それぞれの救い方(前編) ID:HWRdvHVo
「ええと痛み止め痛み止めっと」
薬品の臭いが散漫とした部屋の中、男が薬品棚を漁る。
慣れない手つきで棚から取り出した薬を見て右往左往しているのは、新米の看護士ではない。
白い制服の代わりに家紋の入った立派な着物を纏った武士であった。
名を織田信長。 日本人ならば誰もが知っているであろう、天下の覇者だ。
慣れない手つきで棚から取り出した薬を見て右往左往しているのは、新米の看護士ではない。
白い制服の代わりに家紋の入った立派な着物を纏った武士であった。
名を織田信長。 日本人ならば誰もが知っているであろう、天下の覇者だ。
「これは風邪薬かの? それにこっちは熱冷まし"しいと"に"ばふぁりん"? 全然わからん!」
とはいえ彼は所詮過去の人物。
いかに歴史に名を刻もうと、本来生きる時間よりも遥かに進んだ文明にはまだ順応していない。
ここに来るまで東京タワーを始めとした様々な建築物を見てきたが、それら全て彼にとってはとても真新しく、
街中を歩いていた彼の姿は、上京したての田舎の苦学生よりも挙動不審であった。
もっともつい数十分前までは、そんな感慨に耽る暇も無いほど切羽詰った状況だったのだが。
いかに歴史に名を刻もうと、本来生きる時間よりも遥かに進んだ文明にはまだ順応していない。
ここに来るまで東京タワーを始めとした様々な建築物を見てきたが、それら全て彼にとってはとても真新しく、
街中を歩いていた彼の姿は、上京したての田舎の苦学生よりも挙動不審であった。
もっともつい数十分前までは、そんな感慨に耽る暇も無いほど切羽詰った状況だったのだが。
「ええい、まずは包帯からじゃ! ええと包帯はっと・・・・・・」
薬品を棚に仕舞うことも忘れ、信長は包帯を探し始める。
実質タイムスリップしてきたにも等しい状況にあった彼は
ビンのラベルに書かれた薬品を識別するだけでも精一杯である。
そんな彼を見かねて、一人の女性が声をかけた。
実質タイムスリップしてきたにも等しい状況にあった彼は
ビンのラベルに書かれた薬品を識別するだけでも精一杯である。
そんな彼を見かねて、一人の女性が声をかけた。
「信長さん、後は私がやるからいいよ」
彼に声をかけたのは別に女中ではない。
民族風の黒い服を纏った女性は巡音ルカは、現代で人々を虜にしているVOCALOIDの一人だ。
VOCALOIDというのは彼女達の種族名であり、決して彼女が所属するグループだけを示しているのではない。
ロボット、電子生命体、バイオ技術etc・・・・・・その正体は様々な憶測が飛び交っているが、
その肩に記された刻印以外は紛れもなく人間と同じである。
民族風の黒い服を纏った女性は巡音ルカは、現代で人々を虜にしているVOCALOIDの一人だ。
VOCALOIDというのは彼女達の種族名であり、決して彼女が所属するグループだけを示しているのではない。
ロボット、電子生命体、バイオ技術etc・・・・・・その正体は様々な憶測が飛び交っているが、
その肩に記された刻印以外は紛れもなく人間と同じである。
「いやそういうわけにはいかぬ。 ほらあったぞ包帯」
額に汗を垂らしながら信長が包帯を誇らしげに見せる。
しかし棚及び室内は先ほどよりも酷く散らかっている。
床には転がったビンが散乱しており、足の踏み場はほとんど見られない。
そして呆れるルカを知ってか知らずカ、信長は包帯を広げ、彼女の腕に巻きつけようとしてくる。
しかし棚及び室内は先ほどよりも酷く散らかっている。
床には転がったビンが散乱しており、足の踏み場はほとんど見られない。
そして呆れるルカを知ってか知らずカ、信長は包帯を広げ、彼女の腕に巻きつけようとしてくる。
「包帯というのはこうして巻くのかの?」
「ダメだよ、まずは固定しなきゃ!」
