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テラカオスバトルロワイアル外伝
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やがて絶望という名の病

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やがて絶望という名の病 ID:oQMPO+ii


彼は病に蝕まれていた。
彼が属する種族にとっては極めて稀な疾患でしかなかったその病。
病名を『感情』と言う。

 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

(支給品を!早く、この場を何とかしなきゃ!)
キュゥべえは自分の、そして唯のバックを漁る。

魔女との戦いは完全に防戦一方だった。
魔女と化した律の爆弾攻撃を、唯は魔法の大盾で防ぎ続ける。
それに特化しているだけあって唯の防御力は高い。
だが、このまま防御し続けてもジリ貧になることは明らかだった。
元々、他者に対する敵意という感情が極端に薄かったためか
唯には魔女に対する攻撃手段が無いのだ。

(せめて何か、別の武器を手に入れられれば――)

魔法盾を展開しているだけでも唯の魔力はどんどん消費されていく。
キュゥべえが持つグリーフシードにも限りがある。このままでは唯までもが魔力を完全に消費して魔女になってしまうだろう。
そうなれば
そうなれば自分は完全に死ぬ。

(死ぬ?)

冷たい手で内と外から同時に握り潰されるような感覚が、キュゥべえを襲った。
(これは……)
この感覚、白と黒の騎士に追いかけられた時にも僅かに感じたことがある。
未だかつて、このゲームに巻き込まれる前には経験したことのない感覚。
それは恐怖、という最も根源的な感情だった。


「キュゥべえちゃん!どうしよう!どうしよう!」
「ちょっと待ってよ!!今探してるから!」
唯の悲鳴に、キュゥべえは苛立った叫びを返した。

苛立った?

そんな状態は、本来ならインキュベーターには存在しないはずなのに。


宙に浮いたギターが、ベースが、キーボードが、そしてドラムが
耳を聾するほどの轟音で狂った演奏を鳴り響かせる。
それに合わせて不細工な人形の形をした爆弾が、雨霰と降り注ぐ。

運悪く結界に紛れ込んだらしきメガネの主婦が、その爆発に巻き込まれて微塵に吹き飛んだ。
しかしそんなことは今のキュゥべえにとってはどうでもいい。


「……これだ!」
キュゥべえは唯のバックから、一本の紐を取り出した。
それに同封されていた主催者の手紙には、このアイテムの名が「あなぬけのヒモ」であることと
使用したときの効果が記されていた。

「唯!ここから逃げよう!」
「えっ?」
次の瞬間、魔女の結界の中から唯とキュゥべえの姿は消え失せていた。





「あれ、ここって……」
唯はいつの間にか、爆発したファストフード店の前に立っていた。
「唯!ここから逃げるよ!」
「キュゥべえちゃん、私なんで……
 みんなは? あの魔女は?」
「いいから早く!」
唯を伸ばした耳で引っ張りながら、キュゥべえは渋谷駅に向かって駆け出した。




「ねぇ、みんなは、他のみんなはどうなったの?」
半ば無理矢理連れてこられた渋谷駅のホームで、魔法少女の変身を解除した唯は
涙混じりの声でキュゥべえに尋ねた。

律は魔女になったよ。他の3人は律に殺されて死んだよ。

普段ならばキュゥべえはそう答えただろう。
それが事実であるし、彼は嘘をつく必要も無かったから。
だが今そのことを唯に伝えれば、唯は絶望して魔女になる可能性が極めて高い。
田井中律のように。
本来なら、キュゥべえにとって魔法少女が魔女化するのは喜ばしいことだった。
しかしこの場でそうなれば、自分は死ぬ。


死ぬ――普通ならキュゥべえはそんなことは気にしない。
死んでもまた新しい体になるだけだから。
しかし、このゲームではそうはいかない。一度死ねば、全てが終わりだ。
だから……
「……みんな無事だと思うよ」
キュゥべえは、彼の生で初めての嘘を吐いた。

