このSSは「小ネタ・分類不可・未整理/24スレ/221」の続編よ
先に誰がそれをやったのかを読んで以下のルート↓
【魔理沙ルート】【慧音ルート】【マミゾウルート】のSSのいずれか、もしくは全部を読んで
誰がそれをやったのか8【映姫ルート】にたどり着いてからこのSSを読んでね

誰がそれをやったのか




誰がそれをやったのか

誰も選ばなかった場合

 目が覚めて布団から勢いよく飛び起きた。
未だ夜中であろうか、家の中は暗く月の明かりが窓から家の中を照らしている。
今まで酷くうなされていたようで、真冬だというのに服はぐっしょりと汗で濡れていた。
「夢、だったのか…。」
さっきまで随分と長い夢を見ていたような気がする。
酷い悪夢、彼女達に監禁され、そしてそこを抜け出した先で、地獄に引きずり込まれた記憶がある。
生々しい感覚、鼓動する心臓、夢だとは思えない程の迫力と絶望、そういったものをこの身で味わったはずなのだが、
いざ起きてみると静かな闇が、夜の幻想郷を包みこんでいた。
こうしてじっとしていると息が整うにつれて、今までの記憶が嘘のように思えてくる。
胡蝶の夢、夢幻の誘い、そういった類いのものに騙されていたのかと思い、再び布団に入ろうとした。
「起きて○○、眠っちゃだめよ。」
どこからともなく少女の声が聞こえてくる。辺りを見回しても、勿論小屋には誰もいない。
一体あの声はなんだったのか、以前聞いたことがあるような声だった。
「さあ、もう一度やり直しましょう。今度は上手くいくから。」
再び声が聞こえる。
やり直すとは何なのか、一体何をやり直せば良いのか、疑問が募る。
「あの日々を繰り返す訳にはいかないの。運命はまだ決まっていない。今なら…まだ。」
寝起きの頭の中で言葉が響く。脳のシナプスの中を悪寒に似た電気信号が貫き、今の状況をフル回転で計算しだす。
ひょっとして、あの夢は夢ではなかったのか?
あれは実際にあったことなのか?霧雨魔理沙、上白沢慧音、二ッ岩マミゾウ、そして四季映姫。
彼女達に囚われていたのは、事実だったのだろうか?
だとすれば今の状況は何なのか。未だ小屋は燃えていない。だとすれば…
「さあ、静かに家を出て。逃げましょう○○。今ならまだ間に合うわ。」
少女の声を聞いたとたん、雷に打たれたかのように体が動く。
取る物も取らず、それでいて音を立てずに、体が勝手に動いて扉を開けていた。

 家の裏手から音が聞こえる。
何かを地面に下ろす音、そしてジッパーを開ける音。
外界でしか手に入らない物がそこにある以上、夢の通りだとすれば、次に起こるのは…
「○○、今なら大丈夫。あいつらは魔女の薬で操られているから、大きな音がしないと気が付かないわ。」
家の裏手からは死角になるように、田んぼのあぜ道を慎重に走っていくと、後ろから赤い光が差し込んだ。
思わず振り返ると、夢で見た通りに小屋が赤く燃えていた。
「さあ、このまま道を進んでいって。あなたが誰にも見られなければ、歴史を創る能力も発揮できないわ。
誰にも見られないということは、誰の歴史にも残らないということ。
あなたの歴史が消されている今、あなたを見つけるには、他の誰があなたを見つけることが必要なの。」
夜の道を月明かりを頼りに走っていく。暫く進むとまた少女の声が聞こえてきた。
「次の木の裏側に隠れて。もうすぐ魔理沙があなたの小屋が燃えたかを確かめに、上空を飛んでくるから。」
木陰から上空を見ていると、月に照らされて一つの黒い影が飛んで行くのが見えた。
「さあ、もう大丈夫。こっちに来て。」
少女の声に導かれるように走っていく。行き先も分からないのに、ただ安心感だけがあった。
「遠回りをしましょう。人里の周りには狸が見張りを立てているから。」
人里を迂回するように進んで行く。普段ならばとっくに息が上がっているのに、今はいくらでも走れるような気がした。
「霧が出てくるわ。その中に入って。」
今まで乾いた風が吹いていたのに、急に霧が立ちこめてくる。
普通に考えれば数メートル先も見えない状況で走るのは危険に思えるが、そのまま霧の中に走り込んだ。