「ダメだよ、まずは固定しなきゃ!」
結局ルカの応急措置が終わったのは、病院に入ってから30分以上が経過した頃であった。
診察室のベッドの上で薬ビンの中身を飲みながら、ルカは天井を仰ぐ。
信長は病院内を探索したいということで、現在はこの場にはいない。
信長は病院内を探索したいということで、現在はこの場にはいない。
(何やっているんだろうなボク)
固定された自分の左腕を見て自嘲する。
1時間ぐらい前までは、確かに自分は織田信長を殺そうとしていたはずだ。
それが今は逆転し、自分が彼に命を助けられたという有様である。
1時間ぐらい前までは、確かに自分は織田信長を殺そうとしていたはずだ。
それが今は逆転し、自分が彼に命を助けられたという有様である。
(殺すと意気込んだものの、返り討ちにされる所か助けられるなんてね)
少し昔を振り返ってみよう。
織田信長を殺そうと、ドラグブラッカーを嗾けて彼を追い詰めたのだが、
背後からの化け物の襲撃により自分は左腕を負傷し、全身が麻痺するほどの怪我を負った。
そしてそのまま化け物に捕食されそうなところを、信長に助けてもらったのだ。
いや奇襲に対し、声をかけてくれなかったらあのままあの世に直行していたであろう。
つまり自分は、織田信長という男に二度も命を救われた。
織田信長を殺そうと、ドラグブラッカーを嗾けて彼を追い詰めたのだが、
背後からの化け物の襲撃により自分は左腕を負傷し、全身が麻痺するほどの怪我を負った。
そしてそのまま化け物に捕食されそうなところを、信長に助けてもらったのだ。
いや奇襲に対し、声をかけてくれなかったらあのままあの世に直行していたであろう。
つまり自分は、織田信長という男に二度も命を救われた。
(無茶しやがって・・・・・・)
支給された鉄片・・・・・・カードデッキを見ながら、ルカはため息をつく。
信長がルカを連れて逃げられたのは、ルカと契約しているミラーモンスター、ドラグブラッカーのおかげでもある。
信長がルカを連れて逃げられたのは、ルカと契約しているミラーモンスター、ドラグブラッカーのおかげでもある。
元々ゼルエルのS2機関を取り込んだ化け物―――和田アキ子は、そこまで足が早くないため、
健康な成人男性が走れば十分逃げ出せる速度であった。
しかし、いかに彼が鎧を着て戦場を走り回れる戦国の武士だからとはいえ、
二人分の支給品と成人女性一人を抱えて走れば、一人の時よりも格段に遅くなってしまう。
案の定、和田アキ子にもう少しで追いつかれそうだった時にドラグブラッカーだ。
彼が囮になることで和田アキ子はドラグブラッカーに標的を変えたため、
信長はルカを連れて逃げることにできたのだ。
健康な成人男性が走れば十分逃げ出せる速度であった。
しかし、いかに彼が鎧を着て戦場を走り回れる戦国の武士だからとはいえ、
二人分の支給品と成人女性一人を抱えて走れば、一人の時よりも格段に遅くなってしまう。
案の定、和田アキ子にもう少しで追いつかれそうだった時にドラグブラッカーだ。
彼が囮になることで和田アキ子はドラグブラッカーに標的を変えたため、
信長はルカを連れて逃げることにできたのだ。
『GAA!』
「ごめん勝手に殺してた」
「ごめん勝手に殺してた」
窓からドラグブラッカーが姿を現し、抗議をするかのように吼える。
ドラグブラッカーは鏡の中の怪物、ミラーモンスター。
本来はミラーワールドに生息する彼のことだから、適当なところで鏡の中に逃げ込んだのであろう。
その証拠に、ルカの手元にあるカードデッキにはまだドラグブラッカーの契約の証である龍の紋章が刻印されている。
ドラグブラッカーは鏡の中の怪物、ミラーモンスター。
本来はミラーワールドに生息する彼のことだから、適当なところで鏡の中に逃げ込んだのであろう。
