【表記】ギルガメッシュ
【俗称】ギル、我様
【種族】
サーヴァント
【備考】
【切札】
【設定】
【ステータス】
筋力B 耐久C 敏捷C 魔力B 幸運A 宝具EX(SN、CCC)
筋力B 耐久B 敏捷B 魔力A 幸運A 宝具EX(zero)
筋力C 耐久C 敏捷C 魔力C 幸運A 宝具EX(子ギル)
筋力C 耐久D 敏捷C 魔力B 幸運A 宝具EX(魔)
ハ。我は何であろうと対応するわ。
ランサーだけは、まあ、話は別とするが。
油断して死んでしまったが、ガルラ霊どもが来る前に物陰に隠れ呼吸を止め瞑想に浸り気配遮断EX。
【スキル】
対魔力:E
魔術に対する守り。無効化はできず、ダメージ数値を多少削減する。
対魔力:C
第二節以下の詠唱による魔術を無効化する。
大魔術、儀礼呪法など大掛かりな魔術は防げない。
単独行動:A+
マスター不在でも行動できる能力。
単独行動:A
マスター不在でも行動できる。
ただし宝具の使用などの膨大な魔力を必要とする場合は、
マスターのバックアップが必要。
単独行動:EX
マスター不在でも行動できる。
ただし宝具の使用等、多大な魔力を必要とする行為にはマスターのバックアップが必要となる。
陣地作成:A(魔)
魔術師として道具を作るばかりか、建築すらやってのける。
そもそもウルクの城塞はギルガメッシュによるデザインである。
粘土と石の建築では限界があるため、「もっと木材がほしい。杉の森に行かねばならんか……」と呟くも、
エルキドゥとの一件が尾を引いて杉の森には行きたがらない王であった。
道具作成(偽):A(魔)
魔力を帯びた器具を作成する。
本来魔術師ではないギルガメッシュはこのスキルを持ち得ないが、宝具の存在によってこのスキルと同等の能力を得ている。
作り出される(宝具から取り出される)道具はすべて「バビロンの宝物庫に在るモノ」である。
黄金律:A
身体の黄金比ではなく、人生において金銭がどれほどついて回るかの宿命。
大富豪でもやっていける金ピカぶり。一生金には困らない。
カリスマ:A+
大軍団を指揮・統率する才能。
ここまでくると人望ではなく魔力、呪いの類である。
最も優れた王であったというギルガメッシュの、賢王としてのカリスマ。
魔力や呪いでもあるかのような極めて高いカリスマ性を有している。
神性:B(A+)
最大の神霊適正を持つのだが、ギルガメッシュ本人が神を嫌っているのでランクダウンしている。
神との交わりの深度、【神霊適正】の高さを表すスキル。
最高クラスの適正を持っていたが、神を忌み嫌うがゆえにランクダウンしている。
コレクター:EX
より品質の良いアイテムを取得する才能。
レアアイテムすら頻繁に手に入れる幸運だが、ギルガメッシュ本人にしか適用されない為、マスターに恩恵はない。
ギルガメッシュは財宝のコレクターでもある。
“地上の宝はすべて集めた”がギルガメッシュの口癖だが、それは比喩でも何でもない。
彼は彼の時代において発生した、あらゆる技術の雛形を集め、納め、これを封印した。
ギルガメッシュが貯蔵したものは財宝というより、“人類の知恵の原典”そのものである。
英雄王の蔵にないものがあるとすれば、それは“新人類が生み出す、まったく新しい概念によるもの”“他天体の知的生命体による文明技術によるもの”のどちらかとなる。
なので飛行機も潜水艦も当然完備。
西暦以前であれ人の欲望は変わらず、また、魔力が健在だった頃の古代の技術は近代の技術に劣ってはいなかった。
人が夢見る“希望の道具”はたいてい実現し、その都度、王の手によって接収されていた訳だ。
ギルガメッシュが用いる攻撃スキル、『ゲートオブバビロン』はこうして集めた財宝を矢として射出するもの。
黄金の都に通じる扉を開き、彼の宝物庫から財宝を撃ちだしているのである。
余談ではあるが、撃ち出された宝具は使用後、ほどなくしてギルガメッシュの宝物庫に戻っていく。
「フッ。回収用の優れた宝具があるのだ」とは本人の弁。
価値あるものを鬼集し、また管理する才能。
EXとは規格外の意味だが、ギルガメッシュの場合もはや「おまえのものは我のもの」状態で様々な財宝が彼の蔵にカウ ントされていく。
これは対象の財宝そのものを献上させる事もあれば、それの元になった“原典”を自分の蔵から見つけ出してラベリングし直す、という場合もある。
紅顔の美少年:C(子)
人を惹き付ける美少年の性質を示すスキル。
男女を問わずに魅了の魔術的効果として働くが、対魔力スキルで回避可能。
対魔力がなくても抵抗する意思があれば軽減できる。
王の帰還:A(魔)
魔杖の支配者:EX(魔)
多彩な魔術礼装を操る
キャスターとしてのギルガメッシュの在り方を示すスキル。
魔術系の攻撃にボーナスが付与される。
気を使って戦えば道具を優しく扱える。
そんな王様であった。
【宝具】
『天地乖離す開闢の星(エヌマ・エリシュ)』
ランク:EX 種別:対界宝具 レンジ:1~99(CCCのみ1~999) 最大捕捉:1000人
乖離剣・エアによる空間切断。
圧縮され鬩ぎ合う風圧の断層は、擬似的な時空断層となって敵対する全てを粉砕する。
対粛正ACか、同レベルのダメージによる相殺でなければ防げない攻撃数値。
STR×20ダメージだが、ランダムでMGIの数値もSTRに+される。最大ダメージ4000。
が、宝物庫にある宝具のバックアップによってはさらにダメージ数は跳ね上がる。
セイバーのエクスカリバーと同等か、それ以上の出力を持つ“世界を切り裂いた”剣である。
厳密に言うと、エヌマ・エリシュはエアの最大出力時の名称で、宝具なのはエアの方。
余談ではあるが、このドリル状の剣は海底トンネル作成時に使用される岩盤削岩機をモデルにしている。
ドリルといったら槍のようにとんがったものを連想するが、巨大な穴を作るドリルは円盤(ギア)が複数 重なったような形状をしている。
三枚の刃が個別に回転し、岩盤を削っていく様は想像するだけでカッコイイ。
(sn)
乖離剣・エアによる空間切断。
圧縮され絡み合う風圧の断層は、擬似的な時空断層となって敵対する全てを粉砕する。
対粛正ACか同レベルのダメージによる相殺でなければ防げない。
宝物庫にある宝具のバックアップによってはさらに威力が跳ね上がる。
セイバーのエクスカリバーと同等か、それ以上の出力を持つ“世界を切り裂いた”剣である。
(zero)
開闢―――すべての始まりを示す、ギルガメッシュの最終宝具。
メソポタミア神話における神の名を冠した剣、乖離剣エアによる空間切断。
エア神はまだ地球が原始状態だった頃、マグマの海とガスとに覆われた地表を回し、砕き、安定させた星の力が擬神化したものとされる。
多くの神は原始地球が安定し生命が住まう世界となった後で国造りを始めるが、エアはその以前、星造りを行った一神とされる。
エアの名を冠したギルガメッシュの剣は、三層の巨大な力場を回転させる事で時空流を起こし、空間そのものを変動させる。
その真の威力は一個の生命相手に用いるものではなく、世界を相手に用いるものだ。
サーヴァントたちが持つ数ある宝具の中でも頂点の一つとされる、“世界を切り裂いた”剣である。
(CCC)
乖離剣・エアによる空間切断。
神が天地を切り開く時に使用した力であり、威力としては有りと凡ゆる宝具の中で最も頂点に近いと言える一撃である。
宝物庫にある宝具の支援を受けることにより、ダメージ値が更に上昇する。
(fake)
乖離剣・工アによる空間切断。
圧縮され闘ぎ合う風圧の断層は、擬似的な時空断層となって敵対する全てを粉砕する。
対粛正アーマークラスか、同レベルのダメージによる相殺でなければ防げない攻撃数値。
乖離剣工アは剣のカテゴリではあるが、その在り方は杖に近い。
三つの石版はそれぞれ天・地・冥界を表し、これらが それぞれ別方向に回転する事で世界の在り方を示している。この三つすべてを合わせて“宇宙”を表しているとも。
アルトリアのエクスカリバーと同等か、それ以上の出力を持つ“世界を切り裂いた”剣である。
(GO)
『王律鍵(バヴ=イル)』
まだ人の領域が限られた世界だった神代。
王は地上すべての財宝を集め、これを納める宝物庫を建造した。
後の世に生まれるであろう様々な宝の原典。
人間の知恵、人間の叡智が確かである証左。
人々はこれを“神の門”と呼び讃えた。むべなるかな。
これらを納めた「蔵」そのものが、収納した財宝を上回る神秘となったのだから。
そして。その蔵の鍵は、彼の王にしか扱えない。
鍵の金型は絶え間なく変化し、財宝の目録は今も増え続ける。
それらを瞬時に読み解く智慧なくして、宝物庫の鍵は開かない。
錠前がないのでは、我の王律鍵も効果は発揮できんな。
王律鍵バヴ=イルを使う。我が宝物庫の扉を開けよ!
