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  • 竜の涙1

竜の涙1

最終更新:2012年02月06日 21:37

jelly

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「ナープ…」
 誰かが僕を呼んでいる。
「ナープ…!」
 ここはどこだろうか。知らない場所だ。
 もやがかかったようで景色はよく見えない。
 草の一本も生えていない、何もない空間。そのど真ん中に僕は立っている。
「ナープ…!!」
 もやの向こうから誰かが僕を呼んでいる。あれは……誰?
 顔も見えなければ、たしかにこうして聞いているのになぜかそれがどういう声なのかもはっきりしない。
 それにもかかわらず、僕にはある確信があった。まるで初めから知っていたかのように。
「もしかして……父さん?」
 もやの向こうの影は何も言わない。
「父さん……なんだろう? なぁ、そうなんだろ!?」
 もう僕の名前を呼んでくれさえしない。
「ずっと捜してたんだ。もしかしたら、もう死んでしまってるんじゃないかと思ってた。でも……生きてたんだ! そうなんだろ、父さん!?」
 それでも僕はその影に声をかけ続ける。
「……また消えるのか? また僕を置いていってしまうのか?」
 わかっている。これは夢だ。
 いつも同じ夢を見る。その夢には決まって僕の名前を呼ぶ亡霊が現れる。
「なぁ…。本当にどこにいるんだよ、父さん…」
 そして、いつもここでその影は霧のように消えてしまうのだ。
「こんなに捜してるのに。どうして見つからないんだよ…。教えてくれよ、父さん…」
 影が消えると決まってそこで夢は終わる。僕が覚えているのはいつもここまでだ。
「父さん…! ……あ」
 もちろん、そこに父さんなどいない。所詮は夢。幻に過ぎないのだ。


Chapter1「迷子の仔竜」


 何かが頭にぶつかった。
「痛…っ」
 じわじわと痛む額が、こちらが現実だとはっきり教えてくれる。
「……はぁ。また……あの夢か」
 僕はナープ。何年も前から父さんを捜して各地をまわっている。父をたずねてなんとやら……というやつだ。
 僕が生まれたときには既にそこに親の姿はなかった。だから一番上の兄が僕の親代わりだった。今はこうして兄弟で手分けして父さんの行方を追っている。
 アースガーデンにあるちっぽけな洞窟が家代わりだったが、家の前には小さな墓があった。一番上の兄、ガルフによるとそれは母さんの墓らしい。会ったこともなく顔も知らないので悲しさはなかったが寂しさはいつもあった。
 ガルフは両親に会ったことがあるらしい。ガルフは、どこにいるかはわからないが父はきっと生きていると言った。そのことばを信じて今日も父さんを探してまわるのだ。
 もちろん父さんのことは顔すらも知らない。今更会ってどうするのかという思いもあったが、それでも僕は父さんを捜そうと決めた。あるいはこの寂しさを埋めたかったからなのかもしれない。
「おしかった。もう一回やってみるからな!」
 そういって木に飛びかかっていくのはウィルオン。ウィルオンは父さんを捜す旅の途中でできた友達で、今はこうして父さんを捜すのを手伝ってくれている。竜族だと言い張っているがどうみても申し訳程度の翼が生えただけの蛇にしか見えない。ちなみに僕は竜族のアキレア種だ。
 さっき頭にぶつかってきた犯人はどうやらこいつらしい。
「それで何やってるんだ? さっきから」
「ああ、いやそれが、ティルが木の実を採ろうとして木に登ったきり降りられなくなったっていうんでさ」
 なるほど、たしかにさっきからウィルオンが飛びかかっている木の幹にティルがしがみついていた。ウィルオンが頭にぶつかってきたのは、飛びかかって失敗したからなのだろう。
 ティルは見たところ仔竜のようだった。父さんを捜す旅の途中で、道端に倒れているティルを見つけて保護してからティルも旅の仲間に加わった。
 ティルは何も覚えていないらしい。いわゆる記憶喪失というやつだ。まだ幼いようだったので近くに両親がいるのだろうと捜しまわったがそれらしい姿は見当たらず、さらには付近の誰もが口を揃えてティルのような仔竜は見たことがないと言った。
 両親がいない……。自分と似た境遇のティルをどうして放っておけなく思い、父さんを捜しながら同時にティルの両親も捜してやろうと決めたのだった。