その証拠に、ルカの手元にあるカードデッキにはまだドラグブラッカーの契約の証である龍の紋章が刻印されている。
「でも許してくれよ、ボクが生き延びるのにはああするしかなかったんだ」
『GAA!!!!!』
『GAA!!!!!』
ルカが黒龍を宥めようとするが、彼が怒りを納める気配はない。
ドラグブラッカーはルカの手元にあるカードデッキに顎を向け、また吼える。
ドラグブラッカーはルカの手元にあるカードデッキに顎を向け、また吼える。
「ちゃんと戦えって? 無茶言わないでよこの体で・・・・・・」
ドラグブラッカーの苛立ちの原因は、何も自分を囮に使ったことだけではない。
ミラーワールドで戦うために生まれた仮面ライダーは、契約したミラーモンスターの力量で強さが決まる。
逆を返せば仮面ライダーの強さがミラーモンスターの強さでもあり、自身の力の証明でもあるのだ。
ルカはそれを使うこともなく、命を無残に散らされそうになったのだ。
ミラーワールドで戦うために生まれた仮面ライダーは、契約したミラーモンスターの力量で強さが決まる。
逆を返せば仮面ライダーの強さがミラーモンスターの強さでもあり、自身の力の証明でもあるのだ。
ルカはそれを使うこともなく、命を無残に散らされそうになったのだ。
例の怪物だって、変身すればどうだろう。
満身創痍の彼女では気づかなかったであろうが、単純なスペックでは仮面ライダーリュウガもそう悪いものではない。
怪物は飛び道具を持たなかったから、ストライクベントで牽制していくことができたし、
ファイナルベントを直撃させれば、それなりにダメージを与えることも出来たかもしれない。
それが駄目なら首輪を狙って爆発させてしまう方法だって考えられた。
力を行使すれば戦えたのに知れないのに、それを行う機会さえ潰して敗走してしまうようでは、
ある意味では戦わずして負けたと同じことである。
満身創痍の彼女では気づかなかったであろうが、単純なスペックでは仮面ライダーリュウガもそう悪いものではない。
怪物は飛び道具を持たなかったから、ストライクベントで牽制していくことができたし、
ファイナルベントを直撃させれば、それなりにダメージを与えることも出来たかもしれない。
それが駄目なら首輪を狙って爆発させてしまう方法だって考えられた。
力を行使すれば戦えたのに知れないのに、それを行う機会さえ潰して敗走してしまうようでは、
ある意味では戦わずして負けたと同じことである。
『GAAAAAAAAA!!!』
「あーわかったわかった! 次戦う時になったらちゃんと変身してあげるから、ね?」
「あーわかったわかった! 次戦う時になったらちゃんと変身してあげるから、ね?」
ルカは営業スマイルを浮かべてドラグブラッカーを宥める。
相手がそこらの男ならにやけてしまうが、相手はミラーモンスター。 通じるかどうかは不安だった。
そして効いたかどうかはいざ知らず、ドラグブラッカーは鏡の中から姿を消していった。
相手がそこらの男ならにやけてしまうが、相手はミラーモンスター。 通じるかどうかは不安だった。
そして効いたかどうかはいざ知らず、ドラグブラッカーは鏡の中から姿を消していった。
「怪我はもう大丈夫なのか?」
「うん」
「うん」
ルカがドラグブラッカーとやり取りを繰り返している内に、
部屋を出ていた信長が戻ってきた。
その手には包帯が握られており、蓋が開いたデイバッグからは、薬剤が見え隠れしている。
その顔は微かに、にやついており、まるで学校を探検した後の小学生の様である。
どうやら単に道具を集めていただけでなく、現在に置ける医療施設を知っておきたかったらしい。
まるで子供だなと思いながら、彼女は生返事をした。
部屋を出ていた信長が戻ってきた。
その手には包帯が握られており、蓋が開いたデイバッグからは、薬剤が見え隠れしている。