『天の鎖(エルキドゥ)』
ランク: 種別:対神宝具 レンジ: 最大捕捉:人
ギルガメッシュが好んで使用する宝具。真名はエルキドゥ。
かつてウルクを七年間飢健に陥れた“天の牡牛”を捕縛した鎖で、ギルガメッシュがエアと同様、否、それ以上に信頼する宝具である。
その能力は“神を律する”もの。
捕縛した対象の神性が高ければ高いほど硬度を増す宝具で、数少ない対神兵装と言える。
故に、
バーサーカー(へラクレス)にとって天の鎖はエクスカリバー以上に厄介な宝具となった。
逆に神性のないセイバーや
アサシン、
アーチャーにはただ頑丈なだけの鎖にすぎない。
我が鎖は神性を縛る王の権能
今まで一度たりとも男に対して振るわれなかった剛剣が、ついに唸りをあげて一閃され――――
現れた無数の鎖によって、黒い雄牛は捕らえられた。
突如空中より現れた鎖は、空間そのものを束縛するようにバーサーカーを封じていた。
鎖はバーサーカーの両腕を締め上げ、あらぬ方向へとねじ曲げていく。
全身に巻き付いた鎖は際限なく絞られていき、岩のような首でさえ、その張力で絞り切ろうとしていた。
「―――ち、これでも死なぬか。かつて天の雄牛すら束縛した鎖だが、おまえを仕留めるには至らぬらしい」
空間そのものを制圧する鎖
令呪を用いて、イリヤスフィールはバーサーカーに強制撤去を命じる。
この鎖に繋がれた物は、たとえ神であろうと逃れる事はできん。
否、神性が高ければ高いほど餌食となる。
元より神を律する為だけに作られたもの。令呪による空間転移など、この我(オレ)が許すものか
『全知なるや全能の星(シャ・ナクパ・イルム)』
ランク: 種別:対人宝具 レンジ: 最大捕捉:人
星の輝きの如く地上の隅々へと行き渡り、万象を見通す、英雄王の精神性が宝具へ昇華したモノ。常時発動型の宝具。
本作において真名解放を行う宝具はあくまで『王の財宝』である。
宝具シャ・ナクパ・イルムの効果は凄まじく、相手の真名や宝具はおろか、幾重に隠された真実さえも一瞥で見通してみせる。
常時発動しているような状態ではあるものの、意図的に制限している節も見受けられる。
そのときに私からは「千里眼」もち繋がりでギルガメッシュの現界時の記憶がどうなっているのかを聞いたんです。
ギルガメッシュも、「千里眼」で見ようと思えばいろんな平行世界の可能性を見ることはできるのですが、
英霊の記憶や知識は召喚される世界に合わせてアジャストされるよう座が調整しているので、複数の記憶で混乱するようなことはないという答えでした。
仮に「千里眼」を使って自分が聖杯の泥に飲まれた世界の可能性を見たところで、ギルガメッシュは「そんな世界線はありえんな」と一蹴するだろう、とも言われました(笑)。
先を読む、という時点で既に敗北だ。
盤上において未来は読むものではない。俯瞰して観るものだ。
我は生まれつき、忘却のできない体だ。
もとよりこの眼(まなこ)は未来を見通す
冥界を旅したこの我に、かぎ取れぬ黄泉路などないわ。
『王の号砲(メラム・ディンギル)』
ランク:B 種別:対軍~対城宝具
ウルク城塞からの遠距離爆撃。
ギルガメッシュのみならず、神代を生きたウルクの民の総力までもが結集された驚異の砲撃。
ギルガメッシュは断腸の思いで自らのコレクションを弩に装填し、これを兵たちに任せている。
「壊れた幻想ぅ? そんなもの、4000年以上前にこの我がやっているわ!」
『王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)』
ランク:E~A++ 種別:対人宝具 レンジ:-
黄金の都へ繋がる鍵剣。
空間を繋げ、宝物庫の中にある道具を自由に取り出せるようになる。
使用者の財があればあるほど強力な宝具となるのは言うまでもない。
『夜の帳』
夜の帳は貯蔵(も)っているが、そこな雑種を守る盾は取りだせぬ。
『時返しの秘薬』
時返しの秘薬はあるが、これを飲んで元に戻るのも興が乗らぬ
霊草を飲んだ蛇は脱皮という特性を得た。
不老不死ではないが若返りの機能だな。
中々の妙薬故、我の蔵にも入っているぞ?
『黄金の鎧』
黄金の出で立ちは単なる魔よけだ。
石化をまき散らす蛇竜、巨牛がいないのであれば、特に拘る理由はない。
ギルガメッシュが言うには、あの黄金の鎧は対石化装備らしい。
『毒味宝具』
『胃を整える霊草』
胃を整える霊草ならば備えがある。
飲んだが最後、一生味覚が失われるのが難点だが
『光の船』
『令呪』
令呪の一つや二つ、ストックがあって当然であろう。
『天翔る王の御座(ヴィマーナ)』
『原罪(メロダック)』
『デュランダル』
『ハルペー』
『ヴァジュラ』
『ダインスレイヴ』
『ゲイ・ボルク』
『方天戟』
あの槍は我の目録には存在しない。
“語られていないもの”である以上、我の宝の何に該当するのか分からぬ。
『英雄王』
ギルガメッシュの異名。
英雄の王、という意味ではなく、英雄たちの王、という意味合いで用いられる。
人類最古の英雄であるギルガメッシュの物語は、世界各国の神話に模倣された。
あらゆる神話の原典、英雄たちのモデル……と言っても過言ではないだろう。
大なり小なり、様々な神話の英雄たちはギルガメッシュ伝説から派生したものだ。
であるなら、ギルガメッシュは英雄たちが持つ宝具の原型……各神話ごとにアレンジされる前の、大本の宝を所持している事になる。
逆説ではあるが、原典であるギルガメッシュが持っていなければ、発展系であるその後の英雄たちの手に宝具は伝わらないからである。
まだ人類が少なかった頃。
王国を治め、贅沢を欲しいままにした王の蔵には世界中のありとあらゆる財宝が集められた。
その蔵には後の英雄たちを助けた宝剣の原典があり、英雄たちの命を奪った魔剣の原典も貯蔵されている。
ギルガメッシュが英雄王と呼ばれる由縁はここにある。
宝具とは本来、ひとりの英雄にひとつのもの。
それをほぼ無限に所持しているばかりか、彼は英雄たちが苦手とする“伝説”さえ当然のように所持しているのだ。
並の英霊に太刀打ちできる筈がない。
英霊にして、対英霊戦における絶対強者。
騎士たちの王、征服する王、と王の称号を持つ英雄は数あれど、“全ての英雄たちの王”の名をいただくのは天地においてこの男だけである。
前回のアーチャー、セイバーを破った人類最古の英雄王。
サーヴァントキラーとも言える存在で、まっとうな英霊はこの男には敵わない。
サーヴァント中では間違いなく最強の存在。
セイバー戦では執着から、士郎戦では慢心から、戦では油断から敗退したが、本気になって戦っていれば敵なしのサーヴァントである。
サーヴァントに対して無敵を誇る“英雄殺し”
Q.ギルガメッシュとアルクェイド(30%)はどちらが強いのですか?
