白銀の雷光
Facing each other world4
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4:迷走
こうして一騒動の後、国際警察機構を飛び出した<カイ>は、人込みを避け、隠れるように路地裏へと紛れ込んだ。
それでも、途中で何人かの市民と出くわし、声を掛けられては怪しまれない程度に適当にやり過ごす。
この時ばかりは、目立つ己自身を疎ましく思った。
この街に留まる事はできない。
今の<カイ>はお尋ね者なのだ。
早く立ち去らなければ― 現に、尾行が付いている。
平静を装い、複雑に入り組んだパリの路地裏をすり抜ける。
角を曲がった先、悟られぬよう走り出す。
尾行が気付いた時には、そこに<カイ>の姿はなかった。
『ふぅ…』
上手く尾行をやり過ごし、<カイ>は息を付く。
紛れ込んだ廃屋で、日暮れを待つ事にした。
それでも、途中で何人かの市民と出くわし、声を掛けられては怪しまれない程度に適当にやり過ごす。
この時ばかりは、目立つ己自身を疎ましく思った。
この街に留まる事はできない。
今の<カイ>はお尋ね者なのだ。
早く立ち去らなければ― 現に、尾行が付いている。
平静を装い、複雑に入り組んだパリの路地裏をすり抜ける。
角を曲がった先、悟られぬよう走り出す。
尾行が気付いた時には、そこに<カイ>の姿はなかった。
『ふぅ…』
上手く尾行をやり過ごし、<カイ>は息を付く。
紛れ込んだ廃屋で、日暮れを待つ事にした。
「申し訳ございません!」
二人の部下が、カイの前で深々と頭を下げた。
「いえ、気にしなくてもいいですよ。一応、形だけのものでしたし、見失ったら仕方ありません。それに―…」
何かを言いかけて、ハタと口を噤む。
「カイ様?」
その様子を不安に思ってか、部下が声をかけた。
「あ、いえ。 なんでもないです。もういいですよ。二人共御苦労さまでした。下がってください」
微笑みを浮かべ、二人の部下を労い退室させると、椅子に深く身体を預ける。
(そう…あれは― 私なのだから。どういった理由かは分らないが…放っておいても問題はないだろう)
それよりも。
各地で起きる大量虐殺事件の方が問題だった。
こちらの方は、全く前進していない。
未だ解決の糸口さえ掴めていないのが現状だ。
思わず付いて出た溜息に、最近癖になってるなと苦笑する。
そうして、カイは再び通常業務に戻った。
二人の部下が、カイの前で深々と頭を下げた。
「いえ、気にしなくてもいいですよ。一応、形だけのものでしたし、見失ったら仕方ありません。それに―…」
何かを言いかけて、ハタと口を噤む。
「カイ様?」
その様子を不安に思ってか、部下が声をかけた。
「あ、いえ。 なんでもないです。もういいですよ。二人共御苦労さまでした。下がってください」
微笑みを浮かべ、二人の部下を労い退室させると、椅子に深く身体を預ける。
(そう…あれは― 私なのだから。どういった理由かは分らないが…放っておいても問題はないだろう)
それよりも。
各地で起きる大量虐殺事件の方が問題だった。
こちらの方は、全く前進していない。
未だ解決の糸口さえ掴めていないのが現状だ。
思わず付いて出た溜息に、最近癖になってるなと苦笑する。
そうして、カイは再び通常業務に戻った。
数時間後。
やがて訪れた夜の闇に紛れて街をでた。
外れから小さくなった、少ない街明かりを振り返る。
ここに自分の居場所はない。
行くべきところも、ましてや帰るべき場所もない。
途方に暮れて空を仰ぐと、月のない夜空には満天の星が瞬いていた。
<カイ>はただ、呆然と星空を見上げて、今後の事を模索する。
とりあえずは、なるべく人目を避けなければ。
それでいて、元の世界へ戻れる方法を見つけなくては。
『……』
今が大丈夫だからといって、この先も問題が生じないとは限らない。
元々本来なら、この世界に自分は存在しないのだ。
もしかしたら、自分がココに存在する事で、何かしら影響が出るのではないか?
出ているのではないか?
自分と言う存在が原因で、この世界のカイ=キスクになんらかの問題が
出るかも知れないし、もう出ているかも知れない。
やがて訪れた夜の闇に紛れて街をでた。
外れから小さくなった、少ない街明かりを振り返る。
ここに自分の居場所はない。
行くべきところも、ましてや帰るべき場所もない。
途方に暮れて空を仰ぐと、月のない夜空には満天の星が瞬いていた。
<カイ>はただ、呆然と星空を見上げて、今後の事を模索する。
とりあえずは、なるべく人目を避けなければ。
それでいて、元の世界へ戻れる方法を見つけなくては。
『……』
今が大丈夫だからといって、この先も問題が生じないとは限らない。
元々本来なら、この世界に自分は存在しないのだ。
もしかしたら、自分がココに存在する事で、何かしら影響が出るのではないか?
出ているのではないか?