「もうだめ、落ちる!」
 ティルの悲鳴が降ってきた。
「仕方ないな…。ほら」
 アキレア竜は翼を持つので飛んでティルを助けにいくことができる。ウィルオンには翼はあってもまだうまく飛べないらしい。
 ティルを助けようと僕は翼を広げるが、
「だめだ、間に合わない!」
 ティルは先に力尽きて木から落ちてしまった。
「ぎゃあああっ!」
「ティル!!」
 ティルはウィルオンの上に落ちた。ティルとウィルオンは同じぐらいの大きさなので、ウィルオンはティルに押し潰されてしまった。
「やれやれ…。怪我はない?」
「平気だよ! ウィルオンの上に落ちて助かったんだ」
「お、俺が助かってねぇぞ…」
 ウィルオンは地面にめり込んでいた。
 ティルがウィルオンを大根のように引き抜きながら確認する。
「ところで目的地はまだなの?」
 ウィルオンは地図係だった。
「俺あの世までもうすぐかもしんない…」
「ウィルオンのことは聞いてないよ。ゴールドルトはまだなの?」
 ゴールドルト高原は次の目的地だ。僕はそこで兄……ガルフと会うことになっていた。
 ウィルオンが地図を広げて位置を確認する。
「もうすぐみたいだな…。西にもう少しだ」
「西ってどっち?」
「それが…。さっき潰されたときに磁石が壊れたみたいで…」
「えー。何やってんの、地図係のくせに」
「おまえが俺の上に降ってきたせいだろ?」
「ボクのせいなの~?」
「他に誰のせいだって言うんだよ!」
 ウィルオンとティルが喧嘩を始めてしまった。仕方がないので仲裁してやることにする。
「はいはい、そこまで。磁石はもういいから他の方法を考えよう」
「他の方法なぁ…。そうだ!」
 ウィルオンは太陽の方角から西を予想して、さっき来た方向へ進みだそうとしている。ティルは、西は夕陽の方角だから空が赤いほうへ行けばいいなんてこの真昼時に提案している。
 どうしたものかと考えていると、不意に誰かに声をかけられた。
「うーむ、すまないんだがゴールドルトはどっちだろうか?」
「ああ、ごめんなさい。僕たちもそこに行きたいんですけど道に迷ってて…」
「それは奇遇だな。実はこちらも……ってナープ!」
「あれ、兄さん。待ち合わせここだっけ?」
「そ……そうだ。ここがゴールドルトだ(たぶん)」
 この方向音痴なのが僕の兄ガルフだ。
「そっちが場所指定しといて、自分で迷ってるってどういうことだよ!?」
 ウィルオンが食ってかかる。ガルフはそれを華麗にスルーするとさっそく要件を話し始めた。
「ステイブルでアキレア竜を見たという噂を聞いた。もしかしたら親父かもしれん」
「それって近いのか?」
「ああ。だから、ここを指定したんだ。ステイブルはここからすぐの場所にある」
「わかった。行ってみようか」
「よーし、一番乗りはもらった!」
「ああっ、負けるか!」
 ティルとウィルオンが我先にと飛び出していった。はぐれて迷子になられても困るので、僕も急いであとをついていく。


 ステイブルは馬の種族が暮らしている集落だった。いわゆる牧場のようなところだ。
「ここがステイブル! すっごく広いよ!」
「へぇ、いい感じの場所だな」
 先に到着したティルとウィルオンは始めて見るステイブルの広大な大地に感心していた。
「それにしてもすごい広さだね! ウィルオン何匹分かな」
「そうだな、一億ぐらいかな…。ってなんでそこで俺が出てくるんだよ!」
「あっ、あれは何かなー」
「おいこら、ティル! 勝手に行くんじゃねぇよ、迷子にでもなられたら俺がナープに怒られるじゃないか!」
 ウィルオンは慌ててティルを追いかけていった。
 そんなティルたちをよそにナープは黙々と噂が本当かどうかを確かめるために聞き込みを進める。
「またはずれか。……まぁ、そんな気はしてたけどね」
 ナープの父親捜しはいつもこんな様子だった。わかったのは最近このあたりで遺跡が発見されたということだけだった。
「収穫なし。仕方ない、帰るぞ…ってティルたちどこにいったんだ? 兄さんもいなくなってるし…」
一方、ガルフはさっそく道に迷ってどこかへ行ってしまっていた。


 ステイブルは外周が柵で囲まれていて、そのすぐ傍にフリー川が流れている。
 西方のホワイトプラトウの山々は年中雪が降っていて、その雪解け水が流れ出たものがフリー川だ。ホワイトプラトウの雪解け水はステイブルやその周辺のゴールドルト高原一帯に澄み切った水を供給している。
 フリー川の綺麗な水には珍しい魚が集まり、川は人気の釣りスポットでもある。そして今日も例に洩れず川で釣りをする竜人族の姿が。
「ふはは、大漁大漁! …いや、まだ一匹も釣れてないけど。こういうのは気持ちが大事だからな。釣れると信じていれば、魚のほうからやってくるもんさ。おっ、ほ~ら、きたきたァ!」
 ずいぶんと大きな魚影だった。大物がかかっていることを願って勢いよく竿を引き上げる。
「よっしゃぁああ! そして、なんじゃこりゃぁああ! 海蛇ならぬ、川蛇が釣れちまった…。新種か?」
 釣り上げた世にも珍しい川蛇を眺めていると、
「おーい、ウィルオーン。生きてる~!?」
 ティルが川沿いを駆けてきた。
「うぃるおん? 何だ。これ、おまえのか」
「これとか言うな!」
 気がついたウィルオンが抗議する。
「おお、こいつしゃべるぞ!」
「それボクのなの。かえしてね」
「おまえも俺をモノ扱いしてんじゃねぇよ!」
 竜人族はリクと名乗った。
聞くとウィルオンは、ステイブル見物に飽きて川辺で休憩していたところ、巨大な魚に襲われて川に落ちたらしい。
「ははぁ、なるほど。川のヌシってやつだな! よし、リクさんに任せとけぇ! 今日の晩メシにしてやる!!」
 話を聞くなり、リクは釣り竿片手に一人で勝手に燃え上がりはじめた。
「へ、変なやつに拾われちまったな」
 ウィルオンが呆れていると、
「出たぞ! 川のヌシ!!」
 リクはもう魚のバケモノを釣り上げていた。ウィルオンどころかリクの数倍は大きい。魚はまるでちょっとしたクジラのようだ。
「なにあれ、俺が見たのと違う!」
 ウィルオンが襲われた魚よりも段違いに大きかった。
「よぉーし! 晩ごはんだよ、リクっち!」
 ティルもいつの間にか燃え上がっていた。
「ティル…おまえもか…」