アルクェイドがサーヴァント4体分の強さなのに対しhollowでは
ギルはサーヴァント5体分+αと読み取れる描写がありましたが。
A.アルクェイドの強さの定義に、「相手に合わせて出力を変えられる」と
いうものがあります。バックアップである星からの絶対命令として、
相手の強さよりやや上の出力しか許されないのですね。で。
アルクとサーヴァントの個体面としての能力はほぼ同格。
サーヴァントは各々の宝具を、アルクは無限のバックアップをもって戦い、
その相性によって差が出るわけです。シンプルイズベストなアルクは
オールラウンダーなので総じて勝率が高いだけであって、どうしても苦手な
相手というのは存在します。例えば、本人の能力はアルクと同格でも、
その武装がとんでもなく多く、用途も多岐にわたる場合とか。
アルクが許される引き出し額は相手の『個体能力』に準じるので、
ギル様のようなタイプには、ほら、ねえ?そしてサーヴァント5体分+α
というのは、単純な「火力」の比較です。『残骸』たちのようにそれぞれが
雑兵レベルの相手になら攻撃をかわされることもないので、後はもう
ひたすらに武器の多い者が有利というか。ブロードブリッジにおいて、
1対1で優れたサーヴァントはあんまり目立てないのはそのためです。
あと、通常アルクェイドはサーヴァント約2体分の個体能力ってことでひとつ。
Q.ギルガメッシュに剣技のスキルはないとのことですが、ならば燕返しの間合いに捕らえさえすればアサシンでもギルに勝てるのですか?
A.あの鎧で防がれるor王の財宝から、またサギ臭い対多重次元屈折防具とか出てくる可能性大。
ただ、ギルはあれはあれで相手の力量を正しく把握するので、アサシン相手に剣技での戦いはしないと思われます
―――さて。
情報を集めた甲斐もあり、ギルガメッシュの伝説は一端は読み取れた。
偉大な王の子として生まれ、女神を母に持ち、三分の二は神の血を、三分の一は人の血を持った王。
ギルガメッシュは始まりからして
多くの特権を与えられていた英雄だ。
自身を『英雄たちの統べる王』と評するのも無理からぬことか。
彼はあらゆる意味で、他のサーヴァントとは一線を画している。
「ん、なんだ雑種?
熱のこもった視線なぞ向けおって。
あれか?今頃我の黄金率にまいったか?」
黄金律にまいる、とは、即ち、お金に目が眩む、という意味である。
今のところ、そんな悪夢にはおちいっていない。
気になっているのはもっと別のことだ。
"ギルガメッシュとはどんな英雄だったのか?"
共に戦っていくのなら相互理解・・・・・は無理でも、相棒のパーソナリティぐらいは知っておきたい。
そう思って彼の伝説を調べたのだが―――
「ほう、我の逸話を読み解いたか。
それで、どうした?契約した相手が
悪鬼と知って後悔したか?」
まさか。
後悔なんてとっくにしまくって、今では日常になっている。
気になっているのは伝説が真実かどうかだ。
「真実であろう。SE.RA.PHにある記録は
客観的事実だからな。
それをどう捉えるかは読み手次第だ。
が、その主観がいまだ曖昧な貴様では真実は久遠の彼方か。よかろう。
その殊勝さに免じて一つ質問を許す。
なにか分からぬ事があったのなら訊け。
退屈しのぎに答えてやろうではないか」
思いがけない展開になった。
下手なことを質問すればこちらの命が危ないが、
こんな機会は滅多にない。
ここは―――
[branch]
暴君だったって本当・・・・・?
女神が母親って本当・・・・・?
神の子とかハッタリでしょう?
暴君だったって本当・・・・・?
やはりこの事実が気になる。
ギルガメッシュはあまりに特出した才能から
他者を省みる事なく、多くの民を苦しめたと。
「叙事詩曰く、ギルガメッシュは父親に息子を残さず、母親には娘を残さず、か。
ああ、その伝えは真実だ。
暴虐で国を統べる事が暴君であるのなら、我は紛れもなく暴君であろうよ。
なにしろ、そのように作られた男だ」
ギルガメッシュは先王の息子だ。
なにか、その響きは不釣合いな気がするが・・・・・
[end branch]
女神が母親って本当・・・・・?
神の子とかハッタリでしょう?
ギルガメッシュには神の血が混ざっている。
質料にはそうあったが、それは本当なのだろうか。
そもそも神とは何なのか。
人類最古の英雄王と言うが、紀元前2600年には本当に"神"なんてモノがいたというのか?
「その疑問は当然だな。
神代は閉じて久しく、この星は既に人が認識する物理法則に安定した。
人間にとって神とは宗教を興す為のシステムにすぎない。システムが人と交わるなど、貴様たちの常識にはないであろう。
今はまだ、な。
まあ未来の話はよい。
貴様が問うているのは過去の話。
神というものは二種類ある。
元からあったものが神になったものと、神として生まれ変わったものだ。
メソポタミアにおける神は前者にあたる。
自然現象が意思、人格を持ったもの、それが古代の神々だ。
我はその古代の神と人の王から作られた。
古代の神と現代の神、その中間だな」
古代の神と現代の神、とギルガメッシュは言った。
古代の神は自然崇拝のようなもので、
元からこの星にあったもの。
対して、現代の神とは人の認識・技術によって
発生したシステム・・・・・・という事だろうか。
それなら"その中間"というのも分かる。
現代の神は"人間"が作り出した発明だとしたら、
古代の神と人間の間に生まれたギルガメッシュは
"神"に作られた発明という事になる。
作られた、という響きには不穏なものを感じる。
なんというか、ギルガメッシュらしからぬというか・・・
[end branch]
「そう聞こえたか?我らしくない・・・・・・
我もそう思うが、事実だ。我は神々どもの思惑で作り出されたものだからな。
星の抑止力と人類の抑止力の違いは知っているか?知らぬか。
ならばよい。枝葉の話だ、忘れろ。
ここからの話は我が生まれるまでの話だ。
貴様の悩みきった目が哀れゆえ、少しばかり口を滑らせる。
神々は何も人間に肩入れをして我を作ったのではない。
やつらは人間を恐れた故、我を必要とした。
神と人間。そのどちらの視点、新しい次代の王としてな。
生命には自分たちが住む地盤を、住みやすい環境に整える本能がある。
生存力、というべきものだ。
古代の神々にはこれが欠けていた。
どれほどのエネルギーを持とうが、
やつらは"ただそこにある"だけのもの。
対して人間の生存力は並外れていた。
ひとりひとりでは小さいが、とにかく数が多く、平均値が高い。
大権能を持つ超抜種はいないが、他の生命体より高い水準の知性を持ち、それがすべての人間に備わっている。
一方、天の神がいかに強大な自然現象であろうと、それらが獲得した人格・・・・・独創性、認識力は人間とそう大差はない。
分かるか?
