IDdata | |
Name | 闇山羊 逝人(やみやぎ せいと) |
Alias | 【グランドファンクロード(最高位の欝道)】 |
Class | インダストリアリスト&ミスティック |
Rank | ロード++&マエストロ++ |
Money | 28766500647W¢ |
Point | 1376334015pt |
Ranking | 52/6473226 |
OOPARTS | |
Link | ホーンテッドリング所属 |
Age | 18 |
学年 | 四六年度入学 予科程六年修了 本科四年目 |
職業 | ホーンテッドリング総代補佐役 |
人種 | 日系露人 |
所在地 | ノースヤード パンオプティコン |
連帯保証人 | 骸手 想月 |
PROFILE
骸手想月と十一人の仲間たち、通称【アビスマルイレブン(救いようのないほどに最低最悪の十一人)】に列せられた最後の一人。
諸所の事情により、想月の仲間にトップクラスランカーは存在しないが、闇山羊逝人は、そこに名を連ねる最初で最後にして唯一のトップランカーである。
【グランドファンクロード(最高位の欝道)】のエイリアスと共に、現在では【グランドファンクロード(最高位の欝王)】の異名でも知られる人物である。
諸所の事情により、想月の仲間にトップクラスランカーは存在しないが、闇山羊逝人は、そこに名を連ねる最初で最後にして唯一のトップランカーである。
【グランドファンクロード(最高位の欝道)】のエイリアスと共に、現在では【グランドファンクロード(最高位の欝王)】の異名でも知られる人物である。
常に白を基調とした衣服を纏い、その容姿は学園都市でもっとも端麗にして艶やかな美丈夫と謳われるほどに美しい超絶の美少年だ。
無気力を宿した瞳は、ときに鋭く、ときに優しく歪み、口許には薄い微笑みをたたえている。
百七十六センチの白磁の体躯と見事すぎる白髪、白銀に近い灰色の双眸を有し(自前ではない)、その姿は、さながら鎖に繋がれるを是とする白山猫。
しなやかに磨き抜かれた痩身を持ち、時折の戯れに見せる自虐と嗜虐の坩堝は、そのどれもが混沌の様相を呈し、闇を束ねる山羊(悪魔的)ならぬ山猫のような印象を懐かせる人物である。
蠱惑にして流麗、それでいて愚者を思わせる独自の価値観を有し、芝居がかった台詞回しと骸手想月至上主義を掲げる変質の持ち主である。
無気力を宿した瞳は、ときに鋭く、ときに優しく歪み、口許には薄い微笑みをたたえている。
百七十六センチの白磁の体躯と見事すぎる白髪、白銀に近い灰色の双眸を有し(自前ではない)、その姿は、さながら鎖に繋がれるを是とする白山猫。
しなやかに磨き抜かれた痩身を持ち、時折の戯れに見せる自虐と嗜虐の坩堝は、そのどれもが混沌の様相を呈し、闇を束ねる山羊(悪魔的)ならぬ山猫のような印象を懐かせる人物である。
蠱惑にして流麗、それでいて愚者を思わせる独自の価値観を有し、芝居がかった台詞回しと骸手想月至上主義を掲げる変質の持ち主である。
レイズエリア北の地下二十三階層“ノモスアルピエ”の支配者として、カリスマによって祭り上げられた強者共の上に君臨している。
レイズエリアの実力は、かなりアバウトではあるが、十階層下がるごとに住人の実力も十倍増す(一階層ごとに倍増す)と言われており、最下層は地下六十三階である。
かなり地下へ深い構造として造られた場所である元東京地下街は、核戦争当時のシェルターとして建造されており、現在でも稼動する施設は多く、アンダーヤードから続くレイズエリアの地下と言っても、薄暗い闇ばかりではない。
それぞれの階層ごとに支配者(単純に無法者のリーダーのような場合もある)のような者が存在し、地上のように選出された者たちではないが、レイズの住人たちが認めたカリスマ性を持つ真の支配者たちだ。
レイズエリアの実力は、かなりアバウトではあるが、十階層下がるごとに住人の実力も十倍増す(一階層ごとに倍増す)と言われており、最下層は地下六十三階である。
かなり地下へ深い構造として造られた場所である元東京地下街は、核戦争当時のシェルターとして建造されており、現在でも稼動する施設は多く、アンダーヤードから続くレイズエリアの地下と言っても、薄暗い闇ばかりではない。
それぞれの階層ごとに支配者(単純に無法者のリーダーのような場合もある)のような者が存在し、地上のように選出された者たちではないが、レイズの住人たちが認めたカリスマ性を持つ真の支配者たちだ。
逝人に関しては、〝北の〟と前置いたが、地上のように必ず四方に王が存在する訳ではなく、アンダーヤードから続くレイズエリアの地下は、東西南北すべてが繋がっている訳ではない。
例えば、北から入ったが最後、十三階層までは多方面への連絡通路などはないし、道が塞がっている場合もある。
その形はさながら迷路であり、階層によっては、東と南はあるが西と北は、そもそも何も存在しないコンクリート壁である場合などもある。
西と北に関わらず、東西南北すべてが揃って存在している階層は珍しいのだ。
そういった意味もあり、逝人が君臨する“ノモスアルピエ”は、たまたま北しか存在しない階層である。
例えば、北から入ったが最後、十三階層までは多方面への連絡通路などはないし、道が塞がっている場合もある。
その形はさながら迷路であり、階層によっては、東と南はあるが西と北は、そもそも何も存在しないコンクリート壁である場合などもある。
西と北に関わらず、東西南北すべてが揃って存在している階層は珍しいのだ。
そういった意味もあり、逝人が君臨する“ノモスアルピエ”は、たまたま北しか存在しない階層である。
また、アンダーヤード、及びレイズエリアは、かつての東京地下街を違法改築した中に作られている。
したがって、レイズの階層支配者の中には、地上四区画を併せた面積よりも広大な土地を治める者も稀に存在するようだ。
ただし、そこまで広大な地域を治めるとなると、幾つかのブロックに別れて支配者が複数いる場合が一般的であり、一人ですべてを統治するには、よほど突出した実力とカリスマ性が必要である。
因みに、アンダーヤードの皇帝。蔡麻勇太郎の治める土地も、規模だけならば地上三区画程度の広さがある。
したがって、レイズの階層支配者の中には、地上四区画を併せた面積よりも広大な土地を治める者も稀に存在するようだ。
ただし、そこまで広大な地域を治めるとなると、幾つかのブロックに別れて支配者が複数いる場合が一般的であり、一人ですべてを統治するには、よほど突出した実力とカリスマ性が必要である。
因みに、アンダーヤードの皇帝。蔡麻勇太郎の治める土地も、規模だけならば地上三区画程度の広さがある。
