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  • 神への冒涜6

神への冒涜6

最終更新:2012年02月04日 21:55

jelly

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『神への冒涜』六人目「デテン / the Anathema」


 デテンもまた研究班における非常事態マニュアルに則して行動していた。
 八神に頼まれたとおり、彼自身と八神の端末内データを抹消させると、書類や私物をまとめいつでも脱出できる準備を整えた。しかし、彼の仕事はこれで終わりではない。
 デテンは非適応薬を麻酔薬の代わりに麻酔銃に込める。これで準備完了だ。
 たしかにこれは研究班としての非常事態マニュアルの指示だったが、あくまでこれはデテン自身に課せられた仕事ではなかった。しかし、被検体Yの襲撃によって研究班が彼一人となってしまった今は、それを彼がなんとかしなければならなかった。
 麻酔銃と弾薬、そして予備の非適応薬を手にしてデテンは地下二階へ。

 地下二階――
 そこは隔離フロアと呼ばれている。
 そこには実験のいわゆる”失敗作”が閉じ込められていた。
 実験とはすなわち、強化軍隊計画のことである。

 強化軍隊計画――
 この計画の第一目的は『野生生物に匹敵する強靭な肉体を持つ強化軍隊を得る』ことだ。
 適性のない者にここで研究されている薬品を投与すると、その者はすぐにショック死してしまう。たとえ適性があったとしても、中には精神が錯乱して暴走したり、死んでしまう者もいる。これが経過1だ。
 経過1をクリアすると、次に外見に変化が表れ始める。ここで錯乱したり暴走するものは処分対象だ。これが経過2である。
 続いて経過3では、さらに変化が進み人間と獣が混ぜ合わさったような特徴を持つ姿になる。そのまま、精神が崩壊したり暴走したりしなければ経過4、獣人の完成である。これを以って目的1は達成される。
 身体のどこに変化が表れるのか、またその程度はどのくらいのものなのかは個体差がある。例えば頭部が牛化したならば、それは神話にも登場するようなミノタウルスとなる。しかし、それはもう神話ではない。研究がさらに進み変化の度合いを制御できるようになれば、ミノタウルス兵団を組織することだって可能になるのだ。
 続いて計画は目的2へと移行した。
 すなわち『完全獣化させて敵の目を欺く野生部隊を得る』ことだ。例えば人のことばを完全に確実に理解して、その命令に忠実に従う猛獣がいればこれほど強力なものはない。
 経過3の時点で、想定していた以上に変化を遂げてしまう個体が存在した。それがこの目的2を誕生させることになった。
 投与する薬品の量を増やし、完獣化を目指した。これを経過5とし、経過1と同様に錯乱や暴走がなければこれはクリアとなる。薬品の量が増えたため、当然ながら失敗作の数は増えた。この段階を突破するまでに多くの被検体が処分されることになった。
 目的2では、人のことばを完全に確実に理解できるだけでなく、命令者に常に忠実である部隊を作る必要があった。したがって、投与する薬品にも催眠性の成分を含ませて、より忠実になるように調整された。その成果で錯乱や暴走を抑えられるようになり経過6へと進んだ。しかし、この催眠性の成分が逆に良くなかった。
 一見、被検体は大人しくなったかのように見えたが、逆に自我すらも失ってしまう個体が増えてしまった。これは失敗である。これではまるで、生きる屍ではないか。
 さらに改良が進み、とうとう完全に被検体を獣化させることに成功した。この結果を以って、目的2が達成されたかのように見えた。しかし、これには決定的な欠陥があった。
 完獣化に成功したと思われた個体はどれも数日としないうちに肉が腐り落ちて、まるでゾンビのようになってしまった。こんどこそ、本当に生きる屍ではないか。
 さらに驚くことに、これらの個体はどう処分しても決して死ななかった。”絶対に死ねない”という驚愕の副作用を生み出してしまったのだ。我々はなんと、本当にゾンビを生み出してしまったのだ。
 これは目覚ましい成果だが、軍部はこれを良しとしなかった。不死身のゾンビ兵はたしかに無敗の兵力と成り得るが、しかしゾンビたちもまたほとんど自我というものを失ってしまっているようだった。
 これではたとえ決して死ぬことのない無敗の兵力ではあっても戦力にはならない。無敗かつ無勝の兵力。ただの的にしかならなかった。
 これを受けてさらに研究は進められ、とうとう経過7に至る。完全に人の意識を保ちながら完全に獣の姿をした存在を生み出すことに成功した。これを以ってして目的2は達成された。催眠性の成分を取り除いたことが成功に繋がったのだ。
 ただし、あくまで完全に人の意識を保った状態なので、被検体の混乱や精神へのダメージは基本的に避けられない。これ以上は我々の研究分野ではないので、そこから先は精神の専門家に任せることにして、ひとまず研究は完成ということになった。
 だが、もちろん研究が完成してもそれが完了というわけではない。さらなる改良を求めて、新たに目的3が設置されることになる。その目的3を達成させるのが現在の目標だった。

