――勝負は、勝負前に既に始まっていた。
「審判長四季映姫・ヤマザナドゥに、一選手たる八意永琳が問う。
この勝負、奉納するお賽銭の量が勝負の目安であって、
そのお賽銭がいかな人物、いかな方法によって集められるかは勝敗には関係しない。違うかしら?」
「違いません。審判長たる私の名において保障します」
「そう、わかりましたわ」
この勝負、奉納するお賽銭の量が勝負の目安であって、
そのお賽銭がいかな人物、いかな方法によって集められるかは勝敗には関係しない。違うかしら?」
「違いません。審判長たる私の名において保障します」
「そう、わかりましたわ」
そして勝負開始。
魔理沙とこいしは、まだしも常日頃から信仰を集めている守矢神社にお賽銭を集めることにした。
きっと永琳たちも同じ場所を選ぶだろう、とも思っていたのだが、対戦相手は現れず。怪訝に思いながらも、二人は活動を開始。
まず魔理沙は、人里にてPRを行った。
本日は守矢神社のご祈祷イベントがあるのでみんなで山に登るといい、
なぁに護衛はこの霧雨魔法店店主の魔理沙様が今回はロハで請け負ってやるぜ。
魔理沙の口車に乗せられた人々は、連れ立って山を登り始めた。
元より、里との親交もそれなりにある守矢神社の信用が高かったことも後押しとなった。
博麗神社ではこうは行かなかっただろう。
魔理沙とこいしは、まだしも常日頃から信仰を集めている守矢神社にお賽銭を集めることにした。
きっと永琳たちも同じ場所を選ぶだろう、とも思っていたのだが、対戦相手は現れず。怪訝に思いながらも、二人は活動を開始。
まず魔理沙は、人里にてPRを行った。
本日は守矢神社のご祈祷イベントがあるのでみんなで山に登るといい、
なぁに護衛はこの霧雨魔法店店主の魔理沙様が今回はロハで請け負ってやるぜ。
魔理沙の口車に乗せられた人々は、連れ立って山を登り始めた。
元より、里との親交もそれなりにある守矢神社の信用が高かったことも後押しとなった。
博麗神社ではこうは行かなかっただろう。
一方のこいしだが、こちらは数ではなく質を取った。
自らの能力をフルに活用し、まずは紅魔館に進入、地下のフランドールを誘い出すことに成功。
知ってたか、無意識を操る彼女は手をつないだ相手の無意識を操ることで自分と同じ、
人の意識では捉えられない状態にすることができるのさ。それなんて神の共犯者?
同様の手口で蓬莱山輝夜、比那名居天子、古明地さとりら、
金持ってそうな暇人たちを誘い出すことに成功。姉は単に妹びいきで来た気もするが。
基本的に外でお金を使う用事の無い人(妖怪)たちだったので、
ポケットマネーだけでも十二分なほどのお賽銭が集まったのだった。
自らの能力をフルに活用し、まずは紅魔館に進入、地下のフランドールを誘い出すことに成功。
知ってたか、無意識を操る彼女は手をつないだ相手の無意識を操ることで自分と同じ、
人の意識では捉えられない状態にすることができるのさ。それなんて神の共犯者?
同様の手口で蓬莱山輝夜、比那名居天子、古明地さとりら、
金持ってそうな暇人たちを誘い出すことに成功。姉は単に妹びいきで来た気もするが。
基本的に外でお金を使う用事の無い人(妖怪)たちだったので、
ポケットマネーだけでも十二分なほどのお賽銭が集まったのだった。
どう考えてもこれは勝ったな。お互いがんばったねー、と、
魔理沙とこいしはお互いを称えあってきゃっきゃうふふしていたところ、
二人は勝負終了の時間と共に現れた審判長・映姫によって、
この勝負の敗北を言い渡された。
魔理沙とこいしはお互いを称えあってきゃっきゃうふふしていたところ、
二人は勝負終了の時間と共に現れた審判長・映姫によって、
この勝負の敗北を言い渡された。
さて肝心の永琳チルノ組はというと、何と三途の河に来ていた。
実は三途の河の渡し賃というのは、名目上は渡し守の死神に払う賃金ではなく、
地蔵菩薩(この場合は四季映姫)に納める賽銭という扱いなのだ(Wikipedia調べ)。
しかしそこに気付いたところで、河を渡る方法が無ければ話にならない、
勝負の形式上、渡し守の小町は力を貸すことはできない、かろうじて舟を貸すことくらいはできるのだが。
だが永琳は、その舟の借り出しさえも断った。道は彼女が作る、といって河を指し示す。
そこにチルノが仁王立ちしていた。断固たる決意を表情で表している。
永琳の口車に乗ったチルノは既にやる気は満タン、
ついでに永琳の差し入れのおにぎり(国士無双入り)を食べていたので気力体力も溢れんばかり。
そしてチルノのスペル――凍符「マイナスK」が出力全開で発動する。
力任せに放出される冷気が、恐ろしいまでの速度で三途の川を一直線に凍らせていく。
そして、目に見えないほど向こうまでその氷は伸びていき――
実は三途の河の渡し賃というのは、名目上は渡し守の死神に払う賃金ではなく、
地蔵菩薩(この場合は四季映姫)に納める賽銭という扱いなのだ(Wikipedia調べ)。
