白銀の雷光
Facing each other world2
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thrones
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2:二重存在
あれからどれくらい歩いただろうか?
東の空が白み始めた頃、カイは森を抜けた。
一時の気の緩みも許されない、緊張の連続に、ぐっしょりと掻いた額の汗を拭う。
明るくなり始めた事と、森を抜け視界が開けた事により、カイはようやく張り詰めた緊張の糸を解いた。
(とりあえず、本部に連絡を入れて、迎えを寄越してもらおう―)
いくら長官と言う立場にあったとしても、私用で飛空艇を動かすとなれば、報告の義務が生じる。
どう説明していいものか?
当事者たる本人が、現状を理解し切れていない以上、内容もあやふやなものになるだろうし、第一、そんな報告に意味があるとも思えない。
できた執事は何も言わないだろうが…借りを作る事になりそうだ。
疲労困憊。カイは深い溜息と共に頭を抱えた。
東の空が白み始めた頃、カイは森を抜けた。
一時の気の緩みも許されない、緊張の連続に、ぐっしょりと掻いた額の汗を拭う。
明るくなり始めた事と、森を抜け視界が開けた事により、カイはようやく張り詰めた緊張の糸を解いた。
(とりあえず、本部に連絡を入れて、迎えを寄越してもらおう―)
いくら長官と言う立場にあったとしても、私用で飛空艇を動かすとなれば、報告の義務が生じる。
どう説明していいものか?
当事者たる本人が、現状を理解し切れていない以上、内容もあやふやなものになるだろうし、第一、そんな報告に意味があるとも思えない。
できた執事は何も言わないだろうが…借りを作る事になりそうだ。
疲労困憊。カイは深い溜息と共に頭を抱えた。
ピピッ、ピピッ。
小さな電子音が、呼び出しを告げる。
「おや?」
こんな時間に通信とは珍しい―
執事―ベルナルドは通信機の前に腰を下ろした。
「こんな時間に通信とは…、どうされましたかな?」
通信機の端末の周波数によって、相手が誰であるか、すでに熟知しているベルナルドは、たっぷり嫌味を織り交ぜて問いかけた。
「すいませんが、N189S24ポイントまで、迎えを寄越してください。」
いつもの調子のベルナルドに苦笑を浮かべながらも、さらりと嫌味をかわして用件を述べる。
「は?N189S24ですか? またえらく遠いですな。 …旅行でも?」
「…そんな事ある訳ないでしょう?」
渋い表情で、心底うんざりと呟く。
疲れている時に、この手の冗談に付き合える程、暇でもなければ余裕がある訳でもない。
「とにかく。帰ったら私の説明できる範囲で話しますから。」
「分かりました。すぐに迎えを行かせましょう。」
プツリと通信が切れて、カイはほっと一息付くと通信機を納める。
数時間後―
現れた飛空艇に乗り込み、カイはようやく巴里への帰途についた。
小さな電子音が、呼び出しを告げる。
「おや?」
こんな時間に通信とは珍しい―
執事―ベルナルドは通信機の前に腰を下ろした。
「こんな時間に通信とは…、どうされましたかな?」
通信機の端末の周波数によって、相手が誰であるか、すでに熟知しているベルナルドは、たっぷり嫌味を織り交ぜて問いかけた。
「すいませんが、N189S24ポイントまで、迎えを寄越してください。」
いつもの調子のベルナルドに苦笑を浮かべながらも、さらりと嫌味をかわして用件を述べる。
「は?N189S24ですか? またえらく遠いですな。 …旅行でも?」
「…そんな事ある訳ないでしょう?」
渋い表情で、心底うんざりと呟く。
疲れている時に、この手の冗談に付き合える程、暇でもなければ余裕がある訳でもない。
「とにかく。帰ったら私の説明できる範囲で話しますから。」
「分かりました。すぐに迎えを行かせましょう。」
プツリと通信が切れて、カイはほっと一息付くと通信機を納める。
数時間後―
現れた飛空艇に乗り込み、カイはようやく巴里への帰途についた。
「おはようございます」
巴里の街が朝日に照らし出され、人々が活動を始めた頃、
カイはいつものように、国際警察機構へと現れた。
「おや?もう、お戻りになられたんですか?」
「はい?」
不思議そうに首を傾げるベルナルドに、カイもこの優秀な執事が一体何を言っているのか分からず、困惑の表情を浮かべる。