仮に全能の知性を持っていようと、出せる結論、かたちどる人格は一つだけなのだ。
その点、人間どもの数は脅威だった。
認識力の差・・・・・いや、変革力の差だな。
人間の欲望は限りなく、とめどなく、惜しまれるコトもなく。
世界は欲望のままに変貌していく。
"人間がこのまま繁殖すれば星のルールは変わる。自然現象に意思が不要になる時がやってくる"
古代の神々はその未来を恐れた。
結果、人間側でありながら
神の陣営にいる統治者を欲しがった。
それが、人間の王に女神が体を預ける、などという愚考の正体だ。黄昏の時代の延命行為だが、まこと、無様な断末魔よな。
そうして作られたものが、神の血を持ちながら人の血を持つ新たな支配者だ。
神々に言わせればソレは楔だ。
自分たちと人間の決壊を食い止めるため、天が地上に打った楔。
それが我が誕生の背景だ。
我は貴様らと違い、まっとうな生のたくみで生まれたものではない。
この手足は初めから、神の代弁者として君臨し、人間をいさめる為に設計されたモノなのさ」
淡々と、そして皮肉げにギルガメッシュは語る。
その目には神々を嘲笑う敵意はあれ、自身に対する軽蔑は見られない。
作られたもの―――神々の思惑で作られた人生を、
ギルガメッシュは卑下していない・・・・・のだろうか?
「それこそ何故だ。
貴様はどうも、人権というものを狭く考えていはいないか?
動物であれ人形であれ、生命はすべて親の思惑で作られるもの。
我の場合、それが星よりなだけの話。
よいか。この世のすべての生命は先達者の手で作られたモノだ。
自然発生するものは魂のみ。
それこそが我や貴様が持つ、ただ一つの"己"だろうよ。体が作り物であろうと、始まりは何者の写し身であろうとな。
目覚め、抗った瞬間に、おまえは唯一の独創性を獲得した。
それを作られた、などと思う事はない」
肉体・・・・・いや、生命としてのカタチは
先達者によって作られるもので、自然発生するものは魂のみ・・・・・
それが本当なら、
ギルガメッシュの伝説にもうなずけるところはある。
ギルガメッシュは仲介者として作られた。
人間が自然崇拝から離れていく事を恐れた神々は、人間と神、そのどちらの視点も持ち、最終的には神々側につく超越者を作り出した。
その対策は正しかった。
問題は、その仲介者が思い通りに動かなかった事だ。
「ああ。我はその思惑には応えなかった。
我は作られたとはいえ、新しい生命として生み出された。であれば―――
古い神々の意向になんぞ、賛同する道理はない。
我は、我が感じたままの己を生きた。
確かにこの身は、初めから王として作られたものだろう。
だがそれだけだ。奴らの思惑と、
我が王である事になんの関係もない。
我は王として己を定め、己が良しとする王道を見極めた。
それだけの話だ。
我がウルクを治めたのはアレが良いものだったからだ。
神々の思惑など知った事か。
我にとって生命とは"いますぐ死ぬ"ものか、"いずれ死ぬ"ものでしかない。
我が"今すぐ死ぬべき命"と判断すれば、賢者であろうと神であろうと処断するまで。
よいか。我の王道は単純だ。
己に相応しい宝を獲得し、守護する。
この愉しみを阻むものは悉く殲滅しよう。
我にはそれのみだ。悪鬼か嵐のようなものと諦めるが良い。
なにしろ母が女神だ。人間的でないのは当然だろう?」
くつくつと笑いながらギルガメッシュはグラスをあおる。
話はここで終わ・・・・・なに?
「ほう、今のがSGか。
思えば、我の生誕の話なぞ誰にした事もなかったな。
よいぞ、ここまで生き延びた褒美だ。
謹んで受け取っておけ」
いや、でもどうなんだこれ。
ギルガメッシュにとって重要な話ではないのだろうが、
SGというのはもっとこう、お互いの新密度をあげて
ようやく垣間見られるものではないのか・・・・・・?
「馬鹿め。親密度なんぞあがるものか。
今の我は通常の我より欲が薄い。
基本、他人事でもあるしな。
受肉の一つでもすれば人として血が騒ぎ、我の性質もその時代にあった人間性に偏るだろうが―――
ここではその変質もない。
よって、我は気ままに
SE.RA.PHを漫遊するのみだ。
この程度の秘密、運賃としてくれてやる」
神々の時代から怖いもの知らずで、自らの欲望のみで生きてきた英雄。
その在り方も生前も、サーヴァントとして現界している今も変わりはないらしい。
本当に、なんでこんなメチャクチャなのが
サーヴァントとして存在しているんだろう・・・・・・?
天の楔
ギルガメッシュの在り方を示すもの。
古代における神の在り方と、彼の出自を示している。
曰く、この宇宙において神は二種類に分けられる。
元からあったものが神になったものと、神として生まれ変わったものだ。
元からあったものとは、太陽、月、といった天体や嵐、自身、といった自然現象を信仰の対象としたもの。
神として生まれ変わったものは、初めは人間よりだったが、様々な要因で人間から逸脱し、信仰の対象になったもの。
英雄や救世主、繁栄に欠かせないシステムなどがこれに該当する。
メソポタミアにおける神は前者にあたる。
自然現象が意思や人格を持ち、天上の法として君臨したものだ。
その神々が地上の人間をいさめるために送り出したものがギルガメッシュである。
天の楔。
神代から離れていく地上をつなぎ止めるため、神々の手によって生み出された王。
しかし、彼はその役割をよしとしなかった。
自らの要求を第一と考え、人として王国を統べ、神々の在り方を旧時代のものと一蹴した。
”神には従う。敬いもする。だが滅びよ。
我を生み出した時点で、貴様らは自ら席を失ったのだ”
かくして、古代ウルクに初めて、神より袂を分かつ王が誕生した。
英雄王ギルガメッシュ。楔として望まれた王は、その実、旧時代にとどめを刺す槍の穂先になった。
どうも貧血のようだ。
迷宮探索の疲れが溜まっているのだろう。
「む。顔色はそうでもないが、生命反応が低下しているな。
- ふう。貧弱にもほどがあるが、迷宮で倒れられていても面倒だ。
しばし休んでいけ。我は構わぬ」
言い方は刺々しいが、ギルガメッシュがこちらの体を気遣ってくれるのは珍しい。
王様の気まぐれな発言に、”それじゃあ”と答えて寝台に横になる。
- 横になった途端、急速な眠気がやってきた。
- 体の芯からどっぷりと疲れていたようだ。
- 戦いの現実はしばし休憩だ。
- せめて一時、深い夢に落ちるとしよう・・・・・
―――土塊から、僕は生まれた。
神の手でこねられた粘土。
千差万別に変更する道具として作られた。
ワタシは荒野で目を覚ました。
目に映った原初の風景は広大な大地と空、そして、遠くにそびえ立つ城塞の都市だった。
ふと、遠くから呼び声が聞こえた。
ワタシが目を覚ましたきっかけは母の指でも、父の叱咤でもない。
その呼び声が気になって、重い目蓋を開けたのだ。
起きたばかりのワタシには理性がなかった。
我が父は神々の王アヌ。
我が母は創造の女神アルル。
彼らはワタシに優れた力を与えたが、魂を吹く込むことはできなかった。
そのため、目覚めてから数年、ワタシは獣たちと共に野を駆けるだけの生命だった。
しかし、ワタシには目的があった。
母に作られた時、使命を授かっていたからだ。
”鎖よ。お前は楔を私たちに戻すのです”
けれど、ワタシには魂がなかった。
ただ野生に生きる事しかできない。
ワタシには、人間としての意思が欠けていたのだ。
日がな一日、動物たちと共に野を走るだけの幸福。