 フリー川のほとりで一息入れていると僕を呼ぶ声があった。こちらに向かってくるのはウィルオンとティルだ。そして、そのうしろからはなんと巨大な魚が歩いてくる。
「なんだその魚!? それに二人ともどこ行ってたんだ」
「まぁ、いろいろと…。用事は終わったみたいだな」
「これはリクが釣ったんだよ」
 リクとは誰かと聞くと魚のうしろから竜人族が顔を出した。どうやらそのリクが魚を運んでいたらしい。
「ナープだよ」
「なーぷ? それって新種の食べ物か。なんか苦そうだな」
 なにやら変な勘違いをしているらしい。僕は苦い印象なのか。
「どーも、俺がリクさんだ」
 リクはまだ聞いてもいないのにウィルオンやティルとの出会いを語り始めた。さっき会ったばかりだろうに、よくこうも色々と語れるものだ。
「…そしてこの川蛇くんが俺の前にどんぶらこと流れてきて……ああ、そうそうあんな感じに」
「あんな感じ?」
 リクの指さすほうを見ると、川の上流のほうから赤い仔竜が流れてきた。
「あっ、ウィルオンと同じだ! また助けてあげてよ」
「よーし、任せろ! …ってしまった、俺としたことが釣り竿を置いてきちまったぜ☆」
「言ってる場合か! 早く助けてやらないと!」
 流れてきた仔竜を川辺へ引き上げた。どうやら命に別条はないようだ。
「よし、俺のじいちゃんのとこに連れて行こう。じいちゃんは薬とか研究してるから助けになるかもしれない」
 リクの提案でその仔竜をじいちゃん……ウクツのところに連れていくことにした。


 ウクツの研究所はフリー川の下流のほうにあった。研究所というよりはただのあばら小屋のようだ。
 近くにトンネルがいくつも掘られた岩山があり、ステイブルの住民が多数出入りしている。あれが噂の遺跡だろうか。
「ふむ、川で溺れていたと。息はあるが、意識がまだ戻らないわけか。気付け薬でも持ってこよう」
 ウクツは全身包帯だらけだった。度重なる実験の失敗によるものらしい。
「おい、本当に任せて大丈夫なのか…?」
「あったあった。この『キガツ~ク』を使いなさい。どんな深い眠りもこれでイッパツだ」
「何がイッパツなのかわからないけど…。その名前どうにかならないのか」
「…似てるかもしれない」
 ふとウィルオンが呟いた。
「似てるって?」
「俺の知り合いにタネはかせってのがいるんだけど、あいつも似たような変なネーミングセンスを持ってたなと思いだしてさ…」
 こんな変なネーミングセンスの持ち主は一人で十分だ。『キガツ~ク』の効果か、仔竜は目を覚ましたようだ。似てるといえば、少しティルと姿が似ている。もしかしたら同じ種族なのかもしれない。
「う、ううん…。ここは…オレは一体…」
「大丈夫か?」
 心配して仔竜の顔を覗き込む。
「はっ」
「?」
「おまえは悪いやつだな!!」
「!?」
 こいつはいきなり何を言い出すのだろうか。あるいはさっきの薬が原因で混乱しているのかもしれない。
「たしかにナープは怪しいよな。仕方ない」
「ハナがでっかいもんね」
「納得するなよ! ハナ…?」
「村の呪術師サマが言ってたんだ。村を出て最初に会うやつは悪いやつだから気をつけろって…」
「なんだよそれ。濡れ衣だ…」
「それで……えーっと、まず名前は?」
 リクが聞くと、仔竜はウィーと名乗った。
「ウィー! もしかして、ニンテン…」
「それは関係ない。これの原作が描かれたのは2003年だから、当時はまだそれは名前もなかったはずだし」
 メタい話はさておき、引き続きリクが今度はなぜ川を流されてきたのかをウィーに問う。
「おれの母ちゃん病気なんだ。薬も全然効かなくて、それで村の呪術師サマに相談したんだ。そしたら川下にある遺跡に幻の薬草があるからそれを採って来なさいって。川辺を歩いてたら、急にでかい魚に襲われて…」
「おまえもか…」
「ワシは遺跡の研究でここに滞在しているが、確かに最近あの遺跡で珍しい薬草が見つかったと聞くな。たしかキュアル草の一種だそうだ」
 キュアル草は太古の昔、万能薬の材料に使われていたとされる薬草だ。かつては各地に自生していたが、科学や機械が栄えた時代に環境が変化していつの間にか失われてしまったらしい。
「キュアル草…。それがあれば治るのか!?」
「実物を見てみないことにはわからないが…。リク、ワシは今少し手が離せないから、ちょっと遺跡まで行ってその薬草を採ってきてやるんだ」
「ああ、任せとけ!」
「病気の母親か」
 僕は母さんの墓のことを思い出していた。
 やはり家族を失うのは辛いことだろう。幸か不幸かティルも両親の記憶がないので過度に悲しんだりすることはないが、ティルもウィーもまだ幼い仔竜なのだ。大切な家族を失って悲しませるようなことは当然避けるべきだろう。
「その薬草探し、僕も手伝おう」
「ナープ。いいのか?」
「ウィーの母さんの命がかかってるわけだしね」
「わかった。じゃあ俺も手伝う。キューリだかなんだかを探すぞ」
「ボクも手伝う。遺跡探検」
 ウィルオンやティルも賛成のようだった。
 これで話は決まった。ウィーを助けるために遺跡で薬草を見つける。それが次の目的だ。
「うむ、人数が多いに越したことはない。気をつけてな」
 こうして僕らはその遺跡に薬草を探しに行くことになった。居場所がわかっているのだから、父さんを捜すよりはずっと簡単だ。