普段からレイズエリアに住むことはなく、オーバーン制(独居拘禁制)を過剰に導入した北区画最大の刑務所、【パンオプティコン(全展望監視型刑務所)】を住居とし、地下15階の特殊閉鎖独房を自室としている。
ただし、罪によって収監されている訳ではなく、自分から申し出て捕らえてもらっているようだ。
もちろん、かなりの罪状も持っているため、こうした処置が成されなければ、今頃は退学処分どころか都市外強制退去を命じられていてもおかしくはない。
ただし、罪によって収監されている訳ではなく、自分から申し出て捕らえてもらっているようだ。
もちろん、かなりの罪状も持っているため、こうした処置が成されなければ、今頃は退学処分どころか都市外強制退去を命じられていてもおかしくはない。
刑務所では、純白の拘束衣と強化ベルトに雁字搦めにされ、車椅子に括りつけられて過ごしている。
更に、脚は鎖で床に拘束され、座っている車椅子自体も固定されており、余程の有事でなければ、車椅子の固定が解除されることはない。
眼にはアイマスク、口には猿轡、耳にはイヤーパットを装着され、排泄物は尿道と肛門のカテーテルから自動的かつスムーズに排泄され、食事は点滴を使って体内に直接打ち込まれる。
風呂は一日一回、天井に取り付けられた洗浄バルブから石鹸が吹き付けられ、次いで部屋の四方から鉄砲水を浴びせて身体を洗浄する。
当然ながら、拘束は解かれることなく、着衣のままである。
常に合成蛋白による筋弛緩剤を点滴と同時に体内へ打ち込まれており、身体に力を込めることが一切できない。
このあまりに逝き過ぎな対応は、放置すると恍惚なる死へ奔り出す己の性を抑えるための処置ということだが、常に与えられるギリギリの感覚は、いつだって逝人を楽しませる材料である。
更に、脚は鎖で床に拘束され、座っている車椅子自体も固定されており、余程の有事でなければ、車椅子の固定が解除されることはない。
眼にはアイマスク、口には猿轡、耳にはイヤーパットを装着され、排泄物は尿道と肛門のカテーテルから自動的かつスムーズに排泄され、食事は点滴を使って体内に直接打ち込まれる。
風呂は一日一回、天井に取り付けられた洗浄バルブから石鹸が吹き付けられ、次いで部屋の四方から鉄砲水を浴びせて身体を洗浄する。
当然ながら、拘束は解かれることなく、着衣のままである。
常に合成蛋白による筋弛緩剤を点滴と同時に体内へ打ち込まれており、身体に力を込めることが一切できない。
このあまりに逝き過ぎな対応は、放置すると恍惚なる死へ奔り出す己の性を抑えるための処置ということだが、常に与えられるギリギリの感覚は、いつだって逝人を楽しませる材料である。
だが、仕事の際には気軽に刑務所から抜け出しているため、脱獄するのも気分一つのようだ。
ただし、逝人のミスティックは学園都市屈指であるものの、強化に対しては自分以外の他者が必ず必要という条件が設けられており、加えて投与される筋弛緩剤の効果は、気功の使用すら不可能にすることを鑑みても、逝人単独での脱獄は不可能である。
そのため、外に協力者がいるはずだと理解はされているが、なぜかそういった人物が目撃されたことは、今だかつて一度もないという。
しかし、謎の協力者が難攻不落の刑務所に侵入し、身体を弛緩させて拘束された人間を連れ、脱出できる程の手練であることだけは間違いない。
蛇足だが、逝人が刑務所から消えるときは、必ず拘束衣と車椅子も一緒になくなる。
つまり、件の協力者は、毎回、拘束衣に身を包んだ人間を背負い、決して外れないだろうロックで固定された車椅子を運び、警備はおろかシステムにすら悟らせることなく脱出していることになる。それも、一度や二度ではない。恐るべき使い手だろう。
ただし、脱獄の度に何名かの死者が出ているらしい。
もっとも、その死者は看守のみならず囚人にも及ぶというのだから、それが逝人の脱獄と関係しているかは、不明である。
ただし、逝人のミスティックは学園都市屈指であるものの、強化に対しては自分以外の他者が必ず必要という条件が設けられており、加えて投与される筋弛緩剤の効果は、気功の使用すら不可能にすることを鑑みても、逝人単独での脱獄は不可能である。
そのため、外に協力者がいるはずだと理解はされているが、なぜかそういった人物が目撃されたことは、今だかつて一度もないという。
しかし、謎の協力者が難攻不落の刑務所に侵入し、身体を弛緩させて拘束された人間を連れ、脱出できる程の手練であることだけは間違いない。
蛇足だが、逝人が刑務所から消えるときは、必ず拘束衣と車椅子も一緒になくなる。
つまり、件の協力者は、毎回、拘束衣に身を包んだ人間を背負い、決して外れないだろうロックで固定された車椅子を運び、警備はおろかシステムにすら悟らせることなく脱出していることになる。それも、一度や二度ではない。恐るべき使い手だろう。
ただし、脱獄の度に何名かの死者が出ているらしい。
もっとも、その死者は看守のみならず囚人にも及ぶというのだから、それが逝人の脱獄と関係しているかは、不明である。
刑務所外での着衣は様々であり、白いファー付きレザージャケットや白いスーツ、コートなどであるが、常に白を好んで着る。
逝人の見事な白髪と白銀に近い灰色の瞳は、しかし、自前ではまったくない。
髪はわざわざ純白になるようメラニン色素を操作し、瞳の色も眼科的施術によってわざわざ変更している。自前の白は白磁の肌のみであろう。
ここまで白に拘るには理由があり、彼にとって、白とは“悦びに満ちた終焉”の象徴であり、絶対のカラーなのだ。
因みに、嫌いな色は黒であり、理由は色合いが絶望を思わせるからだとか。
逝人の見事な白髪と白銀に近い灰色の瞳は、しかし、自前ではまったくない。
髪はわざわざ純白になるようメラニン色素を操作し、瞳の色も眼科的施術によってわざわざ変更している。自前の白は白磁の肌のみであろう。
ここまで白に拘るには理由があり、彼にとって、白とは“悦びに満ちた終焉”の象徴であり、絶対のカラーなのだ。
因みに、嫌いな色は黒であり、理由は色合いが絶望を思わせるからだとか。
今でこそ華々しくも禍々しい経歴を持つ闇山羊逝人だが、かつての学園都市では、なんの取り柄もない超絶の美少年として日々を過ごしていた。
むしろ、〝美少年〟の部分が取り柄と言えなくもないが、しかし、容姿の善し悪しなど老いれば意味などない。
逝人は、そのことを誰よりも理解していた。彼はなんの取り柄もない少年などではなかったのだ。
むしろ、彼は賢すぎた。
