大切なもの

大切なもの



~何でお前は衛士になったんだ?~


朋也は森上から質問を受けた、彼とは初めてあったときから気が合うような気がしていたが
実際彼とはある種似ているところがあるらしい。

朋也は、ああ、そうだな俺は・・・といいつつ彼にどう答えるか考えていた。
(前に渚にも同じ事質問されてたな・・・)確かあの時は・・・と物思いにふけると
森上が「どうしたんだ?ボっーとして?答えずらかったら答えなくても構わないぜ」
中村は、悪ぃと答え、あの時出した答えをそのまま彼に話し始めた。


そうあれは、俺が訓練校に入る前からの話だ・・・


「朋也、お前は母さんと同じで衛士になるのかい?」
そう、親父に聞かれた俺は、
「あぁ、俺は衛士になろうと思ってる。」

確かに衛士になる事は小さい頃から考えていた、故郷がBETAに蹂躙され
母親は、BETAに殺されてしまった。最初はBETAを殺す!母親の仇を倒す!
故郷を取り戻すと意気込んでいた・・・

しかし、年齢を重ねるにつれなぜBETA戦おうとしようとしているのか?と疑問を持ち始めた。
母親にはBETAは、この世界の敵で倒さなければならない相手であると聞いていた、
たしかに、俺は幼心にBETAを殺すと考えていたがそれはある種の刷り込み、洗脳と言ったところだろう。

この時代では彼でなくてもそのように親から聞かせられたりまた学ぶ場においてもそのように聞かされてきた。
小さい頃からそのように教われば人によってはそこまでの疑問は持たずにすむかもしれないが俺は、年を重ねるごとに、俺がしようとしている事は全て他人から教え込まれている事でひとつも自らの考えがない、

ある種、心のよりどころがない状態であった。
でも、俺はそのような事を考えつつも母親の教えを心に刻み自分に「BETAは人類の敵だ、殺すべき敵だ!」
と己が心に言い聞かせてきた。

母親がBETAに殺されて10年以上がたち、俺も衛士としてBETAと戦う事を決意し
前の訓練学校に入学した。親父もそれには賛成もしてくれたし親戚も喜んでいた、
しかし、俺はまだ(なぜBETAと戦いたいのか?)と悩んでいた。

親父は最後まで賛成は、してくれていたが「本当にそれで良いのかい?」と俺に確認をしてきた、

「ああ、俺は衛士になってBETAを殺しつくす。」

俺は、一瞬言葉につまり答えるのが遅くなってしまった、親父も
それには、気付いていただろう、今思えば親父は、俺がBETAと戦う事に悩んでいた事を知っていたのかもしれない。

そして、親父は「そうか、朋也が決めた事なら、何も言わないよ頑張って来なさい」
俺は、「ああ」と答え次の日に母親に報告するために墓地に訪れた。

「おふくろ、俺もおふくろと同じ衛士になる事にしたよ」
そう墓前に手を合わせ話かけた、ここに来るといつも心が落ち着いてしまう。
なぜなのかは、自分ではわからない。
すると、後ろから足音が近づいてきた。
誰か来たのかと思い振り向くと、親父がこっちに向かって歩いてきた、
親父は、お供えするだろう花を持ってきていた。

「朋也か、お前も母さんに報告しにきたんだね」

俺は、「ああ」と答えまた母親の墓前に振り向き親父も俺の隣に立ち、花をお供えしてから手をあわせた
しばしの沈黙の後親父が口を開いた。

「朋也は、なんで母さんが衛士になったか知っているかい?」

俺は、突然の質問に少し驚いたが

「いや、聞いたことないな。」

親父は、一言「そうか・・・」と言い
「本当は、母さんの口から話してもらうほうが良いんだけどもう出来そうにないから私が変わりに話させてもらうよ。」
そう墓前に向かって話しかけた後、親父は話し始めた。

「あれは、母さんと私が出会った頃の話しなんだけど、そのとき私は彼女の戦術機を整備する仕事をしていてね
たまたま、彼女が私に整備について聞いてきたのが始まりだったね。」

俺は、おふくろの墓前を向きながら親父の話に聞きいっていた。
「その会話の後彼女とは意気投合してね、ちょくちょく会っては戦術機のことから他愛のない会話まで時間があればしていたよ。」

