違和感№909

違和感№909 ◆J1Bh6Z1pDg



夕闇に霧が踊る。
対岸が見えないくらいのとても大きい湖に二人は来ていた。

「んーーー。思っていたよりもでかいね」

大きく伸びをしたのは霊烏路空、しかしその伸びは途中で遮られた。
かしゃん。金属が擦れ合う音。左手の手錠が彼女の伸びを阻んだ。

チルノ?」

返事がない。

「チルノ、ここが霧の湖だよね?」

返事がない。

「チル・・・泣いているの?」




時はさかのぼる


メディスンと猫妖怪を埋めたあと、私たちはあの天人を探し始めた。
しかし、見つからない。
―――もうどこか遠くに逃げたのか。
あまりしつこく追っても無駄だ。悔しかったが捜索は中止にした。

「これからチルノはどうしたい?」
「え?」

少し疲れ気味の顔で振り向くチルノ。質問の意味がよくわからなかったらしい。
近くの岩に腰かけるよう促し、質問を繰り返す。

「これからどこに行こうか?」

天人を見つけられなかった以上次にやることを決めなければならないだろう。
ここは山の上、夜を明かすには向いていない。
チルノは無邪気に返す。

「おくうはどこに行きたいの?」

え?わたし?
言われてみて特に行きたいところがないことに気づく。
強いて言えばさとり様に会いたい。
しかしこの広い幻想郷のどこにいるのか見当はつかないのだ。
また、地上に出てから月日が浅い私にはまだ見知った場所も特にない。

「チルノの行きたいところでいいよ」
「あたい?じゃあうちに帰りたい!!」

家、か。

「でっかい湖でね、白っぽいもやもやがきれいなんだ」

私の家は・・・。

「山を下りた向こうだよ。たぶん」

私の家はどこだっけ?

「おくう、聞いている?」
「・・・もちろん聞いているよ。チルノの家に行こう」

日が落ちる前には着きたいものだ。でも・・・
岩から立ちあがろうとして、自分が思ったより疲れているのに気がつく。

「チルノ、疲れてないかい?」
「あたいはさいきょうだよ」

私は苦笑する。

「少し休んでから行こう」
「やだよ、大丈夫だから!!」



結局、湖に着いたころには日が暮れていた。

「なるほど、きれい・・・」

夕日によってオレンジ色に染まる霧。
地底ではあまり見られない景色だ。

私たちは湖のほとりに座り込み、足を休めている。
足はもう棒のよう。
普段は飛び回っているから・・・。
チルノも途中で歩けなくなってしまい、お姫様だっこで運ぶことになってしまった。
そのせいで余計に疲れた私を無視して当の本人は

「ここが霧の湖、あたいのなわばりだよ!!」

座り込んだ状態で声を上げる。
元気なその声に私の疲れも少し軽くなった。

ゆっくりと景色を眺める。

「本当にきれい」
「ほめてくれてありがとう」

私の独り言にチルノが礼を言う。
自然に笑みが出る。


だが、はしゃいでいたのは最初だけ、すぐにチルノのテンションは下がり始めた。

「この湖はどれくらいの大きさなのかな?」

しかし、私は気にせず湖の大きさを目で測り始める。
チルノも疲れているのだろうと判断したからだ。



ここで冒頭に繋がるわけだ。



あたいは泣いていた。
気づいたらなみだが出ていた。

「チルノ、なんで、泣いているの?」

どこか遠くでおくうの声がする。
なんで?あたいにもよくわからない。

「ここ、霧の湖だよね?」

あわてて紙を開いてなにか確認するおくう。
一瞬、すこしだけ、表情が変わった気がした。
でもすぐにしんけんな顔にもどる。

「なにか、あった?かなしいの?」

ちがうよ。
でもうまくせつめいできない。
あたいが天才すぎるから。


なんだかしらないけど。あたいは湖にきてすぐ、なんか“いわかん”を感じた。
なにかたいせつなものが抜けている感じ。
よくわからないけど寒気がした。
そしてなきたくなってきた。
なみだがでてきた。