 ここまでの過程において、とくに経過6~7にかけては大量の失敗作が生まれることになった。
 その大量の失敗作を処分するにはコストも時間も足りなかった。それゆえに、その失敗作たちは処分されるその日をただ待つためだけに、この地下二階の隔離フロアで生かされているのだった。

 その地下二階にデテンは足を踏み入れる。
 酷い悪臭だ。隔離フロアは実験班が管理しているはずだが、とてもまともな管理がなされているようには見えなかった。
 隔離フロアとは言ってもただ暗い地下室に檻が並べられ、その中に失敗作たちが適当に詰め込まれているだけの状態に過ぎなかった。
 ランプの類は非常灯以外には一切備え付けられていない。 
 デテンは懐中電灯を手に暗い檻の間を歩いていく。いくつもの光る眼がその姿を睨みつける。
 研究班として非常事態マニュアルに指示された残る仕事。それは、この失敗作たちの一括処分だった。研究所を廃棄する場合、すべての痕跡を抹消しなければならない。それには当然ながら失敗作たちも含まれた。
 暴走する個体は危険なので実験直後にすぐに処分されたが、そうではない個体は次々とここに放り込まれた。
 経過6から経過7にかけて発生した失敗作がほとんどだったので、一見ただの獣そのもののような個体から中途半端なもの、まるでゾンビようなもの、なぜかキメラのようなものまで存在していた。
 失敗作たちを唯一、”獣人”と呼んで特別な感情を寄せていたデテンにとっては彼らを処分することは心苦しかったが、非常事態マニュアルには従わなければならない。そうしなれば、彼がそれなりの処分を受けることになってしまうからだ。そうでなくても、このような研究が世間に明るみになってしまえば、それに関わっていた彼自身もただでは済まないだろう。
 だから、デテンにはこうするしかなかった。失敗作たちをすべて処分するしか選択肢がなかった。
「……悪く思うなよ。これは仕方ないことなんだ」
 非適応薬を装填した麻酔銃を手近な失敗作に向けて構える。
「おい、ちょっと待ちな」
 しかし、それを止める声があった。
「誰だ…!?」
 目を凝らして辺りを見回すが、隔離フロアには自分以外の人影は見当たらない。
「こっちだよ」
 声は檻の向こうから聞こえてくる。
 そうだ、ここにいるのは経過6から7……つまり、実験後期の暴走の危険性のない失敗作たちなのだ。何も自我や意識のないゾンビたちばかりではない。中には人としての意識をほとんど完全に保ちながら精神の崩壊や暴走も回避した、ほぼ完成形の失敗作も存在するのだ。つまり、99%は完成しているほぼ正常な、しかしあと一歩及ばなかっただけでここに放り込まれてしまったような者もいるということだ。
 本来なら、身体の構造の違いからことばは話せなくなるはずだ。
 だが、ここは失敗作たちの掃き溜め。中には”ことばが話せる状態だった”からこそ、失敗作と見なされた者もいる。
「人の姿を見るのは久しぶりだなぁ。なんせ、ここは……こういうやつらばかりだからな」
 檻の向こうから一匹の獅子が話しかけてくる。
「……悪いが、おまえたちと話をしにやってきたんじゃない」
「そう冷たいことを言うなよ。こっちはいつも真っ暗闇の中で退屈してたんだ。…何か面白い話でも聞かせろよ」
 獅子は低く唸り声を上げながら、不機嫌な様子をアピールしてみせる。
 どうせ相手は檻の中だ。抵抗される恐れはない。
「残念だが、とうとうおまえたちの処分の日が来た…。それだけだ」
 デテンはもちろん、彼らがすべて元々は人間だったということを知っている。