「人が悪いですな。昨晩遅く、N189S24まで迎えを寄越してくれと言ったのは、カイ様ではありませんか」
「は? 私は昨日、一度も通信を入れてはいませんよ?」
「御冗談を。このベルナルド、確かにカイ様から通信を賜っております」
「ですから! 私は通信などしていません!」
多少のいら立ちを含んだ言葉が、語尾を粗くする。
この様子から、カイがからかっているのではない事が伺い知れた。
「………」
「……」
二人して黙り込む。
沈黙が続いて―
「本当に…カイ様ではないのですか?」
ベルナルドが、信じられないといった様子で口を開く。
「ええ。 一体どう言う事でしょう?通信は、間違いなく『私』からだったんですね?」
「はい。間違えるはずがありません。『カイ様』からの通信でした。」
カイは暫し考え込んでいたが、ややあって―
「…こうして考えてみても仕方ありません。その人物は国際警察機構(ココ)に向かっているんでしょう?」
「そう思われます。」
「ならば、その人物が来れば、すべてハッキリするでしょう。とりあえず、現状でできる事は警戒を怠らない事です。」
「承知しました」
一礼し、静かに退室するベルナルドの背を見送りながら、カイは不思議な事もあるものだと感心していた。
どこの誰かは知らないが―
乗り込んでくるとはいい度胸だ。
その化けの皮剥がしてやろう。
カイは不適な笑みを浮かべると、片付かない仕事に取りかかった。
巴里の街が朝日に照らし出され、人々が活動を始めた頃、
カイはいつものように、国際警察機構へと現れた。
「おや?もう、お戻りになられたんですか?」
「はい?」
不思議そうに首を傾げるベルナルドに、カイもこの優秀な執事が一体何を言っているのか分からず、困惑の表情を浮かべる。
「人が悪いですな。昨晩遅く、N189S24まで迎えを寄越してくれと言ったのは、カイ様ではありませんか」
「は? 私は昨日、一度も通信を入れてはいませんよ?」
「御冗談を。このベルナルド、確かにカイ様から通信を賜っております」
「ですから! 私は通信などしていません!」
多少のいら立ちを含んだ言葉が、語尾を粗くする。
この様子から、カイがからかっているのではない事が伺い知れた。
「………」
「……」
二人して黙り込む。
沈黙が続いて―
「本当に…カイ様ではないのですか?」
ベルナルドが、信じられないといった様子で口を開く。
「ええ。 一体どう言う事でしょう?通信は、間違いなく『私』からだったんですね?」
「はい。間違えるはずがありません。『カイ様』からの通信でした。」
カイは暫し考え込んでいたが、ややあって―
「…こうして考えてみても仕方ありません。その人物は国際警察機構(ココ)に向かっているんでしょう?」
「そう思われます。」
「ならば、その人物が来れば、すべてハッキリするでしょう。とりあえず、現状でできる事は警戒を怠らない事です。」
「承知しました」
一礼し、静かに退室するベルナルドの背を見送りながら、カイは不思議な事もあるものだと感心していた。
どこの誰かは知らないが―
乗り込んでくるとはいい度胸だ。
その化けの皮剥がしてやろう。
カイは不適な笑みを浮かべると、片付かない仕事に取りかかった。
あとがきです…
なぜか書かないと次から大変なことに…;
ここからですが、同時間、空間軸に2人の同じ人物が存在します。
そのため、混同することがないように変化をつけなくてはならなくなりました。
そのままカイと記載されているのが、本来この世界に存在するカイで、
<カイ>となっているのが、この世界に飛ばされてやってきた<カイ>です。
頭の中での思考は()で括ってるのがこの世界のカイで、〔〕で括ってるのがこの世界に飛ばされた<カイ>です。
台詞も「」がこの世界のカイ、『』が飛ばされてきた<カイ>です。
分けていきますんでお願いします。
なぜか書かないと次から大変なことに…;
ここからですが、同時間、空間軸に2人の同じ人物が存在します。
そのため、混同することがないように変化をつけなくてはならなくなりました。
そのままカイと記載されているのが、本来この世界に存在するカイで、
<カイ>となっているのが、この世界に飛ばされてやってきた<カイ>です。
頭の中での思考は()で括ってるのがこの世界のカイで、〔〕で括ってるのがこの世界に飛ばされた<カイ>です。
台詞も「」がこの世界のカイ、『』が飛ばされてきた<カイ>です。
分けていきますんでお願いします。