真実と妄想の境界

真実と妄想の境界 ◆TDCMnlpzcc





私には、自分の旧友のしたことが理解できなかった。
賢者にと呼ばれる八雲紫にも、わからないことはある。

「あら、外れたわ」

目の前で、八雲紫の目の前で、てゐの体には穴が開いた。
そこから血が噴き出す。
返り血が周りの皆に降りかかった。

「「えっ」」

皆の声が、詰まる。

「おかしいわね」

だれかが後ろにいる。
いや、誰かじゃない。この声はよく知っている声。

「幽々子、あなた・・・」

いち早く後ろを振り向いた私が絶句した。
続いて、振り向いた魔理沙も固まった。

西行寺幽々子、冥界のお嬢様。
そして私の旧友。

その手にはごつい銃が握られていた。
小銃、アサルトライフルと分類される銃だ。
その照準はあたりを行ったり来たりしている。
右へ、左へ、立っている者たちを舐めるように照準が動く。

「二発目」

ドンッ

次の弾は、フランドールの頭をかすめて抜けて行った。
彼女が頭をそらさなければ、弾はかすっていなかっただろう。
ザクロのように弾けた頭を想像し、ぞっとした。


「やめなさい、幽々子、やめて」

必死に、幽々子の目の前に割って入る。


「イ・・タイ・・」

後ろで、てゐがうめいた。
早苗がこの隙にてゐさんのもとに駆け寄ったのが分かる。

「出血がひどい、止血しないと」

そのまま血を止めにかかる。
私の後ろでフランドールが銃を構えたのが分かった。

「あれはいけないものよ。駆除しないと」

「幽々子落ちつけよ。何があった?」

「あなたは私の従者?いえ、違うわ。こんな子じゃない!!!」

ドンッ

「魔理沙!!!」
「私は大丈夫だ」
「何をしているの?正気に戻りなさい」

三発目、後ろの反応で、弾は魔理沙をかすめた事が分かった。
遠くから狙撃されなくて本当によかった。
至近距離だからこそ、銃口の先を見てかわすことができる。
長年の間、弾幕ごっこに鍛えられた反射神経のおかげだろう。
それでも、次はないかもしれない。

「ゲェ・・」
吐血の音、てゐの肺には穴が開いているかもしれない。
何とかしないと・・・

ドンッ

「ギャッ・・」

目の前で、銃が火を噴き、弾丸が後ろへ抜けた。
フランドールの悲鳴。


「はやく無くさないと・・・早く・・」

「動くな、撃つぞ」

魔理沙がようやく銃を構えた。
見るからに重そうで、うまく操れているようには見えないが・・・

ドンッ

パパパパパッ


「きゃっ!」

私は思わず悲鳴を上げた。
案の定、弾はあらぬところへ、むしろ私のほうへ飛んできた。
けん制にもなっていない。
その隙に、幽々子は私の横をすり抜けた。
私はなすすべもなく呆然としていた。

「早苗!!」
「私?」

振り返った先で、早苗が顔を上げた。

早苗の目の前十五センチには銃口。
間に合わない。
頭の中で、かわそうとして、その頭を砕かれる早苗が容易に想像できた。
目の前の早苗は、現実を理解できていないように見えた。
唖然として、目を見開いている。
ちょっと荒っぽい手を使うしかない。

「あなたは私の・・・」

「早苗、伏せなさい」

「従者なの?」

ドンッ

「早苗!!」

私が叫ぶと、手から針の弾幕が飛び出し、早苗を巻き込み、幽々子を吹き飛ばした。
早苗のほうがひどくやられている気がする。
とはいえ、弾丸に貫かれるよりはましだったはずだ。
放たれた銃弾は、早苗のすぐそばを抜けて、森の中に消えて行った。

「早苗、大丈夫か?」

魔理沙が駆け寄って無事を確認する。
手が、動いた。命に別状はないらしい。

「フランも大丈夫か?」

遠くから魔理沙がフランドールの無事を確かめる。木の陰から出て、手を振っている。
肩を打たれたようだけれど、吸血鬼だから大したことはないのだろう。
弾も貫通したみたいだし・・・
ただ、しばらくの間は戦力にならないだろう。
自分の足元に転がる銃を回収しようとする。
見るからに威力の高そうな銃で、幽々子相手に、旧友相手に使うのは思わずためらってしまう。
もっといえば、これは契約の一貫として魔理沙に渡したもので、本当に私が使っていいのか気になるものだ。
できれば幽々子は殺さず、生かして捕えたい。
銃に頼るのは避けるべきだろう。

