい。
彼女が爆発から受けた影響なんて、背中を押されたくらいだ。
アロンダイト+魔力過重+爆発の突風。
それら全てが合わさった一撃は、光の魔剣すらも押し返す。
鍔迫り合いで負け、バランスを崩した敵対者に対し、メリュジーヌは追撃を試みたが、それが通じる相手ではない。
アルスは咄嗟に、腐土太陽の爆発で乱れた気流を乗りこなし、メリュジーヌとの距離を置く。空の支配者である鳥竜だからこそ可能な飛行である。
火山灰で視界が暗色に占められる中、ふたりは改めて対峙した。
「……。ほんと……しぶといね、あんた」
アルスは少しだけ、『鬱陶しい』という感情を乗せた声で言った。
「……退く気はないの?」
「そりゃ無理な相談だね。だって僕らは、同じ獲物を──あれ?」
メリュジーヌの口から、気の抜けた声で疑問が漏れる。
ちょっと待て。
自分は誰を追っていた?
そいつはどんな格好で、どんな武器を使い、どんな戦い方をしていた?
いや、そもそも──自分は、今の戦いよりも前に、誰かと戦っていたのだろうか?
それら全ての記憶が、綺麗さっぱり漂白されている。
やはり先程の爆発が霊基によくない影響を与えたか、と不安になるメリュジーヌだったが、記憶の欠落は、彼女だけに起きた現象ではない。
「…………? ? ……?、??」
アルスもまた、不自然な無言で、疑問の意を示していた。
──……なんだろう、これ。……変な感じ。
──…………原因を考えて、対策……しようにも、原因も分からないや。
元来、人間は失敗を完全に『なかったこと』にはできない。時を巻き戻す術を持たないからだ。
だからこそ、何か失敗をした時、人は別の事柄で成功を収め、挽回を図るのである──だが、室田つばめとジャックザリッパーの場合は違った。
彼女たちには、メリュジーヌの暗殺失敗という此度の出来事を『なかったこと』に出来る術があった。
ジャックザリッパーのスキル『情報抹消』。
対戦終了後に敵対者と目撃者の記憶から、スキル保有者の情報を消失させる能力だ。
メリュジーヌとアルスがドンパチを繰り広げている間につばめとジャックを乗せたラピッドスワローが完全に逃げ切ったことで、『対戦が終了した』と判定され、スキルが発動したのである。
──……そもそも。
記憶の欠落に違和感を抱きながら、アルスは思う。
──おれは、何のために…………ここを、通りがかったんだっけ
それだけははっきりしている。
宝を奪うためだ。
どこに? ──国会議事堂に。
それは思い出せる。
だったら、まず冒険者が最初にやるべきことはひとつしかない。
優先順位はつけられた。
「…………行かなきゃ」
「え? おい待て。どこに行く気だ。僕との戦いはどうする」
「…………ああ……。……あんたの宝は、欲しくないから……いいかな。……あんたの体から出しても、すぐに消えるんじゃ、おれには使えないし……」
「去り際になって僕の剣を貶すな! そもそも、これは僕の宝具じゃなくて──」
それ以上の言葉を聞くことなく、アルスは姿を消した。
メリュジーヌは追おうとしたが、やめた。
戦ったのは僅かな時間だが、それでも敵が尋常ではない飛行速度を持っているのは分かっている。火山灰の煙幕を抜けた先が無人なのは、見るまでもなく明らかだ。
それに今は──記憶の謎を明らかにしたい。
「……そういえば結局、最後まで姿が見えなかったな」
メリュジーヌは呟いて、地上を見下ろした。
住宅街は先ほどまでのどかだったが、今となっては破壊と混乱の様子が見える。それは全てメリュジーヌたちの交戦によって生じたものである。
記憶の空白のヒントになりそうなものはないかと視線を巡らせたが、見つからない。
仮にあったとしても、二体の最強の衝突により、まるで霧のように消えているだろう。
【板橋区・住宅街/一日目・午後】
【メリュジーヌ@Fate Grand/Order】
[状態]:疲労(小)、背中を中心にダメージ(小)、室田つばめ&アサシン主従について、現地で得た情報の抹消
[装備]:アロンダイト×たくさん
[道具]:
[所持金]:
[思考・状況]
基本方針:マスターに聖杯を渡し、彼が言う『最強』と戦う。
1:記憶喪失が気持ち悪い。
2:正体不明の謎のサーヴァント(星馳せアルス)とはいずれ決着をつけたい。
【星馳せアルス@異修羅】
[状態]:疲労(小)、室田つばめ&アサシン主従についての情報抹消
[装備]:たくさん
[道具]:
[所持金]:
[思考・状況]
基本方針:宝が欲しい。
1:国会議事堂の迷宮にある宝が欲しい。
【
室田つばめ(トップスピード)@魔法少女育成計画】
[状態]:健康
[令呪]:残り三画
[装備]:ラピッドスワロー
[道具]:
[所持金]:一般的な主婦レベル
[思考・状況]
基本方針:我が子に、しあわせを
【
ジャック・ザ・リッパー@Fate/Apocrypha】
[状態]:魔力消費(小)
[装備]:ナイフ×たくさん
[道具]:
[所持金]:
[思考・状況]
基本方針:胎内回帰
【港区・タワーマンション/一日目・午後】
【オーロラ@Fate/Grand Order】
[状態]:健康
[令呪]:残り三画
[装備]:
[道具]:
[所持金]:必要なし
[思考・状況]
基本方針:自分が一番!
1:国会議事堂の迷宮って危険じゃない? 早く潰さなきゃ……
【江戸川区・マンション/一日目・午後】
【
静寂なるハルゲント@異修羅】
[状態]:健康
[令呪]:残り三画
[装備]:
[道具]:
[所持金]:官僚なのでそれなりに
[思考・状況]
基本方針:もう一度、ただの友として、彼と。
[備考]
地走りや腐土太陽を使ったせいで地上に少なからず被害が出ています。ふたつの複合使用は、メリュジーヌがピークが来る前に空中で爆発させているので、原作よりも軽めの被害になってると思いますが、そこら辺のさじ加減は後続の書き手様に委ねます。
最終更新:2022年12月16日 18:36