ウサギは寂しくなると死んじゃうの

ウサギは寂しくなると死んじゃうの ◆TDCMnlpzcc



どうしてこうなったのだろうか?
最初は、私の前途は明るいと思っていた。
東風谷早苗に圧倒されたものの、上白沢慧音を騙すことには成功。
自分に自信を持ち、このまま取り入って騙していけば、きっと道は開けると思っていた。


それは、ただの思い込みだった。
嘘をつきとおす実力がある、などという妄想はただの驕りだった。
私はただの道化だった。
嘘がすべてばれた時、その時から私の転落は始まった気がする。

鈴仙には見捨てられ。
姫様は死んでしまい。
片耳はなくなり。
仲間に意味もなく襲いかかり。
禁止エリアに迷い込み死にかかる。

酷い半日だった。
心の底からそう思える。
しかも、そのうちのいくつかは自分のせいで起こったことなのだ。

そして、私は弱かった。
年を重ねて、経験を積み、知性を高めても、所詮は妖怪兎だったということだ。
一緒にいた藤原妹紅と伊吹萃香を、恐怖に駆られ、襲った。
そのことは、私に、自分の死に対する恐怖の大きさを、影響力を知らしめた。
人も妖怪も恐怖に駆られるととんでもない行動をする。
そんなことは百も承知だった。
でも、自分は違うと思っていた。
それもまた驕りだったのだろう。

もうこの殺し合いが始まってから一日になろうとしている。
私はこの一日で、体に蓄えられた自信をすべて吐き出してしまったようだ。
私は空っぽ。
でも、生きたい。
そう、死にたくはない。


「あんた、さっきから黙ってないで何か言ったらどうなのよ」

木の実を食べながら、吸血鬼が私、因幡てゐに向かって言った。
少し苛立ちが混じっているが、決して敵意の籠っている声ではない。
その声に応じるかの様に、霧雨魔理沙が立ち上がり、言った。

「私とてゐは面識があるな。フラン、こっちは竹林の妖怪兎、因幡てゐだ」
「よろしく、因幡てゐさん」

魔理沙の紹介に吸血鬼は、ぴょこん、とお辞儀をした。
お辞儀と同時にきれいな宝石の羽が静かに輝く。
私も律儀にお辞儀を返す。
こんなところで何をやっているのかと思い、笑みが顔に出そうになる。
おそらく、ここが普段の竹林だったのなら私は笑っていただろう。
でも、この一日の重さが、私に笑うことを許さなかった。

紅魔館の吸血鬼の妹。
噂では狂っているとも聞こえたが・・・案外まともそうに見える。
もっとも、幻想郷が狂った今、狂っているなどという言葉に意味などないのかもしれない。



「てゐ、言いたくなければいいけれど、今まで何をしてきたのか話してくれるか?」
「私は・・・」

霧雨魔理沙の、ごく自然な問いかけに言葉が詰まる。
正直に答えるなどという選択肢ははなからない。
目の前には“紅魔館”のフランドール・スカーレットがいる。
パチェリー・ノーレッジを殺したことを素直に告白するのか?
馬鹿馬鹿しい。
それはただの死にたがりの考えだ。

さりとて、てゐには嘘をついてごまかそうという考えもなかった。
もう、嘘がばれた時の衝撃は経験したくはなかった。
目の前の二人が誰に会ってきたかも分からぬのに、ここで嘘をつくのはまずかった。

「・・・・・・・」
「言えないならいいよ」

結局てゐが選んだのは沈黙。
軽い失望の眼差しを受けながら、てゐは静かに黙り続けた。
この霧雨魔理沙なら私を殺さないだろう、という打算の上での判断だった。
それでも、恐怖はあった。
目の前の二人の動きをさりげなく、されど必死に確認する。
吸血鬼の揺れる羽根、所在なさげに組み合わされる手、
そのどれもがてゐにとって恐怖の対象だった。

「よし、じゃあ、私たちが会ってきた危険人物について話すよ」

そこで、魔理沙が口を開いた。
そのまま、霊夢、輝夜、幽々子の名前を挙げた。
それが終われば、次に会ってきた者の名、そのスタンス。
魔理沙が口を閉じた時、彼女たちの持っている情報はすべて出しつくされていた。

その場に沈黙の霧が立ち込めた。

「あなた、馬鹿なの?」

思わず口からでた、てゐの言葉は、誰でも持つであろう考えだった。

「馬鹿とはなんだ。ひどいな」
「それとも交換条件?自分たちは話したから私に話せというの?」
「そんなことは言っていない」
「じゃあ・・・」

情報は生命線だ。
先ほどの魔理沙の話から、てゐは彼女たちが、
自分の危険を知る者と接触していないことが分かった。
これで嘘がつきやすくなった。
だが、てゐは腑に落ちない。

これはダミーの情報?
それともこの魔法使いが単純なだけ?