その顔は微かに、にやついており、まるで学校を探検した後の小学生の様である。
どうやら単に道具を集めていただけでなく、現在に置ける医療施設を知っておきたかったらしい。
まるで子供だなと思いながら、彼女は生返事をした。
「むむ、なんじゃそれは?」
ふと見上げると、信長は自分に不思議そうな顔を向けてくる。
その視線の矛先が自身の持っている空き瓶だとわかると、彼女はそれに関しての説明を始めた。
その視線の矛先が自身の持っている空き瓶だとわかると、彼女はそれに関しての説明を始めた。
「これは支給されていた回復薬。 そこらへんの痛み止めよりもずっと強力だよ」
「ほうそのようなものがあるとは・・・・・・」
「ほうそのようなものがあるとは・・・・・・」
ルカは先ほどまで中身が入っていた空き瓶を横に揺らしていると、
微かに残った液体を、信長は子供のような表情を向けて注目していた。
ルカが使った物は『ポーション』という回復薬の一種である。
色は青色で、即効性があり、荒事を生業とする人種に重宝する薬品だ。
それ故、一般人にとっては高価であり、また大抵の怪我は市販の医薬品で事足りるため、
ルカのような人間がこのように服用する機会は非常に少ない。
それを飲み干したルカは、殴られた左腕の痛みは消え、体中の痺れも完全に取れた。
流石に粉砕された骨を治すまでには至らなかったが、それでも支障なく肉体を動かせるレベルまで回復した。
微かに残った液体を、信長は子供のような表情を向けて注目していた。
ルカが使った物は『ポーション』という回復薬の一種である。
色は青色で、即効性があり、荒事を生業とする人種に重宝する薬品だ。
それ故、一般人にとっては高価であり、また大抵の怪我は市販の医薬品で事足りるため、
ルカのような人間がこのように服用する機会は非常に少ない。
それを飲み干したルカは、殴られた左腕の痛みは消え、体中の痺れも完全に取れた。
流石に粉砕された骨を治すまでには至らなかったが、それでも支障なく肉体を動かせるレベルまで回復した。
「それもお主に支給されていたのか?」
「ううん、これはボクの姉さんに支給されていた物だよ」
「姉じゃと?」
「ううん、これはボクの姉さんに支給されていた物だよ」
「姉じゃと?」
信長は彼女に疑惑の眼差しを向けた。
自分と出会った時にはルカは一人で行動していた。
彼女は自分の物以外の一つのデイバッグを持っていた。
何より巡音ルカは『殺し合いに乗っていた』
これらの符号が、信長の脳内で最悪の結果を導き出していた。
自分と出会った時にはルカは一人で行動していた。
彼女は自分の物以外の一つのデイバッグを持っていた。
何より巡音ルカは『殺し合いに乗っていた』
これらの符号が、信長の脳内で最悪の結果を導き出していた。
「まさかお主・・・・・・」
「うん、ボクがMEIKO姉さんを殺した」
「!?」
「うん、ボクがMEIKO姉さんを殺した」
「!?」
驚愕の余り、体を動かすことさえ忘れた信長を横目に、ルカは感慨深そうに自分の胸の内の想いを打ち明ける。
「MEIKO姉さん、いや姉さんだけじゃない。 ミクちゃんも、リンちゃんもレンくんも、KAITO兄さんもハクちゃんも・・・・・・
すごくいい人だよ。 だからボクはみんな大好きさ」
「だったらどうして!」
「大好きだからだよ・・・・・・優しいみんなが殺しあうことなんてできるわけがない。
どれだけ抗ったところで、どうせ主催者の手の平で踊らされて終わりさ」
「そんなことはない! ワシは一人でも多くの人を救ってみせる!」
「無理だよ」
すごくいい人だよ。 だからボクはみんな大好きさ」
「だったらどうして!」
「大好きだからだよ・・・・・・優しいみんなが殺しあうことなんてできるわけがない。
どれだけ抗ったところで、どうせ主催者の手の平で踊らされて終わりさ」