ワタシは完全ではなかったが、欠落も存在しなかった。
たまに足を止め、はるかな城塞に振り返る。
荒野の彼方から、誰かの呼ぶ声がする。
あの声は誰だろう。
父ではない、母ではない。
もっと違う誰かが、ワタシを呼んでいる気がした。
理性のない私に嘆いた父は、ワタシに女をあてがった。
鏡すら見た事のないワタシにとって、そのヒト型は自己を知るいい教師となった。
ワタシは知恵と理性を学んだ。
天と地の理をすべて教わった。
あらかじめ作られた使命を実行するための、魂が吹き込まれた。
”エルキドゥ”
そうして、ワタシは自らの名前を始めて口にした。
世界はその時、極めて単純なものに切り替わった。
ワタシの役割。
ワタシの使命。
おごりきったギルガメッシュに、神の怒りを示さなければ。
ワタシは喜びに胸を躍らせた。
流星のように荒野を駆けた。
ワタシの存在意義。
ワタシが作られた理由。
ワタシが命を懸けるもの。
ワタシと同じ、神に作られた人形に、天罰を。
けれど、見つけ出した彼はまだ幼かった。
ワタシと違い、彼は成長するらしい。
ワタシと違い、彼には人間の血が混ざっているという。
彼はまだ幼年期にいる。
彼が成人するまで、ワタシは彼と競い合う事はできない。
対等の在り方で戦わなければ、彼を諌める事にはならないからだ。
―――そうして、ワタシは城塞都市を眺めている。
呼び声はあの中から聞こえている。
はやる気持ちを抑え付けて、彼の成長を日ごと数えた。
幼年期の彼は、地上の誰よりも優れた王性を持っていた。
寛容で、思慮深く、公正で、道徳を重んじた。
道行く人々は誰もが彼を褒め称え、見惚れていた。
理想の少年王の姿がそこにあった。
おごりきっているなど、神の誤認としか思えなかった。
幼年期のギルガメッシュに諌めるべき欠点など存在しない。
彼は神を敬ってはいるが、服従はしていない点だけだった。
歳月を経って、少年は青年へと成長する。
ワタシは神々の危惧が正しかった事を認めた。
たった数年で彼は別人になった。
独裁。圧政。強制。徴収。私利私欲による栄華のかぎり。
ウルクの民たちは嘆いた。
なぜこんな事になったのか、と。
神々は頭を悩ませた。
ここまでとは思わなかった、と。
ワタシには、彼の豹変の理由が、痛いほど読み取れた。
彼は生まれながら結論を持っていた。
神でもなく人間でもない生命として独立していた。
両方の特性を得た彼の視点はあまりに広く、遠く、神々ですら、彼が見据えているものを理解できなった。
ありあまる力が、ありあまる孤独を生み出した。
それでも彼は王である事を捨てなかった。
自らに課した使命から、逃げることはしなかったのだ。
彼は真剣に神を敬い、人を愛した。
その結論として、彼は神を廃し、人間を憎む道を選んだだけだったのだ。
「貴様が、我を諌めると?」
聖婚の儀を執り行う建物の前で、ワタシたちは出会った。
「そうだ。僕の手で、君の慢心を正そう」
慢心、ではなく、孤独、と言うべきだったが、それはできなかった。
彼の誇りに傷をつけたくなかったからだ。
ワタシたちの戦いは数日に及んだ。
ワタシは槍であり、斧であり、盾であり、獣である。
万象自在に変化するワタシを相手に、彼は持ちえるすべての力を振り絞った。
「おのれ―――土塊風情が、我に並ぶか!」
はじめて対等なものに遭遇した驚きか、怒りか。
戦いの中、彼は秘蔵していた財宝を手に取った。
あれほど大事に仕舞っていた宝を持ち出すのは、彼にとっては屈辱以外のなにものでもなかっただろう。
はじめは追い詰められて、やむなく。
けれど最後は楽しみながら惜しみなく、持てる財を投入した。
戦いは―――どちらの勝利で終わったのか。
彼はついに最後の蔵まで空にし、ワタシは九割の粘土を失っていた。
衣服すら作れなくなったワタシの姿は、さぞ貧相だったのだろう。
彼は目を見開いて大笑した後、仰向けに倒れこんだ。
ワタシも地に倒れ、深く呼吸した。
実のところ、あと一回しか動けなかった。
「互いに残るは一手のみ。
守りもないのであれば、愚かな死体が二つ並ぶだけだろうよ」
その言葉の真意は、今でも分からない。
だから引き分けで終わろう、と言いたかったのか。
それは愚かしいので死体は一つであるべきだ、と示したのか。
どうあれ、その言葉を聞いて、ワタシも彼に倣うように倒れたのだ。
鏡のようだ、とさえ思えた。
「使ってしまった財宝は、惜しくないのかい?」
なんとなし、そんな言葉を口にした。
「なに。使うべき相手であれば、くれてやるのも悪くはない」
晴れ晴れとした声で、ギルガメッシュはそう言った。
それからのワタシは、彼と共にあった。
駆け抜けるような日々だった。
「貴様が来てからというもの、我の蔵に落ち着きがない。
財宝を投げ撃つなぞ、頭の悪い癖をつけさせてくれたな」
相変わらず収集癖は変わらないが、たまには使うことを覚えてくれたらしい。
ワタシの、数少ない功績だ。
フンババという魔物がいた。
ワタシたちは力を合わせこれを倒した。
ワタシは彼に問うた。
なぜフンババを倒すと決めたのか。
それは神々からの命令ではなかった。
かといってウルクの民の為でもないはずだ。
「いや、ウルクを守る為だが?
地上の全悪を倒しておかねば、民どもが飢え死のう」
何故か、と更に問うた。
彼はウルクの民を圧政で苦しめている。
その彼が、なぜ民の心配を?
「不思議ではないだろう。
我は人間の守護者として生まれたものだからな。
この星の文明を築くのが、王の役目だ」
そう口にする彼の眼差しは、あまりに遠かった。
同じように作られたワタシでさえ、その見据える先が分からない程に。
「守護にも種類があろう。
守ることだけが守護ではない。時には北風も必要だろうよ」
この時、ワタシは彼を完全に理解した。
「そうか。
つまり君は、見定める道の方を尊んだんだね」
照れくさそうに彼は笑った。
幼年期の彼がたまに見せた、涼風のような微笑だった。
彼が選んだ道は、彼一人で進まなければならないものだからだ。
遥かな未来を見据える事を守護だと、彼は言った。
その為に神を憎み、人を嫌うのなら、王は孤立したものでなければならない。
人々の未来を好ましく思えば思うほど、彼は何者とも関われなくなる。
裁定者にして収穫者。
王が手にするものは結果だけ。
その結果を生む”輝かしい過程”に、人間以上である彼が、介入するわけにはいかないのだ。
「まあ、結果はつまらぬ織物になりそうだが。
そうすると決めた以上、最後まで付き合うさ」
そううそぶく彼に、耐え切れず、ワタシは言った。
「僕は道具だ。君が裁定する必要のないものだ。
世界の終わりまで、君の傍に有り続けられる」
「たわけ」
彼が愁眉を開いたのは後にも先にもこの時だけだったと思う。
「よいか―――。それは、――――――というのだ。
彼はそう続けた。
- この時、ワタシは輝く星のような、大切な言葉をもらった。
ワタシが本当の意味で自我を持ったのは、この時である。
これが最後の話になる。
ギルガメッシュと女神
イシュタルの決裂があり、イシュタルによって放たれた天の牡牛との戦いがあり、ワタシの、最後の時の話である。
ギルガメッシュとその武器によって天の牡牛は去り、世界を覆っていた暗雲は途絶え、地上は洪水から救われた。
ワタシは神に逆らった罰として、土塊に戻ろうとしていた。
彼は崩れていく土塊を、懸命に抱きかかえた。
「許さぬ。なぜおまえが死ぬ?
罰がくだされるのなら、それは我であるべきだ!
