Coward Rabbit ◆5wsAzI.7vk
私、
鈴仙・優曇華院・イナバは今、木の陰で縮こまったまま動けないでいる。
正直、まだこの状況を理解し切れていない。殺し合いをしろ、なんて突然言われても困る。
訓練を受けたにしても、私はただの兎に過ぎないのだ。
生き残るなんて無理。
しかしそれよりも私が動揺しているのは、主催者が私の師匠、八意永琳だということ。
確かに怒ると怖いけど、師匠はこんなことをする人じゃなかったはず。
長い時間を共に過ごしてきたのだから、それくらいは分かっているつもりだ。
だから私は師匠を信じなければならない。
それなのに――先程の冷徹な姿を思い出すと、途端に信じられなくなってしまう。
師匠の考えていることが分からない。
私はどうすればいい?一体何を信じればいいの?
ただ、一つだけ確かなことがあるとすれば
「死にたくない……」
それだけだった。
怖い。手が震える。
だって、今すぐにでも誰かに殺されるかも知れないのよ?
絶対に嫌だ。そんなの。
「誰か助けて……」
そう呟いてみても、誰も助けてはくれない。
分かっている。分かってはいるけれど、何かに頼らずにはいられなかったのだ。
「あ……」
その時、指に何かが触れた。
それは先程説明された、支給品の入った袋。
「そういえばまだ支給品を確認していなかったわね」
袋を開け、中を覗いてみる。
暗く、深い。底が見えないほどだ。
とりあえず、入っていたものを一つ一つ取り出してみることにした。
が。
「どうしろっていうのよ……」
袋の中に使えそうな武器はなかった。
「力のない奴はさっさと死ねっていうの?」
そんなのお断りだ。
でもこのままじゃ……
溜め息をつきつつ、取り出した支給品をまた袋に戻していく。
ふと、小さな瓶が目に入った。
片方の手の平に隠れてしまいそうなサイズだ。
説明書か何かだろうか、紙が添付してある。
さっきは武器のことばかりを考えていて、よく見ていなかったみたい。
少し反省。
その瓶の中には、透明の液体が入っている。
師匠が用意した薬か何かだろうか。
そう思い、開けてみようと蓋を見る。
「……っ!」
私は息を飲んだ。
蓋の上には、赤と黒でマークが描かれている。
それは、ドクロだった。
明らかに危険物だということを表すもの。それくらい私にも分かる。
私は液体が零れないよう、慎重に蓋を開けた。
特に何も起こらない。
酸素に反応して変化するというわけではないようだ。
そっと鼻を近付け、匂いを確かめてみる。
何も匂わない。
言うならば、ただの水のようだった。
「何だろ、これ」
私は、添付されていた紙を見る。
『これは毒薬です!取り扱いにはご注意下さい。
数滴服用すると、数分ほどでほぼ確実に死に至ります』
書かれているのはそれだけだった。
だが、その文字達は私の頭の中でぐるぐると巡る。
まさかこんなものが支給されるなんて。
人を殺すなんて、できることならしたくない。
でもこれを使えば、確実に殺せる。ほんの数滴飲ませるだけでいいのだ。
仲間になるふりをして近づいて、食料に混ぜるだけでいい。それなら危険も伴わない。
弱い私でも、生き残れる――
「……やるしかないわ」
しっかりと蓋を閉めて、それを袋にしまう。
多分、液体は数回分しかない。使いどころを考えなくては。
私は袋を担ぎ、立ち上がった。
私は死ぬのが怖い。
でも戦闘になれば、間違いなく死ぬ。
だから私は戦わずして勝つ。
安全に、確実に。
それが私のやり方だ。
卑怯?臆病?
仕方ないじゃない。
私にはこうするしかないんだから。
死なない為に、私は生きるのよ。
【E-3・一日目 黎明】
【鈴仙・優曇華院・イナバ】
[状態]健康、不安
[装備]なし
[道具]基本支給品、毒薬、不明アイテム(0~1)
[思考・状況]基本方針:絶対死にたくない。
1.絶対死にたくない。何よりも生きること優先。
2.仲間になるふりをして近付き、暗殺する。
3.直接戦闘はしない。逃げる。
4.師匠の考えていることが分からない……
※どこへ向かうかは次の書き手にお任せします。
最終更新:2009年04月09日 15:40