「そんなことはない! ワシは一人でも多くの人を救ってみせる!」
「無理だよ」
反論しようとする信長であったが、ルカは自身の首を指して苦笑いをしながら言い放つ。
「信長さんもわかっているんでしょ? どうせ自分も助かるわけがないって」
バトルロワイアル。
参加者にとっては命懸けのデスゲームではあるが、
主催者からしてみれば、ただの遊戯の一環でしかない。
闘犬みたいに、どちらが勝ってどちらが負けるかを賭けて、ただ傷つけ合う所を見物しているだけ。
東京23区と言えば、僅か数十人程度で殺し合いを行うにはとても広く思えるが、彼らからすれば小さな檻でしかない。
脱走した馬鹿な犬は駆除してしまえばいい。
参加者にとっては命懸けのデスゲームではあるが、
主催者からしてみれば、ただの遊戯の一環でしかない。
闘犬みたいに、どちらが勝ってどちらが負けるかを賭けて、ただ傷つけ合う所を見物しているだけ。
東京23区と言えば、僅か数十人程度で殺し合いを行うにはとても広く思えるが、彼らからすれば小さな檻でしかない。
脱走した馬鹿な犬は駆除してしまえばいい。
「じゃが・・・・・・じゃがそれでも・・・・・・」
「無理しなくてもいいよ信長さん。 MEIKO姉さんもそうだった。
できないとわかっていてもそれから目を背けていて、とっても苦しそうだったんだ」
「無理しなくてもいいよ信長さん。 MEIKO姉さんもそうだった。
できないとわかっていてもそれから目を背けていて、とっても苦しそうだったんだ」
ルカの大好きな家族は、犬になり切れない。
優しい彼らが人を傷つけることに耐えられるはずがない。
かと言って、それから逃げ続けられることもできない。
常に前向きなMEIKOや、現在の不幸を最悪と捉えずに肯定的に物事を見ていたハクとは真逆に、
ルカは現状を厭世的に見ることしかできなかった。
だからルカは、彼女達とは別の方法で、家族を救おうと考えたのだ。
優しい彼らが人を傷つけることに耐えられるはずがない。
かと言って、それから逃げ続けられることもできない。
常に前向きなMEIKOや、現在の不幸を最悪と捉えずに肯定的に物事を見ていたハクとは真逆に、
ルカは現状を厭世的に見ることしかできなかった。
だからルカは、彼女達とは別の方法で、家族を救おうと考えたのだ。
「これでボクの大好きなみんなを殺すことができる。 それでみんな楽になれるんだ」
これで他の家族を殺すことができる。 既に死んでしまった姉さんの元に送ってやれる。
怖い怖い殺し合いから、大好きなみんなを解放してあげられる。
有りもしない希望にいつまでも縋り付くよりは、早く楽になった方がいいよね?
最後にボクがそこに行けるかはわからないけれど、それでもみんなが幸せになれば構わない。
怖い怖い殺し合いから、大好きなみんなを解放してあげられる。
有りもしない希望にいつまでも縋り付くよりは、早く楽になった方がいいよね?
最後にボクがそこに行けるかはわからないけれど、それでもみんなが幸せになれば構わない。
「なんじゃと・・・・・・」
信長は、今まで言い返すことができずに閉ざしていた口を開く。
理屈で
将軍という身分の自分とは違い、ルカはただの一般人だ。
醜い権力争いや多額の富の奪い合いとも無縁な、ただの婦女子である。
平和な日常で生きる彼女が、家族を殺すなどということがあってはならない。
ましてやその理由が、憎しみではなく、『愛情』であることなどと。
理屈で
将軍という身分の自分とは違い、ルカはただの一般人だ。
醜い権力争いや多額の富の奪い合いとも無縁な、ただの婦女子である。
平和な日常で生きる彼女が、家族を殺すなどということがあってはならない。
ましてやその理由が、憎しみではなく、『愛情』であることなどと。
そんなの駄目だ!