生まれながらにして、当時の世界で公式に認められていたIQの最高数値220(サイキックやミスティック能力は除外して)を難なく振り切るIQ400を叩き出し、しかも、成長と共にその知能指数は上昇を続けたと云われる超天才児であり、ゾディアックソサエティ(黄道十二宮協会)に列せられる〝白羊宮〟【オリガルヒ】の重鎮、軍産複合関連を統治するアイゼンハワーの代表取締役であるセルゲイ・ノルシュテインの御曹司として生を受けた。
母親は、純日系であったようだが、妾であり正妻ではなかったようだ。
事実、逝人は生まれたときから母親を見たことが一度もなかった。もしかすれば、日本解体の折に多く売られていった日本人の子孫だったのかもしれないが、今となっては調べる術もない。
当時の本名は、セイトゥ・ノルシュテインであった。
むしろ、〝美少年〟の部分が取り柄と言えなくもないが、しかし、容姿の善し悪しなど老いれば意味などない。
逝人は、そのことを誰よりも理解していた。彼はなんの取り柄もない少年などではなかったのだ。
むしろ、彼は賢すぎた。
生まれながらにして、当時の世界で公式に認められていたIQの最高数値220(サイキックやミスティック能力は除外して)を難なく振り切るIQ400を叩き出し、しかも、成長と共にその知能指数は上昇を続けたと云われる超天才児であり、ゾディアックソサエティ(黄道十二宮協会)に列せられる〝白羊宮〟【オリガルヒ】の重鎮、軍産複合関連を統治するアイゼンハワーの代表取締役であるセルゲイ・ノルシュテインの御曹司として生を受けた。
母親は、純日系であったようだが、妾であり正妻ではなかったようだ。
事実、逝人は生まれたときから母親を見たことが一度もなかった。もしかすれば、日本解体の折に多く売られていった日本人の子孫だったのかもしれないが、今となっては調べる術もない。
当時の本名は、セイトゥ・ノルシュテインであった。
逝人が生まれ、父親は息子の超人ぶりに始めこそ狂喜乱舞したものだったが、それも彼が六歳になるまでのことだ。
幼くして帝王学を修めた逝人は、早々にその企業手腕を奮い、父の地位を脅かし始める。
父であるセルゲイは、あくまでノルシュテインの家柄と家名が安泰であればよかった。なにも自分の地位を脅かすほどの天才など、誰も求めていない。
このときより、逝人は父親にとって邪魔な存在になった。彼は天才過ぎたのだ。
だが、その天才ぶり故、逝人はセルゲイの地位などに興味を抱かなかった。超天才はただ、自分の限界を知りたかったのである。
そういう意味で、世界的企業というのは彼にとって丁度いい実験場だった。
だが、そんな表舞台での知能戦も、数年の後に児戯にも劣る遊戯へと成り下がる。
闇山羊逝人には容易過ぎた。そして、彼の長い絶望が始まる。
まさか、自分の生まれてきた世界が、こんなにも容易く、退屈に極まった世界だなどと知りもしなかった。
それ以来、逝人は世界に絶望し続けた。
幼くして帝王学を修めた逝人は、早々にその企業手腕を奮い、父の地位を脅かし始める。
父であるセルゲイは、あくまでノルシュテインの家柄と家名が安泰であればよかった。なにも自分の地位を脅かすほどの天才など、誰も求めていない。
このときより、逝人は父親にとって邪魔な存在になった。彼は天才過ぎたのだ。
だが、その天才ぶり故、逝人はセルゲイの地位などに興味を抱かなかった。超天才はただ、自分の限界を知りたかったのである。
そういう意味で、世界的企業というのは彼にとって丁度いい実験場だった。
だが、そんな表舞台での知能戦も、数年の後に児戯にも劣る遊戯へと成り下がる。
闇山羊逝人には容易過ぎた。そして、彼の長い絶望が始まる。
まさか、自分の生まれてきた世界が、こんなにも容易く、退屈に極まった世界だなどと知りもしなかった。
それ以来、逝人は世界に絶望し続けた。
八歳の頃、ふと気付くと、自分はトランキライザー学園都市へ向かう飛行機に乗せられていた。
今ひとつ状況が飲み込めなかったのだが、よくよく思い返してみると、自分の父親らしき人物が、無言無表情の息子を宥めすかし、息子は父親の言葉に素直に頷いた記憶があった。
なんとも曖昧な回想だったが、あんな底の浅い男など、父親という以前に地べたを這いずる野豚にも劣る。
未だに逝人が自身の地位を脅かすと恐れていたセルゲイは、人生経験をつませるという名目と、当時にして姫宮の双子の婚約者候補に選ばれていたという事実を利用し、逝人をトランキライザーへ厄介払いしたのだ。
そんな下賎な男の言葉などに一片の価値も見い出していなかった逝人は、生来から父の言葉を受け流していた。それが理由で現状がいまいち理解できなかったのだろう。
学園都市についてIDを発行する際、迷うことすらなく本名は捨てた。
数秒考えた後、苗字を〝闇山羊〟、名前を〝逝人〟と名付けた。
苗字については多少悩んだものの、〝逝人が現状唯一自分以上でも以下でもない例外〟と認めた〝世界を皮肉った中年紳士〟ドミトリー・フリードマンが有する【オリガルヒ】の〝白羊宮〟からアイデアを拝借した。もっとも、〝白羊〟というのは語呂が悪かったし、何より、自分はもはや野に放たれた獣に等しい。
ならば、今更にして牙も角も持たないただの羊など有り得まい。そう結論付けた逝人は、自分の絶望を闇と表現し、苗字を〝闇山羊〟とした。
名前はより簡単だった。
退屈な世界から〝早く逝けるように〟という願いを篭めて、〝逝く人〟、名前は〝逝人(せいと)〟に決まった。
今ひとつ状況が飲み込めなかったのだが、よくよく思い返してみると、自分の父親らしき人物が、無言無表情の息子を宥めすかし、息子は父親の言葉に素直に頷いた記憶があった。
なんとも曖昧な回想だったが、あんな底の浅い男など、父親という以前に地べたを這いずる野豚にも劣る。
未だに逝人が自身の地位を脅かすと恐れていたセルゲイは、人生経験をつませるという名目と、当時にして姫宮の双子の婚約者候補に選ばれていたという事実を利用し、逝人をトランキライザーへ厄介払いしたのだ。
そんな下賎な男の言葉などに一片の価値も見い出していなかった逝人は、生来から父の言葉を受け流していた。それが理由で現状がいまいち理解できなかったのだろう。
学園都市についてIDを発行する際、迷うことすらなく本名は捨てた。
数秒考えた後、苗字を〝闇山羊〟、名前を〝逝人〟と名付けた。
苗字については多少悩んだものの、〝逝人が現状唯一自分以上でも以下でもない例外〟と認めた〝世界を皮肉った中年紳士〟ドミトリー・フリードマンが有する【オリガルヒ】の〝白羊宮〟からアイデアを拝借した。もっとも、〝白羊〟というのは語呂が悪かったし、何より、自分はもはや野に放たれた獣に等しい。
ならば、今更にして牙も角も持たないただの羊など有り得まい。そう結論付けた逝人は、自分の絶望を闇と表現し、苗字を〝闇山羊〟とした。
名前はより簡単だった。
