天魔ベリアル。
序列68位、50の軍団を率いる地獄の大王。竜に曳かせた炎の戦車に騎乗した、美しい大天使の姿を取る。
だが、この序列は単にルシファーの陣営に名を連ねたのが遅かったというだけで、彼の力の指標とはなりえない。
それよりも。
ベリアルといえば、古今東西どの魔導書を紐解いても必ず名前が出てくる大物であろう。
曰く、地獄で最も低俗な、悪徳の為に悪徳に耽溺する精神の持ち主。
曰く、外見は荘厳華麗にして優雅端麗、権威に満ちるものの、その魂はきわめて醜悪。
曰く、天から落ちた天使のなかで、彼ほど淫らで不埒な者はいない――。
むろん、ベリアルは古巣で発行された書物であるところの聖書でもこれでもかと口汚く罵られている。
実際ベリアルは神に祝福された人間由来の『神の子』であるイエス・キリストを逆告発するという離れ業を実行している。
また、天魔七十二将がバビロニアのソロモン王に使役された際、ソロモン王の死と共に他の天魔はみな行方を晦ませた――が。
ベリアルだけはソロモン王の死後もバビロニアに偽神として残り続け、人々を大いに惑わせたという。
まさに、人を破滅させることを生き甲斐とする悪魔の中の悪魔――と言っていいだろう。
その正体は唯一神によって最初に創造された天使。大天使長
ミカエルや天使総長メタトロン、宵の明星ルシファーをも凌ぐ『神の長子』。
唯一神の座す王座の傍らに座し、神と同じものを見、神の成すことを成し、神の権能に等しい力を有する、天界最大にして最強の天使。
全ての天使たちの英雄にして兄。
アスタロトも
ミカエルも、ベリアルの妹にして弟子である。
唯一神は地上の人々の信仰を集めるためのマッチポンプとして、自身の右腕であるベリアルにサタン(敵対者の意)の役目を与え、
人々を悪に誘惑するよう命じた。
ベリアルはその職務を忠実にこなし、地上の人々は根こそぎ悪に耽溺し堕落したが、
その余りの手腕の見事さに地上の堕落のペースが唯一神の想像を超える事態にまで発展。
此の侭では本末転倒であると危惧した唯一神はベリアルをサタンの職務から解き、権能の大半を剥奪した。
既に職務としてではなく嗜好として悪を成していたベリアルはそんな神の暴慢に反発。
表向きは従順に、しかし虎視眈々と叛逆の機会を窺っていた。
自らの後任として新たなサタンとなったルシファーの遊びがなく高潔すぎる性情に目を付けたベリアルは、
言葉巧みにルシファーを焚き付けて唯一神への不信感を植え付け、戦争を教唆。
創世記戦争が勃発すると、黒幕として存分に暗躍した。
創世記戦争後は
怪人赤マントを名乗り、かつて唯一神に奪われた力を取り戻すべく世界中を放浪する。
各地で人々を堕落させ、破滅を振り撒き、ありとあらゆる災厄の源としてその名を轟かせた。
平安期には京で
尾弐 黒雄と
酒呑童子にまつわる因縁を作り、その後とある寒村で後の
那須野 橘音の誕生を見届ける。
御幸 乃恵瑠の前身であるみゆきが妖壊化するきっかけを作ったのもベリアルである。
そして決戦の地・東京都庁でついに宿願を果たし、長らく失われていた神にも等しい権能を取り戻すに至る。
その名も――
最終更新:2021年03月05日 07:43