星、無音、C-3にて

星、無音、C-3にて ◆TDCMnlpzcc



本日三回目の放送は終わった。

少女たちは沈黙した。

読み上げられた死者の重みに、
三回目の放送の内容に、
これからの身の振り方に、それぞれ意識を向ける。

空では星が輝き始めていた。
星空の下、少女たちはそれぞれの思いを抱く。





河城にとりは泣いていた。
携帯のおかげで、誰が死んでいるのかはだいたい知っていた。
それでも放送で読み上げられた時の心の痛みはつらかったのだ。


―――私には何もできなかった。

11。
たった午の刻から酉の刻までで11もの命が失われたのだ。
中には山の住人たちも混じっている。
山の上の神様、洩矢諏訪子。
秋の紅葉の神様、秋静葉。
この二柱とまた生きて会うことは二度とないのだろう。
そう思うと、自然と涙は流れ出た。

まだこの凄惨な殺し合いが始まってから一日も経っていないのだ。
なんでこんなことになってしまったのだろう。

いくら考えてもどうしようもない。
自分にできることは限られている。
しかし、その首輪の解除も全然進んでいないのが現実だ。
自分は無力。その現実が、にとりにはつらかった。
顔を上げ意識を、生き残った者へと向ける。


一人残された現人神、東風谷早苗は今どうしているのだろうか?

たぶん・・・きっと彼女も泣いているのだろう。
目の前の文のように。

にとりはうつむいたまま顔を上げない、射命丸文をじっと見つめた。

射命丸文は思考を放棄した。
とはいえ、思考を放棄したのはごく一部の内容だけである。

放送のオプション的な内容。

主催者、八意永琳による月の兎への特別情報。
その真偽の判別は、できない。
携帯の情報を信じれば、その「人形」が壊されたことだけは本当なのだろうが・・。
それ以上は自分には判断できない。

また、主催者の根城に攻撃を仕掛けている参加者がいるという情報。
こちらも深く考える必要はない。
考えたところで生き残る役には立たないのだから。

この二つの情報は、放送された事実だけ覚えておけばよいのだろうと彼女は考える。

それよりも考えるべきは・・・・



レティ・ホワイトロックは悲しんでいた。
死者の多さに。
しかし、目の前で涙を流し始めたにとりを見て、逆に頭は冷めてきた。
悲しんでばかりいても仕方がない。
そして、放送に思いをはせる。

今回の死者の数は多かった。
前回の放送の約二倍。
人数が減ればそれだけ死ぬ数も減るはずなのだが。
そううまくはいかないらしい。

――好戦的な参加者が増えているのかしら?

長く続いた殺し合いに絶望し、抵抗を諦めていく者が増える。
それは彼女にとってつらい想像であった。


今回の放送ではうれしい情報も一つあった。

反抗者の存在である。

放送によれば、主催者の根城に攻撃を仕掛けた者がいたという。
普通の魔法使いですら主催者側についたと思われる今、これほど心強いことはない。

“まだまだ主催に、この狂ったゲームに反抗し続ける者がいる”

この事実は彼女を励ました。

「レティ・・・」
場の沈黙に耐えられなくなったのか。
サニーミルクが不安そうにしがみついてくる。

目の前の二人はいまだに顔を上げない。

「大丈夫、私がついているから」

目の前の妖精を、ぎゅっと抱きしめる。

気付けば空には星が満ちていた。





――お熱いですねえ。雪女のくせに。

ちらりと顔を上げると私、射命丸文の前では雪女が妖精を抱いていました。
まあ、どちらにも利用価値はあります。
特にサニーミルクの光を曲げる能力。これはいいです。
潜入取材にもってこい。無事に帰れたらアルバイトとしてやといましょうか。


さて、静かなうちに放送の内容をまとめましょう。

今回の放送で気になったのは禁止エリアですね。

とうとう永遠亭が禁止エリアに入りました。
けれど、今までの禁止エリアには、主催者のいると思われる城以外、建物が入っていないのです。

偶然ですかね?

私には八意永琳が何かを隠したかったようにしか思えないのです。
それで慌てて禁止区域に設定した。そのように感じます。
ただの新聞記者の直感。確証はありません。
しかし、疑惑から真実を得て・・・たまには疑惑だけで記事を作るのが新聞です。

本当ならひとっ飛びで永遠亭に向かい、確かめてくるのですが・・・。
にとり達を置いていって、勝手に死なれでもしたら気分が悪い。

気分が悪くなったら、今後の活動にも支障は出るかもしれませんしね。
別に、にとりのためだけを考えているわけじゃないのです。きっと。

「文、大丈夫?」

私は自分が第一で・・・へ?