「そして、私は彼女と過ごせばすごすほど彼女に惹かれていってね、もうあの時は、初々しかったね。」

「・・・それで、母さんとは結婚して、その1年後に朋也が生まれたんだよ」

不思議と長い話のはずなのに苦痛には感じなかった。
「・・・でね、一度だけ母さんになんで衛士になったか聞いてみたんだよ」

「そしたら、母さんはねこう言ったよ」

朋也は聞き逃すまいと親父の声に集中した。


「最初は、BETAを殺す、人類の敵だから倒さなくちゃならないって思ってたけどだんだんそれに疑問を持ち始めてね。」
「なんで、私はBETAと戦ってるんだろう?って思うこともあって結構悩んだな~」
「でもね、貴方と結婚して朋也も生まれて・・・わかったの・・・」


「「私は、BETAを殺すために戦ってるんじゃなくて、仲間・・ううん大切な人たちを守るために、BETAと戦って命を懸けてるんだってね」」


「私としては、朋也には平和な世界で暮して欲しいけど、たぶん今の人類じゃBETAを地球から追い出して平和な世界を創るのは無理そうだから、せめて少しでも長く安心して暮せるように私は頑張るんだ!」

話終えた親父は目頭を押さえていたがそれがわからないように務めて明るい声で
「母さんは、本当に立派な人だったよ・・・母さんが戦死した後私物と何通かの遺書が届いたんだけど、一部はもう知ってると思うけど朋也がもし衛士になるのを決意したら、見せてくれって書いてある遺書があるんだ読んでみるね。」
俺は、もう泣くのを堪えるのを我慢するだけで精一杯で、それを汲み取ってくれたのか親父が読んでくれた。


  朋也へ

 これを読んでるって事は私はもうこの世にいなくなってから、結構たってるかな?
 大きくなった朋也を見れないのはとっても残念だけど仕方ないなぁ。
 たぶん、これはお父さんに渡されたと思うけど、朋也は衛士になるのを決意したんだね。
 本当は、平和な場所で無事に暮していて欲しいけど、それは無理だよね。
 たぶん、朋也のことだから衛士になるのにすごく悩んだでしょ?
 私といっしょで悩むととまらないからね、朋也は。
 たぶん、悩みも一緒かな?私が生きてる頃は朋也に「BETAは敵、倒さなきゃいけない」 としか教えてなかったよね?
 朋也はこれに疑問を持ったと思うんだ?私も、衛士になる前とか、なった後もこれに悩んで たんだよ。
 本当は朋也自身が悩みぬいて見つけた答えを聞きたいけど、それもできないし悩んでばかり いて、BETAと戦えなく
 なったら大変だから、私が見つけた答えを書いておくね。

 「私は、朋也やお父さんそれに部隊の仲間を・・・大切な人を守るために命を懸けて戦   う!」

 これが、私が見つけた答え。これを朋也に押し付けようとは思ってないよ、ひとつの参考と して考えてくれないかな?
 朋也はどんな答えを見つけるのかな?楽しみだね、そのときはお墓の前で報告してね。
 じゃあ、私は先に逝っちゃうけど朋也は絶対についてきちゃ駄目だよ!ヨボヨボのおじいさ んになったら私の所に来て良いからね。
 それまでは、ぜ~~ったいに駄目だからね!
 じゃあ、最後に
 朋也は、私の愛した人との間に出来た大切な大切な宝物です、この世の中の何者にも変えら れない掛け替えのない宝物です。
 私は、天国で貴方の事を見守っています、お父さんと一緒にヨボヨボになるまで生き続けて ください。
 私はいつまでも貴方のそばにいます。



「これで、終わりだよ朋也・・・」
親父は、少し泣いていた、俺は・・・・

もう、嗚咽しか出ない・・・涙が止まらない、とめようと思っても溢れて来る、

「おふくろっ!なんで、死しんじまったんだよっ!!俺は、もっとおふくろと一緒にいたかったよっっ!!

一緒に話したかったよっ!!!もっと・・!!もっと・!!!おふくろにいて欲しかったよ!!!!!