 だから、そんな彼らを処分することはとても心が痛んだ。せめて会話の相手をしないことで、余計な感情を排除して冷徹に速やかに仕事を終えて、早くここを脱出してしまうつもりだった。それに八神が助けを必要としているかもしれない。
 しかし、そんなことはお構いなしにその獅子は会話を続ける。最初のことばに返事を返してしまったのが失敗だった。
「ほう…。最後の審判の日かい、そいつは面白い。まさか、生きてるうちにその日に立ち会えるとは思ってもみなかったねぇ」
「話はここまでだ。覚悟ができてるなら文句はないだろう。悪いけど……これが僕の仕事なんだ」
 デテンは一方的に会話を打ち切り麻酔銃を獅子に向ける。
「まぁ、そう慌てなさんな。最後に言い残すことばを考える時間ぐらいはくれるんだろう?」
「…………好きにしろ。なるべく早くな」
「ふん、認めてくれるのかい。変わったやつだな」
 獅子は何か裏があるのではないかとしばらくデテンを睨みつけていたが、ふと何かを思いついたようで再び口を開いた。
「なぁ、あんた。ひとつ、俺と取引をしないか?」
「取引だと? そんなことをして何になるんだ。そんなことをしたって……運命は何も変わりやしない」
「まぁ、話だけでも聞いてくれよ」
 獅子はその取引の内容を話し始めた。
「俺たちをここから出してくれ」
「そんな取引できるわけがない」
「まぁ、最後まで聞いてくれ。見たところ、あんたはそこまで俺たちに敵意や恐れはないようじゃないか。本当に変わったやつだ」
「僕から見れば、そんな状態になって冷静を保ってられるおまえのほうが変わったやつさ。僕は直接、実験を執り行うところにはいなかったけど、ほとんどの犠牲者が暴れたり心がおかしくなってしまったりしたと聞いてる」
「それもそうだ。あんたらのお陰でたしかに普通じゃないぜ、俺たちはな」
 獅子は皮肉って言った。
「あんたは自分のしていることに納得してるのか? 俺にはどうも、そのようにはみえないね。心のどこかでは不満を抱えながらも、どこか仕方なく上司のことばに従ってはいないか?」
 デテンはそれに思い当たる節があった。
「そ、それは……否定はできない。だが、世の中とはそういうものだ」
「人間の世の中は、な」
「…………」
「どうだ、少し悪戯をしてその上司を困らせてやらないか?」
 獅子はにやりと笑いながら言った……ように見えた。
「イタズラだなんてそんな。子どもじゃあるまいに」
「言い方が悪かったか。上司に仕返しをしたいとは思わないか? 例えば……俺たちをここからこっそり逃がす、とかな」
「それはできない! この研究が公になれば、たしかに上層部は大混乱に陥るだろう。たしかに……あのいけ好かない所長が慌てふためく姿は見てみたいもんさ。あいつはいつも他人に責任を押し付けてばかりだ。今日だって八神さんが……。いや、だが、その取引にだけは応じられない!」
 ついうっかりと洩らしたその情報を獅子は耳聡く聞きつけて追及する。
「なぜだ? その所長さんを懲らしめてやりたいんだろう」
「この研究が公になれば、その関係者だってただでは済まないだろう。もちろん僕も。………八神さんだって」
「つまり、あんたは自分の身の保証が心配なんだろう。それなら、そんなあんたに打って付けな話があるぜ」
 獅子の話はこうだった。
 まず、デテンが彼らを解放する。
 そして彼らはあからさまにその姿を人前に晒し、怪しい研究が行われているということを近辺に露呈させる。
 それはたちまちニュースとなって世界に知れ渡るだろう。上層部も大騒ぎだ。
 しかし、人間が獣になったなどと、そんなおかしな話を誰か信じるだろうか。たしかに、それはこうして事実として目の前に存在している。それを見せつけられてしまえば、たとえどんなに信じられなくても、それが目の前にある以上は信じざるを得ない。