「みんな、あの魔女から逃げられたってこと? 本当に?」
「……うん」
死にたくない。
自分が死んだら、自分は消える。永遠にどこにも居なくなる。
こんなことを考えている意識さえ消滅して、二度と戻ることはない。
死んだらどうなる。何も無い。無い。無い。
それは途方もない孤独だった

嫌だ
使命、エントロピー、宇宙の運命など自分の死の前では全て無価値だ
自分が死ねば全てが無くなる――全てが

「キュゥべえちゃん!しっかりして!」
唯の声で、キュゥべえは自分の体がガタガタと震えていたことに気がついた。

何故、自分にこんな異常が起きたのか?
キュゥべえも、自分たちの種族に「感情」という稀有な精神病が存在していることは知識として知っていた。
しかしまさか、自分がその患者になるとは思っていなかった。
こうなった原因は一つ、このバトルロワイアルだ。
このゲームのために自分に科せられた、完全な死という制限。この精神の異常はその事に端を発していると考えて間違いない。
つまりこの病を治す方法は、その制限を解除する他ない。
今最優先するべきは、営業ではなくその事だ。

「そうだよね……キュゥべえちゃんも怖いよね……」
唯は震えるキュゥべえの体を持ち上げて、しっかり抱きしめる。
「みんな無事ならいいんだ……でもまたバラバラになっちゃったし、これからどうしよう……」

これからどうするか?
そうだ、どうすればいいのか。自分の制限を解く方法は……
いや、それより自分が殺されないようにしなければならない。

キュゥべえは唯の顔を見上げる。
「キュゥべえちゃん?」
「もっと……魔法少女を増やそう」
唯一人では、この先魔女やあの騎士たちと戦うには心許ない。
それに、キュゥべえは最初に主催者が言っていたことを思い出していた。
主催者が行う定時放送では、死者の名前が読み上げられる。
その中に自分の仲間のうち3人の名前があることを知れば、唯は魔女化する公算が高い。
だからその前に、唯以外の自分を守ってくれる魔法少女を作らなければならない。

「そっか、私一人じゃ魔女に勝てなくても、一緒に戦ってくれる人がいれば勝てるよね!」
キュゥべえの心中を知らず、唯はその言葉をポジティブに捉えたようだ。
「それじゃあずにゃん達を探して魔法少女になってもらおうよ。きっと、まだ遠くに行ってないと思うから……」
渋谷の街に戻ろうとする唯を、キュゥべえは慌てて引き止める。
「ま、待って唯!きっと皆はもう渋谷にはいないと思うよ!」
「えっ、どうして?」
「……唯が戦っている間に、他の場所に逃げたんじゃないかな」
「他の場所にって、なんでわかるの?」
「それは……そう、見たんだよ!君の友人たちが駅に向かって逃げるのを!」
「本当!? じゃあみんな電車に乗ったのかな。
 キュゥべえちゃん、もっと早く教えてくれればいいのに」
「……ごめん」
「ううん、いいよ。みんなが逃げられたってわかったんだから。
 じゃあ私たちも電車に乗って、みんなを追いかけようよ!」

キュゥべえの拙い嘘を、唯は信じた。

そして彼らは、山手線の電車に乗り込む。
1人は、もういない友達を探すために
1匹は、自分を守ってくれる少女を探すために
時刻は夕方と呼ばれる時間帯に近づいていた。


電車に揺られながら、キュゥべえは唯にさりげなく一つの提案をした。
「唯、君の持ってるソウルジェムだけど……僕に預けてくれないかな」
「ソウルジェムってこの宝石のことだよね?
 でも大事な物だって……」
「いや、万一のことがあると困るから、僕が預かっておこうかと思ってね。
 いいかな?」
「うん……私だと無くしちゃうかもしれないし、じゃあキュゥべえちゃんに預けるね」
唯は無邪気に、己の生命そのものをキュゥべえに渡した。