 ウクツの研究小屋の近くに噂の遺跡はあった。
 ウクツによるともともとここは第1世界……つまりこの惑星に生命が誕生したばかりの頃の文明に関する遺跡だったものが、第2世界……科学や機械文化の発達した時代に調査されかけたものの戦争が原因で放棄され、そのまま第2世界の文明も残した遺跡になったということだ。ちなみに現在は第4世界にあたるらしい。
 岩壁に掘られたトンネルを潜り抜けると、レンガ造りで蔦に覆われたいかにもという感じの建物と、廃棄されて久しい金属の建物が並んでいた。レンガのほうが第1世界デシグァンベル文明の遺跡で、金族のほうが第2世界ヴァンドラム文明の遺跡だろう。
「2つあるな。どうする?」
「僕たちの目的は薬草を探しだ」
「薬草だろ? それじゃあ原始のデシグァンベルのほうだな。生命の誕生の遺跡だもんな!」
 ウィルオンはレンガの遺跡のほうを探そうと提案した。
「わからないぞ。キュアル草からは薬が作られてたってじいちゃんが言ってた。薬ってことは化学だろ? だから、科学文化のヴァンドラムのほうだ!」
 リクは金族の遺跡のほうを探そうと提案した。意見が2つに分かれてしまった。
「それじゃ、二手に分かれよう」
「どうやって分ける?」
「これ!」
 ティルが取り出したのは一枚の紙切れだった。紙には縦に、横にいくつかの線が描かれている。これはかつて第2世界で流行していたという伝統ある物事の決め方だ。それは一般的にアミダクジと呼ばれた。
「よーし、俺ここ!」
「あっ、そこボクが選ぼうと思ってたのに!」
「おれが薬草を必要としてるんだから、おれから選ぶのが当然だろ!」
 ウィルオンとティルとウィーが喧嘩を始めてしまった。
「やれやれ。子どもだな…。なぁ、リク」
「おい待て、そこはリクさん専用だァァァーッ!!」
「………」


 アミダクジの結果、分けられたメンバーは以下の通りだ。
A:ウィルオン、ティル、ウィー
B:ナープ、リク
「また極端な結果が出ちゃったな…」
「やれやれ、こっちはガキばっかりで困っちまうなぁ」
 ウィルオンが大袈裟に溜息をついてみせる。
「ウィルオンだってボクと似たようなもんじゃない!」
「体格だけで判断すんじゃねぇよ。俺はもうガキじゃないんだ」
「じゃあ、ウィルオンはおとなになってもちっこいままなんだね。きっとボクはウィルオンよりおっきくなるもんね! 200倍ぐらい!」
「な、なんだと! 俺だってまだまだ伸び代はあるんだぞ!」
「それって、つまりまだおとなじゃないってことだよね~」
 いわゆるどんぐりの背比べだ。
「それじゃ、またあとでステイブルで会おう。お互い気を付けて」
 ちょうどウィルオンとリクが別々のグループになったので、最初の主張通りウィルオン側はデシグァンベル遺跡へ、リク側はヴァンドラム遺跡へ進むことになった。