 だが、それはあくまで”見せつけられた者”だけに限っての話だ。たかだか一部の町の数十人程度がそれを”見た”と騒いだところで、世間一般の常識というものはそう簡単にひっくり返るようなものではない。
 ある人は夢か幻覚でも見たんだろうと言うだろう。
 ある人は愚かな世迷言だと笑うだろう。
 ある人はあの町のやつらは揃って頭がおかしいのだと哀れに思うだろう。
 人の噂も七十五日とは言うが、一時は騒ぎになろうともそんな噂もすぐに他の真新しい噂に呑み込まれてうやむやになってしまう。あるいは都市伝説としては残るかもしれないが、所詮はその程度なのだ。
 記憶というものは日とともに曖昧になっていくもの。それを直に”見せつけられた者”たちも次第に世間の流れに呑まれて、もしかしたらあれは本当に幻だったのかもしれないと思うようになるだろう。そうして、またひとつの噂が塵となって消えるのだ。
 だが、上層部ものたちはそうはいかない。なぜなら、彼らはそれを事実として”知っている”のだから。
 たとえ世間がそれを忘れようとも、上層部はそれを忘れることができない。これまで以上に、秘密が外部へ漏れることに心配を抱くようになるだろう。そして、その失態を引き起こした者は上の者たちによって間違いなく”処分”されることになるはずだ。
 さて、ここでその処分を受けることになるのが誰か考えてみようか。
 責任というものは、その名の通り責任者が背負うものだ。たとえ責任者がどう言い逃れしようと、秘密の露呈はこの研究を指示する者たちにとっては見逃しかねる忌々しき事態となり、無能な責任者にはとても任せていられないとして間違いなくその所長が処分されることになるだろう。
「こうしてあんたは自らが罰せられることなく、まんまとその所長だけを狙って失脚させることができるんだ。もちろん、噂を引き起こしたあとは俺たちも人目につかないように最大限の注意を払う。俺たちだって、できることならこんな姿を人目に晒したくはないんだ。…服も着てないしな、がははは!」
「そんなことが……実際に可能なのか?」
「ああ、約束しよう。あんたは俺たちに自由を与える。その引き換えに俺たちはあんたの上司を失脚させる。上司が変われば環境も変わるだろうし、こんなところさっさとやめちまって他の町で新しい人生を始めるのも後はあんたの自由だ。どうだ、悪くない相談だろう?」
 デテンの心は揺れていた。
 彼は密かに八神に想いを寄せていた。そんな八神は所長に何か弱みをつかまれているようで、いつも所長の言いなりになっていた。そんな八神の力に彼はなりたかった。八神を助けてやりたかった。そしてあわよくば、その想いを彼女に伝えて……。
「……いいだろう。その取引、乗ったぞ。ただし……条件がある」
「言ってみろ」
「おまえやその後ろにいる、一見すればただの動物にしか見えない連中は解放してやってもいい。黙っていれば誤魔化しが利くからな。だが中途半端な者やキメラ、ゾンビたちはだめだ。万が一のときに潰しが利かない。それから、自分の意識がはっきりしてないやつもだめだ。自分をコントロールできなくて、ふらふらとまた表に出てきてもらっては困る」
「こいつは手厳しいなぁ……」
 獅子はしばらく考え込んでいたが、とうとう折れてその条件を飲むことにした。
「会話も成り立たなかったり、生きてるのかどうかすらわからないようなやつもいたが、こんなところでも一緒に暮らした仲間たちだ。そいつらを見捨てるようで後味は良くないが命あっての物種だ。どうせここにずっといたところで、遅かれ早かれ死を待つだけだ。そうするぐらいなら、俺は自由を選ぶ。いつだって自由には代償が必要になるもんさ…。わかった、その条件を認める」