もっとおふくろからいろんな事教えてもらいたかったよ!!!!!!なんでなんだよっ・・・」

俺は泣き叫びながら力なくおふくろの墓を抱きしめた・・・
親父も俺の肩に手を置き涙を流していた。

俺も、落ち着いた頃、親父が
「母さんも幸せだったと思うよ、朋也とは短い時間だったけどいっしょに過ごす事もできた・・・」
俺は、歯を食いしばりながら・・・
「そうかもしれないけどなっ・・!でもっ・・!」
俺は、またみっともなく涙を流した。
「母さんは強い人だったからね、最後の時も仲間を庇って死んでしまったらしい・・・
母さんと同じ部隊の人が教えてくれたよ・・・その人が言っていたよ母さんは英雄だって・・・
でもね、母さんは悩みぬいて見つけた答え・・・BETAと戦う理由だけは自分の命を懸けて守ってくれたよ・・・」
俺は、またみっともなく泣き続けた・・・


母さんの墓を訪れてから少し日がたった頃俺は、訓練校に入学した。

俺は、同じ分隊になった渚とは話が合い、よく二人で話をした。
出会ったときは、おとなしそうな可愛い子だった。(今でもそうなのだが・・・)
しかし、少しの時を共に過ごしてわかった事は、渚は案外頑固らしいということである。

訓練も少しずつ慣れ始めた頃、渚が

「朋也くんは、何のためにBETAと戦っているんですか?」
すると、渚が
「私は、最初お父さんが衛士だったて言うのもありますけど、やっぱり大切な人たちを守るためにですっ!」
言い終えた、渚は少し恥ずかしかったのか頬を朱に染めていた。

「そうか、いい答えだな・・、俺は・・・・」
俺は、おふくろとは少し違う答えを見つけた・・・

「「俺は、渚や親父、部隊の仲間・・・いや、大切な人を守るため・・・。そしてこの世界を少しでも平和な世界にするために戦う!!」」

言い終えた俺は、天国のおふくろに、俺も俺なりの答えを出したよ遺書どおりに墓前で報告するのは、少したってからだろうけどと
晴れ渡った青空に向かって報告した。

すると渚は、「朋也くんとほとんどいっしょなんですね、でも、私を守るって・・////」

朋也は冷静に考えるとすごい恥ずかしい事を言ったのでは?と思いものすごい勢いで顔を赤らめた、
同じように渚も顔を赤らめて俯いていた。



俺は、森上に向かいながら真剣な顔で
「そうだな、俺が戦っている理由は・・・。」

「「俺は、渚や親父、部隊の仲間・・・いや、大切な人を守るため・・・。そしてこの世界を少しでも平和な世界にするために戦う!!」」

俺は、胸を張ってそう森上に答えた。
すると、森上が・・・
「そういう理由か・・・俺はいいと思うよ、けどな・・・」
「何だ?」
森上はにやけながら、
「お前、地味に中原が大切な人だって公言してるぜ。と言ってもおそらくここの部隊の連中はだいたい感づいてると思うけどな。」
(というか、中原と中村が相思相愛なのは有名なんだけどな・・・)

朋也はしまった!またやっちまった!と思い、あわてて訂正しようとしたが、渚が大切な人と言うのは事実なので
「というか、感づかれてたのか!やっぱり・・」
「ああ、まあお前たちの行動を見てればわかると思うが・・・」

朋也は、仕方なく開き直り
「確かに、渚は大切な人だ、お前はそういう人はいるのか?」
森上は、少し驚いたが
「そうだな、俺は・・・・」
「お~い、おまえら自主トレするけどいっしょに来るか?」                       
 遠くから、新河秋雄の声が聞こえ、
森上と、中村は
「ああ、行くよ。」

「急いで来いよ。」
朋也は、自主トレに向かうために走り出した森上にこう聞いた。

「お前の大切な人は、源だろ?」

「そうだよ。」
森上は、少し真剣な顔つきで答えていた。

俺は、これからも多くの困難に出会うだろうもしかしたらおふくろとの約束も守れずにおふくろのところに逝ってしまうかもしれない。
でも、おれは世界を平和にするため・・・大切な人たちを守るために戦い続けるだろう。
そして俺は、天国の尊敬するおふくろに自分はもう悩まない、自分の出した答えを心に刻み生きていく事を誓った。

~Fin~


最終更新:2009年08月12日 15:05
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