信長は叫ぼうとした。
しかしそれは別の声にかき消されてしまった。
しかしそれは別の声にかき消されてしまった。
「大丈夫だよルカ、僕にいい考えがあるんだ!」
信長とルカの間に割って部屋に入ってきたのは、一人の男であった。
ストールと思えるほどの長さを持つ青いマフラーに、白いコートという井出達に、
前者は首を傾げ、後者は見知った顔に微笑する。
ストールと思えるほどの長さを持つ青いマフラーに、白いコートという井出達に、
前者は首を傾げ、後者は見知った顔に微笑する。
(まさかここでルカを発見できるとはラッキーだ)
家族の一人を見つけられたことに安堵し、KAITOは笑みを浮かべた。
数十分前ハクを殺した彼が選んだ行動は、地盤を固めることであった。
戦っていれば怪我をする。例え致命傷でなくとも、それを放って置けば戦闘にも支障が出るであろう。
だから近場の病院から医療道具を回収して置きたかったのだ。
そして交番から地図を入手し、一番近くにあったこの病院に辿りつく。
その後、包帯を痛み止めを始めとした医療道具と薬品をいくつか回収した所、
部屋に入る信長の姿を目撃したのだ。
戦っていれば怪我をする。例え致命傷でなくとも、それを放って置けば戦闘にも支障が出るであろう。
だから近場の病院から医療道具を回収して置きたかったのだ。
そして交番から地図を入手し、一番近くにあったこの病院に辿りつく。
その後、包帯を痛み止めを始めとした医療道具と薬品をいくつか回収した所、
部屋に入る信長の姿を目撃したのだ。
「盗み聞きなんて相変わらず卑怯だね兄さん」
「いきなり厳しいなぁ・・・・・・ってそうじゃなくて!」
「いきなり厳しいなぁ・・・・・・ってそうじゃなくて!」
妹との再会に喜ぶKAITOであったが、自分の目的を思い出す。
その場にいた信長の存在も無視して、それをゆっくりと語り出した。
その場にいた信長の存在も無視して、それをゆっくりと語り出した。
「みんなで力を合わせてこの殺し合いで優勝しよう!」
家族全員で力を合わせて他の参加者を皆殺しにすれば、
残った一人が主催者の力で、参加者を全員生き返らせることができる。
主催者はどんな願いも叶えてくれる、確かにそう言った。
その言葉を示すように、彼らはこれだけの舞台を用意するだけの力がある。
童話の中の存在でしかなかった竜や、魔法のようなアイテムも見てきた。
だから人を生き返らせることなんて容易いことであろう。
残った一人が主催者の力で、参加者を全員生き返らせることができる。
主催者はどんな願いも叶えてくれる、確かにそう言った。
その言葉を示すように、彼らはこれだけの舞台を用意するだけの力がある。
童話の中の存在でしかなかった竜や、魔法のようなアイテムも見てきた。
だから人を生き返らせることなんて容易いことであろう。
「お主自分が何を言っているのかわかっておるのか!?」
「ああわかっているね。 どうせみんな生き返るんだ。
だからこれがみんなを救う方法なんだよ」
「ああわかっているね。 どうせみんな生き返るんだ。
だからこれがみんなを救う方法なんだよ」
信長が激昂するが、KAITOはそれをあたかも当然のように言い返す。
そして彼はルカに詰め寄った。
そして彼はルカに詰め寄った。
「ルカ、優しい君ならわかるだろう?
もう胸を痛めて家族を殺す必要はないんだ! 僕らの敵だけを殺せばいいんだ!」
「兄さん・・・・・・」
「そんなに思いつめないで! もっと希望を持ってみんなを殺そう!
ほら、早くこいつを殺すんだ!」
もう胸を痛めて家族を殺す必要はないんだ! 僕らの敵だけを殺せばいいんだ!」
「兄さん・・・・・・」
「そんなに思いつめないで! もっと希望を持ってみんなを殺そう!
