作者・作品紹介
1928 イリノイ州シカゴに二卵性双生児として生まれる。その40日後に双子の妹が死去
1933 両親が離婚
1940 SF雑誌と初めて出会う
1948 兵役のようなものを嫌いカリフォルニア大学中退。ジャネットと結婚。6カ月後に離婚
1950 クレオと結婚
1951 処女作『ウーブ身重く横たわる』を執筆。以降専業作家となる。初めはSFを書きつつ純文学での成功を夢見る
←最も貧しく苦しい時代
1953 『世界をわが手に』
1954 『火星潜入』、『ジェイムズ・P・クロウ』
1956 『マイノリティ・リポート』
1959 クレオと離婚。ルビンシュタインと結婚
1963 純文学作品が売れずその道で生きていくことを諦める。『高い城の男』でヒューゴ賞受賞
←1964 『水蜘蛛計画』
1965 ルビンシュタインと離婚。密売人から買ったアンフェタミンのせいで死にかける。一命を取り留めるが元の健康体には戻れず
1966 ナンシーと結婚
←1966 『追憶売ります』
1970 ナンシーに逃げられる
←ショックから創作を辞めドラッグに溺れ自宅はジャンキーの溜まり場になる。一年半の間に11人の友人を精神病院に運ぶ
1972 ナンシーと離婚。治療のためカナダへ移るも親しくしていた女性との別れで自殺未遂。寄宿制のヘロイン常用者リハビリセンターに入る
1973 レスリーと結婚
1974 神秘体験
1975 『流れよ我が涙、と警官は言った』でジョン・W・キャンベル記念賞受賞
1977 レスリーと離婚
1978 『暗闇のスキャナー』で英国SF協会賞受賞
1982 脳梗塞で倒れ5日後に脳死判定され死去。その4カ月後に『
アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』原作の映画「ブレードランナー」が公開
2006 『暗闇のスキャナー』映画化を記念してHanson Robotics社によってディックそっくりのレプリカントPhilが作られるも輸送中に逃亡
『安定社会』は未発表作品
映画化作品(予定も含む)
公開年 邦題 原作
1982 ブレードランナー 『アンドロイドは電気羊の夢を見るか』
1990 トータル・リコール 『追憶売ります』
1992 バルジョーでいこう! 『戦争が終わり、世界の終わりが始まった』
1995 スクリーマーズ 『変種第二号』
2001 クローン 『にせもの』
2002 マイノリティ・リポート 『マイノリティ・リポート』
2003 ペイチェック 消された記憶 『報酬』
2006 スキャナー・ダークリー 『暗闇のスキャナー』
2007 NEXT-ネクストー 『ゴールデンマン』
2011 アジャストメント 『調整班』
2012 未定 『妖精の王』←ディズニーによるアニメ映画! 未定 未定 『アマデウス』
未定 未定 『流れよ我が涙、と警官は言った』
マイノリティ・リポート
登場人物紹介
アンダートン 犯罪予防局長官 多分初老 トム・クルーズばりのアクションは見せてくれなそう カプランを殺す予定になっている
ウィットワー アンダートンの新しい協力者 若い 野心家
リサ 犯罪予防局高官 アンダートンの妻 若い
ドナ、ジェリー、マイク 予知能力者(以後プレコグ) 犯罪予防理論の要 予知能力のせいで成長が10歳程度で止まっている
ペイジ 3人のプレコグの管理責任者 軍のスパイ
カプラン 西側連邦同盟軍の元将軍 アンダートンに殺される予定になっている
あらすじ(ページ数は新装版準拠)
P9 ウィットワー登場 アンダートンは彼が気に入らない様子
P13 プレコグ登場
P15 5年間で殺人はたった1件
P16 プレコダが出す報告は軍にも同時に届いている
P17 アンダートンによる殺人がプレコダによって予知
P19 リサ登場 アンダートンは自分の妻も信じられなくなっている
P22 アンダートンは自分の地位を狙ったウィットワーによる陰謀と主張
P24 アンダートンが殺すのはカプランだということが判明
P25 逃亡の準備をするアンダートンだが拉致される
P26 拉致したのはカプラン 元将軍の立場を利用して自分が殺されるという予知を知る
P31 いまや長官代理となったウィットワーにアンダートンの身柄を渡すことに
P34 パン屋のトラックと衝突 世紀の脱出大成功
P36 保護団体と名乗る男が逃亡の手助けをしてくれる
P39 ラジオで多数報告と対になる少数報告の存在を思い出す(?)