そう、これは本当の情報じゃないかもしれない。
でも、これが本当の情報だったら、どうしようか。

もう、嘘はつきたくなかった。
嘘をつく恐怖におびえたくなかった。
百歩譲って、すべての相手に嘘はつきたくなかった。

人も妖怪も、孤独では生きにくい。
てゐには永遠亭の者という、その相手がいた。
嘘をつかない相手というよりは、おびえずに嘘を吐ける相手かもしれない。

その相手を再び手に入れられるというのであれば、手に入れたい。
このままでは、ゲームが終わる前に頭がおかしくなってしまう。
目の前の二人は異常な、善意に満ちている。
二人とも、さまざまな経験をしてきたのだろう。
それでも善人であろうと“演技”している。

「これからあなた達はどうするの?」
「人里に行くつもりだ。一緒に来るか?」

魔理沙はそういうと手を伸ばした。
てゐはその手を受け取ろうとし、固まった。

頭の中で自分の犯した最大の罪を、殺人の真相を知る者を頭に浮かべる。
東風谷早苗、生き残っている者の中では彼女だけはすべてを知っている。
そして、彼女と接触した者も知っているだろう。
あの火焔猫燐が死ぬ前に積極的に情報を回していたかもしれない。
もしかしたら今頃、此処にいる二人以外、皆、事実を知っているかもしれないのだ。

下手について言って、この二人の眼の前で、糾弾されたくはなかった。
それでも、それでも・・・

「一緒にいかせてもらうよ」

てゐは危険を承知でついていくことを選んだ。
真相を知った所で、人の良い魔理沙なら上白沢慧音のように、自分を殺さないだろう。
そういった打算もあった。
だが、一番の理由は、一人になりたくないというところかもしれない。

一人で寂しく死ぬのは嫌だ。


「これ、使いなよ」
「本当にいいのか?」
「いいよ。もう一丁あるから」

弾数の少ない機関銃の方を魔理沙に渡す。
てゐが使うには重すぎる武器だ。
いざという時、自身の敵を牽制してもらう意味合いもある。

溜まったゴミも捨て、心機一転、再出発。

「仲間がふえるね」

吸血鬼の無邪気な笑顔がまぶしかった。



因幡てゐは問題を先送りにし、今の寂しさを失くすことを選んだ。
それが正しい選択だったかどうかは、まだ分からない。





【G-5 魔法の森 一日目・夜】


【霧雨魔理沙】
[状態]蓬莱人、帽子無し
[装備]ミニ八卦炉、MINIMI軽機関銃(55/200)
[道具]支給品一式、ダーツボード、文々。新聞、輝夜宛の濡れた手紙(内容は御自由に)
    mp3プレイヤー、紫の調合材料表、八雲藍の帽子、森近霖之助の眼鏡
ダーツ(3本)
[思考・状況]基本方針:日常を取り返す
 1.霊夢、輝夜、幽々子を止める。
 2.仲間探しのために人間の里へ向かう。
 ※主催者が永琳でない可能性がそれなりに高いと思っています。
※因幡てゐの経歴は把握していません。


【フランドール・スカーレット】
[状態]右掌の裂傷、視力喪失(回復中。残り数時間程度で全快)、魔力大分消耗、スターサファイアの能力取得
[装備]楼観剣(刀身半分)付きSPAS12銃剣 装弾数(8/8)
[道具]支給品一式 機動隊の盾、レミリアの日傘、バードショット(7発)
バックショット(8発)、大きな木の実
[思考・状況]基本方針:まともになってみる。このゲームを破壊する。
1.スターと魔理沙と共にありたい。
2.庇われたくない。
3.反逆する事を決意。レミリアが少し心配。
4.永琳に多少の違和感。
※3に準拠する範囲で、永琳が死ねば他の参加者も死ぬということは信じてます
※視力喪失は徐々に回復します。スターサファイアの能力の程度は後に任せます。
※因幡てゐの経歴は把握していません。


【因幡てゐ】
[状態]中度の疲労(肉体的に)、手首の擦り傷(瘡蓋になった)、右耳損失(出血)
[装備]白楼剣 、ブローニング・ハイパワー(5/13)
[道具]基本支給品、輝夜のスキマ袋(基本支給品×2、ウェルロッドの予備弾×3)
    萃香のスキマ袋 (基本支給品×4、盃、防弾チョッキ、銀のナイフ×7、
リリカのキーボード、こいしの服、予備弾倉×1(13)、詳細名簿)
[基本行動方針]弱者のまま死にたくない
[思考・状況]
1.とりあえず二人についていこうかな?
※フランドール・スカーレットと霧雨魔理沙の持つ情報を一方的に取得しました。


155:それは決して、無様ではなく。 時系列順 157:墜ちる
155:それは決して、無様ではなく。 投下順 157:墜ちる
148:乾いた叫び 霧雨魔理沙 163:消えた歴史
148:乾いた叫び フランドール・スカーレット 163:消えた歴史
148:乾いた叫び 因幡てゐ 163:消えた歴史



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最終更新:2011年05月25日 22:09
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