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テラカオスバトルロワイアル外伝
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だれでも歓迎! 編集
いつからだっただろう、彼がこの悪夢に慣れてしまったのは。





「・・・・・・ったく、またか」

冷えた床に当てられ、ぼんやりとした意識が一気に覚醒していく。
男は仰向けになった体を起こし、現在の状況を確認すべく周囲を見渡した。
遠くには誰も座っていない観客席があり、奥行きがある天井にはいくつも照明がぶら下がっている。
周囲に人が倒れていることを除けば、男にとっては見覚えある景色だ。

「で、この状況か」

男の記憶によるとそこは『幕張メッセ』の一角。
企業の技術を披露するイベント会場として有名な所であり、
かつては世界最大規模の同人誌即売会が行われていたことさえもある。
しかし今の男の周りには、男女様々な人間が横たわっている。
学生から社会人、そして、彼の過ごした一般社会では見かけることが無いような服装の人種の姿も見えた。
何人かは男と同じように目覚めているものの、そのほとんどが現在の状況に混乱している者ばかりだ。

「あー、やっぱりこういうことね」

男は軽く鼻息を鳴らしながら笑みを浮かべる。
別に戸惑う群衆を嘲笑しているわけではない。
彼はわかっていたのだ。
見知らぬ場所に多くの人々が集められて行われている、今のイベントのことを。


「これはまさか・・・・・・魔女のせい!?」

ふと耳元に入った声に反応してみると、そこには学生服を着た少女の姿が見えた。
胸には立派なものがついているが、顔立ちからはまだ子供臭さが抜けていない。
彼女を中学生ぐらいだと判断した男は、腰を落として目線を同じ高さに合わせながら優しく話しかける。

「そんなに慌ててどうしたんだい? ・・・・・・ってこの状況で慌てんなってのが無理か」
「どうしたもこうしたも・・・・・・って貴方は一体誰ですか?」
「それは別に今、重要なことじゃあないだろ。 それよりも自分の首を見た方がいい」

そう言って男は自分の首を指し示す。
そこには銀色に輝く、鉄状の物体が、彼の首に巻きついてあった。
首輪の存在に気づいたのか、少女は即座に両手で自分の首を触る。

「これは一体何!? まさかこれも・・・・・・」
「魔女の仕業ってか。 さっきも言ってたけどなんだよ魔女って?」
「いやそれは・・・・・・」

彼にとって魔女というのは、箒に乗って空を飛んだり杖から火を出したり筋肉を出したり
壺に色んな物を混ぜてチョコクランチをつけて『んうまぁい!!!!! テーレッテレー』するものだ。
そのような人間は男にとっては当たり前の存在であるが、少女にとってはそれは隠しておきたい事柄らしい。
だから男は少女に半ば呆れつつも、優しく語り掛ける。

「別にお前を疑っているわけじゃねえよ。 こうしていても仕方ないだろ? 暇なら話の一つや二つでも聞かせてくれ」

話半分には聞いてやるよ、と言わんばかりに男は腕を組む。
少女は一瞬戸惑ったが、特に彼を振りほどく理由も見当たらないのかその場から動こうとしない。
そして観念したのか男の顔を見て、重い口を開き始める。

「わかりました、別に創作だと思ってもらっても結構です。
 でも聞くからにはちゃんと聞いてください」
「おお、いつでも来い」



世界には魔女と呼ばれる存在がいる。
魔女は普段は自分の結界の中に住んでいるが、時折人々を襲う怪物である。
原因不明の自殺や殺人は、彼らが魔女に襲われたせい。
それを狩るために、魔法少女がいる。
実は少女も魔法少女であり、今まで色んな魔女を倒して、人々を救ってきた。
必殺技の名前はティロ・フィナーレ。 アルティマ・シュートとどっちにするか悩んだ。

要約すると少女の話はこうである。
少女としては、何も知らない一般市民も受け入れやすいように、
簡潔にまとめて話したつもりだ。
最も話している内に白熱して、自身の武勇伝を時折混ぜてはいたが。

「ねえよwwwwww」



そして案の定、男は腹を抱えて笑っていた。

「ちょ・・・・・・いくらなんでもその反応は酷いと思います!」
「ティwwwロwwwフィwwwナーwwwレwww
 厨ニ乙wwwwww」

少女自身は想像していたことだが、耳元まで響く男の笑い声は彼女の機嫌を損ねるのに十分だった。
話さなきゃ良かったと顔を赤くする少女であったが、肩を叩かれて改めて彼の方を向く。
笑顔も声同様に憎らしかったため、少女は彼の顔を睨みつけて頬を膨らませた。