退屈な世界から〝早く逝けるように〟という願いを篭めて、〝逝く人〟、名前は〝逝人(せいと)〟に決まった。
それからの学園生活、闇山羊逝人が何をしていたかといえば、何もしなかった。
行動の続きが常に理解できてしまう優秀過ぎる頭脳を怨めしく思いながらも、世界は定形にしか歪まない、変化しないと結論付けた。
だから逝人は、世界に希望を抱かなくなった。
やがて、世界に絶望し、希望まで忘れた自分には、世界で生きる理由がなくなった。
故に、闇山羊逝人は終わることにしたのだ。
感慨も憐憫も、後悔も幸福もない。
ただ、生きる意味を失ったから、いや、ここまで生きても見つからなかったから終わることにしたのだ。
その後は実に迅速だった。
学園都市に来て以来、ここまで迅速だったことはない。
逝人は、北区画の廃ビルから飛び降りた。死を知覚した瞬間、わずかに感じた悦びを確かに覚えている。
だが、如何なる運命の悪戯か、地上20階のビルの屋上から飛び降りた逝人の直下、丁度15階あたりが違法に増改築され、ビルの外に突きだしていたのだ。
逝人は、それに頭から激突したが、老朽化したコンクリートは内部がスカスカだったために、頭が粉々になるようなことはなく、その増改築部分を滑るようにして落下、本来は真下の地面に叩きつけられた筈の身体は、増改築で出っ張っていた場所を前へ、より遠くへ滑るように進んだため、ビルの向かいを流れていたドブ川へと落下した。
前日の暴風雨も手伝って、思いの外に流れの速い川の濁流にのまれる最中、逝人は確かに死んでいた。
生命反応は失われ、鼓動が止まって瞳孔は開き、呼吸もしない。確実に死が去来したのだ。
行動の続きが常に理解できてしまう優秀過ぎる頭脳を怨めしく思いながらも、世界は定形にしか歪まない、変化しないと結論付けた。
だから逝人は、世界に希望を抱かなくなった。
やがて、世界に絶望し、希望まで忘れた自分には、世界で生きる理由がなくなった。
故に、闇山羊逝人は終わることにしたのだ。
感慨も憐憫も、後悔も幸福もない。
ただ、生きる意味を失ったから、いや、ここまで生きても見つからなかったから終わることにしたのだ。
その後は実に迅速だった。
学園都市に来て以来、ここまで迅速だったことはない。
逝人は、北区画の廃ビルから飛び降りた。死を知覚した瞬間、わずかに感じた悦びを確かに覚えている。
だが、如何なる運命の悪戯か、地上20階のビルの屋上から飛び降りた逝人の直下、丁度15階あたりが違法に増改築され、ビルの外に突きだしていたのだ。
逝人は、それに頭から激突したが、老朽化したコンクリートは内部がスカスカだったために、頭が粉々になるようなことはなく、その増改築部分を滑るようにして落下、本来は真下の地面に叩きつけられた筈の身体は、増改築で出っ張っていた場所を前へ、より遠くへ滑るように進んだため、ビルの向かいを流れていたドブ川へと落下した。
前日の暴風雨も手伝って、思いの外に流れの速い川の濁流にのまれる最中、逝人は確かに死んでいた。
生命反応は失われ、鼓動が止まって瞳孔は開き、呼吸もしない。確実に死が去来したのだ。
川を流され、地下水道に入り、アンダーヤードを抜けてレイズエリアの地下十一階層、生活用水の川辺へ打ち上げられた。
その衝撃と同時に、体内を掻き回す本流が苦痛と共に逝人の意識を叩き起こし、血ヘドとドブ水を口から吐いてのた打ち回った。
身体は悪臭に塗れ、吐き出すモノは赤だか黒だか緑だか解らないヘドロ、これほどの無様を晒したことはない。
だが、それ以上に逝人を苛立たせたのは、この世で始めて掴んだ悦びが身体を容易くすり抜けたことだった。
だから、天才的な逝人が気付けなかったのかもしれない。周囲を舞い踊る虹色の光彩に。
その衝撃と同時に、体内を掻き回す本流が苦痛と共に逝人の意識を叩き起こし、血ヘドとドブ水を口から吐いてのた打ち回った。
身体は悪臭に塗れ、吐き出すモノは赤だか黒だか緑だか解らないヘドロ、これほどの無様を晒したことはない。
だが、それ以上に逝人を苛立たせたのは、この世で始めて掴んだ悦びが身体を容易くすり抜けたことだった。
だから、天才的な逝人が気付けなかったのかもしれない。周囲を舞い踊る虹色の光彩に。
その後、川辺で脱力していた逝人の周りに人だかりが出来始めた。
別に、逝人を心配してのことではない。
はっきり言って逝人はいい身なりをしていた。加えて絶世の美少年だ。
色々と使い方はあり、それを瞬時に判断するハイエナが、素早く周囲に群がっていたのだ。
そのすべてがレイズエリアの住人。特段して頂上の力を持っている訳ではない。だが、それでも相手はレイズに生きるゴロツキ共だ。
強者でない訳などなく、その数は目算でおよそ二百。
本来なら、地上から偶然落ちた者などは、状況を理解し、すべてを諦めて死を覚悟する。
ゴロツキ共も、逝人のことをそんな風に見た。
つまり、“たまに落ちてくる旨味だけの鴨だ”と誰もが思ったのだ。
だが、次に発せられた言葉は、喰い散らかすだけのつもりだったハイエナには甚だ意外で、そのときの逝人には至極真当な台詞だった。
別に、逝人を心配してのことではない。
はっきり言って逝人はいい身なりをしていた。加えて絶世の美少年だ。
色々と使い方はあり、それを瞬時に判断するハイエナが、素早く周囲に群がっていたのだ。
そのすべてがレイズエリアの住人。特段して頂上の力を持っている訳ではない。だが、それでも相手はレイズに生きるゴロツキ共だ。
強者でない訳などなく、その数は目算でおよそ二百。
本来なら、地上から偶然落ちた者などは、状況を理解し、すべてを諦めて死を覚悟する。
ゴロツキ共も、逝人のことをそんな風に見た。
つまり、“たまに落ちてくる旨味だけの鴨だ”と誰もが思ったのだ。
だが、次に発せられた言葉は、喰い散らかすだけのつもりだったハイエナには甚だ意外で、そのときの逝人には至極真当な台詞だった。
「なぜ、なぜ、なぜ、なぜ? 何故なんだっ! ――ああ、そうか、そういうことかな? 君たちが僕の死なんだね? なんだ。そうか、よかった。よかったよ。僕はちゃんと悦べるんだ! さあ! さあさあさあさあさあさあさあさあっ! 僕を、僕を、僕を、殺してみせろ! 冷たい悦びを教えてくれ!」
この後、一が二百を凌駕する圧倒的な単騎殲滅戦が行われた。
いままで使用されることもなく、ただ驚異的な頭脳によってインプットされ続けるだけだった知識の戦技は、ここに至って極限まで昇華され、インテリジェンスな戦術として逝人のしなやかな肢体からアウトプットされた。
そして、彼の驚異の順応力は、手に入れたばかりのミスティックすら戦闘の最中に知覚し、完璧に使いこなして魅せる。
戦場は夜叉が駆ける地獄絵図さながらの様相を呈した。
驚くべきことに、これが闇山羊逝人、初めての実戦だった。