 デシグァンベル遺跡はレンガ造りの神殿のような建物だった。かつてここで何かの儀式でも行われていたのだろうか。そう思うと感慨深いものだが、遺跡の中は馬だらけだった。
「こいつらステイブルの?」
「まるで観光地だね」
「何か雰囲気ぶち壊しだなぁ」
 遺跡は思ったより狭く、すぐに最奥部と思われる部屋にたどり着いてしまった。
「これだけ? レンガばかりで草なんてどこにもなかったね」
「あっちが正解だったか…。ん?」
 ウィルオンは部屋の柱と壁の間に隠れて小さな入り口があることに気がついた。
「おい、こっち行けそうだぞ」
 体格の小さいウィルオンたちなら十分通れそうな通路だった。ナープやリク、ステイブルからの観光客ならこの通路は通れなかっただろう。
「…まっくらだね」
 通路の先は明かりがなく闇が広がっている。
「おじゃましまぁぁぁす…」
 まずティルが通路へ一歩踏み入れる。
「いや、家じゃないんだから」
 すると、闇の向こうから返事が返ってきた。
「いらっしゃぁぁぁい…」
「うわっ!?」
「で、でた! ファラオの呪いだ!」
「いや、ここファラオ関係ないぞ」
 目を凝らして奥の様子を探るが声の主の姿は見えない。
「せめて明かりがあればなぁ。たいまつとか」
「それだ!」
 ウィーの言葉をヒントにウィルオンが炎を吐いて闇を照らした。どう見ても蛇にしか見えないがこれでも歴とした竜族なのであって、その証拠にウィルオンは炎を吐くことができた。ただし少しの間だけしか炎は出せない。
 炎の明かりで一瞬、誰かの足が見えたような気がした。
「どうだった?」
「足が見えた! なにあれ、中途半端でかえってコワイ!!」
 ヒタ……。ヒタ……。
 闇の中から足音が聞こえ始めた。音はこちらへ近づいてきている。
「お、おい、こっち来てるぞ! おまえが照らしたからじゃないのか」
「ファラオの呪いじゃぁぁあああ」
「明かりが欲しいって言いだしたのはウィー、おまえだろ!? それからティル、おまえファラオ好きだな…」
 足音はさらに近付いてくる。ついに足が闇の向こうから姿を現した。まるでトリの足のようだ。
「ファラオぉぉ!」
「おい、何者だ。こっち出て来い!」
 ウィルオンが闇の向こうの相手に声をかけると、相手は突然こちらに向かって走り出した。
「うわぁっ! なんだこいつ!?」
「おまえが呼ぶからだぞ!」
「ふぁらおふぁらお!」
 そして相手は通路の入り口にぶつかって倒れた。入り口より少し体が大きかったらしい。
「…なんだ、まぬけなオバケだな」
「まぬけなファラオ」
 倒れた相手をよく見るとそれは……、
「あれ、ウィザじゃないか」
 ウィルオンには見覚えのある顔だった。
「おまえ、このオバケと友達なのか?」
「ウィルオンもファラオ?」
「俺の顔なじみだ。それから俺はファラオでも呪いでもない」
 ウィルオンは目を回している旧友ウィザに声をかけた。
「ウィザ、まさかこんなところで再会するとは思わなかったぞ。こんなところで何してんだ」
 ウィザもウィルオンに気がついたようで、再会を喜んだあとここにいた理由を話し始めた。
「実は最近ね…」
「ああ…」
「ヒマで」
「はぁ?」
「新しく遺跡が見つかったって聞いて観光に来たはいいけど迷っちゃって」
「なんであんな暗いところに…」
「いやねぇ、興味本位で入ってみたら何も見えなくなっちゃって。こっちだって教えてくれて助かったよ」
 ウィザはここアース大陸から東へ海を渡った先にあるウィング国に住む鳥人族で、ウィルオンはナープの旅に加わる前にウィザと行動を共にしていたこともあった。
「鳥だけにトリ目ってやつか…。実は俺たち、今ある薬草を探してるんだけど…」
 ウィルオンはこの通路の先にキュアル草があるのではないかと予想していた。
「だから、ウィザの力あると助かるんだ。明かりを出して欲しいんだが…」
「明かりを出す? どういうことなんだ」
「ウィザは昔栄えてたっていう魔法技術を研究してて、とくに炎や雷の魔法が得意なんだ」
「ご紹介に預かりまして。それじゃあ手始めに……『ファイア』!」
 ウィザが翼をひと振りすると、ポッと小さな炎が燃え上がる。炎はウィザの頭を燃やした。
「ぎにゃぁぁぁあ! ヤリトリ!? ヤキトリ!! ウェルダン!!」
 ウィザは地面を転げまわった。忘れていたが、鳥人族にしてトリ目のウィザは暗い場所では魔法のコントロールが悪くなるのだった。
「どこに点けてるんだ!」
「トリアタマか」
 その後もウィザの魔法でウィルオンのシッポが炎で燃えたり、ウィルオンが雷で黒コゲになったりと、主にウィルオンが被害を受けながらなんとか暗い通路を進んでいくと遠くに光が差し込んでいるのが見えてきた。
「出口だ!」
 我こそはと光へ駆け寄る一同。光は天窓のような高い位置から縦に差し込んでいた。
「なんだよ…。出口じゃないのか」
 そこには光に照らされて4本の紐が吊るされていた。いかにも引けと言わんばかりだ。
「なにこれ、罠?」
「そんな気がする…。いや、絶対そうだ」
 引くべきか、引かざるべきか。それが問題だ。


 一方、リクとナープは金属の遺跡をだいたい調べ終えていた。
「特にこれと言ったものはなかったな。機械も壊れてるものばかりだし」
「リクさん機械はわかりませんよ、と。でもたしかに草は生えてなかった。薬みたいなのもなかったよなぁ。うーん、わからん」
「あとはあの鍵のかかった地下室だけなんだけど…」
 この建物は外観ほど広くは感じなかった。横幅のわりに一部屋あたりが広かったので、調べ終えるのにそれほど時間はかからなかった。天井が高いだけで二階以上も存在していなかった。ナープは地下へと伸びている階段を見つけたが、その先の扉が閉まっていたのでそこは断念した。鍵は見つからなかった。
「その扉、オレが殴ったら壊れないかな。力には自信あるぞ」
「鉄の扉だぞ。怪我するだけだろ」