「まあ魔女云々の話は信じてやるよ。 でもその年になって必www殺www技www」
「もう・・・・・・笑いすぎですよ!」
「あーあすっきりした、それより始まるみたいだぜ。 少し落ち着こうじゃねえか」

お前が言うなと少女は男を睨むが、同時に周囲の人間が全員立ち上がっていることに気づく。
そして二人は、彼らの視線に吊られて観客席を見上げると、杖を突いている老人の姿が見えた。
ボロ切れを纏ったみすぼらしい姿は、人によっては『仙人』と例えるだろうが、
人々が彼を見る目は、路上によくいる世捨て人そのものだ。



「あーマイクテストマイクテスト、本日は晴天なり。 うんこれは問題ないみたいじゃ」

落ち着きを取り戻し始めていた幕張メッセ内の人々の間に、再び動揺の声が走る。
少女も彼らの例に漏れず、老人への警戒を顕にして、神妙な顔で見据えた。
一方男は両の手を横に垂らして首を横に振っている。
そんな彼らの意思を無視するかの如く、老人は軽い口調のまま言い放つ。

「全員起きているようじゃな。 良いか?これから大事なことを言うぞ。
 今日は・・・・・・」
(はいはいわかってるわかってる)

老人の口から紡がれる言葉に人々が緊張を保つ中、
男は1人、台詞を口パクで綴った。




「今日は、皆さんにちょっと殺し合いをしてもらいます」




(ったくやっぱりこれか。 そういやこれ、毎回毎回テンプレだよな)

使い回された台詞だと男は呆れ、彼の想像通り人々は混乱し始める。
一瞬の沈黙の後、嘆きや叫び声さらには老人に対する怒声が飛び交い、幕張メッセ内の混乱は最骨頂に達した。

(となるとそろそろだな)

男が周囲を見渡すと、幾人かは拳を構えてファイティングポーズを取ったり、武器を取り出している。
そして彼の隣にいた少女は、いつのまにか学生服から、女児向けアニメに出てくるような魔法少女の衣装へと着替えていた。
両手に持ったマスケット銃が妙に衣装にマッチしている。

(じゃ、そろそろ腹くくるとするか)

さして武術を学んだことの無い男でも、辺りから殺気が発されていることはわかっていた。
少女も彼らの例に漏れず今にでも発砲しそうだ。
もし彼女が老人に向けてこれを放ったらどうなるか。
自問自答してため息をついた後、彼は少女の前に手を出して、静止する。

「何をするんですか? あの魔女を放っておいたら何をされるか・・・・・・」
「わかってるんだよ。 こういうのは俺の役目だ」
「何を言って・・・・・・!?」

直後、少女は男に起こった異変によって凍りついた。
Tシャツにジーンズと先ほどまでラフな格好をしていた男の背中が白い外殻に覆われたのだ。
全身を包む白いタイツにスケート靴と、異様な井出達をした男に少女は言葉を失った。
変身はしているが、彼女の知る魔法少女の常識から当てはめてみれば明らかに異質であるし、
かと言って不幸を撒き散らす魔女だと思えない。
しかし、それの正体を確かめる暇も無く男は1人、観客席に向かっていく。



「三下は引っ込んでな!」

男は自身のスタンド能力を使い、足元の地面を凍らせる。
氷のプレートを蹴り出して、跳躍。片足が地に着地すると同時に新たにプレートを作る。

「おらおら692様のお通りだぁ!」

老人に向かって次々と凍っていく芝生に、付近にいた人々は思わずそこから飛びのいていく。
その上を滑るのはこの道を作り出した、692と名乗った男だけだ。
『ホワイト・アルバム』
絶対零度を操る彼のスタンド能力ならば、コンクリートをスケート場のように滑り回ることぐらい動作もない。
十分に助走をつけた後、傾斜をつけたプレートを作り出してジャンプ台の要領で観客席まで飛んだ。

「つうわけでてめぇを殺して、早いところここからおさらばさせてもらうぜ!」

692は自身の掌に冷気を圧縮させる。
  • 273.15℃。
物質に置ける温度の下限、低温環境に慣れていない生物ならば、
体温が奪いつくされ、生命活動を一瞬にして停止させてしまうであろう。
後は慣性の法則に任せて体ごとぶつけるだけ。