しかしそこに気付いたところで、河を渡る方法が無ければ話にならない、
勝負の形式上、渡し守の小町は力を貸すことはできない、かろうじて舟を貸すことくらいはできるのだが。
だが永琳は、その舟の借り出しさえも断った。道は彼女が作る、といって河を指し示す。
そこにチルノが仁王立ちしていた。断固たる決意を表情で表している。
永琳の口車に乗ったチルノは既にやる気は満タン、
ついでに永琳の差し入れのおにぎり(国士無双入り)を食べていたので気力体力も溢れんばかり。
そしてチルノのスペル――凍符「マイナスK」が出力全開で発動する。
力任せに放出される冷気が、恐ろしいまでの速度で三途の川を一直線に凍らせていく。
そして、目に見えないほど向こうまでその氷は伸びていき――
「届いた……! あたいったらやっぱりさいきょうね!!」
――永琳にはわかっていた。この氷精は精霊の中で比較してもずいぶん活動的で、あちこちの人妖と親交を持っている、
ゆえに、「チルノにとっての三途の河幅」は、それほど長い距離にはならないということを。
それでも、死神の力を借りていない以上、相当な長さなことには違いなかったし、
実際のところ、チルノの冷気が向こう岸に届かない可能性もあったのだが――
ゆえに、「チルノにとっての三途の河幅」は、それほど長い距離にはならないということを。
それでも、死神の力を借りていない以上、相当な長さなことには違いなかったし、
実際のところ、チルノの冷気が向こう岸に届かない可能性もあったのだが――
「では死人の皆さん、このお薬を注射された方から三途の氷河を渡ってくださいね」
「どうするつもりだい? 河が凍りついたから舟が無くても渡れる、それはいいけど、距離を操れないと――」
「そんな必要は無いわ。どんなに理論上の距離が長くても――大丈夫なのよ」
「どうするつもりだい? 河が凍りついたから舟が無くても渡れる、それはいいけど、距離を操れないと――」
「そんな必要は無いわ。どんなに理論上の距離が長くても――大丈夫なのよ」
死神の疑問に、永琳はそう答えた。薬を注射した魂から順に渡し賃――賽銭を回収していく。
さて三途の河を渡り始めた死人たち、そのふよふよとした動きが、先に進むにつれてどんどん速くなっていく。
あれあれ、と戸惑う魂たち、だが一度ついた加速は止まらない、むしろさらに加速を重ねてずんずん進んでいってしまう。
――実は永琳が注射したもの、これは薬でさえなかった。河童と永琳の頭脳の合作から生み出された強力電池から流された――つまり電気である。
電気、正確には電荷を付加された魂たちは、自分たちで速度を持って三途の川を渡りだした。電荷の速度とはつまり、電流の流れのことだ。
ところで三途の川だが、これは当然チルノが凍らせたままだ。「マイナスK」の力でだ。
極低音における電流は超伝導によって限界無しの加速を加えられ、ついには亜光速の世界に到達する。
さて三途の河を渡り始めた死人たち、そのふよふよとした動きが、先に進むにつれてどんどん速くなっていく。
あれあれ、と戸惑う魂たち、だが一度ついた加速は止まらない、むしろさらに加速を重ねてずんずん進んでいってしまう。
――実は永琳が注射したもの、これは薬でさえなかった。河童と永琳の頭脳の合作から生み出された強力電池から流された――つまり電気である。
電気、正確には電荷を付加された魂たちは、自分たちで速度を持って三途の川を渡りだした。電荷の速度とはつまり、電流の流れのことだ。
ところで三途の川だが、これは当然チルノが凍らせたままだ。「マイナスK」の力でだ。
極低音における電流は超伝導によって限界無しの加速を加えられ、ついには亜光速の世界に到達する。
「いかに永かろうと、たとえ死人たちの気力が途中で尽きようと、彼らは否応なしに向こう岸に辿り着く。永遠に続く光の速度によって」
だから、チルノの力が多少向こう岸に届かなかった場合でも別に問題は無かったのだ。
一度光速に乗った物質は慣性で飛ぶことになるのだから、水面に届く前に相当な距離を稼ぐことができる。
たとえ一度は凍っていない三途の川に落ちそうになったとしても、
それほどの速さになった物質は水面に没することなく、水平にバウンドすることになる――水平に投げた平べったい石が、水面を跳ねるように。
こうして死人の行列は、あっという間に渡河することに成功したのだった。
一度光速に乗った物質は慣性で飛ぶことになるのだから、水面に届く前に相当な距離を稼ぐことができる。
たとえ一度は凍っていない三途の川に落ちそうになったとしても、
それほどの速さになった物質は水面に没することなく、水平にバウンドすることになる――水平に投げた平べったい石が、水面を跳ねるように。
こうして死人の行列は、あっという間に渡河することに成功したのだった。
というわけでこの勝負は、小町が溜めた分の魂を全て三途の先に送って賽銭を根こそぎ回収した永琳・チルノチームの勝利!