 霧の中を進んで行くと、ふと足が止まる。疲れて足が止まった訳ではなく、
ただ見えない力で止められたように、足が地面に接着剤でくっつけられたように、一歩もそこから動けなくなった。
向こうに人影が見える。もう少しであの少女の元にたどり着けるような気がした。
「○○、最後の選択よ。」
前からあの声が聞こえる。早くそこに辿りつきたいのに、それでも足は動かない。
「あなたがさっき見たあの三つの悪夢は、実は本当は起こりえたこと。この世界は色々な選択で動いていて、
どの選択を選ぶかで未来は動いていく。勿論動かないこともあるけれど、未来が大きく変わることもある。
もしもこの世界以外に、架空のパラレルワールドがあるとすれば、そこではあなたはあんな目にあっていたの。」

「だから、私は運命を操ってあなたに別の未来を示した。
あの三人を選んでしまうから、あなたは囚われて、そして最後には、いずれの選択でも四季映姫によって地獄に落とされる。
だけど、もしあの火事であなたが死ななければ?あなたはあの三人を選ぶ必要はなくなるわ。
火事が起こることまでは変えられない運命だけれど、あなたが死ぬ運命は操ることができる。
ここまで来れば、あなたの未来は変わるわ。」
「そちらに行きたいのだが、足が一歩も動かない。」
「あなたは死ぬ運命に囚われていた。それを操っているのだけれど、
それでも運命は執拗にあなたに食らいついているわ。あなたを逃がすまいと。」
-だから、最後はあなたの力でしか、抜け出せないの-そう彼女は言う。
 懸命に足を動かそうとする。
しかし、一歩も動かない。あと一歩、あと一歩だけ動けばいいのに…。
ふと足元を見ると、土に塗れた草履が気になった。
震える手で草履から足を外す。
そういえばこの草履は誰から貰ったのか。
詳しくは思い出せないが、きっとあの彼女達の内の誰かから貰った気がした。
「止めろ○○!止めるんだ!!」
脳裏に彼女達の声が聞こえる。愛に狂った女達の哀れな声だった。
「悪いな。」
草履から足を外し、そのまま地面に倒れ込む。
そのまま彼女の方にゴロゴロと転がっていくと、赤い靴が見えた。
「もう、レディを下からのぞき込むなんて、エッチよ。」
照れたような笑顔の彼女がそこにいた。
「済まない。」
レミリアの手を借りながら立ち上がる。全身が土に塗れていた。
レミリアに手を引かれ、霧の中を進んで行く。
「神はサイコロ振らないと言うけれども、そのサイコロを奪い去ることができるとしたら、
それはどういう意味を持つと思う?」
レミリアが言う。軽やかに、歌うように、華麗に演じた舞台にフィナーレの幕を下ろすために。
「例え神であろうとも、紅白の巫女のように何物にも囚われないの力があれば、それに打ち勝つことができる。
神のサイコロを勝手に振ることができたのならば、それは神に勝ったということだわ。
私と、○○、あなたとの二人の力で…ね。」
大きな扉を開け、レミリアが招き入れてくる。
「さあ、新しい運命を始めましょう、○○。」

Fin.






以下、まとめwiki管理人によるまとめ

誰がそれをやったのか ここで3人の内で誰かを選ぶか、誰も選ばなかった場合で分岐

  • 3人の内、誰か選んだ場合
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                   【映姫ルート】映姫/24スレ/289-291

  • 誰も選ばなかった場合






感想

  • この構成にはたまげたなぁ -- 名無しさん (2018-03-13 01:15:31)
  • 過去一の作品かもしれない。素晴らしかったです -- 名無しさん (2025-01-02 00:42:32)
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  • 誰がそれをやったのかシリーズ
最終更新:2025年01月02日 00:42