P43 ペイジに電話をしてプレコグのいるブロックに入れてもらうことに
P45 ジェリーが出した少数報告を見つける 内容は潜在的殺人者となったアンダートンがその事実を知ったために殺人をしなくなるというもの
P48 リサの用意した高速艇にリサと共に乗るアンダートン
P51 アンダートンは自分の身の安全を求めウィットワーはシステムの存続を願っている
P52 リサに脅され警察へと戻るウィットワー 保護団体を名乗る男再登場
P53 全てはリサとウィットワーの陰謀と再び主張する男
P55 リサを殺そうとした男を殴り倒す 男の持っていた新型軍用銃が気になったらしい 男はカプランの手先だったことが判明
P57 ウィットワーに連絡しカプランにプレコグの出した予知情報を渡さないように言うも既に手遅れ
P60 カプランの狙いは古き良き連邦軍時代の軍の体制を復活させること
P61 多数報告であるドナとマイクの予知を調べるアンダートン
P62 ドナの予測はジェリーが利用したもので既に無効となっている 内容はアンダートンがカプランを殺すというもの
P63 同じく多数報告であるマイクの予測はドナのものと一致していない
P64 ジェリーの少数報告を大衆に公表し予防局を解体させようとしているカプラン 解体を逃れるにはジェリーの少数報告が間違いでなければならない つまりアンダートンはカプランを殺さなければいけない 殺人の刑罰の減刑をウィットワーに頼むアンダートン
P65 アンダートンによると少数報告は間違いではないよう
P67 軍の決起大会で演説しようとしているカプランのもとに行くアンダートン
P68 共に壇上に立とうという申し出を受諾したアンダートンにめんくらうカプラン
P69 演説を始めるカプラン
P70 ジェリーの少数報告を読み上げ次に多数報告を説明するカプラン
P71 ドナの多数報告により打ち消されたマイクの報告を読み上げようとするカプラン そこには衝撃の事実が!アンダートンに殺されるカプラン
P73 殺人の刑罰としてケンタウリ第十惑星に流されることになったアンダートン リサも一緒に行くことになり荷造りをする二人
P74 ここでアンダートンは新長官となるであろうウィットワーにネタばらし
3人のプレコグの報告はどれも少数報告であった ドナ→ジェリー→マイクの順にそれぞれの報告を参照しあって予知していた よってマイクの予知のみが正しく本当の未来 マイクの報告の内容はジェリーの予知を知ったアンダートンが予防局の利益を考え殺人を犯すというもの
P75 ドナとマイクの報告のアンダートンが殺人を犯すという最終的な結果が一致していたために多数報告が存在しているような幻想が生まれた
P76 今回のような状況が生まれるのは潜在的殺人者とされた人物がその報告を読める立場にいる時 つまり気をつけろよウィットワー
プレコグ、フィリップ・K・ディックによる『水蜘蛛計画』に関するレポート
登場するプレコグと彼らの主な論文
ポール・アンダースン 『タウ・ゼロ』 相対論的効果を扱う
レイ・ブラッドベリ 『
火星年代記』 地球人の火星進出を予言
ヴァン・ヴォークト 『非Aの世界』 演繹的推論の衰退を予言
アイザック・アシモフ 『我はロボット』ロボット工学3原則を考案
ジャック・ヴァンス 『竜を駆る種族』特定異星文明の存在を予言
マレイ・ラインスター 『時の脇道』 平行世界の存在を予言
ジャック・ウィリアムソン 『航時軍団』 パラレルワールド理論を扱う
マーガレット・セント・クレア 『アルタイルから来たイルカ』 イルカの知性を扱う
ロバート・ブロック 『都市国家ハリウッド』 未来都市のあり方を予言
アンソニー・バウチャー 21世紀の宗教復興を予言
ロバート・A・ハインライン(?) 『
夏への扉』 タイムマシンを扱う
ミルドレッド・クリンガーマン 詳細不明
『水蜘蛛計画』の概要
移住局(※1)のミスにより、亜光速で飛行中の宇宙船に乗っている15人の元囚人らは自らの質量を失ってしまった。プロキシマ(※2)に自力で再突入するためには、再び質量を得なければならない。彼らを助けるため、今や処刑されて存在しないプレコグの力を借りることに。タイム・ドレッジ(※3)を使って、プレコグ全盛の時代から彼らを連れてくる案。