「この年になって冷え性は答えるんのう。 ほれ、メラゾーマ」

呪文とともに、692の眼前の老人は大きな火球へと姿を変える。
否、実際に変わったわけではない。 視界を覆いつくすほどの巨大な火の玉が放たれたのだ。
咄嗟に彼は氷の壁を作り出し威力を軽減しようとするが、それを無意味だと嘲笑うかのように灼熱が692を包み込む。
後には氷の外殻を失った692の姿だけが老人の足元に残されていた。



「692さん!」

沈黙を守っていた人々の中から1人の少女の声が響く。
先ほどまで692とともにいた少女、巴マミだ。
彼の元に駆け寄ろうと足を踏み出そうとするが、足元が凍らされているため体を前後に揺らすことしかできない。
692は全身に火傷を受けながらも立ち上がり、そんなマミを一瞥して微笑した。
そして老人に向き直ると、鼻を鳴らして再び口を開く。

「糞ジジイめ、さっさとくたばりやがれ」
「老人は敬うもんじゃい」
「老"害"がナマ言ってんじゃねえよ」

肉体はボロボロだが、言葉の勢いだけは衰えない。
その後も692は憎まれ口を老人に次々を浴びせていく。
最初は二人の口喧嘩が続いていたが、次第に老人が痺れを切らし
手持ちの杖を彼の頭に叩きつけた。
人々から悲鳴が上がり、692は血で塗れた部分を抑え付ける。
しかし手に納まりきらなくなった血液が指の隙間から溢れ出し、コンクリートの地面を赤く染めた。

「692如きが粋がるもんじゃないわい。
 まあちょうどいいしルール説明の一環として、首輪の説明と行こうかの」

692の呻き声を無視し、老人は自身の首を指す。
すると人々の中から今度は驚愕の声が上がり始める。

「この殺し合いが円滑に進むためにルールが設定されておるんじゃ。
 それを破った場合は・・・・・・」

老人が口ごもったすぐ後に、692の首輪から電子音が鳴り始める。
ピッピッピと規則的に鳴っていたそれは、次第に音の間隔が短くなっていく。




(今回はこれで終わりか・・・・・・そうだよな、こんな男の末路なんてこんなもんでいい)

692は何処にでもいる普通の青年だった。
特別な才能を持ったわけでもなく、別にそれを悔やむこともなく毎日を平凡に過ごしていた。
ただ、いつからだったか、彼は夢を見るようになっていた。
きっかけは自分のパソコン、いつも巡回しているインターネットのコミュニティにアクセスした時のことだ。
調子に乗って憎まれごとを書き込んだ瞬間、目の前の景色が変わっていた。

(思えばあれからだ、俺がこうなっちまったのは)

放り込まれたのは殺し合いの世界。
ルールの何も決められていない、おもちゃ箱の中身をぶちまけたような混沌の世界で、
彼は殺人を行った。
殺されるかも知れない、そんな狂気に呑まれて1人の少女を追い詰めて、凄惨な死へと追いやってしまった。

(悪いことってのはやっぱり良いことで相殺できるってわけじゃないんだよな)

692という男は本来は悪人ではない。
正気を取り戻した後は、知り合いや彼の仲間達とともに絶対悪と戦って、
世界に光を齎す礎となって死んでいった。
そこで彼の命は潰えたはずだ。

しかし、彼はまた別の場所で新たな命を授かった。


(その後は本当散々だったぜ。 起きたら死にまた起きても死んでいく。
 いい加減終わらせてくれっての)

ある時は暗殺されまたある時は銃殺、斬殺撲殺etc・・・・・・
殺人に置ける一通りの死因は経験してきたではないか。
生を受け続けることができない自身の運命に、嫌気が差していた。
だから彼は眠り続けた。 夢を見ている間はせめて死ぬことがなかったから。

(今回はここで終わりか)

692は、ここに来て初めて自分の名前を呼んでくれた少女を見る。
未だに血を流し続ける692を見るマミは、その後を悟ったのか、悲しそうに彼を見つめている。
少女の目に燃える正義感は、彼からすれば間違いなく『対主催』だ。
バトルロワイアルに大きな影響を与える可能性を持つ彼女が、こんなところで潰えてしまうのは
彼自身としては許せなかった。
電子音の激しさがさらに増し、耳障りになった692は両目を閉じる。

(俺みたいな死体役はこれでいいんだ。 別にまた生き返るんだからな。
 ・・・・・・でも、もしここで終わることができるのなら・・・・・・)