全ては我の我が儘ではないか!」
まだ空が泣いている。
見ていられなくて、ワタシは彼に進言する。
「悲しむ必要はありません。僕は兵器だ。
君にとって数ある財宝の一つにすぎない。
この先、僕を上回る宝はいくらでも現れる。
だから君が頬を濡らすほどの理由も価値も、僕にはとうにないのです」
そうだ。ワタシは兵器だった。道具だった。
彼とは違う。
ギルガメッシュは神の子として作られていながら、神々に逆らい続けた英雄だ。
彼には、はじめから魂があった。
生まれながらに自由意志があった。
ワタシとは違う、本当の命。
真に価値のある、ワタシのような消耗品とは違う星。
なぜワタシたちは、
同じ父に作られていながら、ここまで違う生き物なのかと。
「価値はある。唯一の価値はあるのだ。
我はここに宣言する。
この世において、我の友はただひとり。
ならばこそ―――その価値は未来永劫、変わりはしない」
ワタシは兵器だった。
兵器である以上、常に次代の兵器にとって変わられる。
ワタシの価値は、神秘性は、この時代だけのもの。
それを、彼は違うものにした。
この先、永遠に孤独であることを代償に。
ワタシが、自分が道具だと宣言した時の彼を思い出す。
「たわけ」
「共に生き、共に語らい、共に戦う。
それは人でも道具でもない。友と言うのだ、エルキドゥ」
―――ああ。
なんて、罪深い。
弱きを知りながら、弱きを省みることはなく。
強きを知りながら、強きを認めることはなかった。
理解者などいない。
孤高であり続ける事が、彼の最大の誠意だったのに。
そんな彼の矜持に、ワタシは永遠の瑕を付けた。
雨はしだいに弱くなっていた。
ワタシは元の姿に、荒野の土塊に戻っていく。
後に残ったものは、天雷を思わせる、王の雄叫びだけだった。
ワタシの記録はここで途切れる。
ワタシはすでに消え去った悔恨だ。
この先はアナタの未来。
ワタシとは違う、人間であるアナタの物語だ。
まだ人間を愛しているか。
今でも友の名前を、おぼえているか、と。
遠い時代の過ちを、もう捨て去ってくれているのかを―――
旧い夢を、見ていたようだ。
「・・・・・・・・・・・・・・・」
ふと顔を上げると、ギルガメッシュは目蓋を指で押さえていた。
彼も微睡んでいたらしい。
先ほどの夢の影響か、
ごく自然に”眠っていたの?”と声をかけた。
「・・・・・・・・・・・・そのようだ。
我も多少、疲れていたらしい。
取るに足りぬ、懐かしいものを見た」
ギルガメッシュの声にはいつもの圧力が無い。
そういえば聞いたことがある。
契約を交わしたマスタ―とサ―ヴァントは精神的に繋がりが出来て、無意識の時・・・・・睡眠状態のとき、稀に記憶を共有すると。
確信は無いが、先ほどの夢は
ギルガメッシュの友人にまつわるものだと思う。
自分が見た夢と同じものを、彼は見返していたのかもしれない。
問いかけずにはいられない。
契約者である岸波白野が、彼に投げかける言葉は―――
branch:
その友の名を覚えているか?
その友と自分は似ている?
もしかして、ギルって人間大好き?
その友の名を覚えているか?
「その友・・・・・・?
何を言い出すかと思えば、その友だと?
勘違いをしているようだな。
我が見ていたものは天の牡牛との戦いだ。
友の夢などでではない。
そもそも我に友など滅多にいるものか。
いたとしても名前など忘れていよう。
もう口にする事はできぬのだからな」
不愉快そうにギルガメッシュは吐き捨てる。
しかし、その声に微塵の怒りもなかった。
『もう、口にする事はできない。』
ギルガメッシュが友の名前を覚えているかどうかは、
その返答だけで十分だ。
[end branch]
その友と自分は似ている?
「・・・何の話をしているかはあえて流すが・・・・・断言すると、まったく似ていない。
共通点は目と鼻と口がある程度だろうよ。
阿呆め。
おまえのような間抜けに似た知己など、我の過去には一人たりとも存在せぬわ。
貴様はただ一人の貴様だ。
そのような下らぬことを、いちいち我の舌に乗せさせるな」
あっさりと流されてしまった。
けれど、今の言葉には親しみがこめられていた気がする。
『誰にも似ていない、ただ一人の岸波白野』
[end branch]
もしかして、ギルって人間大好き?
「――――――――――――。」
あ。ギルガメッシュが固まった。
恐ろしげな表情をしているが、あれは違う。
英雄王は不意打ちを受け、面を食っていると見た。
「・・・・・・・・・・・・何を言い出すかと思えば。
この我が人間を愛しているか、だと?
貴様、今までなにを見てきたのだ?
我が人間をどう見ているかなど、
貴様の扱いから身に染みていよう!
分かりきった事を我に問うな!」
ヤケクソ気味に怒られてしまった。
言葉に窮した子供が拗ねるような態度である。そして、
『貴様の扱いから身に染みていよう―――』
その言葉通りに答えを出すなら、彼が人間に対してどんなスタンスでいるかなんて、分かりきった事だった。
[end branch]
「ふん。下らぬ戯言をほざける程度には回復したようだな。
では休息もここまでだ。ゆくぞ、白野よ。
そして断っておくが、我が見ていたのは我が半生の軌跡だ。
生を受け、生を終えるまでの、な。
はじめは神を認め、人を守った。
幼年期を終え、成人してからは神を憎み、人を好んだ。
それだけの夢を見たにすぎん。
仮に、おまえが我の記憶を垣間見たとしても、それは貴様の主観。
我の真実とはほど遠い。
それを弁えることだ」
そう言って、ギルガメッシュは先に出て行ってしまった。
こちらも急い寝台から起き、黄金の背中を追いかける。
ギルガメッシュのものでもなく、
岸波白野のものでもない、何者かの見た夢だった。
けれど。
あの夢の中で彼が口にした言葉は、紛れも無い真実だ。
”未来永劫、その価値は崩れない―――”
そう言った孤高の王がいた事だけは覚えておこう。
そして、あの夢の持ち主よ。
申し訳ないが、捨て去ってほしいという貴方の望みは、果たされることはなさそうだ―――
天の鎖
ギルガメッシュの幼年期を示すもの。
対等の友人との戦いと、その冒険を表している。
この世でただひとつ、永遠に変わらぬ価値の物語。
ついにギルガメッシュの伝説、その終わりまでを調べ上げた。
黄金の王。人を人と思わぬ絶対者。
文明の黎明期ではあるが、この世のすべてを手に入れた男。
人類史には偉大な統治者、指導者が大勢いる。
東征を駆け抜けた征服の王もいた。
巨大帝国を築き上げた始めの皇帝もいた。
だがやはり、その中でもギルガメッシュは異彩を放つ。
彼は民や国より己を優先した。
征服欲も好奇心も、彼は持ち合わせていなかった。
おそらく、彼は初めから多くのものを持ちすぎたのだ。
そのため自身を第一に考えた。
その果てにあったものが不死の探求。
人類最古の物語、「ギルガメッシュ叙事詩」にある、
不老不死の霊草を巡る逸話である。
「ん?どうした、顔を曇らせおって。
またぞろ下らぬ悩み事か?
よいぞ、苦しゅうない。話してみよ」
幸いな事に英雄王はご機嫌らしい。
よし。ならば訊いてしまおう。
あやふやにしたまま最後の戦いを迎えるのは
気持ちのいいものではないし。
それでは―――
どうして不老不死の薬を手放したの?
「――――――なに?」
いや、そもそもどうして不老不死を求めたのか。
伝説では"死が怖くなって"とあるのだが―――
この英霊が、そんな殊勝な性格とはとても思えない!
「そうか。
我の叙事詩を最後まで調べたという訳か。
では、その疑問も何故とは言うまい。
だが、その質問は我の深層に触れるものだ。
知りたいのなら答えてやるが、貴様にその覚悟はあるか?
