クー・フーリン

【表記】ランサー
【俗称】兄貴
【種族】サーヴァント
【備考】
【切札】ゲイ・ボルク

【設定】

【ステータス】
 筋力B 耐久C 敏捷A 魔力C 幸運E 宝具B(言峰)
 筋力B 耐久A 敏捷A 魔力C 幸運E 宝具B(月)
 筋力B 耐久A 敏捷A 魔力C 幸運D 宝具B+(月)
 筋力E 耐久D 敏捷C 魔力B 幸運D 宝具B(魔)

彼女がかつて従えていたトップサーヴァント、朱槍を携えたランサー、そう太陽の

【スキル】
対魔力:C
 第二節以下の詠唱による魔術を無効化する。
 大魔術、儀礼呪法など大掛かりな魔術は防げない。

 とはいえ、速度に優れた(敏捷A)サーヴァントである彼と対峙し、その隙を突いて大掛かりな魔術を行使するのは至難の業である。
 また、発動に成功した魔術を彼に“命中させる”こともまた、かなりの腕前が必要されるであろう。

陣地作成:B(魔)
 魔術師として、自らに有利な陣地である「工房」を作成する。
 師匠の宝具である『門』をうまくアレンジした陣地を作る事もあるが、それは秘中の秘であるらしい。
 なぜなら、使うとおとなげない師匠が「パクりか貴様ー!」と突撃してくるからである。

神性:B
 神霊適性を持つかどうか。
 高いほどより物質的な神霊との混血とされる。
 粛清防御と呼ばれる特殊な防御値をランク分だけ削減する効果もある。
 菩提樹の悟り、信仰の加護、といったスキルを打ち破る。

戦闘続行:A
 往生際が悪い。
 瀕死の傷でも戦闘を可能にし、決定的な致命傷を受けないかぎり生き延びる。

仕切り直し:C
 戦闘から離脱する能力。
 不利になった戦闘を戦闘開始ターン(1ターン目)に戻し、技の条件を初期値に戻す。

 戦闘中の戦場から離脱する能力。
 マスターである言峰から偵察任務を命じられていたこともあり、この能力は存分に発揮されたといえよう。
 クー・フーリンは元々戦況の見極めに長けており、すべてのサーヴァントと対戦しては撤退を繰り返し、その任に当たった。

 この二つのスキルを併せ持つため、クー・フーリンは一騎打ちより合戦においてその真価を発揮する。本人は一騎打ち大好きなのであまり目立たない事実ではあるが。

ルーン:B
 北欧の魔術刻印・ルーンの所持。
ルーン魔術:A(魔)
 スカサハから与えられた北欧の魔術刻印、ルーンの所持。これを使い分けることにより、強力かつ多様な効果を使いこなす。ただし、効果の同時複数使用(併用)は不可。

 スカサハから与えられた北欧の魔術刻印ルーンの所持。
 キャスターとして現界しているため、ランサーでの召喚時よりもランクが高い。
 ルーンを使い分けることにより、強力かつ多様な効果を使いこなす。
 攻撃以外で主に使用するのは対魔力スキル相当の効果、千里眼スキルの効果、パラメーターをAランクに上昇させる効果、等。
 これらはすべて一時的なものであり、同時複数の使用はできない。

 キャスター時は金属類の装備を身に付けない
 キャスターとして現界した彼はランサーとしての現界時とはうって変わり、多彩な魔術の使い手として敵対者を苦しめる。
 強力な熱・火炎攻撃を得意とする。これには「アンサズ」のルーンを使用していると思しい。

全身に帯びたルーンの守り

ランサーはルーン魔術と宝具の組み合わせで一時的にAランクに届くので、かなり不利な戦いになりますが「いくらか勝ち目のある」戦いを展開できます。

アトゴウラ
この陣はケルトの戦士にとって、不敗と不退を誓約する証であり、生ある敗走は決して許されない。

矢よけの加護:B、A(魔)
 飛び道具に対する防御。
 狙撃手を視界に納めている限り、どのような投擲武装だろうと肉眼で捉え、対処できる。
 ただし超遠距離からの直接攻撃は該当せず、広範囲の全体攻撃にも該当しない。