 ウィルオンたちは光の差している場所の周辺を調べてみたが、どうやらここが暗い通路の行き止まりらしかった。
「ウィザ、ティル、ウィー、それから俺か。ちょうど数も合ってるし、引くべきか?」
「そうだねぇ…。もしかしたら、仕掛けか何かが動いて扉が開く……とかあったりするかもしれないし」
「だよね。罠なんて映画の見過ぎだよね。映画見たことないけど」
「おれ、この世界にも映画があるなんて初めて知った」
 こんどは伝統的な方法のひとつ、クジビキで順番を決めることにした。ウィザの羽根を4つ抜き、一本だけその根元を『ファイア』で焦がしておく。羽根の根元を隠すように4枚の羽根を持ちそれぞれが1枚引く。焦げている羽根を引いたら一番目だ。同様にして以降の順番を決めた。
「…で、おれが最初なわけ? いやだなぁ」
 一番目を引き当てたのはウィーだ。
「まぁ、薬草を探してる張本人だし」
「そうそう。それに後のほうがハズレ引きやすいでしょ」
「依頼主だぞ? 安全を確保するのも仕事にうちじゃないのかよ…。それハズレがひとつって前提だよな。そうとも限らないんじゃないかと思うんだけど…」
 ウィーはしぶしぶ紐を1本選んで引いた。
 プツン……と音がして紐は切れた。それ以外は何も起こらなかった。
「なーんだ」
 ティルは落胆の息をもらす。
「なーんだってなんだよ。何を期待してたんだ」


「ゆ、揺れてる!?」
 ウィーが紐を引き抜いたちょうどその時、ヴァンドラム遺跡は激しい揺れに襲われた。
 下のほうで何かが動いているような鈍く響く音が聞こえてくる。そしてガラガラと岩が崩れるような大きな音を最後に揺れは治まった。
「うーむ、震度10ってところだな。だが俺は耐えきってやったぞ、ワハハ」
「そんな震度あるか。それより下から大きな音が聞こえてきたけど、もしかして…」
 ナープの予想通り地下室の扉は開いていた。……というより、正確には岩が崩れてきて扉が壊れたのであるが、何にせよこれで地下を探索できるようになった。
「なんだかよくわからないけど、これは都合がいいな。音は下から聞こえてきたから、きっとこの先に何か秘密があるに違いない」
「さっすが俺! 日頃の行いがいいからだ。俺感謝!」
「あー…はいはい」
 地下扉の先は金属ではなく岩のトンネルだった。所々に木造の歯車などが見える。これが古代の文明というやつなのだろうか。
「すごいな…。機械とはまた違う……ということは、もしかしてあっちの遺跡と繋がってるんだろうか」
「すっげぇ、リクさんワクワクしてきたぞ」
 二人はトンネルを奥へと進む。


「じゃあ次、ウィザ」
「大丈夫、大丈夫…。もし何かあってもバリアの魔法をすぐに張ればきっと平気…」
 ウィザはやや控えめに、端っこの紐を選んで引いた。
 すこん、と紐は抜け落ちた。それ以外は何も起こらない。
「なーんだ、またハズレ…いやアタリ、ん? ハズレだっけ?」
「みんな、何か楽しんでない…?」
 今度もこちらでは何も起こらなかった。だが一方で……。


「また揺れてるぞ!」
「これは大きい……震度20だな! だがそんなものでは俺は倒せんぞ!」
「だから、そんな震度はないって…」
 今度はしっかりと自分の目で確認することができる。揺れはやはり壁や天井にある歯車が動くことによって発生しているようだ。
 コツンとナープの頭に何かが当たって、振動は治まった。
「なんだこれ。ヤカンが降って来たぞ」
「古代人は急須よりヤカン派だったのか! これは大発見だ!」
 どこから取り出しのか、リクはそれをさっそくメモに書き留めている。
「なんの発見だよ、それ」
 他には何も起こらなかったので、ヤカンのことは忘れて先に進むことにした。
 しばらく行くと、期待に反してそこは突き当たりだった。
「なんだ、行き止まり? 結局こっちには何もなかったのか」
「まだだ、まだ終わらんよ! 待ってれば、またさっきみたいにグラグラ来て何か起こるかもしれない!」


「あと2つ。2分の1かぁー。こういうときはせーので同時にやるのがお約束だよね」
「どこのバラエティーだよ。それにハズレ……いやアタリ? がひとつって前提も合ってるかわからないんだぞ」
 ティルとウィルオンは残る2つの紐を同時に引いた。


「また揺れてる! これでどこか開くのかな」
「震度50だ! だが甘いぞ。俺を倒したくば、戦車でも鉄の鯰でも引っ張ってくることだな!」
「地震のほうが遥かに強力だと思うけどね…」
 すると今度は二人の視線が下がり始めた。地面が下へと移動しているようだ。
「こ、これは! 天然のエレベータ!?」
「天然のって表現もどうかと思うけど…。木造って時点で明らかに手が入ってるし」
 地面がある程度下がりきると揺れも治まった。目の前には新たに奥へ進む通路が姿を現している。
「薬草はこの先に…?」
「そういやじいちゃん、キュアル草は光に弱いから影になってるところに生えるって言ってたな。これはもしかするかもしれないぞ」
 他に進めそうな道も見当たらなかったので、とにかく前進あるのみだ。