レイズエリア十一階層に群がったハイエナ二百名は、その日、人生で初めての蹂躙を味わった。
死を免れた者はわずかに三名、死ななかったのは彼らの実力ではなく、逝人の気まぐれと偶然の産物に過ぎない。
それでも心に傷を残し、闇山羊逝人の名前を聞くだけで腰が砕け、失禁が止まらない。
括約筋の緩んだ情けない姿に、もはやレイズエリアの荒くれ者としての威風はなかった。
この事件こそが、生来のレイズエリア出身者ではない逝人が、現在にして支配者の地位を住人たちによって認知されている所以である。
いままで使用されることもなく、ただ驚異的な頭脳によってインプットされ続けるだけだった知識の戦技は、ここに至って極限まで昇華され、インテリジェンスな戦術として逝人のしなやかな肢体からアウトプットされた。
そして、彼の驚異の順応力は、手に入れたばかりのミスティックすら戦闘の最中に知覚し、完璧に使いこなして魅せる。
戦場は夜叉が駆ける地獄絵図さながらの様相を呈した。
驚くべきことに、これが闇山羊逝人、初めての実戦だった。
レイズエリア十一階層に群がったハイエナ二百名は、その日、人生で初めての蹂躙を味わった。
死を免れた者はわずかに三名、死ななかったのは彼らの実力ではなく、逝人の気まぐれと偶然の産物に過ぎない。
それでも心に傷を残し、闇山羊逝人の名前を聞くだけで腰が砕け、失禁が止まらない。
括約筋の緩んだ情けない姿に、もはやレイズエリアの荒くれ者としての威風はなかった。
この事件こそが、生来のレイズエリア出身者ではない逝人が、現在にして支配者の地位を住人たちによって認知されている所以である。
それから暫くして、逝人は骸手想月と直接対峙を果たした。
噂によれば、“死を体感するため”に挑んだのだとも云われているが、真実は本人たち以外にわからない。
しかし、最悪の戦場から舞い戻った逝人は、骸手想月の忠臣となっていた。
絶望だけが支配した世界の中で、彼は想月の生き様に希望を見たのだろうか。今では忠実なる番犬であり、“骸手想月の犬畜生”を自称している。
噂によれば、“死を体感するため”に挑んだのだとも云われているが、真実は本人たち以外にわからない。
しかし、最悪の戦場から舞い戻った逝人は、骸手想月の忠臣となっていた。
絶望だけが支配した世界の中で、彼は想月の生き様に希望を見たのだろうか。今では忠実なる番犬であり、“骸手想月の犬畜生”を自称している。
自分以上は骸手想月のみと認識する逝人の世界だが、それでも、この世にただ独りだけ自身と対等にしてライバル(好敵手にして友)と認めた人物がいた。
その人物こそが、現北王、【グレイトフルナイト(偉大なる夜)】時夜夜厳である。想月に怨みを持つ夜厳とは、頻繁に衝突を繰り返しているようだ。
逝人がレイズエリア地下二十六階層の支配者になる以前に勃発した夜厳との戦いは、【グレイトフルナイトロードVSグランドファンクロード(偉大なる夜王対最高位の欝道)】と称され、今や学園都市伝説の一つにも数えられるほどだ。
ただし、先述した友という点はかなり自称であり、夜厳の方は逝人を全力で避けているらしく、想月至上主義とも呼べるド変態として、あらゆる意味で苦手だと語っている。
かつて、想月との戦闘を阻まれた夜厳が、怒りに任せて罵倒を放ったときなど、逝人は悦びに打ち震えていた。
しかし、夜厳が避ける理由は、性格以上に厄介なその能力のためだ。
知性、戦闘、ミスティックなどを含めたありとあらゆる能力、総合力とでも云うべきものが、逝人はずば抜けている。
夜厳は、入学当初から感じていたのだ。闇山羊逝人という人物が、まったく目立たないこの男が、本当は何かが違うのだと理解していた。
だからこそ関わらなかった。そういった慎重さと勘の鋭さが、〝時夜夜厳は敗れない〟秘訣でもあった。
その人物こそが、現北王、【グレイトフルナイト(偉大なる夜)】時夜夜厳である。想月に怨みを持つ夜厳とは、頻繁に衝突を繰り返しているようだ。
逝人がレイズエリア地下二十六階層の支配者になる以前に勃発した夜厳との戦いは、【グレイトフルナイトロードVSグランドファンクロード(偉大なる夜王対最高位の欝道)】と称され、今や学園都市伝説の一つにも数えられるほどだ。
ただし、先述した友という点はかなり自称であり、夜厳の方は逝人を全力で避けているらしく、想月至上主義とも呼べるド変態として、あらゆる意味で苦手だと語っている。
かつて、想月との戦闘を阻まれた夜厳が、怒りに任せて罵倒を放ったときなど、逝人は悦びに打ち震えていた。
しかし、夜厳が避ける理由は、性格以上に厄介なその能力のためだ。
知性、戦闘、ミスティックなどを含めたありとあらゆる能力、総合力とでも云うべきものが、逝人はずば抜けている。
夜厳は、入学当初から感じていたのだ。闇山羊逝人という人物が、まったく目立たないこの男が、本当は何かが違うのだと理解していた。
だからこそ関わらなかった。そういった慎重さと勘の鋭さが、〝時夜夜厳は敗れない〟秘訣でもあった。
余談だが、夜厳の知略と知性は学園都市ナンバー1だと断言できる。
故に、単純な戦闘能力で上回る相手にすら〝時夜夜厳は敗れない〟。
だが、そのナンバー1の座も三年前までの話だ。
現在、夜厳の実力をそれなりに理解するレイズエリアの住人たちは、曰く評価を下す。“その知性、闇山羊逝人を除けば、文句なしにナンバー1だ”と。
ただ、現状はどちらが上と断定する声もない。
内実は、夜厳のIQが予測数値で280、下地は逝人が上だが、応用力では夜厳が勝る。
知りえる戦術の幅は逝人に軍配が上がるが、実直に研鑽された戦技は夜厳に分がある。
ミスティックは状況を選ぶが万事に対応する逝人がおそらく秀で、しかし、夜厳はその溝をウィザードによって埋めて魅せる。
“時夜夜厳は敗れない”。これは絶対普遍の不文律。
しかし、“闇山羊逝人は殺せない”のも、万象と世界に確約された真実なのだ。
だから、二人の戦いには終わりがない。
逝人はそれでも構わないが、夜厳はそれでいい訳がない。
だから、夜厳は逝人を避けて想月を討つ。
この二人の戦いは、いつもすべてが試される。如何に出し抜くか、如何に読み切るかである。
更に、二人の優劣を判断させかねる材料の一つが、戦闘時の表情だ。
両者は常に笑んで対峙する。
独りは、決して敗れぬ己への自信を不敵に浮かべ、独りは、いずれ与えられるかもしれない死に恍惚の感情を夢想し、互いが互いに対峙する。
この二人の戦いは、未だ一度も決着したことがないという。
故に、単純な戦闘能力で上回る相手にすら〝時夜夜厳は敗れない〟。
だが、そのナンバー1の座も三年前までの話だ。