自分と言う存在が原因で、この世界のカイ=キスクになんらかの問題が
出るかも知れないし、もう出ているかも知れない。
「そんなに難しい顔して、どうしたの?カイちゃん」
ふいに、底抜けに明るい声を聞いた気がした。
そういえば、多少今の自分とは状況が違うものの、同じような境遇にあるアクセルの事が思い浮かんだ。
アクセルも…不安な気持ちをその笑顔に隠して、気丈に振る舞っているのだろうか?
考えれば考える程、思考は悪い方へと流され、取り留めがなくなりそうだ。
導かれた不安を、振払うように否定して、夜空を見上げた。
そこには、変わらぬ星空が広がっている。
ここで色々考えて、落ち込んでいても仕方がないし、行動しない事には何も始まらない。
何か―… 理由があってこの世界に飛ばされたのだとすれば。
自分に対して、何らかのアクションが起こるはずだ。
楽観できる状況ではないけれど、そう悲観する事でもないのではないだろうかと思う。
<カイ>は一瞬だけ口元に笑みを浮かべ― すぐさま表情を戻した。
そして、再び闇の中を歩み始めた。
やがて、街の明かりが見えなくなり、景色も次第に寂しいものになっていた。
夜の中。ザワリと蠢く闇に、不穏な気配を滲ませて<カイ>の周りを取り囲む。
手にした封雷剣が青白い雷を纏い、闇を照らし出す。
―ギア!―
6体程いるだろうか?
最初に、この世界にきた時にも遭遇したギアと同タイプだ。
ギアが、司令塔無きままで活動しているという事実は、<カイ>を驚愕させた。
もしかしたら、この世界のギアは、単独で活動できるのかも知れない。
<カイ>を標的と定め、ギアの群れは一斉に襲いかかる。
青白い光が一閃すると、踊りかかったギアの群れは、瞬く間に骸と化した。
そして、ギアは始めからそこに存在しなかったかのように―
あの時と同じく霧散して、後には何も残らなかった。
『まただ… 一体どうなっているんだ』
Bクラスのギアが、6体という少数で行動するというのも妙だった。
それに、気のせいか、クラスの割にあっけない気もする。
『……』
今は情報が圧倒的に足りない。
この状況であれこれ詮索しても、答えが出ようはずも無い。
<カイ>は無駄な労力を使う事を止め、先を急ぐ事にする。
いくら<カイ>の敵ではないとはいえ、ギアが闊歩する闇の中に身を置くのは正直いい気はしない。
この先を少し歩けば、小さな街があったはずだ。
こちらの世界にもあるのかどうかは分らないが、とりあえず休めるところが欲しかった。
そこで一息入れられれば、山を越え東に向かおう。
そうすれば、身を隠すには最適なところがある。
<カイ>は重い気持ちのまま、この先にあるはずの街を目指す事にした。
ふいに、底抜けに明るい声を聞いた気がした。
そういえば、多少今の自分とは状況が違うものの、同じような境遇にあるアクセルの事が思い浮かんだ。
アクセルも…不安な気持ちをその笑顔に隠して、気丈に振る舞っているのだろうか?
考えれば考える程、思考は悪い方へと流され、取り留めがなくなりそうだ。
導かれた不安を、振払うように否定して、夜空を見上げた。
そこには、変わらぬ星空が広がっている。
ここで色々考えて、落ち込んでいても仕方がないし、行動しない事には何も始まらない。
何か―… 理由があってこの世界に飛ばされたのだとすれば。
自分に対して、何らかのアクションが起こるはずだ。
楽観できる状況ではないけれど、そう悲観する事でもないのではないだろうかと思う。
<カイ>は一瞬だけ口元に笑みを浮かべ― すぐさま表情を戻した。
そして、再び闇の中を歩み始めた。
やがて、街の明かりが見えなくなり、景色も次第に寂しいものになっていた。
夜の中。ザワリと蠢く闇に、不穏な気配を滲ませて<カイ>の周りを取り囲む。
手にした封雷剣が青白い雷を纏い、闇を照らし出す。
―ギア!―
6体程いるだろうか?
最初に、この世界にきた時にも遭遇したギアと同タイプだ。
ギアが、司令塔無きままで活動しているという事実は、<カイ>を驚愕させた。
もしかしたら、この世界のギアは、単独で活動できるのかも知れない。
<カイ>を標的と定め、ギアの群れは一斉に襲いかかる。
青白い光が一閃すると、踊りかかったギアの群れは、瞬く間に骸と化した。
そして、ギアは始めからそこに存在しなかったかのように―
あの時と同じく霧散して、後には何も残らなかった。
『まただ… 一体どうなっているんだ』
Bクラスのギアが、6体という少数で行動するというのも妙だった。
それに、気のせいか、クラスの割にあっけない気もする。
『……』
今は情報が圧倒的に足りない。
この状況であれこれ詮索しても、答えが出ようはずも無い。
<カイ>は無駄な労力を使う事を止め、先を急ぐ事にする。
いくら<カイ>の敵ではないとはいえ、ギアが闊歩する闇の中に身を置くのは正直いい気はしない。
この先を少し歩けば、小さな街があったはずだ。
こちらの世界にもあるのかどうかは分らないが、とりあえず休めるところが欲しかった。
そこで一息入れられれば、山を越え東に向かおう。
そうすれば、身を隠すには最適なところがある。
<カイ>は重い気持ちのまま、この先にあるはずの街を目指す事にした。