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テラカオスバトルロワイアル外伝
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彼の者の名は……ベン

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夜の商店街を、二つの影が駆け抜ける。

「な、なんなんですかあれ……!?」
「こっちが聞きたいです!」

「……!」

それを追う、別の影が一つ。
言葉を発することなく、執拗に目の前の二人、『獲物』を狙い続け、銃を撃ち続ける。
その正体は、紫色の体毛が特徴的な大悪魔、バズズ。
シルバーデビル種の上位に位置し、その体毛の色は白銀の毛が犠牲者の血を吸い続けたためだと言われている。
根っからの、筋金入りの、殺戮者。目の前に動く人間がいれば、容赦なく惨殺する悪魔……
そんな悪魔が何故、この東京都に出現したのか。

元はこの地で行われている殺し合いの参加者の一人に支給されたものなのだが……
どうしたことか、彼には首輪はおろか、他の意思を持つ支給品を拘束するモンスターボールすらない。
とある主婦に主催者が誤って危険物を支給してしまったように、これも恐らくは主催者のミスなのだろう。
さらには猟銃と防弾ベストまで着込み、武装済みときた。
これは、彼がただのバズズではないためだ。
魔界の支配者が名付けたのか、彼には『ベン』という立派な名前が存在する。
魔物の世界は実力主義であり、名前を名乗ることができるのは一握り。
それだけでも、このバズズが、ベンが只者ではないことがわかるだろう。
そんな優れた殺戮悪魔が、凄まじい速度で迫ってくる。
その恐怖は並大抵のものではない。
『死人が出るぞぉ!』などと、周りに危機を知らせつつ、誰かに助けを求めたい気持ちにもかられるかもしれない。

しかし、追う影が普通ではないように、追われる影もまた、普通ではない。

迫る銃弾の雨、しかしそれは未だに二つの影を撃ち抜くには到っていなかった。
驚異的な身体能力でもって、追われる影は銃弾を躱し、時には弾いているのだ。
彼らは数時間前に、無数の銃を操る黄色い魔法少女の銃撃を耐えきっており、
たとえ闇夜であろうとその実力を十分に発揮していた。

「……!」
「くっ!」

獲物がなかなか仕留められないことに、ベンは苛立ちを隠せない。
――何故こうもちょこまかと逃げまわるのか――
歯噛みするベンだが、追われる側は、現状それしか悪魔への対策がとれない。
いくら銃撃に反応できても、反撃ができないのだ。

彼らの現在の武器は剣と槍であり、間合いをある程度つめなくては攻撃が届かない。
しかしこれ以上近寄れば、ベンの持つショットガンの餌食となってしまう。
如何に身体能力が高くとも、限界はある。至近距離から撃たれては回避も防御もしようがない。
さらにベンは丈夫そうな服を装備しており、悪魔の肉体とあわせてかなりの防御力を誇る。
だめ押しでベンならでは、そのしなやかな肉体から生み出される圧倒的な敏捷力。
追われる二人の速さも常人のそれを遥かに凌駕しているが、ベンはそもそも種族が人間を凌駕している。
少しでも気を抜けば、たちまち接近、至近距離からの銃撃でおだぶつだろう。

走・攻・守……
全てに優れた殺戮悪魔、ベン。
元のバズズの肉体に、猟銃と防弾ベスト。
『完全武装』した彼に、死角は存在しない。
追われる二人は身を持ってそれを実感し、また本人はそれを本能で理解していた。

しかし、ベンはそこで考えることを止めてしまっていた。
『完全武装』した自分は無敵であると理解し、そこから先を考えない。
無敵であるが故に、考える必要がなかった。

対する人間は、どうやってベンをこの場で倒すかを考えていた。
このまま逃走劇を続けたところで、いずれは追いつかれてしまうのだから、倒すしかない。
ではどうやって倒すか。
『完全武装』した相手に、どう立ち向かえばいいのか。

――『完全武装』に勝てないのであれば、それをなくしてしまおう――

二人が行き着いた結論がこれであった。
ともなれば、次の思考もすぐに決まる。
完全武装、無敵の悪魔、走・攻・守、どこから切り崩す?
考えるまでもない。
接近戦に持ち込めれば、剣は届くのだから。

「――、――!」
「――!」

背後から迫る銃撃を、街中の物を盾にして逃げ惑いながら、短い言葉をかわす。
彼らには、時間があまり残されていない。
だからこそ、短い言葉で為すべきことを伝える。
そして、ついに影の一方が動いた。