「おお、壁が開いた!」
「光だ…。こんどこそ出口だね!」
 今度はこちらでも動きがあったようだった。
 光の向こうへ駆け抜けるとそこには密林が広がっていた。
「外だ!」
「明るくなったね。ここもデシリットルだかなんだかの遺跡なのかな」
「さて、どれがキューリなんだ?」
「そんな名前だっけ」
「というか、おれたち薬草の見た目知らないじゃないか」
 密林には見たことがない植物ばかりだった。この中から目当ての薬草を探すのは至難の業だ。各種それぞれ持ち帰ろうかとも考えたが種類が多すぎてとても持ち帰れたものではない。
「仕方ないね。一旦戻ってウクツを連れてこよう」
引き返そうとしたその時、突然ウィザの姿が消えた。


 何かがまた頭の上に降ってきた。
「うわっ!? 今日はよく頭にものが当たる日だな…」
「ふーん、頭にブラックホールでも付いてるんじゃないか」
「何をばかな…」
 頭上から降ってきたのは羽毛の塊だった。ナープはそれに見覚えがあった。
「ウィザ…?」
 たしか昔ウィルオンと一緒にいたやつだったと記憶している。
 ウィザは目を回していた。


「おれは穴だと思う」
「うん、穴だよね」
 ウィーもティルも同意見だった。
「ウィザ、落ちたんだな」
「きれいに落ちたね」
 密林の地面には植物で覆われて見つけづらかったが穴が開いていたのだ。穴の底は暗くてどうなっているかはわからない。
「おまえら呑気なこと言ってないで助けないと!」
「ウィルオンがそう言うなら…。じゃあ、まず深さを調べてみようか」
 ティルはにやにやしながらウィルオンを見つめている。
「え?」
「ウィルオンはいりまーす」
 ティルは、シッポをつかんで穴の上にウィルオンを垂らした。
「え!?」
「いってらっしゃい☆」
「ちょ、おいやめ…!」