 攻撃対象を目で確認した状態であるならば、いかなる遠距離攻撃をも避けることが可能だとされる。
 また対象を目視できない状態であっても、大抵の飛び道具に対応できる。
 投擲タイプの攻撃であれば、例え宝具であっても避ける事が可能だが、
 武器の攻撃範囲が着弾時に爆発する広範囲タイプの攻撃や、ただ単にリーチが長い武器での直接攻撃に対しては、この加護の効果を得ることは出来ない。

【宝具】
『刺し穿つ死棘の槍(ゲイ・ボルク)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:2~4 最大捕捉:1人
 突けば必ず相手の心臓を貫く呪いの槍。ゲイボルクによる必殺の一刺。
 その正体は、槍が相手の心臓に命中したという結果の後に槍を相手に放つという原因を導く、因果の逆転である。 
 ゲイボルクを回避するにはAGI(敏捷)の高さではなく、ゲイボルクの発動前に運命を逆転させる能力・LCK(幸運)の高さが重要となる。

 突けば必ず相手の心臓を貫く呪いの槍。ゲイボルクによる必殺の一刺。
 因果を逆転させ、既に心臓に命中しているという事実を作った後で槍を放つ反則技。
 もう槍は当たっているのだから、相手がどんな回避行動をしようと結局は当たるのである。
 ゲイ・ボルクから逃れる為には、パーサーカーのように一度死亡してから自動的に蘇る宝具か、槍の呪いを援ね退けられる高い幸運(LCK)が必要となる。
 ゲーム的に言うなら、ダメージ補正が狙った相手のHP分プラスされる、というトンデモ宝具。
 仮にセイパーのHPが100だとしたら、ゲイ・ボルクのダメージは(槍のダメージ)+(100)になるのである!そりゃ絶対死ぬわ。
 このお手軽さで消費魔力は二桁程度。対人においてこれほど無駄のない武装はあるまい。

 突けば必ず相手の心臓を貫く、と恐れられた呪いの朱槍。その真相は、槍が『心臓に命中した』結果の後に槍を放つ、因果の逆転である。
 真名によって解放されたランサーの朱槍は、その槍を放つ前に、既に心臓に命中した結果を持つ。
 放ったから当たった、ではなく、当たったから放った……という、運命そのものに対する攻撃。
 ゲイ・ボルクを回避するには敏捷値の高さではなく、ゲイ・ボルクの発動前に運命を逆転させる力……幸運値の高さが重要となる。
 対人、かつ心臓に対してだけのものだが、これは運命を決定させる超抜能力だ。
 権能一歩手前の宝具だが、それもそのはず、この槍を扱うクーフーリンは神の子である。かませだからといって侮ってはいけない。

 命中補正+100。命中時にダメージを敵体力数値分上乗せする。
 突けば必ず相手の心臓を貫く呪いの槍。魔槍ゲイボルクによる必殺の一刺。
 その正体は、槍が相手の心臓に命中したという結果の後に相手に放つという魔技。即ち因果の逆転である。
 “この槍は既に心臓に命中しているという結果を持っている。ならば、相手が何をしようが最終的には必ず心臓を貫いている”というもの。
 結果を作りあげてから行われる為、防御も回避も不可能。
 ゲイボルクを回避するには敏提の高さではなく、ゲイボルクの発動前に運命を逆転させる能力、幸運の高さが重要となる。
 宝具発動に必要とする魔力量が少なく、しかも一撃一殺という最も効率のいい宝具。

逆に効果が概念的なもの、運命干渉系が特殊な部類です。
ゲイボルク(通常)はいかにアルクェイドが能力値的にランサーを凌駕していようと、運次第でコロっと殺されますから。