現在、夜厳の実力をそれなりに理解するレイズエリアの住人たちは、曰く評価を下す。“その知性、闇山羊逝人を除けば、文句なしにナンバー1だ”と。
ただ、現状はどちらが上と断定する声もない。
内実は、夜厳のIQが予測数値で280、下地は逝人が上だが、応用力では夜厳が勝る。
知りえる戦術の幅は逝人に軍配が上がるが、実直に研鑽された戦技は夜厳に分がある。
ミスティックは状況を選ぶが万事に対応する逝人がおそらく秀で、しかし、夜厳はその溝をウィザードによって埋めて魅せる。
“時夜夜厳は敗れない”。これは絶対普遍の不文律。
しかし、“闇山羊逝人は殺せない”のも、万象と世界に確約された真実なのだ。
だから、二人の戦いには終わりがない。
逝人はそれでも構わないが、夜厳はそれでいい訳がない。
だから、夜厳は逝人を避けて想月を討つ。
この二人の戦いは、いつもすべてが試される。如何に出し抜くか、如何に読み切るかである。
更に、二人の優劣を判断させかねる材料の一つが、戦闘時の表情だ。
両者は常に笑んで対峙する。
独りは、決して敗れぬ己への自信を不敵に浮かべ、独りは、いずれ与えられるかもしれない死に恍惚の感情を夢想し、互いが互いに対峙する。
この二人の戦いは、未だ一度も決着したことがないという。
戦闘以外での夜厳との関係は微妙なものであり、そのときの気分によって対する態度が変わる。
物言いが甘くなったり、支離滅裂になったりと様々だが、最近は敬語にこっており、夜厳のことは、現状フルネームかエイリアスで呼ぶ。
だが、これにも一貫性はなく、以前は「夜厳さん」、その前は「夜っちゃん」と読んでいた。
ただし、一回ごとに呼び方を変える訳ではなく、今度はこうしようと決めてから喋るので、少なくとも一つの愛称と語り口調は数ヵ月ほど続く。
夜厳も様々に口調の変わる男ではあるが、一人称は俺で統一しているのに対し、逝人も一人称だけは僕で一貫している。
もっとも、こんな下らない言葉遊びをするは、自身と対等と認める夜厳に対してだけであり、他の人間には興味すら抱かない。(特例として、強いと認めた人物に対しては、自分を殺してくれる対象であるかもしれないと考え興味を示す)
ただし、この言葉遊びに嫌がらせの意味はないらしく、夜厳が好むと好まざるとに関わらず、一度決まった呼び方はなかなか覆らない。
かつては、雨月幽那にも一目おいていたが、幽那には夜厳にチョッかいを出す変なヤツと認識され、警戒されていた。
夜厳を挟んで喧嘩することもしばしばあったが、主に幽那が喚いていたようだ。
逝人が「雨月は、夜っちんのこととなるとムキになるね? 何事なんだろうか?」と疑問を挟む度に、夜厳は面白半分に「ソレガ愛ってヤツデスよ」と返して「貴方は今すぐ死になさい。もしくは記憶を消すのよ。今すぐにっ」と怒鳴られて殴られていたようだ。この時点で夜厳と幽那の痴話喧嘩か言い争いに摩り替わってしまうのだが。
正直、逝人にとっても、夜厳がおそらく愛し、想月が大切に想う人を傷つけたいとは思わなかった。そういった中に在って、雨月幽那は実に稀有な存在といえた。
逝人にとって、珍しく全力でぶつかっても壊れない相手、それが雨月幽那であったのだろう。
もっとも、幽那の精神的弱さ(単純に淋しがりなど)を見抜いており、どれほど理知的で大人びていようと、対等とは認めなかった。
幽那の方も幽那の方で、警戒はしていたものの「案外単純で御し易い子」くらいには思っており、存命の頃は仲もそこそこよかったという。
夜厳にとっても、いちいち面倒臭いヤツだが特別嫌いな訳ではなく、今ほどに苦手でもなければ警戒もしていなかった。
言ってしまえば、現在は、戦う前提で逝人を見ているということだ。
だが、そんな二人がここに至って、本当の意味で戦う理由などないのかもしれない。
しかし、今更遅いのだろう。
夜厳は幽那を敬愛し、逝人は想月を崇拝したのだから、二人が宿敵の〝今〟は、当然の帰結なのだ。
物言いが甘くなったり、支離滅裂になったりと様々だが、最近は敬語にこっており、夜厳のことは、現状フルネームかエイリアスで呼ぶ。
だが、これにも一貫性はなく、以前は「夜厳さん」、その前は「夜っちゃん」と読んでいた。
ただし、一回ごとに呼び方を変える訳ではなく、今度はこうしようと決めてから喋るので、少なくとも一つの愛称と語り口調は数ヵ月ほど続く。
夜厳も様々に口調の変わる男ではあるが、一人称は俺で統一しているのに対し、逝人も一人称だけは僕で一貫している。
もっとも、こんな下らない言葉遊びをするは、自身と対等と認める夜厳に対してだけであり、他の人間には興味すら抱かない。(特例として、強いと認めた人物に対しては、自分を殺してくれる対象であるかもしれないと考え興味を示す)
ただし、この言葉遊びに嫌がらせの意味はないらしく、夜厳が好むと好まざるとに関わらず、一度決まった呼び方はなかなか覆らない。
かつては、雨月幽那にも一目おいていたが、幽那には夜厳にチョッかいを出す変なヤツと認識され、警戒されていた。
夜厳を挟んで喧嘩することもしばしばあったが、主に幽那が喚いていたようだ。
逝人が「雨月は、夜っちんのこととなるとムキになるね? 何事なんだろうか?」と疑問を挟む度に、夜厳は面白半分に「ソレガ愛ってヤツデスよ」と返して「貴方は今すぐ死になさい。もしくは記憶を消すのよ。今すぐにっ」と怒鳴られて殴られていたようだ。この時点で夜厳と幽那の痴話喧嘩か言い争いに摩り替わってしまうのだが。
正直、逝人にとっても、夜厳がおそらく愛し、想月が大切に想う人を傷つけたいとは思わなかった。そういった中に在って、雨月幽那は実に稀有な存在といえた。
逝人にとって、珍しく全力でぶつかっても壊れない相手、それが雨月幽那であったのだろう。
もっとも、幽那の精神的弱さ(単純に淋しがりなど)を見抜いており、どれほど理知的で大人びていようと、対等とは認めなかった。
幽那の方も幽那の方で、警戒はしていたものの「案外単純で御し易い子」くらいには思っており、存命の頃は仲もそこそこよかったという。
夜厳にとっても、いちいち面倒臭いヤツだが特別嫌いな訳ではなく、今ほどに苦手でもなければ警戒もしていなかった。
言ってしまえば、現在は、戦う前提で逝人を見ているということだ。
だが、そんな二人がここに至って、本当の意味で戦う理由などないのかもしれない。
しかし、今更遅いのだろう。
夜厳は幽那を敬愛し、逝人は想月を崇拝したのだから、二人が宿敵の〝今〟は、当然の帰結なのだ。
逝人は、本来、トップ50にすら食い込む十分な実力を有し、現在のランキング以上の知略、戦略と見識を持つが、レイズエリアの支配者である事実が足枷となり、ランキングの上昇はゆったりとしている。(それでも上昇はしているようだ)