「商談成立だな。所長の件はよろしく頼むぞ?」
「いや、まだだぜ。まずはこの檻を開けてくれないか。あんたの誠意ってやつを俺に見せてくれよ。そうしたら、俺もあんたを信じてやる。そうして初めて俺たちの商談は成立するんだ」
「ああ、待ってろ。すぐに開けてやる」
 デテンは懐中電灯で壁を照らしながら鍵の在り処を探す。
 地下一階から降りてきてすぐのところに鍵の束は掛けられていた。
「こいつがそうだな」
 リングに数多くの鍵がまとめられている。とくにプレートなどは付いていないので、どれがどの鍵が見当もつかない。
 デテンはひとつずつ鍵を確かめて獅子のいる檻を開けようと試みる。
「ちがう。これもちがう。…またハズレか」
「おいおい、早くしてくれよ、旦那ぁ。俺の気が変っちまう前によろしく頼むぜ」
「待ってろ、すぐに見つけて……あった。こいつだ! 喜べ、開いたぞ!」
 カチリと小気味のいい音を立てて鍵が回り檻の扉が開かれる。
「おう、ありがとよ。他の檻も頼むぜ」
「任せろ」
 デテンは次々と檻の鍵を開けていく。
 失敗作たちは失敗の時期によって分けて檻に入れられていたので、約束通りの一見しただけではただの獣にしか見えない者たちの檻だけを開けることができた。
「これで最後だな」
 鍵の開く音が静かな地下室に反響する。
「ご苦労さん。これで晴れて俺たちは自由だ」
「これで文句はないだろう。僕は僕の役目を果たした。次はおまえたちの番だ」
「ああ……そうだったな。ところで、旦那。契約を交わす時に忘れちゃならない大事なことがあるってのは知ってるか?」
「うん? そりゃあ、まぁ…。お互いに合意して、お互いが約束を守ることだろう」
「半分は正解だ。だが……半分はずれだぜ!」
 獅子は突然デテンに飛びかかると、一息にその首筋に牙を立てた。
 デテンは驚く暇もないうちに静かに息を引き取った。
「答えの発表だ。もう半分の正解はあとで言い逃れできないように裏を取っておくことさ。契約書を書かせるとかな! ……もっとも、生憎俺たちはもうペンを持つことも文字を書くこともできないんだがな!」
 それを合図に、檻に閉じ込められていた他の失敗作たちが歓声を上げる。
「うまくいったな!」
「やったぜ、新鮮な肉だ!」
「おい、誰かこっちに鍵を回してくれよ! 俺はまだ”手”が使えるから、自分で檻を開けられる。他のまだ開いてない檻も開けてやれるぜ!」
 失敗作たちが次々に歓喜の声を上げる。
「まあまあ、落ち着けって! こいつはまんまと俺たちを解放してくれたんだぜ。その功績に敬意を表して、こいつの亡骸はきれいなままにしてやろうじゃないか」
「だが俺はおまえのとこの檻と違って、ロクな飯にもありつけなかったんだぜ! いいじゃねぇか、ひと口ぐらい…。俺はもう我慢の限界だ。それとも何かい、代わりにおまえの脚に齧り付いてもいいってのか?」
「それなら俺を見てみろ! どうだ、この痩せた身体! もうほとんど骨と皮しかねぇ!」
「おまえゾンビ化してるんだから、そもそも肉なんかねえじゃねぇか! やめろ、新鮮な肉が台無しになっちまう!」
「オニク!」
「マンマ!」
「マルカジリ!!」
 失敗作たちが今までの鬱憤を晴らすかのように次々と叫び喚き啼き声を上げて騒ぎ立てる。
「しかたねえやつらだなぁ…。好きにしろよ。だが……最初の一口は俺が貰ったァァァ!!」
「させるかぁ!!」
 ささやかではあるが、文字通り動物の謝肉祭だった。
 ヒトとしての意識は保っていても、もはやそれは既に獣だった。