奈:相手のヒットポイント分のダメージを与える必中武器だなんて、どう考えてもチートです(笑)。 先にバーサーカーを語った後だからチート度が低いと錯覚してしまいますが。
武:“ゲイ・ボルク”の使用に制限ってある?真名さえ開示すればかならず当たるんだっけ?
奈:槍が届く距離の戦闘でタイミングさえ合ってれば、宝具(ゲイ・ボルク)は必ず発動する。でも相手の幸運の数値が高かったら、まれに外れる。
武:ラックでしか回避できない?
奈:あれはラックでしか避けられません。たとえ敏捷度がEXだったとしても無理です。“ゲイ・ボルク”の一撃に対してセイバーがギリギリで致命傷を避けられたのは、彼女の幸運が高かったからです。
武:セイバーには先読みの能力もあるか。
奈:“直感”ですね。彼女はそれにプラスして”幸運値”がBだから、完全には避けられなくても致命傷を免れることができた。
武:アーチャーには当たる?
奈:確実に当たる。アーチャーはそれを知っているから近づかない。もし目の前でランサーが本気で放つ気になって“ゲイ・ボルク”の構えに入ったら、もう必死で下がる下がる。

曰く、足で投擲する呪いの槍だとか、貫いた瞬間に内部から千の棘を生やして相手を絶命させる魔槍だとか

イナズマの如き一刺は肋(あばら)をすり抜け、心臓に被弾した瞬間、千の棘となって女魔術師の内部を殲滅する。

奈:ランサーのゲイ・ボルクによる内部破壊と、泥心臓を握り潰しただけの■さんを一緒にしてはいけない。
武:伝承によると、ゲイ・ボルクは刺さったら棘が四方八方に飛び出して相手を中から串刺しにするんだっけ?
奈:うん。そういう「四方八方棘だらけ」な伝承もある。そのあたりの補完として、ゲイ・ボルクに胸を刺されたものには赤い茨の呪いが走ってたでしょ。
武:あれ、毒のようなものかと思ってたけど、呪いによる内部破壊だったかー……

『突き穿つ死翔の槍(ゲイ・ボルク)』
ランク:B+ 種別:対軍宝具 レンジ:5~40 最大捕捉:50人
 ゲイボルクの呪いを最大限に開放し、渾身の力を以って投擲する特殊使用宝具。
 もともとゲイボルクは投げ槍であり、使用法はこちらが正しい。
 死棘の槍と違い、こちらは心臓命中より破壊力を重視し、一投で一部隊を吹き飛ばす。その様は炸裂弾そのものだ。
 ダメージ、形状、共にケルトの光神ルーの持つ“轟く五星(ブリューナグ)”に迫るが、「幾たび躱されようと相手を貫く」という能力から、北欧の主神オーディンの“大神宣言(グングニル)”よりの宝具と言えよう。

宝具のレベルはB、能力が数値で表せるものが平均的な宝具といえます。
ブロークンファンタズム、風王結界、ゲイボルク(投げ)、といったものでしょうか。

『灼き尽くす炎の檻(ウィッカーマン)』
ランク:B 種別:対軍宝具 レンジ:1~50 最大捕捉:100人
 無数の細木の枝で構成された巨人が出現。巨人は火炎を身に纏い、対象に襲い掛かって強烈な熱・火炎ダメージを与える。
 この巨人の胴部は檻となっており、本来はそこに生賛を押し込める。
 しかし宝具として出現した巨人は生賛を収納しておらず、本来納めるべき神々への賛を求めて荒れ狂う。
 これはルーン魔術の奥義ではなく、炎熱を操る「ケルトの魔術師」として現界した光の御子に与えられた、ケルトのドルイドたちが操るべき宝具である。

『大神刻印(オホド・デウグ・オーディン)』
ランク:A 種別:対城宝具 レンジ:1~80 最大捕捉:500人
 今風に言うとマトリクス・オーダイン。
 真名解放と共に、スカサハより授かった原初の18のルーンすべてを同時に起動することで発動する宝具。
 北欧の大神オーディンの手にしたルーンの力が一時的にではあるが解放され、敵拠点に大規模な魔力ダメージを与える。
 更に、生存している敵のバフ効果を全解除し、各能力パラメーターを強制的に1ランク減少させ、常時発動の宝具を有していた場合は1~2ターンの間停止する。
 きわめて強力な奥の手だが「FateGO」中では基本的に使用されない。
 オーディンによる使用制限が掛けられている可能性もあるが、詳細についてはここでは不明としておく。

Q:同じランサーであるクーフーリンとディルムッドがガチンコで戦ったら、どっちが勝ちますか?
初登場時のクーフーリンはセイバーに押しまくられましたが、ディルムッドは逆に押してましたよね?
ということはディルムッドのほうが強い……?