更に、その仕事振りは骸手想月よりも容赦がないと謳われ、「即効性なら骸、確実性なら山羊」と噂される。
そもそも、【ホーンテッドリング】、ひいては想月に害の及ぶ行為を是としないため、暗殺に向かない仕事と判断すれば、総代補佐役の権限を持って仕事を確実に断る。
しかし、逝人自身は“死に向かう恍惚”に酔う最高位の“人生狂い”であるため、想月に害ありと判断した危険度の高い仕事(生命的にも社会的にも)は、闇山羊逝人個人として請け負う。
その際には、〝依頼達成率100%の男〟とも呼ばれ、闇山羊逝人個人が請けた仕事は、相手が十二企業だろうが、九つの組織だろうが、詳細不定の集団だろうが、ユグドラシルのピースメイカーだろうが、人類3KYOだろうが、依頼をこなして必ず戻って魅せる。
故に【パーフェクトリターニングマン(生還確率100%の男)】の異名をも世界的エイリアスとして有している。
ただし、人類3KYOについては、望月楚羅嗚と一度だけ戦ったことがあるが、その際は、当然勝利することなど叶わず、かなり一方的にやられたらしい。
楚羅嗚に対する逝人の感想は、曰く、「“七つ!” 一方的に! 圧倒的に! 一度に“七つ”も奪われた! こんな恍惚は時夜夜厳以来ひさかたです。まさに! 正に当にだ!」とのものであった。
叶うならば、もう一度、楚羅嗚の圧倒的な〝殺し〟を味わってみたいと考えている。
その他の3KYOである夜神からは、逝人が夜厳を自身唯一の対等にしてライバルと公言していることから、「夜厳をライバル視する程度のやからが俺に勝てる訳がない」として、かなりの勢いで見下されており、会ったことはあるが戦ったことはないようだ。
また、篭森壬無月とは、想月の繋がりで懇意にさせてもらっているらしく、仲はいいとのことで、時折食事などを一緒に食べたりもするようだ。
しかし、壬無月の絶対的な力を目の当たりにする度に、ついつい彼から与えられる死を教授するために挑みたくなる。そんな衝動を必死に抑え込んでいるという。
抑える理由は、壬無月と遣り合えば、壬無月と想月の関係に軋轢が生じるかもしれないという配慮からである。
即ち、逝人の思考は大抵にして、想月に帰結する。
むしろ、逝人にとって、想月に危害のない厄介事とは、イコール最高にグルメなオーダーということに他ならない。
ならば、闇山羊逝人は向かうだろう。
危険度が高ければ高いほど、彼の恍惚は加速するのだから。
更に、その仕事振りは骸手想月よりも容赦がないと謳われ、「即効性なら骸、確実性なら山羊」と噂される。
そもそも、【ホーンテッドリング】、ひいては想月に害の及ぶ行為を是としないため、暗殺に向かない仕事と判断すれば、総代補佐役の権限を持って仕事を確実に断る。
しかし、逝人自身は“死に向かう恍惚”に酔う最高位の“人生狂い”であるため、想月に害ありと判断した危険度の高い仕事(生命的にも社会的にも)は、闇山羊逝人個人として請け負う。
その際には、〝依頼達成率100%の男〟とも呼ばれ、闇山羊逝人個人が請けた仕事は、相手が十二企業だろうが、九つの組織だろうが、詳細不定の集団だろうが、ユグドラシルのピースメイカーだろうが、人類3KYOだろうが、依頼をこなして必ず戻って魅せる。
故に【パーフェクトリターニングマン(生還確率100%の男)】の異名をも世界的エイリアスとして有している。
ただし、人類3KYOについては、望月楚羅嗚と一度だけ戦ったことがあるが、その際は、当然勝利することなど叶わず、かなり一方的にやられたらしい。
楚羅嗚に対する逝人の感想は、曰く、「“七つ!” 一方的に! 圧倒的に! 一度に“七つ”も奪われた! こんな恍惚は時夜夜厳以来ひさかたです。まさに! 正に当にだ!」とのものであった。
叶うならば、もう一度、楚羅嗚の圧倒的な〝殺し〟を味わってみたいと考えている。
その他の3KYOである夜神からは、逝人が夜厳を自身唯一の対等にしてライバルと公言していることから、「夜厳をライバル視する程度のやからが俺に勝てる訳がない」として、かなりの勢いで見下されており、会ったことはあるが戦ったことはないようだ。
また、篭森壬無月とは、想月の繋がりで懇意にさせてもらっているらしく、仲はいいとのことで、時折食事などを一緒に食べたりもするようだ。
しかし、壬無月の絶対的な力を目の当たりにする度に、ついつい彼から与えられる死を教授するために挑みたくなる。そんな衝動を必死に抑え込んでいるという。
抑える理由は、壬無月と遣り合えば、壬無月と想月の関係に軋轢が生じるかもしれないという配慮からである。
即ち、逝人の思考は大抵にして、想月に帰結する。
むしろ、逝人にとって、想月に危害のない厄介事とは、イコール最高にグルメなオーダーということに他ならない。
ならば、闇山羊逝人は向かうだろう。
危険度が高ければ高いほど、彼の恍惚は加速するのだから。
余談だが、壬無月より娘の篭森珠月の様子見を頼まれており、時折に尾行をしたりして様子を伺っている。
篭森、ジェイル、遠く離れて逝人という並びで尾行しており、おそらく現状で珠月に気付かれたことはないと思われるが、何度か写真を撮って壬無月に送ったこともあり、その際はやはり気付かれないように細心の注意を払う必要があったようだ。
実は、珠月とは話したことがないらしいが、追いかけている【ワンダフルポエマー(凍れる詩人)】ジェイル・クロムウェルとは仲良しらしい。
篭森、ジェイル、遠く離れて逝人という並びで尾行しており、おそらく現状で珠月に気付かれたことはないと思われるが、何度か写真を撮って壬無月に送ったこともあり、その際はやはり気付かれないように細心の注意を払う必要があったようだ。
実は、珠月とは話したことがないらしいが、追いかけている【ワンダフルポエマー(凍れる詩人)】ジェイル・クロムウェルとは仲良しらしい。
「やあ、ジェイル。今日も鬼ごっこかい?」
「ええ、彼女はまるで檀上へ掛かる月下に踊る妖精。さながら刻帖へ記すに相応しき神代の造作。しかし、故に中々影を踏ませてはくれないのです。まだまだ、彼女との遊戯は終りそうにない」
「それは大変だね」
「貴方様こそ鬼ごっこでは? 〝偉大なる夜〟との終焉には未だ遠いとか?」
「アントニオ・ヴィヴァルディ曰く、夜には六章あり、中には幽霊と眠りを孕む。今はまだ、淡い悪夢に苛まれるのもいいだろう。彼も僕も、お互いにね」
「いやはや、遊びが過ぎるようですね。闇山羊卿」
「いずれ、甘美にして耽美と語るに足る決着はつけよう。――それよりも、どうかな? 篭森嬢の生写真があるのだけれど? 買っていかないかい?」
「買います。幾らですか? 一枚二万ですか? 安いですね。四万出しますよ。いや、八万でも問題ないでしょう。ああ、妖精だ。これはまさしく妖しなる精命です」