「チルノ?」
おくうまで泣きそうになってる。
なんとかしてせつめいしないといけない。むずかしいけど・・・。

「ここはあたいのすみかじゃ、ない」
「?」
「ここには自然がない、だれもいないの」

あたいが言えたのはそれだけだった。


泣き始めたチルノを前に私は困惑していた。

「ここ、霧の湖だよね?」

チルノは答えない。ただ泣いているだけ。
ならしょうがない、地図で確かめよう。

支給された地図を開く。
まず目につくのは地図に大きく書かれた霧の湖。
あと、三途の川。
水場があるのは他にここくらいしか考えられない。
とはいえ、これが三途の川だとは思えない。
となると、やはりここは霧の湖なのだろう。

温泉とか、間欠泉とか書いてないな。
水場を探して地図をさまよう私がそのことに気付いたのはごく自然なことだった。
なにしろ私は温泉や間欠泉の元、旧地獄の火力の番人なのだから。
―――私の仕事の成果を書いていないなんて、地図を作ったやつは大馬鹿ね。
などと思っていて、私はもっと重要なものが書いてないことに気がついた。

地霊殿、ううんそれだけじゃない、地底世界が完全に無視されている。

「どういうことなの?」

私は混乱した。
書いてないことにじゃない。いままでそれに気がつかなかった自分に、だ。
自分の家ともいうべき地底世界を完全に失念していたとは。

その時、隣で鼻をすする音がした。
私は我に返る。

とりあえずはチルノが先だ。

「なにか、あった?かなしいの?」

返事はない。
訳が分からない。
私まで泣きそうになってきた。

「チルノ?」

今度は返事があった。

「ここはあたいのすみかじゃ、ない」
「?」
「ここには自然がない、だれもいないの」

よくわからない。
でも、誰もいないとはどういうことだろうか。
妖精の友達がいない。そういうことなのか?

言うだけ言うとチルノは夢の世界へと落ちて行った。

「・・・・・・・」

―――私も疲れたな。くたくただ。

今日は色々あった。
疲れている。

「考えすぎは良くないか」

とりあえず霊烏路空は思考を放棄した。
チルノのことだって、後で目が覚めたときにでも聞けばいいだろう。


湖は暗さを増していく。
殺し合いもその暗さを増していく。

【C-3 霧の湖 夕方 一日目】
※ほとんど夜です

【チルノ】
[状態]霊力消費状態(6時間程度で全快)全身に打撲 強い疲労 心傷
[装備]手錠
[道具]支給品一式(水残り1と3/4)、ヴァイオリン、博麗神社の箒、洩矢の鉄の輪×1、
    ワルサーP38型ガスライター(ガス残量99%) 、燐のすきま袋
[思考・状況]基本方針:お空と一緒に最強になる
1.??????
2.メディスンを殺した奴(天子)を許さない
3. ここに自分達を連れてきた奴ら(主催者)を謝らせる


※何か違和感を感じとりました。
※現状をある程度理解しました

【霊烏路空】
[状態] 霊力0(6時間程度で全快) 疲労極大 高熱状態{チルノによる定時冷却か冷水が必須} 右肩(第三の足)に違和感
    左手に刺傷 左翼損傷 全身に打撲 頭痛 心傷 
[装備] 手錠
[道具] 支給品一式(水残り1/4)、ノートパソコン(換えのバッテリーあり)、スキマ発生装置(二日目9時に再使用可)、 朱塗りの杖(仕込み刀) 、橙の首輪
[思考・状況]基本方針:チルノと一緒に最強になる
1. チルノに泣いた理由を聞く
2.なにかおかしいな
3.メディスンを殺した奴(天子)を許さない


※何か違和感を感じとりました。
※現状をある程度理解しました


※空の左手とチルノの右手が手錠でつながれました。妹紅の持つ鍵で解除できるものと思われます。
※メディスンの持っていた燐のスキマ袋はチルノが持っています。
 中身:(首輪探知機、萃香の瓢箪、気質発現装置、東のつづら 萃香の分銅● 支給品一式*4 不明支給品*4)
※メディスンのランダム支給品は手錠とワルサーP38型ガスライターでした。
※橙の首輪は何となく回収済み。


132:暗い雨の中を、歩くように 時系列順 134:平行交差 -パラレルクロス-
132:暗い雨の中を、歩くように 投下順 134:平行交差 -パラレルクロス-
128:哀死来 4 all(後編) チルノ 143:北風と太陽、冬空の旅人
128:哀死来 4 all(後編) 霊烏路空 143:北風と太陽、冬空の旅人

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最終更新:2010年12月20日 23:45
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