我にあの忌々しい話をさせるのだ。
貴様は一生涯かかっても返せぬ負債を追う事になる。
それでも聞きたいか?」
ギルガメッシュの口調は、怒っても楽しんでもいない。
今までにないほど淡々としている。
つまり真剣という事だ。
自分は―――
「では語ってやろう。
なに、話はすぐに終わる。
なにしろ叙事詩通りの顛末だからな」
って、勝手に話を始めてませんか―――?!
なんというギルガニズム、
こちらには「はい」「いいえ」の選択すら存在しなかった!
「照明を落とせ。
舞台としては物足りぬが、少しは気分を盛り上げねばな」
「先々代の王、ルガルバンダと女神リマトの間に我は生まれた。人として最上級の肉体と、真理に至る知恵を与えたれてな。
我の幼年期はそれなりに善人だったそうだ。
ウルクの民からは花よ蝶よと愛され、最高の王を得た、と喜ばれたらしいからな」
だそうだ、とか、らしい、とか
自分の過去に使うべき表現ではない。
ぜっさん記憶障害中の自分が言えることではないが、子供の頃の記憶が曖昧なのか、英雄王は。
「曖昧だとも。幼年期の我と今の我は、まったく性質が異なる。
幼年期の自分など知覚する事さえできん。
幼年期の我も同じだろうよ。
成人した後の自分がこの我と知っていれば、成長を止めていた可能性すらある。
まあ、所詮は仮定の話だが。
我は成人し、自らの方針を定めた。
人を治める王としては生きぬ。
人を諫める嵐として生きる、とな。
そこからの話は叙事詩にある通りだ。
我は思うままに奪い、収集した。
人も国も我のものだ。
やつらが生み出す宝、可能性、その全てを集め、我が物とした。
なぜか?
決まっている。裁定するためだ。
人間は発明の化身だが共通の基準を持たぬ。
いや、共通の基準がないからこそ、
新しいモノを生み出し続ける。
なればこそ、絶対の基準が必要だ。
人を超えながらも人であり、神に属しながら神ではない裁定者がな。
治めるだけなら人でよく、脅かすだけなら神でよい。
神々はそれを最後まで理解しなかった」
裁定者・・・・・・そういえば、
カルナはギルガメッシュをそう呼んでいた。
見定めるもの。処断するもの。
人の価値観に左右されない罰の化身。
それが、ギルガメッシュの根底にあるものだと・・・・・・?
「ウル・ナンムの法典が定められる前の話だ。
後にハンムラビめがさらに細かく定めたが、根本は人が人を訴える為の法よ。
我は我の基準で生きた。
財を集め、女を抱き、友と戦い、地上の全悪を滅ぼした。
その仕事が済んだ後にな、ある命が塵に帰った。
有体にいえば死を迎えたのだ。
我はそれまで、死を悼んだ事も、死を恐れたこともなかった。
意識さえしていなかった訳だ。
だが、目の前で対等の力を持っていた者が消えた。
誰であれ死はあると知ってはいたが、実感したのはアレが初めてだった」
ギルガメッシュの言う"対等の者"とはエルキドゥの事だろう。
叙事詩に曰く、ギルガメッシュはエルキドゥの死を目の当たりにし、自らも死の運命にあると気づき、恐怖した。
ついには死から逃れるために、死を克服したという賢者を訪ねる事にした。
英雄王の最後の冒険。
冥界キシュガルへの不老不死探索である。
「無論、不老不死の薬について考えていなかった訳ではない。
我の蔵には地上すべての財宝を収められねばならんからな。
ヤツが塵に帰らずとも、いずれはとりかからねばならない仕事だった。
加えて、我には理由が出来た。
我はヤツを奪った死を嫌い、恐れた。
生まれて初めて、己の生に恐怖したのだ。
そこからの旅は滑稽の一言に尽きる。
冥界には死を克服した男がいるという。
我はそれまでの人生と同じ年月、荒野をさまよい、冥界をめざし続けた。
どうだ?伝説の通りだろう?
我は死にたくない一心でみじめに地べたを這い続けた。
おまえたちと同じ動機だ。
神の子も、死を前にしては人間となんら変わりはないという話だ。
だが、愚かさにおいても我は貴様より上だった。
- 見苦しくも、我は自分の浅ましさを飲み込み続けたのだ。
何の為に、誰のために、死を超えようとしたのかも分からないまま。
ただ、己は永遠不滅でなければならん、とソラを睨み続けてな」
懐かしむように彼は語る。
何十年の間、荒野を彷徨ったギルガメッシュ。
王の誇りも、威光も、権力もかなぐり捨てたと。
すべては死を恐れ、死にたくない一心で。
―――でも、それは本当に?
死を恐れたのは本心だろう。
しかし、それは理由の一つに過ぎないのではないか。
そもそも、彼はなぜ"死"を嫌ったのか。
友の死への怒りか。
自分と対等の物すら死ぬという恐怖からか。
根拠はないけれど、それは違うと断言できる。
彼はきっと、役目を放棄する自分を許せなかったのだ。
彼は見定めると決めた。
人々の裁定者であると決めた。
日々の幸福ではなく、人々の営み、その行く末を見届けると決めた。
それこそが彼の王道だった。
だからこそ―――
"その最後"を見定めるために、この世の終わりまで有り続ける、不滅の体を求めたのだ。
「冥界に辿り着いた我は賢者から
不老不死の秘密を聞いた。
なんという事はない。
賢者は神の列に加わり、長寿を得たというだけだった。
まさにお笑いぐさだ。
賢者は半ば植物と化していた。
神の列に加わるとはそういう事だ。
我は人の欲望を抱いたまま不滅でなくてはならん。欲望を味わえぬ
体で永遠を生きてなんになろう。
我は冥界を後にした。さっさとウルクに戻り、我が宝物庫を完成させる気になった。
しかし、だ。
賢者は自らの在り方を否定され、弱気になったのだろう。
我にある秘密を伝えてきた」
あるいは、神による不老不死を否定した
ギルガメッシュを疎い、同じ存在に落としたかったのか。
その賢人は語った。
"貴方さまが神に従えぬのはわかりました"
"私もアヌ神の慈悲を乞えとは言いませぬ"
"その代わりに―――ある秘密を、教えましょう。"
賢人はギルガメッシュに、神々の情けを乞わずとも不老不死になる方法を伝えたのだ。
深淵に生える霊草の根。
これこそが不老不死の秘密だと。
「そんなものを口にしたところで、植物になるのでは話にならんが、それはそれで珍しい宝だ。
不老不死の妙薬として我が蔵を飾るだろう。
我は深淵に立ち寄り、霊草を瓶に詰め、地上に戻った。
これが事のすべてだ。
我はウルクに戻り、城塞都市と我が蔵を完成させ、眠りについた。
不老不死を求めた理由はこんなところだ。
うむ。まさしく伝説通り、何のひねりもない真実だったな!
では話は終わりだ。
この問いの代償は後でゆるりと考えてやる。
楽しみにしておけよ?」
え・・・・・・?い、いや、それはないっ!
ではな、と幕を閉じようとするギルガメッシュに抗議する。
知りたかったのは"不老不死を求めた理由"ではない。
せっかく手に入れた霊草を、どうして手放したかという事だ!