「ええ、彼女はまるで檀上へ掛かる月下に踊る妖精。さながら刻帖へ記すに相応しき神代の造作。しかし、故に中々影を踏ませてはくれないのです。まだまだ、彼女との遊戯は終りそうにない」
「それは大変だね」
「貴方様こそ鬼ごっこでは? 〝偉大なる夜〟との終焉には未だ遠いとか?」
「アントニオ・ヴィヴァルディ曰く、夜には六章あり、中には幽霊と眠りを孕む。今はまだ、淡い悪夢に苛まれるのもいいだろう。彼も僕も、お互いにね」
「いやはや、遊びが過ぎるようですね。闇山羊卿」
「いずれ、甘美にして耽美と語るに足る決着はつけよう。――それよりも、どうかな? 篭森嬢の生写真があるのだけれど? 買っていかないかい?」
「買います。幾らですか? 一枚二万ですか? 安いですね。四万出しますよ。いや、八万でも問題ないでしょう。ああ、妖精だ。これはまさしく妖しなる精命です」
という会話を毎回繰り広げている。
余談だが、ジェイルが上流階級の出身かもしれないという話を稀に噂として聞くが、もしかすれば、逝人とジェイルは、学園都市入学以前からの知り合いなのかもしれない。
余談だが、ジェイルが上流階級の出身かもしれないという話を稀に噂として聞くが、もしかすれば、逝人とジェイルは、学園都市入学以前からの知り合いなのかもしれない。
蛇足ではあるが、レイズエリアの他の支配者について追記しておこう。
例えば、かの【ローグクラウン(極悪非道全部道化)】ドナルド・ワクダネルも、かつてはレイズエリア四十六階層〝データイースト〟に【ドナルドランド】という街を築き、その階層の指導者として君臨していた。
昔は、世界に狂喜を振り撒く〝ドナルド教〟という新興宗教の教祖であり、彼を慕った住人と信者たちが築いたとされる居城【マク・ドナルド(ドナルドの息子たち)】は、彼の地下帰還を信じる住人たちの手で、現在も大切に管理されている。
現在の【ドナルドランド】は、かつてのドナルドの忠臣メイヤー・チーズ・マックが代理で統治している。
例えば、かの【ローグクラウン(極悪非道全部道化)】ドナルド・ワクダネルも、かつてはレイズエリア四十六階層〝データイースト〟に【ドナルドランド】という街を築き、その階層の指導者として君臨していた。
昔は、世界に狂喜を振り撒く〝ドナルド教〟という新興宗教の教祖であり、彼を慕った住人と信者たちが築いたとされる居城【マク・ドナルド(ドナルドの息子たち)】は、彼の地下帰還を信じる住人たちの手で、現在も大切に管理されている。
現在の【ドナルドランド】は、かつてのドナルドの忠臣メイヤー・チーズ・マックが代理で統治している。
云うまでもないが、ドナルドが駆使するサイキック能力【ドナルドマジック(狂気が全てを支配する)】は、ドナルドの自己満足に近い形で条件が設けられ、その真の力が発揮される状況など、まずありえない。
しかし、その封印を解禁した際の戦闘力は、レイズエリア四十階層までのあらゆる敵対者に対して無敗を誇る。
だが、彼が【ドナルドマジック】の使用条件ポーズの工程を完全に排除し、かつ幻覚の制限を明確に解禁したという話は聞かない。
ドナルド、その真の実力は、同じく四十階層ラインの支配者、【フィンドコホートクラウン(最悪魔道軍団道化)】グモン・ハングリージャックスに並び、五十階層の怪人、ドミノマスクの〝シャドー〟や六十階層の王にしてレイズエリア最強の住人【アルシャイターン(反逆王)】に次ぐ実力を有するとも謳われる。
まさに、らんらんるーな男である。
かつて、彼と五分の戦いを繰り広げた【バーガーキング】の代表理事、【フィンドコホートクラウン】グモン曰く、「ドナルドにはまだリンゴ爆弾とシャボン玉がある」という謎の台詞を〝トップランカーに聞いてみよう!〟のコーナーで語っており(グモンはトップランカーではないが)、もしかすれば、ドナルドの能力とはアイレイドに留まらないのかもしれない。
彼にとって、敵対者の実力は常にハンバーガーの数で表される。
因みに、蔡麻勇太郎の実力は、平時で「ハンバーガー六百二十五個分」くらい。時夜夜厳は、平時で「ハンバーガー七百二十四個分」くらいだという。
今までの敵対者で、ドナルドが唯一ハンバーガーに換算できなかった男は、三年前に一騎打ちを行った骸手想月のみである。
その想月ですら、三年前の戦いでは、ドナルドに完敗したと感じている。(ドナルドはいつも通り逃げるが勝ちというスタンスだったが)
あれから三年、幽那亡き後、世界に近づいた骸手想月は、当時の比ではないほどの実力を有する。
しかし、それでも、かつてのドナルドは想月に自らの底を見せることなく、苦もなく、笑みを持って【スカベンジャー(腐肉拾い)】から逃れて見せたのだった。
しかし、その封印を解禁した際の戦闘力は、レイズエリア四十階層までのあらゆる敵対者に対して無敗を誇る。
だが、彼が【ドナルドマジック】の使用条件ポーズの工程を完全に排除し、かつ幻覚の制限を明確に解禁したという話は聞かない。
ドナルド、その真の実力は、同じく四十階層ラインの支配者、【フィンドコホートクラウン(最悪魔道軍団道化)】グモン・ハングリージャックスに並び、五十階層の怪人、ドミノマスクの〝シャドー〟や六十階層の王にしてレイズエリア最強の住人【アルシャイターン(反逆王)】に次ぐ実力を有するとも謳われる。
まさに、らんらんるーな男である。
かつて、彼と五分の戦いを繰り広げた【バーガーキング】の代表理事、【フィンドコホートクラウン】グモン曰く、「ドナルドにはまだリンゴ爆弾とシャボン玉がある」という謎の台詞を〝トップランカーに聞いてみよう!〟のコーナーで語っており(グモンはトップランカーではないが)、もしかすれば、ドナルドの能力とはアイレイドに留まらないのかもしれない。
彼にとって、敵対者の実力は常にハンバーガーの数で表される。
因みに、蔡麻勇太郎の実力は、平時で「ハンバーガー六百二十五個分」くらい。時夜夜厳は、平時で「ハンバーガー七百二十四個分」くらいだという。
今までの敵対者で、ドナルドが唯一ハンバーガーに換算できなかった男は、三年前に一騎打ちを行った骸手想月のみである。
その想月ですら、三年前の戦いでは、ドナルドに完敗したと感じている。(ドナルドはいつも通り逃げるが勝ちというスタンスだったが)
あれから三年、幽那亡き後、世界に近づいた骸手想月は、当時の比ではないほどの実力を有する。
しかし、それでも、かつてのドナルドは想月に自らの底を見せることなく、苦もなく、笑みを持って【スカベンジャー(腐肉拾い)】から逃れて見せたのだった。
ABILITY

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