先ほど銃弾がかすめた魔理沙にもけがは見当たらない。
ひどいのはてゐだ。体から血があふれているのがここからでもよくわかる。
早く血を止めないと。

「ねえ、私の従者は誰?どこにいるの?」

遠くで何かがゆらりと立ち上がった。
魔理沙がそれに銃口を向けてけん制する。
私もまた、手を上げて構えた。
初速では銃に劣るものの、魔力で生成した弾丸も、相手を気絶させる場合には有効だろう。
ようは、撃たれなければいい。
その手がかすかに震えている。

「幽々子落ち着きなさい」

「・・・・・」

幽々子の動きが止まった。
しかし、銃口は降ろさない。
狙いは東風谷早苗。
まだ狙っているのか。
その指が引き金にかかっている。

「魔理沙撃ちなさい」
「え?」

「うふふ」

幽々子の動きを睨んだまま、私は命じた。

「もう、持たないわ。相手は銃を持っているの。幽々子相手に押さえつける余裕はないわ」

それに私には銃がない。あなたにしかできないの・・・・
声が上ずっている。
これは冷静な判断だ。このままでは死人が出る。
運が悪いと全滅する。

でも・・・

「いやだ。何があったか聞かないといけない」

魔理沙は受け付けない。
そうだろう。魔理沙はそういうタイプじゃない。
私も、彼女がそう返してくるのを見越して命じたのだ。
私も彼女を、何も聞かずに撃ちたくない。殺したくない。

でも、妖怪兎を追いかける道中、二人から聞いた話が頭をよぎる。
そう、私たちは吸血鬼が匂いをたどる途中、互いに、情報を交換した。
私と違って、幽々子の力は完全に抑えられていないようだ。
死を、瞬間的に死を与える蝶に立ち向かえる者はこちらにいない。
幽々子の良心が、それを出さないことを祈るしかない。

普段の私なら、普段の私だったら、もっと冷静に動いていたかもしれない。
もっと効率よく、正解の行動をとっていた。
いや、能力さえ使えれば、狂気と正気の境界をいじるだけでよかったはずだ。
能力が使えない、力のない自分が恨めしい。

「幽々子、何があったの?」

それにしても、彼女に何があったのだろう。

いや、幽々子は元々人間で、私ほどは長生きしていない。
別離の悲しみには慣れているかもしれないが、何も感じないわけではない。
もしかしたら、仲の良かった従者の死だけで、壊れてしまったのかもしれない。

「てゐ、しっかりして」

後ろが騒がしい。
今手当を試みているのはフランドールか。
てゐはもうだめかもしれない。
本当なら、幽々子のことなど放っておいて、彼女の治療に専念すべきだったのだろう。
でも、私にはできなかった。
この殺し合いの中で私も少し変わってしまったのかもしれない。


「・・・・たくさんの従者が、従者を騙って近づいてきて、そいつらが私を騙すから・・
みんな、殺した。悪いことじゃないでしょう、紫。正しい行動よ」

目の前の幽々子が語り出す。
その言葉は支離滅裂で、何があったのかを理解するのは難しかった。
私は奥の手に頼ることにした。

「物騒な武器だけ取り上げさせてもらうわね」
「紫、どうするつもりだ?」
「手足を使えなくするだけよ。ここを出た後狂気を修正するつもり。あとできるなら気を失わせたいわね」

目の前で私と魔理沙が話していても、何も反応しない。
焦点の合っていない眼は、まさしく狂人のそれだった。


ぱたりと、幽々子の手が降りた。
小銃の先が地面へと向けられた。

突然、闘志が消えた相手に、私たちは固まった。

「理解できるなら、話が早い」

魔理沙が銃を放り、覇気を失った相手に近づいてゆく。
どん、と放られた銃が地面を転がってゆく。
そんなことはお構いなしに、幽々子の視線は私たちを越えた向こうに向けられていた。
その視線の先に気付いて、私が叫んだ瞬間。

「魔理沙!!」

一瞬で辺りが不気味な蝶で埋め尽くされた。
反魂蝶。死を操る程度の能力。
狙いはどこでもない、ただ、あたりに漂っている。

蝶は私の鼻先をかすめるように飛んでいた。
幽々子はどこ?