「さすがだねぇ! やるじゃないか、アダモフ」
 獅子に話しかけてきたのは一匹の虎だった。
 アダモフと呼ばれた獅子は親しそうにその虎に返事をよこす。
「ああ、メルか。あんたの考えてくれた作戦のお陰さ。俺はただ台本通りに役を演じただけだぜ」
「いくら台本が良くっても、それを演じる役者がいなくちゃ幕は上がらないさ。ま、もちろん、あたしの台本は完璧だったけどね」
「おいおい、自分で言うかよ」
 メルにこんどは狼が声をかけた。被検体Yのような狼男ではなく、歴とした狼だった。
「なんだい、文句でもあるのかい。テオ~? 空腹のあまりに気を失ってた恥ずかしい奴はどこのどいつだったっけねぇ」
「うるせぇ。おまえだって、腹の虫をぐるぐる鳴らしてたくせによ」
「やかましいねぇ…。喰っちまうよ!!」
「やってみやがれ!!」
 テオと呼ばれた狼とメルと呼ばれた虎は仲が良さそうにじゃれ合った。檻の中での付き合いはどうやら短くはないようだった。
「ほっほっほ、若いとはいいもんじゃの」
 それを温かい目で………これはなんと呼べばいいだろう。キメラだろうか、それとも伝承によるならば竜と呼んだほうが相応しいだろうか。そんな姿をした生き物が、それを見守っていた。
「ディエゴさんか。ああ、もちろん、ここからは若い者の力に任せてもらおう。だが、見たところあんたもなかなか強そうだ。良ければ俺たちに力を貸してくれ」
「もちろん、そのつもりじゃぞ。この老いぼれで役に立てることがあるならのぅ、ひょっひょっひょ」
 今や、キメラたちやゾンビたちの檻も解放され、失敗作たちはそれぞれが自由を得た。
「いや、まだだ。あの憎き研究者どもに復讐をしてからだ!」
「そうだね。それに、もしかしたら元に戻れる方法があるかもしれない。今こそ奴らに思い知らせてやるよ!」
 そうだそうだ、と獣たちは次々に声を上げる。ことばを話せない者は咆えてそれに賛同する。
「おい、名役者! 一発やってくれよ!」
 誰かが声を上げた。
「ご指名だぜ、大将」
「俺、こういうの苦手なんだけどな…」
 そう言いつつもアダモフは満更でもないといった様子だった。
 アダモフが皆の前に歩み出ると自然と騒ぎは静かになる。
「よ、よし。いいか、みんな! こうして俺たちはついに長く夢見てきた自由を勝ち取った! これでもう何も俺たちを縛るものはない! だがおまえたちは憎くないか、俺たちをこんな目に遭わせたやつらが!! おまえたちは許せるか、多くの仲間たちを処分していったあいつらを!! このまま逃げ出したければそれも自由、怖ければ隠れていても俺はそれを咎めない。だが、もし俺たちと共に戦ってくれる意志のあるやつは、どうか俺たちに力を貸してくれ!! まずは頭を討つ! 偉いさんは最上階ってのが相場だ。一気に攻め上がってやろうぜ!!」
「「ウオオオオオオオオオオオオオオオオッッッ!!!」」
 獣たちは揃って雄叫びを上げた。
 こうして、獅子アダモフを筆頭に解放軍は結成されたのだった。
 解放軍は責任者に復讐を果たすべく、隔離フロアから一気に飛び出していった。
 残されたのは、無残にも喰い散らかされたデテンの亡骸だけだった。


To be continued...

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