「いい加減しゃきっとしなよ。らしくもない」

ふと気がつくと目の前には人影。
もしかして私は泣いていると思われていたのでしょうか?
ああ、まずいな。今顔をあげたら泣いてないことが分かってしまう。

      • 本当に私は泣いていないのか?

手を目にあてると、冷たい水がつく。汗ではない。

私は泣いていた。何に対してだろう。

誰かの死?それはない。
恐怖?それもない。

崩れていく幻想郷。
それが涙の理由。

こんな場所に長く居すぎたのでしょう。すこしセンチメンタルになっています。
新聞記者が感情を吐き出すなんて、失格ですね。
感情を吐き出すのは取材対象の仕事です。

さて、にとりの言う通りこんなのらしくもない。
しゃきっとしましょう。しゃきっと。



私たちはまた、人里への道を歩き始めた。
近づいてきた人里には、戦闘の痕か、火事が見える。
その火事で誰も死んでいないことを祈りたい。

「もう少しですね。レティ。サニーミルクさんは疲れていませんか?」

「大丈夫だよ。文。いざとなったら私がおんぶするから」

それにしてもあのブン屋が泣くとはね。
初めは嘘泣きかと思ったが、違っていた。
彼女は本気で泣いていた。

その文が、するすると寄ってくる。

「先ほど後で、と言われた話。人里で話してくださいね」

「記事にはしないでほしいわ」

「はいはい、わかりました。大丈夫ですよ」

先ほどまでのしおれた様子はどこ吹く風。
好奇心に目を輝かせ、すり寄ってくる。
もっともその目にはまだ涙が残っているのだが・・・。

文との会話を切り上げ、空を見上げる。

星は相変わらず、きれいに輝いていた。

【C-3 人里付近 一日目 夜】

【河城にとり】
[状態]疲労
[装備]なし
[道具]支給品一式 ランダムアイテム0~1(武器はないようです)
[思考・状況]基本方針:不明
1.萃香達と合流する。ある程度人が集まったら主催者の本拠地を探す
2.皆で生きて帰る。盟友は絶対に見捨てない
3.首輪を調べる
4.霊夢、永琳には会いたくない


※ 首輪に生体感知機能が付いてることに気づいています
※永琳が死ねば全員死ぬと思っています
※レティ、妹紅、文と情報交換しました



【レティ・ホワイトロック】
[状態]疲労(足に軽いケガ:支障なし) 、精神疲労
[装備]なし
[道具]支給品一式×2、セロテープ(7cm程)、小銭(光沢のあるもの)、サニーミルク(S15缶のサクマ式ドロップス所有)
[思考・状況]基本方針:殺し合いに乗る気は無い。可能なら止めたい
1.萃香達と合流する
2.この殺し合いに関する情報を集め、それを活用できる仲間を探す(信頼できることを重視)
3.仲間を守れる力がほしい。チルノがいるといいかも…
4.自分の罪を、皆に知ってもらいたい
5.ルナチャイルドはどうなったのかしら


※永琳が死ねば全員死ぬと思っています
※萃香、にとり、妹紅、文と情報交換しました



【射命丸文】
[状態]健康 、精神疲労
[装備]短刀、胸ポケットに小銭をいくつか、はたてのカメラ
[道具]支給品一式、小銭たくさん、さまざまな本
[思考・状況]基本方針:不明
1.今は萃香さん達と合流する事が優先 。だけど永遠亭にも行ってみたい
2.このまま殺し合いに乗る? それとも……
3.少し疲れているなあ


※妹紅、天子、にとり、レティが知っている情報を入手しました
※本はタイトルを確認した程度です
※リリカがレミリアの軍門に下ったと思っています
※小銭のうち、光沢のあるものは全てレティの袋に入れられました


144:悪魔の住む家 時系列順 146:Ipomoea nil
144:悪魔の住む家 投下順 146:Ipomoea nil
139:二人の“ワタシ” 射命丸文 150:いたずらに命をかけて
139:二人の“ワタシ” 河城にとり 150:いたずらに命をかけて
139:二人の“ワタシ” レティ・ホワイトロック 150:いたずらに命をかけて


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最終更新:2012年01月14日 23:32
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