蝶が触れた瞬間、力が抜けてゆくのが分かった。
これが、反魂蝶の力か・・・・

意識が、遠のく




「なんでこんなことするの、妖夢を殺したのはあなたで私じゃないよ」

紫に意識が戻る。
頬の冷たさに目を開けると、地面に倒れ伏した魔理沙が見えた。
その横には早苗も見える。
身動きをしていて、二人とも生きている。

「あなたがいけないのよ。私の従者を奪ったのはあなたなのよ」

だとしたら、遠くでちぐはぐな会話をしているのは幽々子と吸血鬼なのだろう。
八雲紫は必死に身を起こして、反対側を見る。
そこに見えたのは絶望的な構図だった。

右肩を抑え、うずくまるフランドール・スカーレットに向かって、銃が突きつけられていた。
幽々子の構えた銃は、まっすぐ頭に向けられている。
撃たせてはいけない。
幽々子のためにもこんなことさせてはいけない。

「ねえ、私は間違っているのかしら?」

「あなた、間違っているわよ」

フランには向けられた銃をかわし、抜け出すことができた。
まだ左手は動かせたし、向かってくる幽々子に応戦することもできた。

今、彼女がそうしないのは、後ろにかばわれているてゐのためだ。
彼女が逃げれば、戦いを挑めば、フランに向けられた弾丸は代わりに後ろのてゐを貫く。
それが分かっていて、彼女は動かない。

ただ必死に、前の幽々子を睨みつけている。

「・・・・・・・」

幽々子は黙り込んだ。
それにしても、最初の一発とは違い、どうしてこうも躊躇しているのだろう。
なにか、フランドールから聞き出したいことでもあるように見えた。
しかし、彼女が苛立っていることは後姿からでもわかる。
もう時間はない。
なんとか、止められれば、声が出せれば。

情けないことに私は、賢者とまで呼ばれた私は無力だった。


「・・・・・あ」

幽々子の周りの蝶があわただしく飛び始めた。
あれは、死のにおいに敏感だ。
もうすぐ誰かが死ぬことを察知して、勢いづいたのだろう。

「幽々子やめて」

ようやく出た声はか細くて―――

私は目の前で銃声が鳴り響くことを止められなかった。

ダッ

一発、弾が放たれた。
躰を貫いた弾丸は、こちらに向けて飛んできた。

え?何が起きた?

「フランに、手を出さないで・・・亡霊」

ダッダッダッダッ   カチッ

続いて四発、拳銃から弾が放たれた。

「え?・・・よ・・む・・」

幽々子の背中から血が広がっていく。
服の背中に四か所、穴が開いている。

「う・・・そ・・」

まるで糸が切れたかのようにその体が崩れ落ちる。
倒れた体もまた人形のようにピクリとも動かない。

倒れた幽々子の向こうには、半身を起こした因幡てゐがいた。
フランドールが、恐る恐る後ろを向く。
その顔に向かって、血を吐きだしながら、妖怪兎は笑った。

「てゐ!!」

そして、そのまま崩れ落ちた。




――――――――――――――――――――――――――――――――


もう死ぬというのか?
いや、もう死んだのか?

蝶に囲まれて、てゐは思う。

フランは無事だったのか?
ほかのみんなは?

疑問に思うことはたくさんで
謝りきれてない相手もたくさんで
やり残したこともたくさんで
なんで私は死にはじめているのだろう?