「……!」

女の方の獲物がようやく観念したのか、足を止めこちらを向く。
それを認識したベンは、にやりと笑みを浮かべた後、即座に銃を構える。
人間とは思えない、異常ともいえる反射神経を持った獲物ではあるが、
もはやそれも意味を為さない。この間合いは、もう自分の殺戮空間、その射程内なのだから。

――早くその身体から鮮血を撒き散らして、自分の体毛を更に美しく彩ってくれ――

願望を口には出さず、ベンは躊躇うことなく銃の引き金を

「やっ!」

一瞬。
一瞬の差であった。
ベンが引き金をひくよりも僅かに早く、獲物の女が動いた。

何をしたのか、それはすぐにベンにもわかった。
獲物は、何かをこちらに向かって投げつけたのだ。

――一向に砕ける様子のない銀の剣?いや違う。もっと小さな、なんだあれは?――

最初にベンの反応が遅れてしまったのは、ようやく獲物を殺せるのだ、と油断してしまったためだろう。
そしてその直後、まさに今。再びベンは反応が遅れてしまった。
今度は油断などではない。剣を投げつけられたとして、回避できる自信がベンにはあった。
しかし、飛んできた予想外の物に、思わず身体が固まってしまったのだ。

ベンに迫る飛来物は、剣でも、槍でもなかった。
極小の、とても武器とは思えない物体。
ピンク色をした、ベンが見たこともない代物だった。
これが武器であれば、反応もできた。新手の爆弾かとも思ったが、あまりに小さすぎる。
未知の物に対する無知と、優れた頭脳を持つが故に、どうしても謎を考察してしまうその癖が……
ベンの反応を完全に遅らせた。

「……!!??」

ベンがその意識を戦いに戻した時には、既に手遅れだった。
謎の物体は、ベンの持つ銃の発射口に、すっぽりと入ってしまう。
ここでようやく、ベンは謎の物体が高速振動していたことを理解する。
銃の中で、ピンクの異物が狂ったかのように振動を繰り返し、その振動は銃を伝い、嫌でもベンへと届く。
そしてこの不快な振動が、ベンにさらなることを理解させた。

――この銃は、もう使えない――

こんな異物が詰まった状態で撃てばどうなるか、そもそも振動で狙いもぶれてしまう。

――私の『完全武装』が……崩された?――


「せやあ!」
「……!?」

完全武装の崩壊。
それをベンが認識するのと同時に、同じく完全武装の崩壊を確認した、もう一方の獲物が肉迫してきた。

ベンが無敵たりえたのは、完全武装による三位一体の状態があったからこそだ。
その一角、攻撃の要たる銃が潰された。
こうなってしまっては、もう獲物を一方的に攻撃することはできない。
鋭く尖った爪による攻撃は残されているが、それで獲物を引きちぎるには、獲物に接近しなくてはならない。
相手の武器もこちらに届く範囲まで、近寄らなければならない。
銀の剣を携えた眼前の男と、切り結ばなければならない。
先程までとは状況が一変している。
狩りから、戦いへ。
相手の生命を刈り取れるかもしれないが、自分も同じ土俵に立たされた。

しかし。

しかしそんな状況であっても、ベンは笑みを浮かべていた。

負けるはずがないと、確信しているが故に。

その確信と共に、ベンの悪魔の爪が振り下ろされる。
鈍い金属音が響き、初撃が男に防がれた。だがこれはベンにとって想定の範囲内。

「……!」

ベンが間髪入れずに、もう一方の腕を、下から突き上げるように振るう。

これこそ、ベンの真骨頂ともいえる、高速攻撃。
素早く相手に近寄り、素早く相手を切り刻む。
かつて仲間と共に迷宮を放浪していた頃……
この攻撃で、一体どれだけ縞々服の武器商人を薙ぎ倒してきたか、もはや数えていない。
銃は所詮、戯れで使っていたにすぎない。楽に遠くから獲物を狩れるから使ったまでだ。
接近戦こそ自分が最も得意とするものだというのに、この獲物は迂闊にもそれで挑んできた。
――その愚かさ、身を持って知るがいい――

振り上げられた爪が


男の剣で再び弾かれた。


「!?」

数瞬遅れて、ベンは己の状態を確認する。
信じられないが、自分の二連撃は人間に見切られ、弾かれた。
腕に傷はないが、振り下ろし、振り上げた勢いそのままに弾かれ、体から大きく離れてしまっている。
胴体部分が、がら空きだ。
完全武装のもう一方、強固なベストを装備しているため、無防備とは言いきれないが、
相手は、自分の完全武装を崩した女と共にいた男。
今しがた、自分の高速攻撃にすら反応してみせた男だ。
そんな男の手には、悪魔の目から見ても一級品とわかる銀の剣。
男の腕力と剣の威力が合わさった一撃に、このお気に入りのベストは耐え切れるだろうか。
無理だ。