「はあ・・・・・・。白野よ、何度"伝説通り"と我に言わせるのだ。
霊草は蛇にくれてやった。
我は水浴びをしている隙に、不老不死をかっさらわれた慢心の徒。
欲望を良しとする我が野を這う蛇の欲望に足をすくわれたのだ。
ただ、"腹が減った"という欲望にな。
霊草を飲んだ蛇は脱皮という特性を得た。
不老不死ではないが若返りの機能だな。
中々の妙薬故、我の蔵にも入っているぞ?」
それだ。
自分もやっと分かった。
気になっていた―――
いや、引っかかっていたのはそこだったのだ。
叙事詩において、ギルガメッシュっは蛇に霊草を盗まれた。
不思議なのはその後だ。
彼は再び冥界に赴かず、ウルクに戻ってしまった。
半生をかけて追い求めた不老不死を、なぜそこで諦めたのか。
その時ギルガメッシュが何を見たのか、自分は知りたい。
「くだらぬ事を―――
だがまあ、確かに不思議よな。
あの時の心境は我にも言葉に出来ぬ。
神に準える不老不死など不要。
そう語りながら、心の一端で我は期待していたのだろう。
地上に戻った我は自らの結果に笑みをこぼした。これで死を打倒できる。
我が友の雪辱を晴らせるのだと。
同時に、ウルクの民どもの声も想像した。
不老不死を持ち帰ったとあらば、民どもの賞賛は今までにないものだ。
所詮、我も肉を持った人の子だった・・・・・・という事だな。
若気の至りというヤツよ。
しかし、そうなると虚栄心も顔をだす。
途端、それまで一顧だにしていなかった
自身のみすぼらしさが気になってな。
ウルクに戻る前に身を清めようと、
手近な泉で疲れを癒やした。
積もり積もった数十年物の疲れだ。
水は天井の風のように、霊峰の雪のように、
温かく、冷たく、柔らかに我を癒やした。
―――安らぎ、というのだろうな。
肉体も精神も、長きの淀みから解放されるようだった。
我はこの時ほど、
自身の成果に酔いしれたことはない。
叫び出したくなるほどの陶酔だった。
白状すれば、それが我にとって初めての悦びでな。財を集めるのは我の本能。
呼吸のようなものだ。悦びではない。
だが―――あれは違った。
我ははじめて、この世に生を受けたことを感謝し、歓喜した。
人としての視点を持つ、などと謳っておきながら、我はあの時まで、
人間ではなかったのだ。
我はすべてから解放されていた。
迷いも恐れもなく、執着も責務もなく、圧倒的な全能感に身を震わせた。
これが生命の躍動。これが我欲の報酬。
この、宇宙が誕生した結論とも言える悦びを、我は永劫、欲しいままにできるのだと。
だが、そんな愚か者を待っていたのは蛇めの盗み食いだ。霊草は失われていた。
蛇は新しい体を得て去っていた。
―――この時、我に走ったのは笑いだ。
腹がよじれるほど笑った。
おかしくておかしくて仕方がなかった。
見ろ、これが結論だ、と。
我は自らの愚かしさに大笑いした。
我が手にし、誇るものは「無」だけだ。
ああ、何も得られない、という事ではないぞ?
最終的に我の手には何も残らない―――それこそが、我の仕事に与えられる唯一の報酬だと、理解したのだ。
初めて得た命の充実も、生の悦びも、このように一瞬で消え去るもの。
これこそが人の世だ。
これこそが、我が見定めるべきものだ。
永劫不滅の身でこの醍醐味の何が分かろう。
不老不死など所詮凡俗の不始末。
長く行き続けなければ終わりに立ち会えない
雑種どもの夢にすぎん。
我に不老不死は不要だった。
もとよりこの眼は未来を見通す。
死を恐れる理由は何処にもなかったのだ。
我はあの時代にあり、既にして不滅であり、時を重ねずとも
遥かな未来を見据えればよい。
―――人類最古の物語。
後の世に語られ続ける英雄としてあれば、我の責務は果たされる。
話はそれだけだ。
我はあの時、人として生まれ、悦びを味わった後に人として死んだ。
すまんな。以前、我は生まれた時から完全だった、といったのは誤りだ。
我とて未熟だった時はある。
我は生涯のほぼ全てをかけて成長した。
肉体は友との日々で育ち、精神はこの時、成熟を迎えた。
―――長い幼年期が、ようやく終わったのだ。
見上げたソラは何処までも広かった。
我の目を持ってすら、見通すには幾星霜、といったところだ。
その頃には我の体も朽ち果てる。
だが人間の認識は広がっていく。
いずれ何億年も先の光すら見通すだろう。
それは心躍る風景だった。
思えば我はやる気を失っていたのだろう。
集めるべきはすべて集めた。
今の時代にはもう、
これ以上の愉しみはない。
ならば潔く滅びるだけのこと。
死など何度でも味わえばよい。
その後にいくらでもよみがえる。
その度に、その時代を見定めよう。
この世の終わりまで。
人類が我の星を越え、暗い大海にこぎ出し―――ソラの果てに辿り着き、結論を出すその日まで。」
蛇に盗まれた霊草を笑い飛ばしたギルガメッシュ。
気がつけば日は昇っていた。
彼はいっときだけ胸に咲いた人としての悦びに笑いながら、ウルクへの帰路についたのだ。
それがギルガメッシュの冒険の終わり。
彼はその後、英雄たちを統べる王としてウルクを治め、この世を去った。
人類最古の英雄として。
この世で最初に"物語になった"偉大なる王として。
長い話は終わった。
マスターとサーヴァントの繋がりから、その時のギルガメッシュの心が伝わってくる。
不老不死の霊草なんて、その時に得た真理に比べれば確かにどうでもいいものだ。
「―――まあ、ウルクを完成させた後、こっそり深淵に出向いて回収したがな。
あれはあれでレアな宝だ」
回収したんだ?!
ぜんぜん我欲から解放されてないじゃないか英雄王・・・・・・!
「む。そう言うな。
財を集めるのは我にとって本能のようなもの、無言で流せ。
備えあれば憂いなし、と言うだろう?
いつか子供にまで若返らなければやっていられない事態がくるとも限らぬのだぞ?」
そうですか。
そんな事態がこない事を祈りたい。
宇宙の真理と同一したかのような英断も、酔っぱらって前後不覚の時の悪政も、彼が行うのなら紛れもない王の裁定となる。
絶対王者とはそういうものだ。
それが自分をここまで導いてきたものの正体だ。
「ほう?もしや貴様、尊敬の眼差しで我を見ているな?よかろう。存分に見よ。
何なら着替えても構わないが?」
結構です、と全力で断った。
そもそも尊敬なんてしていないし。
自分はあくまでマスターとしてギルガメッシュを理解し、戦いを有利に運ぼうと努力しただけである。
だから、別に・・・・・・彼の根底にあるものが邪悪なものではないと分かって、ちょっとだけ嬉しいだけだ。
あ、いや、かとってギルガメッシュが善人という事は決してなく、アレは依然として頭の痛いサーヴァントなワケで―――
「ふ。陥落するのは貴様のほうが先であったか。
あれであろう?
リンめのSG1と同じだな?」
ないし!
間違ってもあんな恥ずかしい感情の発露は採用しません!
「そう取り繕うな、余計に浮き彫りになるではないか。
さすがの我も頬を掻くというもの。
だが切りもよい。昔話はここまでだ。
戦いに戻るとするぞ、白野。
これ以上の会話は慢心の元になる」
ギルガメッシュは愉快げに笑いながら立ち上がった。
こちらも咳払いをして気を取り直し、もちろん、とうなずく。
束の間の休憩で、望んでいた答えは手に入れた。
後はマスターとして、ギルガメッシュと共に戦場に戻るだけだ。
死の毒
ギルガメッシュの青年期を示すもの。
不老不死の探求と、その顛末を表している。
かくして、彼はそのように幼年期を終えた。
血も涙もない暴君。
あらゆる財宝・あらゆる悦楽を究め、楽しんだ英雄。
善も悪も等しく扱い、断罪する王。
絶対的な基準が「自分」なので、
他の思想、在り方に共感することはない。
唯我独尊、という点では
マケドニアの征服王と同一視されるが、英雄王と征服王の
最大の違いは"臣下を必要としていない"点にある。
この英雄は最初から最後まで"己"だけで君臨した。
彼が愛するものは財宝、道具であり、
人は消え去るものでしかなかったのだ。
どれほど愛するに値するものと認めようとも。
【戦闘描写】
【能力概要】
【以上を踏まえた戦闘能力】
【総当り】
最終更新:2017年05月08日 22:39