人形遣いのフィロソフィ ◆30RBj585Is
アリス・マーガトロイドは人形遣いである。
その技量は幻想郷の中でも特に高く、人形を用いての戦闘、家事、対話などの様々なことをこなせる。
ゆえに、人形を用いた戦いにおいて彼女は魔法使いの中でも屈指の実力と技術を誇ると言えよう。
もっとも、逆に言えば人形が無ければただの魔法使いへと成り下がってしまうのだが・・・
それがアリスにとっては悩みの種だった。
だが、悩むだけでは無意味だ。特にこの殺し合いにおいては余計な事を考えていると死を招くからだ。
この悩みを解決するにはどうするか?
人形が無いから欲しい?
人形が無いなら・・・作ればいいじゃない。
「ねぇ、こいし」
「ん、何?」
「あなたは戦いは得意?」
アリスはふと自分の隣にいる少女に話しかけると、その少女はアリスの方を振り向く。
その少女の名は古明地こいし。
地霊殿に住む覚りという種の妖怪である。
…いや、今は覚りという妖怪ではない。
何故か?それは、彼女が覚りという妖怪の特徴である第三の瞳を閉じてしまったから。
それだけではない。更に言うならば・・・
「うん。少なくとも、お姉ちゃんよりも強いつもりだし」
こいしはアリスの問いに答える。
覚りという妖怪自体はそれほど戦いが得意ではない。それでも、こいしはそれなりの自信はあると思っている。
こいしが操る無意識とは何も考えないことではない。第三の瞳を閉ざすことで自分の考えを誰にも悟らせないということだ。
経験豊富な戦士は、戦いにおいて相手の考えていることが『勘』というもので分かるらしい。殺気を感じるという表現もこれと似たようなものだろう。
考えていることが悟られるということはどれだけ恐ろしいか。それは、こいしの姉である古明地さとりを思い浮かべばよく分かるだろう。それを戦士は戦闘限定ながら行ってくるのだ。
しかし相手がこいしのような考えが読めない相手の場合、考えが全く読めないために何をしてくるのかが全く分からない。
分からないという事の恐怖。それがどれだけ恐ろしいか。これを例えるならば・・・
そう、いつどんな形で命を狙われるか分からない、この殺し合いと全く同じものなのだ。
「ふふ、そうね。頼りにしているわ」
「えへへ・・・ありがとう」
アリスは自分が持っている参加者の詳細名簿を思い出す。
『古明地こいし』に関して書かれてある情報・・・。これを全て読み終えた瞬間からアリスはこいしの能力とこの殺し合いの特徴が酷似していることに気がついた。
『頼りにしている』とは、そのことを改めて思い出しての返答なのである。
(ふふっ。そうよ、そうでなくっちゃあね。
こいし。なんたって、あなたは・・・私の新しい人形なのだから)
アリスが隣にいる少女を見る。
その少女は第三の瞳を捨てた覚り。
もはや覚りという妖怪ではなく、ただの妖怪へと成り下がった者。
更に言うとそれは、自我を捨て他者に依存する・・・意思を持つだけの人形。
ほら、人形は無いんじゃない。目の前にいたのだ。
人形はそれを形成するための材料がないと作れないのか?
いいや、違う。そう考える者は頭脳が足りない証拠だ。人形遣いを名乗る資格すらない。
本当の人形遣いは・・・頭脳だけでも人形を作れるものなのだ。
操る者さえ選べば、生命があろうが無かろうが関係ない。それぞれの人形となる者に合ったやり方を考えれば何とでもなるものである。
だからといって、本物の人形が不必要かというと、そうでもない。やはり、普段自分が使っている人形が一番良くなじむのは確かだ。
戦力の強化のためには、極力手に入れたいところである。
ここで、自分の家を思い浮かぶ。そこには人形や魔道書といった、自分の武器になるものが置いてある可能性がある。
そのため、戦力の強化のために自分の家に行くのは良案だと思っていたが、その場合は霊夢や魔理沙のいる博麗神社や霧雨邸、香霖堂の近くを通ることになる。
霊夢と魔理沙は頑固者だ。それにこの殺し合いを異変と受け取り解決しようと動く可能性もある。
どんな状況に追いやられても、叶いもしない願望に必死ですがりつこうとするのだろう。
そんな奴らを思い通りに操る自信は流石にない。そういう奴は人形として使えないどころか逆に人形を壊す危険性だってある。
それならば、極力合わないほうがいいと思う。そうなると、自分の家に行くのはリスクが多い。
それよりも、今すぐに紅魔館へ向かうのもいいかもしれない。
あそこには人形は無いが代わりに図書館に大量の魔道書が眠っている。人形ほどではないが魔法も得意な自分でも大きな戦力になるだろう。
それに、今から行くならば昼に着く。この時間帯では紅魔館に巣食う悪魔も力は弱くなっているはずだ。そう考えると、リスクはそちらのほうが低い。
(どうしようか・・・迷うところね。とりあえず、こいしにも相談しようかしら。
私に忠実なのはいいけど、それだけじゃ駄目。少しくらいは自分で考えてもらわないと、ね)
【D-3 人里(辺境にあたる) 午前・一日目】
【アリス・マーガトロイド】
[状態]健康
[装備]銀のナイフ×8 強そうな銃(S&Wとは比べ物にならない?)
[道具]支給品一式×2 詳細名簿
[思考・状況]自分の家に行くか、それとも紅魔館へ行くか・・・
[基本方針]どんな手段を使ってでも優勝する
※詳細名簿のほとんどを暗記しています
【古明地こいし】
[状態]健康 疲労(小) 情緒不安定
[装備]銀のナイフ 水色のカーディガン&白のパンツ 防弾チョッキ
[道具]支給品一式 リリカのキーボード こいしの服
[思考・状況]基本方針:アリスに従う。彼女を守る為なら殺人も厭わない
1.アリスに嫌われたくない
2.地霊殿のみんなに会いたくない
※アリスに心を読める能力があると思っています
※寝過ごした為、第一回の放送の内容をまだ知りません
最終更新:2009年08月08日 17:12