しかし、それでも。
ベンはまだ笑っていた。


この極上の獲物を殺せる喜びに身をふるわせて。

「……!!!」

大きく広がった状態になってしまったベンの両腕。
もしベンがただの大猿であれば、このまま剣を振り下ろされて絶命していただろう。
しかし先にも述べたが、ベンはただのベンではない。
バズズなのだ、ベンは。
高い魔力を有する、大悪魔。断じて猿ではなく、猿には到底真似のできないことをやってのける。
両の掌に集められるのは、氷の力。


――マヒャド――


詠唱は、言霊はない。それでも悪魔の力は発現する。
バズズ種が操る最強の攻撃、極大吹雪呪文が一瞬にして剣ごと男を飲み込んだ。

ベンは走・攻・守に優れいただけでなく、魔にも優れていたのだ。
銃を潰し、こちらの速度に反応し、守りを破るだけの力があっても、これは防げない。
三位一体ではない、四位一体。本当にベンに死角はなかった。
だからこそ、いつまでも笑みを絶やすことなく、獲物の動きを見ていた。

短く響いた後ろの女の悲鳴が心地よい。
男は凍らせた以上、後は砕くしかない。ではあの女はどうやって殺してやろうか……
ベンの思考が、戦いから狩りのものへと戻っていく。


その刹那



「……悪いね。吹雪には慣れてるんだ」



猛吹雪を突き破り、男が飛び出した。


ベンの中に、初めて恐怖の感情が芽生える。
切り札の極大吹雪呪文が効かないなど、もはや打つ手などあるわけがない。
目前に迫る死。
今まで自分が相手に与えてきたそれが、跳ね返ってきた。


ベンはその現実を、ただただ受け入れるしかなかった。



「よーしよしよし、よーし……」
「……!」

一分後、そこには元気に尻尾をふるベンの姿が!

「すごいですラグナさん……本当にそんな凶暴な動物を手懐けるなんて……」
「いやー、いつにも増して命懸けでしたけどね……
念のために、これを回収しておいてよかったですよ」

先程までベンと戦っていたとは思えない様子で、ラグナはベンの頭にブラシをかけ続ける。
なんの変哲もない、本当に普通の市販のブラシ。
吹雪を破り、ベンの頭頂めがけ振るわれたのは、剣ではなくこのブラシだったのだ。

「でも、よく手懐けようと思いましたね。アマゾン巡りでもこんな無茶はしませんよ……」
「人に心がある様に、モンスターにだって心はあります。倒さなければならない時もあるけど、
なかには理由があって戦う子や、人間の手で無理矢理戦わされている子もいますから……
人もモンスターも、決着がついたなら、命を奪わずに済むなら、仲良くなりたいと思うんですよ……」

ラグナはアースマイトと呼ばれる希少な人間の一人だ。
あらゆる武具を自ら作り、それを振るい、あらゆる料理と薬物を自ら作り、己の肉体を極限まで鍛えてきた。
魚影を見れば瞬時に釣り上げ、木を見ればすぐに伐採、鉱石を見つけたら宝石を根こそぎ回収してきた。
出会った少女とはとりあえずフラグを建て、水着を配り、寝床の匂いを嗅ぎ、親密な関係になっていった。
しかしこれらはあくまでサブの能力に過ぎず、本来の能力、
その本質は自然やモンスターとの対話や、大地を潤すことにある。
だからこそ、たとえ相手が未知のモンスターでも、彼はベンの心の声に耳を傾けた。

ベンの思考のほとんどは、殺戮で埋まっていた。
大魔王が支配する魔界生まれでは仕方のないことではあるが、理由はそれだけではない。
ベンは……悔しかったのだ。そして本人は気がついていなかったが、寂しさもあった。
魔界には沢山の仲間がいた。種族を問わず、沢山の仲間が。
そんなある時、魔界に勇者を名乗る一行が現れた。
丸い体型の男が口笛を吹けば、何故か体は勝手に動き、仲間も自分も勇者たちに飛び掛かった。

『なんだ、またはずれのバズズか』
『経験値にもお金にもならない……』
『僕たちはキラーマシンとグレイトドラゴンを仲間にしたいんだ』

そして浴びせられる、心無い言葉と落雷呪文。
仲間だったはずのマシンやドラゴンはいつしか彼らに服従し、自分のもとを去っていった。
それからすぐだったか。
さらなる力を求め、荒れ果て、完全武装し始めたのは……