何かが弾けた音がした。















「と、このようになるから注意するんじゃ」

爆散した692の頭を踏みつけ、老人は注意を促す。
悲鳴を上げた者もいたが、男の二の舞になることを恐れたのか、
ドーム内で声を上げるものは誰一人としていなくなっていた。

「首輪が爆発しても大・丈・夫!とか思っちゃいけないぞ。
 人間やロボットはもちろん、魔法少女じゃろうが人外の怪物じゃろうが文句無く死ぬようになっておるんじゃい」

老人はおどけた顔をして「ばぁん」と呟く。

「まあ、こちらで指定した会場を出たり、禁止したところに入らなければ
 基本的に爆発しないからそこらへんは安心じゃな。 そして戦いが苦手って人のために用意したのがこれじゃ」

そう言って老人は、両手で抱えられるほどのデイバッグを持ち上げた。
中から紙切れやパン、銃などを取り出して、ドームにいる人々に見せびらかしている。

「これはサンプルじゃが、デイバッグには様々な道具が入っておるから好きに使うのじゃ。
 地図に食料と基本的なものは一通り揃っておるが、その他のものはランダムじゃぞ。
 もちろん外れもあるから、それを引いてしまった時はごめんなさいするから許してくれ」

両の手の平を合わせて軽く会釈するが、老人から笑みが消えることはない。
痺れを切らしたのか、ドーム内から再び殺気が漏れ出している。
しかし、老人は子供を叱り付けるかのように彼らに語りかけた。

「いくらお前達がどんなすごい力を持っていても、ワシに逆らうことはできんぞ。
 こちらでお前達の能力に制限をかけておるから本来の力を出すことはできまい。
 ほら、それでもいいならかかってこい。 ほら!」

だが、老人の言葉に反して692のように飛び掛るものはいなかった。
沈黙を保ち続ける人々を見て、老人はほくそ笑む。

「腰抜けどもめ。 まあ逃げ回っていられるのも今の内じゃ。
 一定時間ごとに禁止エリアを設定していくからの。
 6時間ごとに誰が死んだかとかを知らせる定時放送を行うんじゃが、その際禁止エリアを設定させてもらう。
 そこに足を踏み入れて一定時間経ったら・・・・・・こうなるからの」

692の死体が杖で突っつかれ、何人かの顔から血の気が引いた。

「まあまあそんな暗い顔するもんじゃない。
 もしこの殺し合いに生き残ることができたなら、どんな願いも叶えてやるからの。
 大金持ちや不老不死はもちろん、気になるあの娘のハートをゲットしたり世界的スーパースターになったり、
 死者蘇生なんかも可能じゃからな」

言い終えた後、老人は杖を死体に向かって振りかざした。
すると周囲の肉片が胴体に集まりだし、692だった男の肉体を組み立てたのだ。
首輪が無くなった692は、自分を見てニヤニヤ笑みを浮かべる老人と、反対に驚愕する人々を見て、
自身の身に起こったことを理解した。
元凶である老人を睨みつけて、再び辞世の句を吐き捨てる。




「・・・・・・糞が」


直後、692の体が砂となって崩れ落ちた。
今度は血の一滴も残さない。
692だった物は風に飛ばされ、空気と見分けがつかない程までに細かく砕かれて消えていく。
1人の男の末路を見届けるしかなかった人々の目の前に現れたのは、老人が見せたものと同一のデイバッグだ。

「その他細かいルールは放送で伝えることにするわい。 もっともそこまで生き残れたらの話じゃがの・・・・・・
 さてこれよりバトルロワイアル開幕じゃ!」

老人の笑い声が響き渡り、人々は幕張メッセから次々と姿を消していく。
やがて自分1人になったことを確認した老人は、施設の扉の中に入っていった。






混沌たる世界の中から55の人物が選ばれた。
彼らはいずれも少なからず世界に混沌を与えた者である。
選定に加担したのは『賢者』と呼ばれた老人。
しかし1人の男は消滅を望んでその存在を消した。
残った者達から新たに紡ぎ出した物語は、混沌たる物になりえるのだろうか。
そして692という男に救いはあったのか。
それを知る術はまだ無い―――




【テラカオスバトルロワイアル外伝―――GAME START】
【692@カオスロワ 死亡確認】
【残り54人】 



【???・???】
【老賢者@誤爆スレ】
【状態】バトルロワイアル主催者
【装備】杖、その他不明
【道具】不明
【思考】基本:バトルロワイアルを運営する。
※他に主催者がいるかも知れません。

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