A:ディルムッドはマスターからのバックアップ(魔力提供量)が優れているので、単純な火力勝負ならディルムッドに軍配が上がるかと。
日本ではどちらも地形効果はゼロですが、舞台がアイルランドなら―――クーフーリンに一本かと。

Q:もし聖杯戦争の舞台はヨーロッパ圏であった場合、クー・フーリン(ランサー)はアーサー王(セイバー)やヘラクレス(バーサーカー)と互角以上の性能を持つことができたのでしょうか?

A:……いや、西欧圏でいうならふたりとも同じぐらいパワーアップするかと……
イングランドやアイルランドならぐるっと逆転しますが。ヘラクレスは西欧圏でも十全の力を発揮するかと。

奈須さ~んCHECK!
本編でも屈指のスピードを誇る両者。
自身を弾丸と化しバトルフィールドを駆け回るライダーと、不動のまま神速の槍捌きで迎撃するランサー。
平均速度ではライダーが上回っていますが、瞬間的な最大速度ではランサーに分があります。
多種多様な宝具を持つライダーですが、ランサーもルーン魔術による加護で魔眼対策はバッチリ。
怪物退治はお手の物であるランサー相手に、魔物としての属性を持つライダーは苦戦を強いられそうですが……!?

【戦闘描写】

  • 仕切り直し
間合いが離れる。
仕切り直しをする為か、ランサーは大きく間合いを離した。
……その速さは尋常じゃない。
アーチャーの突進だって常軌を逸していたけど、ランサーに比べればまだ遅い。
咄嗟に間合いを外したランサーの動きは、豹そのものの速さと嫋(しな)やかさを持っていたのだから。

離れた距離は五メートル弱。
ランサーならば一息もかけずに攻め込めるその間合い

大きく後退するランサー。
槍を突き出す、どころの間合いではない。
一瞬にして離された距離は百メートル以上。

誘われて随分奥まで来てしまったが、対岸までは三十メートル。
この程度なら―――容易く、一息で跳躍できる……!

  • 刺し
クッ、とランサーの体が沈む。
同時に。
茨のような悪寒が、校庭を蹂躙した。
……空気が凍る。
比喩ではなく、本当に凍っていく。
大気に満ちていたマナは全て凍結。
今この場、呼吸を許されるのはランサーという戦士だけ。
ランサーの手に持つ槍は、紛れもなく魔槍の類だ。
それが今、本当の姿で迸(ほとばし)る瞬間を待っている―――

ランサーの姿勢が低くなる。
同時に巻き起こる冷気。
―――あの時と同じだ。あの槍を中心に、魔力が渦となって鳴動している――――
「……じゃあな。その心臓、貰い受ける――――!」
獣が地を蹴る。
まるでコマ送り、ランサーはそれこそ瞬間移動のように少女の目前に現れ、
その槍を、彼女の足下めがけて繰り出した。
彼女はそれを飛び越えながらランサーを斬り伏せようと前に踏み出す。
その、瞬間。
「“――――刺し穿(ゲイ)つ”」
それ自体が強力な魔力を帯びる言葉と共に、
「“――――死棘の(ボルク)槍――――!”」
下段に放たれた槍は、少女の心臓に迸っていた。

あの青い騎士の槍を思い出す。
大気中の魔力を吸い上げ、あり得ない軌跡でセイバーの胸を貫いたあの槍。
あれは、確かに人の手におえる物ではない。
あの槍自体も強い呪いを帯びていたが、あの時ランサーが発した言葉にも桁違いの魔力を感じた。