もっと力があれば、あの人間も自分を見てくれるかもしれない、そんな考えが頭の片隅にあった。
勇者一行の仲間入りを果たした友人達は、みんな幸せそうだった。
彼らは愛されていた。モンスターと人間の垣根を越えて。
彼らを恨んだ、妬んだ。彼らが……羨ましかった。

それが、ベンの心の底にあった、本当の感情だった。

「……!」

そして、いつの間にか迷い込んだ見知らぬこの世界で。
ベンの願いはついに叶った。
殺そうとしたのに、怪我をしたというのに、自分を殺すこともできたというのに。
目の前の男は、『主人』は自分に手を差し伸べてくれた。初めて自分を認めてくれた。
仕えたいと願っていた人間とは別人だが、もはやそれも構わない。

――これこそ、私の望んでいた……――



「ふぅ、ブラッシングはこれくらいでいいかな」
「こんなに尻尾をふって……喜んでいるんでしょうか?」

やがて、ベンのなでなでタイムも終了し、ラグナとハクは立ち上がる。
ベンの襲撃は完全に予想外であったが、味方になってくれそうな所ジョージとの合流、その目的は変わらない。

「さて、この子も懐いてくれたみたいですし、そろそろ行きましょう」
「ま、待ってください!ラグナさん、その傷のままでは……」

しかし、ハクが待ったをかける。
ベンとの戦いで、銃弾こそ浴びていないが、ラグナはその全身に吹雪を浴びている。
いくら本人が慣れてると口にしても、体のあちこちに氷刃でできた切り傷があるし、服の一部も凍ってしまっていた。

「これくらい、大丈夫ですよ。前に氷の砲弾を顔面に受けた時に比べたら……」
「……よくわかりませんけど、とにかく駄目です!どこかで傷の手当てをしないと……」
「……!」

ハクが呟いた瞬間、仲間になったばかりの動物……ベンが自分の背中を指差す。

――乗ってくれ――

アースマイトではないハクでも、ベンがそう言っているのだと理解できた。


程なくして、ハクとハクの言葉に折れたラグナがベンの背に跨る。
その際に、完全武装具である防弾ベストを脱ぐこととなったが、ベンはもうそれを気にしない。
今の自分は、いつか夢見たことを実現できているのだから。

かつての友と同じ様に。
その背に新たな主人たちを乗せて、ベンは走りだす。

【文京区・商店街/一日目・夜】

弱音ハクVOCALOID
【状態】健康、疲労(中)両腕に包帯(完治済み)ベンに騎乗中
【装備】鋼の槍、メイド服、ヘッドドレス
【道具】基本支給品一式、おにぎり、防弾ベスト
【思考】
基本:家族を見つけて守りつつ、首輪を外して主催者に挑む
0:まずは治療ができそうな場所へ向かう
1:ラグナについていく
2:自分の死より他人の死の方が気になる
3:ジャイアンの母とはあまり戦いたくない
4:魔法というものに興味
5:謎の少女(巴マミ)を警戒
6:家族やタケシの安否も気になる

【ラグナ@ルーンファクトリー フロンティア】
【状態】:ダメージ(小)、疲労(中)RP65%、服一部凍結、ベンに騎乗中
【装備】:メタルキングの剣
【道具】:基本支給品一式(ランダム品0~1)、調理器具、細工道具、ブラシ、ベン
【思考】基本:主催者の撃破
0:まずは治療ができそうな場所へ向かう
1:ハクと共に行動
2:回復用の食料と武器及び素材の確保
3:殺人は控えるが、場合によってはやむなし
4:謎の少女(巴マミ)を警戒。できれば説得したい
5:会場の正体が知りたい
※食事による回復量にも若干制限がかかっています
※ブラシにより今後もペットは増やせますが、デイパック外に出せるのは一体まで

【ベン(バズズ)@ドラゴンクエストV 天空の花嫁】
[状態]:健康
[思考・状況]
基本行動方針:主人に従う
※ラグナのペット(支給品と同じ扱い)になりました。
※ラグナから一定距離しか離れることはできず、
彼の命令でのみデイパックから出たり入ったりすることが可能です。

※近くにローターが詰まった猟銃が放置されています

【現地調達品解説『ブラシ』】
ラグナが道中入手した、市販のペット用ブラシ。モンスターを何回か撫でるとペットにすることができる。
モンスターと心を通わせられる者なら誰でも使用可能だが、相手に自分の力量を認めさせなければならない。
もちろん、人間に対しては全く効果はない。



「そういえばラグナさん、この子はなんて呼べばいいんでしょう?」
「そうですね……この子のニックネームは……うん、『ベン』にしましょう!」
「ど、どういう基準なんですか……?あれ?この子喜んでる……!?」


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