――せっかくフランと仲直りできたのになあ
――まだ長生きしたかったなあ

彼女が最後に思ったのはそんなこと。


――――――――――――――――――――――――――――――――――



私は旧友のそばに駆け寄った。

「幽々子?」

返事はない。
さっきの三発は致命傷になったらしい。

「しっかりしなさい」

後ろで、フランドールがてゐの死を告げた。
魔理沙と早苗が息をのむ。

「あなたには償うべきことがあるのよ」

「紫?」

ぱっと、目が開いた。

「妖夢をお願い」
「ちょっと・・・しっかりして」

幽々子は、最後まで真実を見つめずに、しかし、穏やかな死に顔で逝こうとしている。
本当に幸せな死に方なのか、私にはわからない。
真実を思い出して、修正した記憶を思い出して、苦悩するよりはよっぽど楽だったろう。
でも、私は思う。
これは、正しい死に方じゃない。
妖夢も報われない。

「あ・・・」
「え?」

まだ残っていたのか、一羽の蝶が、主のもとへと帰ってゆく。
ゆっくりと、まっすぐと、その先には幽々子がいる。

「妖夢―――」

そして蝶がその額にとまった瞬間、西行寺幽々子は逝ってしまった。
私の数少ない友人は、死ぬ前に、何か小声で言い残した。

私はそれを、妖夢に対する謝罪か、その他の皆に対する謝罪と受け取った。
都合の良いほうに解釈するのは間違っているかもしれないが、最後の幽々子の目には狂気は感じられなかった。

感じられたのは後悔だけだった。

私は最後に、彼女が正気に戻ったと信じたい。



【因幡てゐ 死亡】
【西行寺幽々子 死亡】

残り14人



【F-4 魔法の森 一日目・真夜中】

【フランドール・スカーレット】
[状態]右掌の裂傷(行動に支障はない)、右肩に銃創(重症)、魔力半分程回復、スターサファイアの能力取得
[装備]
[道具]支給品一式 機動隊の盾、レミリアの日傘、バードショット(7発)
バックショット(8発)、大きな木の実
[思考・状況]基本方針:まともになってみる。このゲームを破壊する。
1.てゐ・・・
2.スターと魔理沙と共にありたい。
3.反逆する事を決意。レミリアが少し心配。
4.永琳に多少の違和感。
※3に準拠する範囲で、永琳が死ねば他の参加者も死ぬということは信じています
※スターサファイアの能力の程度は後に任せます。
※因幡てゐと八雲紫と情報交換しました。


【八雲紫】
[状態]精神的疲労
[装備]クナイ(8本)
[道具]支給品一式×2、酒29本、不明アイテム(0~2)武器は無かったと思われる
    空き瓶1本、信管、月面探査車、八意永琳のレポート、救急箱
    色々な煙草(12箱)、ライター、栞付き日記 、バードショット×1
[思考・状況]基本方針:主催者をスキマ送りにする。
 1.幽々子・・・・
 2. 二人の遺体を埋葬しないと・・・
 3. 八意永琳との接触
 4. ゲームの破壊
 5.自分は大妖怪であり続けなければならないと感じていることに疑問
※因幡てゐと霧雨魔理沙と情報交換しました。


【東風谷早苗】
[状態]:軽度の風邪(回復中)
[装備]:博麗霊夢のお払い棒、霧雨魔理沙の衣服、包丁、
[道具]:基本支給品×2、制限解除装置(少なくとも四回目の定時放送まで使用不可)、
    魔理沙の家の布団とタオル、東風谷早苗の衣服(びしょ濡れ)
    諏訪子の帽子、輝夜宛の手紙
[思考・状況] 基本行動方針:理想を信じて、生き残ってみせる
1.てゐさん・・・
2.ルーミアを説得する。説得できなかった場合、戦うことも視野に入れる
3.人間と妖怪の中に潜む悪を退治してみせる
※霧雨魔理沙と因幡てゐと情報交換しました。


【霧雨魔理沙】
[状態]蓬莱人、帽子無し 、精神的疲労
[装備]ミニ八卦炉、上海人形
[道具]支給品一式、ダーツボード、文々。新聞、輝夜宛の濡れた手紙(内容は御自由に)
    mp3プレイヤー、紫の調合材料表、八雲藍の帽子、森近霖之助の眼鏡
ダーツ(3本)
[思考・状況]基本方針:日常を取り返す
 0.てゐ・・・
 1.霊夢、輝夜、を止める。
 2.仲間探しのために人間の里へ向かう。
 ※主催者が永琳でない可能性がそれなりに高いと思っています。
※因幡てゐと八雲紫と情報交換しました。