「使う為の魔力量もそう多くない。あの程度の魔力消費なら、七回使っても魔力の補充は必要ないでしょう。」

「そいつの胸を串刺しにしたのはオレなんだが、実はこれは二度目でね。以前は確かに殺したってのに生きてやがったもんだからな、今回は念を入れて“刺して”やったワケだ」
「安心しろ、心臓は外してやった。だが呪いはそのままだぞ。
因果を逆転させる“原因の槍”。コイツの呪いを受けた者は、よっぽどの幸運がないかぎり運命を変えられない」
「まあ単純に言ってしまえば、ゲイボルクによってつけられた傷は癒される事はない。
呪いを受けたものは決して回復できず、死に至るまで傷を背負う事になる。―――この世に、この槍がある限りはな」

  • 投げ
狙えば必ず心臓を穿つ槍。
躱す事など出来ず、躱し続ける度に再度標的を襲う呪いの宝具。
それがゲイボルク、生涯一度たりとも敗北しなかった英雄の持つ破滅の槍。
ランサーの全魔力で打ち出されたソレは防ぐ事さえ許されまい。躱す事も出来ず、防ぐ事も出来ない。

「――――驚いたな。アイアスを貫通しうる槍がこの世にあろうとは。
君のそれは、オリジナルの“大神宣言(グングニル)”を上回っている」

最強の一撃。
自らを英雄たらしめていた一撃を防がれたのだ。

「オレかい? 得意なのは槍投げさ」
―――おまえ、それ得意なんてもんじゃないだろ!
「ほう、なかなか出来るとお見受けしますが、どれくらいの記録を?」
そりゃマッハ2で飛んで飛距離約40kmくらい。
……いや、それどころか地球の裏に相手がいたってランサーの槍は飛んでいく。
「そうだな……ま、オレに勝てるヤツはそういないハズだ。世界で二人、条件付きで三人ってところか」

  • 戦闘続行
「オレの役目はアーチャーの相手だ。最悪セイバーもどうにかしなくちゃならんが、まあ、抑えるだけなら問題ない」
セイバーとアーチャー、その二人を同時に敵に回す事を恐れてもいない。
そういえば、道場で稽古をつけてもらった時、セイバーは言っていた。
こと“生き残る”だけなら、ランサーはサーヴァントの中でも最高だと。
卓越した敏捷性と豊富な戦闘経験を持つランサーは、守りに徹すれば鉄壁だと褒めていたっけ。
……おそらく、生前は戦力的に劣る戦いばかりをこなしてきたのだろう。
飄々(ひょうひょう)としたこの男は、幾たびの死地を豹のように駆け抜け、生き延び続けた英霊なのだ。
「……それはいいけどな。敵はアーチャーとセイバーだけじゃない。キャスターの下にはアサシンもいるんだろう。なら、最悪アンタの相手は三人ってコトになるぞ」
「ああ、そりゃやべえな。あのヤロウは苦手だ。出来れば一対一でもやりあいたくはねえ。あの手のヤツは遠くから仕留めるに限るが―――まあ、その心配は不要だな。アサシンは教会には現れない」

  • ルーン
戦闘専門と思われるランサーだが、その実、彼は魔術に長けたサーヴァントである。
ランサーが影の国と呼ばれる魔城で学んだ物は“貫く(ゲイボ)物(ルグ)”だけではない。
十八の原初の呪刻(ルーン)、その全てを修得しているが故の英雄である。
もっとも、彼本人が魔術より槍による戦闘を好む為、それらの秘術が日の目を見る事は希だ。

地を走っていた“何か”が落ちる。
ベルカナのルーンを刻んだ小石は探索を終え、石くれに立ち返る。

その手には火(アンサス)のルーン。
残った魔力を全て籠めたルーンは、地に刻みつけるだけでこの部屋を燃やし尽くすだろう。

咄嗟に槍で水面を抉り、所有する全てのルーンを湖底に刻む事で結界を張ったが、それさえも容易く侵食されていく。
周囲を黒い足に囲まれ、彼に残された陣地は刻一刻と縮んでいく。
上級宝具の一撃さえ凌ぐ全ルーンの守りが、足止めにさえならない。