ほら、早くこいつを殺すんだ!」
ルカの肩に手を置き、KAITOは信長を指す。
動揺しながらも刀を抜く信長を確認すると、自身の銀の剣をルカに手渡そうとした。
しかしそれは彼女によって払われて落とされてしまう。
動揺しながらも刀を抜く信長を確認すると、自身の銀の剣をルカに手渡そうとした。
しかしそれは彼女によって払われて落とされてしまう。
「何をするんだルカ! 早く殺さなきゃこっちが殺されるんだ!」
「兄さん、ごめんボクもう見てられない」
「兄さん、ごめんボクもう見てられない」
KAITOは一つのミスを犯していた。
今現在殺し合いに巻き込まれた参加者は、どれだけ主催者の言うことを信じているのだろうか。
優勝すれば願いが叶うというのは、力の無い人々からすればとても魅力的に聞こえる。
だがそれ以上に、自分を殺し合いに放り込んだ者に対しての恨みや、疑念がある。
彼らからすれば、商品と打たれたそれはどう見ても大きな釣り餌にしか見えない。
そしてルカもその例外ではなかった。
今現在殺し合いに巻き込まれた参加者は、どれだけ主催者の言うことを信じているのだろうか。
優勝すれば願いが叶うというのは、力の無い人々からすればとても魅力的に聞こえる。
だがそれ以上に、自分を殺し合いに放り込んだ者に対しての恨みや、疑念がある。
彼らからすれば、商品と打たれたそれはどう見ても大きな釣り餌にしか見えない。
そしてルカもその例外ではなかった。
「そんなこと叶えてくれるなら殺し合いを開く意味がない」
(ルカ・・・・・・君も駄目なのか)
(ルカ・・・・・・君も駄目なのか)
主催に立ち向かう等と無謀なことを言い出したハクは、彼に従うことはなかった。
ルカはルカで、現実を見ていたものの、あまりにも悲観的過ぎて、同じく彼に賛同しようとしない。
ルカはルカで、現実を見ていたものの、あまりにも悲観的過ぎて、同じく彼に賛同しようとしない。
「『ホワイトアルバム』!」
KAITOは、自身のスタンド、『ホワイト・アルバム』を発動した。
ならば殺してしまうしかない。 彼はそう結論付けた。
発動したスタンドは、彼を守る氷の鎧となる。
ならば殺してしまうしかない。 彼はそう結論付けた。
発動したスタンドは、彼を守る氷の鎧となる。
(君も後で生き返らせてあげるから今は死んでいてくれ)
超低温で氷結されたスーツは、触れる者全てを凍らせる武器にもなる。
ハクと同じようにルカを凍死させようと、彼女に手を差し伸べた。
ハクと同じようにルカを凍死させようと、彼女に手を差し伸べた。
「・・・・・・ドラグブラッカー」
しかし彼の体は黒い巨体によって弾き飛ばされた。
ホワイト・アルバムのおかげでダメージは無いが、衝撃までは緩和できずに部屋の壁に叩き付けられる。
ホワイト・アルバムのおかげでダメージは無いが、衝撃までは緩和できずに部屋の壁に叩き付けられる。
(竜だって!? 不味い!)
ハクが戦っていた竜よりも幾分か小型であるが、
それでもKAITOにショックを与えるには十分であった。
狭い室内ではホワイト・アルバムの機動性を生かすことができない。
KAITOは落とされた銀の剣を拾い、窓を突き破って病院の外に転がり落ちる。
それでもKAITOにショックを与えるには十分であった。
狭い室内ではホワイト・アルバムの機動性を生かすことができない。
KAITOは落とされた銀の剣を拾い、窓を突き破って病院の外に転がり落ちる。
「逃がさないよ」
「うわ!?」
「うわ!?」
ドラグブラッカーが吐く黒炎を交わしつつ、KAITOは黒竜への対処を考える。
ホワイト・アルバムが高い防御力を持っていようと、それは所詮物理的な攻撃に対してのみ。
氷を融かす灼熱の炎には流石に分が悪い。
ホワイト・アルバムが高い防御力を持っていようと、それは所詮物理的な攻撃に対してのみ。
氷を融かす灼熱の炎には流石に分が悪い。
「じゃあそろそろ君の力を使ってあげないとね」
ルカが胸元から取り出したのは、黒い竜の影が刻印された、鉄片、カードデッキだ。
それを割れたガラスに向けると、彼女の腰にVバックルが重ねられ、装着される。
そしてそこにカードデッキをセットした。
それを割れたガラスに向けると、彼女の腰にVバックルが重ねられ、装着される。
そしてそこにカードデッキをセットした。
「・・・・・・変身!」