※二人の死体はF-4のどこかに転がっています。
※遺体のそばには
てゐのスキマ袋【基本支給品、輝夜のスキマ袋(基本支給品×2、ウェルロッドの予備弾×3)
萃香のスキマ袋 (基本支給品×4、盃、防弾チョッキ、銀のナイフ×7、
リリカのキーボード、こいしの服、予備弾倉×1(13)、詳細名簿)】
西行寺幽々子のスキマ袋【支給品一式×5(水一本使用)、藍のメモ(内容はお任せします)
八雲紫の傘、牛刀、中華包丁、魂魄妖夢の衣服(破損) 、博麗霊夢の衣服一着、
霧雨魔理沙の衣服一着、破片手榴弾×2、毒薬(少量)、永琳の書置き、64式小銃弾(20×8)
霊撃札(24枚)】
白楼剣 、ブローニング・ハイパワー(0/13) 、64式小銃狙撃仕様(3/20)
楼観剣(刀身半分)付きSPAS12銃剣 装弾数(8/8)、MINIMI軽機関銃(50/200)
が転がっています。





どこだかわからない世界。
西行寺幽々子は漂っていた。

ここはどこ?

――幽々子様、ご苦労様です

妖夢?

――はい。

目の前に、慣れ親しんだ顔が現れた。
魂魄妖夢、私の従者。

なにかしら?言いたいことがあった気がしたのだけれど・・・

私もぼけてきちゃったのかしら?
うふふ、と笑って、手元のお茶を飲む。
やはり何か忘れている気がする。

――何を言いたかったのですか?

何か懐かしい、でも、思い出したくない記憶。

――無理に思い出されなくても結構ですよ。それよりもお茶菓子はいかがですか?

そばから、お椀に入った菓子が差し出された。

おいしいわね。
でもお椀を持たれたままじゃ食べにくいわよ。

こういう、ちょっと抜けている妖夢がかわいらしい。
育てがいがある、鍛えがいがあるというものだ。
これから、時間をかけて育ててゆこう。


最後に覚えているのは、こちらに何かを訴えかける紫の顔。
なんだったのだろうか?

紫?

――紫様がどうかなさいましたか?

ううんなんでもないの・・・
妖夢をお願い。

ふと、口から思ってもいない言葉が飛び出す。
なんだろう、自分の言いたかった言葉の気がする。
でも、妖夢は私のすぐそばにいるのに、
こんなこと言う必要はないのに、
私たちはもう・・・・

――幽々子様、お疲れですか?

目の前には妖夢がいる。
でも、これは妖夢じゃない。

目の前を蝶が飛んでいる。
きれいな、無機質なのに、懐かしい蝶。

本当の妖夢はもう死んでしまった。
私が殺してしまった。
そしてその体も壊されてしまった。

妖夢、ごめんなさい、私・・・

「それ以上言わないでください。私こそお側についていられず、すみませんでした」

蝶が視界を遮る。
でも、私の目の前には妖夢がいる。見える。
先ほどとは違う。霊体としてのとしての妖夢がいる。

いや、彼女はずっとそばにいたのに、私が気付かなかっただけだ。

あなたはずっと傍にいたのね。
私が正気を失って、無様な真似をしている間もずっと・・・


ありがとう、妖夢、それからごめんなさい――――

その瞬間、額に蝶が触れ、西行寺幽々子は逝った。





165:許容と拒絶の境界 時系列順 166:空の彼方に(前編)
165:許容と拒絶の境界 投下順 166:空の彼方に(前編)
165:許容と拒絶の境界 霧雨魔理沙 171:死霊の夜桜が散るころに
165:許容と拒絶の境界 フランドール・スカーレット 171:死霊の夜桜が散るころに
165:許容と拒絶の境界 因幡てゐ 死亡
165:許容と拒絶の境界 八雲紫 171:死霊の夜桜が散るころに
165:許容と拒絶の境界 東風谷早苗 171:死霊の夜桜が散るころに
165:許容と拒絶の境界 西行寺幽々子 死亡




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最終更新:2011年09月24日 14:19
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