硬化のルーン
遠見(ケーナズ)のルーン
早駆けのルーン
加護のルーン

ぱちん、と魔術師が指を鳴らす。
魔術師は煙草の火で中空に文字を刻む。文字は投影されたように死者の体に重なった。
直線のみで形成された遠い国、遠い世界の魔術刻印。ルーンと呼ばれる回路が働き、地面に倒れ込んでいた死者の体が燃えだした。
「手持ちのF(アンサズ)では弱すぎたな、これは」

橙子が習得しているルーンの魔術にも、攻撃手段は確かにある。
ルーンとは力ある刻印を対象に刻む事により、刻んだ文字の意味を現実にする魔術だ。火の意味をもつソウェルを荒耶の体に直接書き込めば、荒耶の体は燃え上がるだろう。
…泣き所は文字を直接書き込まなければならない点で、遠くから文字を重ねるなんて行為は魔術師相手には通用しない。
間接的な魔力の働きは、直接的な魔力を体に張り巡らせている魔術師には弾かれてしまうのだ。

ルーンには忘却というまさにそのタメだけの刻印さえある。

  • 矢避け
「止めとけ。生まれつきでな、目に見えている相手からの飛び道具なんざ通じねえんだ。よっぽどの宝具(もの)じゃないかぎり、その距離からの投擲はきかねえぞ」

距離にして約十メートル。
槍を投げ合うに適した間合いまで歩き、槍の穂先を地面に向けた。
「アルジズ、ナウシズ、アンサズ、イングワズ」
何かの呪(まじな)いか。
四隅にルーンを刻んだものの、これといった魔術の働きはない。
ランサーはその陣から一歩も動かず、ブン、と一度だけ槍を薙ぎ払う。
「この“四枝の浅瀬(アトゴウラ)”、ルーン使いなら意味が分かろうよ」
「……その陣を布いた戦士に敗走は許されず。
その陣を見た戦士に、退却は許されない。
―――我ら赤枝の騎士に伝わる、一騎討ちの大禁戒だ」
その言葉こそ、ランサーの刻んだ魔術の真価だったのか。
女魔術師は戦士としての貌を取り戻し、槍兵は呪いの槍を両手に握る。
……大気が凍る。
ランサーの持つ宝具が、主の呼び声を今か今かと待っている。
遠く十メートルの彼方には、鉛色の球体を背に構える女魔術師の姿がある。
あの球体こそバゼット・フラガ・マクレミッツの秘奥、神代の魔術フラガラック。
その性能を知るランサーにして、破る事能(あた)わじと言わしめた究極の迎撃礼装。
だが、そう公言して尚、手を緩める事はなく。
「――――――その心臓」
槍兵の腕に力が籠もる。
投擲ではない。ランサーは自らの体さえ槍と成し、
「―――“後(ア)より出(ン )でて先(サ )に断つ(ラ )もの(ー)”」
球体が展開する。
ある呪力、ある概念によって守られた神の剣が槍兵の心臓に狙いを定め、
「―――貰い受ける―――!」
跳躍と同時に明かされる真名。
先制は赤き呪い槍“ゲイボルク”。
「―――甘く見たなサーヴァント……!」
迎撃するは逆光剣“フラガラック”
“四枝の浅瀬(アトゴウラ)”の誓いに様子見はない。
両者は最大の一撃を以て、目前の敵を粉砕する……!
……フラガラックとゲイボルクの戦いは“相討ち”になる。
お互いに宝具を食らい、ランサーだけ生き延びる道理はない。


  • 縛り
「正気ですかランサー。この狭い室内で、槍兵である貴方が剣士である私と戦うと? そのような愚考、貴方の考えとは思えない。」

 彼にとって、これが最初にして最後の“本気”の戦いなのだ。
 故に―――その機会、おそらくは最後であろうこの瞬間を逃がす気など微塵もない。
 それがたとえ、彼にとってこの上なく不利な状況であったとしても。