【渋谷区・山手線(内回り)車内/一日目・午後】

平沢唯@けいおん!】
[状態]:魔法少女化、疲労(中)、ソウルジェム残魔力20%、変身解除中
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、あなぬけのヒモ@ポケットモンスター、ランダム支給品0~2(本人確認済み)グリーフシード
[思考・状況]
基本:死にたくない。
1:キュゥべえと行動して、自分の友人たちを探す。
2:できれば戦いたくない。
※魔法少女になりました。
※キュゥべえの不利にならない範囲で魔法少女に関する知識を得ています。
※騎士二人(ブロントさんと混沌の騎士)がバトルロワイアルに乗っていると思っています。
【個人制限及び特殊体質】
※傷の治癒などでソウルジェムの魔力を消費。0になった瞬間、死亡or魔女化します。
※ソウルジェムを破壊されない限り肉体はどんな致命傷でも死にませんが、首輪は例外。
※ソウルジェムの魔力は時間経過回復不可。グリーフシード、それに準ずる何かで回復可能。
※キュゥべえとテレパシーで会話できますが、かなり接近しない限り不可

【キュゥべえ@魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]:感情が発生?、恐怖、火傷によるダメージ(小)、焦げ茶色
[装備]:なし
[道具]:平沢唯のソウルジェム、ランダム支給品1~3(本人確認済み)、グリーフシード(体内に×3)
[思考・状況]
基本:死にたくない。自分の制限を解除したい。
1:唯とともに行動し、自分を守ってくれる魔法少女を探す。
2:制限を解除する方法を探す。
3:騎士(ブロントさん・混沌の騎士)を警戒。
4:唯が自分に危害を加えそうになったら、ソウルジェムを破壊して殺害する。
【備考】
※感情らしきものが芽生えました。
※キュゥべえは一度殺せば死にます
※薄い壁をすり抜けることは可能です
※肉体の乗り換えができないことを知りました
※騎士二人(ブロントさんと混沌の騎士)がバトルロワイアルに乗っていると思っています




唯とキュゥべえを逃した魔女、かつて田井中律と呼ばれる少女だった魔女は
彼らを追うことなく、北に向かって移動を開始した。
最早人としての意識はない、だが人であった時の憎しみは呪いとなり
魔女となった律を動かしていた。

なぜ自分が友人を殺さねばならなかったのか。
方法はわからない、だが自分を陥れた犯人はわかる。
あの「剣の女」だ。
そうとしか考えられない。自分はあの女と戦っている最中に、こんな目にあったのだから。
あの女が爆弾から逃げた方法、それと同じようなことを自分にもして
自分と爆弾を友人たちの所に送ったのかもしれない。
きっとそうだ、そうに決まっている、つまり
澪やムギや梓を殺したのは、あの女だ。

許さない
自分を利用して仲間たちを殺したあの女を
殺す
絶対に殺してやる
切り刻み引き裂き擂り潰し抉り砕き、ありとあらゆる苦しみを与えて殺してやる
この世に一つの跡も残さぬほど微塵に吹き飛ばしてやる

悪意と呪詛に支配された魔女は、北へ
あの憎い剣の女と戦った場所へ
板橋区へと進んでいった。

【渋谷区・魔女の結界内/一日目・午後】

【田井中律@けいおん!】
[状態]魔女化、自我崩壊、板橋区に向かって移動中
[装備]魔女の爆弾
[道具]魔女の使い魔
[思考]
基本:自分の結界に入ってきた者は全て殺す
1:剣の女(シグナム)を殺すために板橋区に向かって移動する
※結界に侵入可能なのは魔法少女、あるいはそれなりの力の持ち主のみ
※一般人でも紛れ込むことはある


野比玉子ドラえもん 死亡】

※田井中律の支給品一式、謎の白い液体@現実、バンテリン@現実 が渋谷区の爆発したファストフード店に放置されています。



支給品解説

  • あなぬけのヒモ@ポケットモンスター
使用すると洞窟やダンジョンから抜け出すことができるアイテム。
このロワでは3つ支給されており、1つでパーティー1組を脱出させることができる。
カオスロワ8期ではLilyに支給されていた。


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