ポール・アンダースンというプレコグが移住局の現在の状況を予言していた。1954年のサンフランシスコにおけるプレコグ全国大会に参加するアンダースンのもとに、タイム・ドレッジを用いて何人かの職員が赴き、彼を現代へと連れてくることに。
1954年に着く職員2人。現代では有名なプレコグ達と直接会い、感動する。タイム・ドレッジの中にアンダースンを招き入れ、現代へと連れてくることに成功する。
モノレール・システム(※4)に驚くアンダースン。宇宙船に乗っている悪名高い殺人者ドナルドもプレコグの論文を読み、自分達の状況をどうにかしようとしている。アンダースンからどうにかして質量復元の公式を聞き出そうとする職員。どうやらプレコグ達は自分の能力に気付いていないよう。隙を見て逃げ出すアンダースン。未来の情報を少しでも得ようとしている様子。商店でポルポル(※5)を呼ばれそうになる。気の毒な人と思われながらも、女性に図書館まで案内してもらえることに。
アンダースンをどうやって探し出すか考える職員達。宇宙港(※6)に向かうだろうと考える。粘菌生物(※6)と出会うアンダースン。アンダースンの思考をキャッチして質問に答えてくれる粘菌生物。現代はリベラルな体制をとっているよう。粘菌生物はアンダースンの逃亡に力を貸してくれることに。しかし職員に捕まってしまうアンダースン。仕方なく、質量復元の公式に関する論文を書くことに。書き終えたアンダースンだが、規則で記憶を一部消されることに。
記憶の消去後、彼のいた時代へと戻るアンダースン。しかし論文の元となった記憶を消してしまったことで、論文自体がなくなり、職員達の記憶もなくなり、時間が少し逆行してしまった様子。アンダースンは未来(つまり現代)で経験したことを一部メモしていたが、それをプレコグの能力によるものとは思わず、創作のアイデアの一つと思っている様子。
※1 外惑星への移住を担当する省庁のよう。現在はまだ存在せず。
※2 外惑星群のひとつだろう。発見済みだが生物の生息に適するかは不明。
※3 別名タイムトラベル・ドレッジ。時間軸上をある程度移動出来る乗り物だろう。現在にはまだ存在せず。
※4 人の移動のためのシステムだろう。現在のエアカー・システムの進化系か。
※5 政治警察。現在のポリのようなものか。
※6 外惑星からきたと思われる生物。地球の粘菌と関係があるかは不明。
まとめ
本論文には多数のプレコグが登場する。彼らの論文の中には、現在の状況を説明しているものもあることから、当時のプレコグ達の能力の高さがうかがい知れる。『水蜘蛛計画』の著者、フィリップ・K・ディックもそうしたプレコグの一人である。よって本論文に書かれている状況は、現在まだ起こっていないものの、近い将来必ず生じ、大きな問題となるだろう。その日に備えてプレコグの論文の分析、特に6章のタイムパラドクス問題を解消する方法を見つける必要がある。今後とも我々の努力が必要となるだろう。
(レジュメ作者の妄想が含まれます)
他の収録作品
『ジェイムズ・P・クロウ』
『世界をわが手に』
『安定社会』
『火星潜入』
『追憶売ります』
全体の感想
『マイノリティ・リポート』は映画を観て、レジュメを書こうと思っていましたが、一度観た映画を再び観るのが思ったより苦痛だったので、断念しました。小説の内容は短いけれども中身が詰まっているのではないでしょうか。アクション映画に出来るくらいですからね。
『水蜘蛛計画』は何度読んでも面白いものだと思います。しかし、出てくるSF作家の名前と代表作が全然わからず、そのせいでもし有名どころが登場してなかったら、プレコグが実はSF作家であったことに気付けなかったかもしれません。
実はこの短編集のなかでは『世界をわが手に』が一番好きです。好きでしたが、レジュメが書きにくそうだったので選びませんでした。
最近再版ブームが来ているので、機会があればディックの長編のレジュメもやりたいと思います。
最終更新:2011年06月10日 22:28