「室内ではおまえには不利だろうし、セイバーとて主が気になって戦えまい。これではおまえにとって満足のいく戦いとは言えないが」

 懐に入れまいとするランサーと、
 双剣を盾に間合いを詰めるアーチャー。
 両者の撃ち合いは百を超え、その度にアーチャーは武器を失う。
 だがそれも一瞬、次の瞬間にはアーチャーの手には剣があり、ランサーはその度わずかに後退する。

 いつぞやの戦いとは違う。
 あの夜防ぎきったランサーの槍を、アーチャーは捌(さば)ききれない。
 これは二度目の戦いだ。
 ランサーにはある令呪が働いている。
「おまえは全員と戦え。だが倒すな。一度目の相手からは必ず生還しろ」
 自身に科せられたただ一つの命令。
 そんな馬鹿げた命令(コマンド)に従った彼に、ようやく訪れた“何の縛りもない戦い”がこれである。
 故に、前回と同じである筈がない。
 ランサーを縛るものは何もなく、アーチャーはここにきて、サーヴァント中最速の英霊と戦う事になった。
 ランサーの槍は、彼の鷹の目を持ってしても視認できる物ではなくなっていた。
 もとより点にすぎない槍の軌跡。
 それが、今では閃光と化している。
 迫り来る槍の穂先が見えぬ。
 得物を振るう腕の動き、その足捌きさえ、既に不可視の領域に加速しつつあった。

 勝敗はもはや明らかだ。
 白兵戦ではアーチャーに勝ち目はない。
 否、そんな事は判りきっていた事だ。
 アーチャーがその名の通り“弓兵”であるのなら、遠距離からの狙撃でなくては勝負にさえなりはしない。
 だが、それを防いだ。
 とうに劣勢、あと数合も保つまいが、それでも本気になった自分の槍を受けきった。
 ―――ヤツが強いのか、それともオレが手を抜いているのか。
 自分が手を抜いている、というのは心外だ。
 一合目はヤツの顔ごと吹き飛ばすつもりで首を狙った。
 二合目は肋ごと粉砕するつもりで心臓を払った。
 手を抜いている筈はない。
 筈はないが――――
 ――――確かに、殺す気ではなかったか。
 このような戦闘で本気になったところで何がある。
 サーヴァントの戦いは、つまるところ宝具の戦いだ。
 必殺であるソレを出さずに追い詰める事こそ手を抜いている証拠。
 その理由。
 その原因は、つい先ほど耳にした、なんでもない礼らしい。

幸い、ランサーは未だアーチャーを侮っている。
いや、単純に戦闘そのものに没頭している。
このまま能力差だけで殺し合うというのなら、考え得るだけで三十通りは“隙を見せる”事ができる。

勝敗はもはや明らかだ。
白兵戦ではアーチャーに勝ち目はない。
否、そんな事は判りきっていた事だ。
アーチャーがその名の通り“弓兵”であるのなら、遠距離からの狙撃でなくては勝負にさえなりはしない。
だが、それを防いだ。
とうに劣勢、あと数合も保つまいが、それでも本気になった自分の槍を受けきった。

……アーチャーは満身創痍だ。
突きだしていた腕はかろうじて胴に繋がっている程度。
苦痛に歪む貌(かお)は腕の傷だけでなく、想像を絶する頭痛に耐えてのものだった。

【能力概要】

  • 刺しボルク
撃てば心臓に当たる、当てれば即死する、しかも6回使える。
1回即死を逃れても6回残っているので使われるとどうしようもない。
魔力の吸い上げから解放も隙は無い上、高いステータス、戦闘続行、仕切り直しを備えているため白兵戦で封じる事は出来ない。

  • 投げボルク
ホーミングするB+宝具。
単純にB+宝具以上の範囲攻撃か防御によって相殺するしか対処する手段は無い。

【以上を踏まえた戦闘能力】

凄く強い。

【総当り】
最終更新:2018年12月26日 01:09