「光が差し込んでる…? 外に繋がってるのか」
 僕は上のほうを眺めてみた。ウィザはおそらくあそこから落ちてきたのだろう。
「ん? 何か影が…」
 逆光でよく見えなかったが上に誰かいるのかもしれない。声をかけようとしたがその影はどんどん大きくなっていることに気がついた。
 そして影は吸い込まれるように頭にぶつかった。よく見るとそれはウィルオンだった。
「痛…っ。またおまえか! どんだけ僕の頭が好きなんだよ!」
 しかしこれではっきりした。ここはやはりデシグァンベルの地下なのだ。
「これをナープ引力と名付けよう。いや、俺が見つけたんだからリク引力のほうが…」
「もう勘弁してくれ…」
「だが時は待ってはくれないものだ。さぁ、次の実験だ。降ってくるぞー!」
 予想はしていたことだったが、今度はティルとウィーが落ちてきた。ダ、ダブルだと……!
 咄嗟に近くで気絶していたウィザをクッション代わりにティルとウィーを受け止める。
「な、泣きっ面に仔竜…!」
 そう言い残してウィザは再び気絶した。
「いいとこに羽毛のマットがあったね」
「ウィザ…。おれ、おまえのこと忘れないから…!」
一方リクは、
「なるほど、ナープは相当な石頭である…」
 などとよくわからない記録を付けている。いや、本当に何の記録だ。
「あ、ナープとリクっち。ただいまー。遺跡はつながってたんだね」
 結局どちらの遺跡に向かっていてもここで合流することになったのだろう。なぜかウィザが増えているが、考えるだけ無駄なのでやめた。
「それで薬草は?」
「植物が密集してるところがあったが、どれが目的の草かわからなかった」
「こっちも成果なし。ただの一本道だったよ」
 互いに情報交換した結果、一度戻ってウクツに密林を見てもらうのが最も確実だと思われたが、それにはひとつ問題があった。ひとつはウィルオン側が穴に落ちてここに来たということ。もうひとつはナープ側がウィルオンたちの引いた紐によって動いたエレベータのようなものでここに来たということだ。
 頭上の穴は高すぎてそこから出ることはできない。ウィザとナープは飛べるが穴が小さいのでナープはそこからは出られない。紐はすべて切れたか、引き抜いてしまったので再度エレベータを動かす方法はわからない。
「じゃあ何だ。奥へ進むしかないのか」
「けど、こんな洞窟の中に薬草があるのかな。どれがその薬草かもわからないのに」
「縛ってでも詳しいやつを連れてくるべきだったな。ウクツとかウクツとか」
「そうだなぁ。薬草の専門家でもいればよかったのに…」
「どこかにいねぇかな。詳しいやつ」
 そしてフラグは立てられたのである。
「そんなとき、世界一の天才がいれば助かるのに……そう思ったことはないかな? そう、今こそ私の出番なのだよ!」
「だ、誰だ!?」
 突然聞き覚えのない声が聞こえてきた。
「げっ、この声は…」
 どうやらウィルオンはその正体を知っているらしい。
「タネはかせ!」
「うわっ、なんだあれ」
 ぬっとひょうたんに一本だけの毛と手足が生えたような変な生き物が姿を現した。まさか古代の絶滅種か何かだろうか。未知の病原体をもっている可能性もあるから注意しなければならない。あるいはそれ自体が危険な菌である可能性も……。
「君たちお困りのようだね。私が来たからにはもう安心なのだ。やぁ、ウィルオン君。元気そうだね」
「で、出たァー! 出やがったな、このやろう!」
 ウィルオンは、まるでこの世の終わりでも来たかのように取り乱している。一体、このひょうたんは何者なのだろうか。
「あれっ、タネはかせ?」
 その正体は意外にもウィザが知っていた。ウィザも面識があるらしい。
「よくわからないけど、ウィルオンと仲がいい変なはかせだよ」
「変じゃない。天才だ」
「仲が良いだって!? 誰がこんなやつ! こいつと関わるとロクなことがないんだぞ!」
「寂しいこと言うなよ、ウィルオン君~。私と君の仲じゃないかぁ。あっ、これはもしかして反抗期!?」
 ウィルオンとタネはかせの間に何があったのかは知らないが、どうやら馴染みが深いように見えた。
「……なるほど、キュアル草を探しに来たけどそれがどれかわからなくて困っていると。時に天才の頭脳はご入り用かな? こんなときに天才が現れてどれがキュアル草か教えてくれたら、ついでに見つけてくれたりなんかしちゃったらすごく助かるのになー……なんて思ったことはないかな?」
「なんだよ、そのものすごく限定的な例は」
「つまり私に任せたまえ」
「おまえが出てくるといつもややこしいことになるんだよ!」
「冷たいなぁ。ウィルオン君、私を信じてくれたまえ」
「そんなメイヴのパロディなんかで誤魔化されないぞ」
「まぁ、それは置いといて。見るのだ、久々の新作だぞ! これぞ『キュアルミツカール2.7号』なのだ!」
 タネはかせはどこからともなく奇妙な機械を取り出した。
「なんだよ、2.7ってその半端な数字は」
「知りたいかね、ウィルオン君。フフフ……それはね、秘密なのだよ! 私がそう易々と自分の実験をばらすとでも思ったか? あぁー…でも、もし私を天才だと認めてくれるのならちょーっとだけ、教えてやってもいいのだ」
「さぁ、さっさとキュアル草を見つけて帰るぞ」
「釣れないやつだなぁ。まあいい、今からそれを証明して見せるのだ」
 タネはかせが奇妙な機械を操作すると、機械から四方八方に緋色の光線が放たれた。機械が無機質な音声で結果を報告する。
『ホウコク シマス。キュアル 草 ハ ココニハ アリマ セン』
「だめじゃないか!」
「お、おかしいなぁ。ちょっと出力を上げてみるのだ」
『出力120%、エネルギー充填完了』
「発射ァーなのだ!」
 機械から激しい光の筋が放たれるとそれは勢い良く弾け飛ぶ。光線は壁を貫き遺跡諸とも崩壊させてしまった。幸いにもちょうど頭上には例の穴があったので、瓦礫に押し潰されるようなことはなかった……が危なかった。
「どこの波動砲だ!」
「お、おかしいのだ。こんなはずは……いや、そうとも。やはり私は正しかった! ここには何もなかったのだ!」
「おまえが崩しちまったんだろ!」
「なんてパワー! やはり私は天才なのだよ、ワッハッハ」
「いいのかな…。古代の遺跡壊しちゃった」
「偉大な実験には犠牲はつきものなのだよ」
「キュアル草はどうなるんだよ!」
「これで邪魔な遺跡はなくなった。もう一度調べればきっと見つかるのだ」
 キュアルミツカール2.7号が薬草の在り処を示し出す。
『凶。探シ物、近イウチニ見ツカル。タダシ、代ワリニ何カヲ失ウ恐レアリ。マワレ右』
「おみくじかよ!」
 結果の示すとおりにまわれ右、後方を調べると、
「ありゃ、こんなところに花が咲いてる」
「それだ! それがキュアル草なのだよ。やはり私は正しかったのだ!」
「なんというご都合主義」
「字数制限に引っ掛かっての都合なのだ。さぁ、それを持って帰って早く第2話に取り掛かるのだ」
 遺跡が崩れたお陰で出口に困る必要もない。遺跡を研究していたウクツに何と言われるかわからないが。
 何はともあれ、目的の薬草を手に入れたのでウクツのところに戻ることにした。


「ふむ…なるほど。たしかにこれはキュアル草の一種で間違いない」
 研究小屋ではさっそくウクツが薬草を調べ始めていた。
 キュアル草から抽出された液をフラスコで薬品と混ぜ合わせると液が紫色に変化した。
「これはすごい! 文献の通りだ。これならきっとおまえのお袋さんも元気になるぞ! これを毎食後に飲ませなさい。ひと呼んで、幻の霊薬エリクサーだ!」
「そうか! これで母ちゃん治るといいな…。ありがとう、ウクツ。それからナープたちも」
「気にすんなよ、こっちから手伝うって言ったわけだし」
「僕たちのことはいいから、早く持っていってやりなよ。よくなるといいね」
「わかった。また良かったらおれの家……スノゥグランド村に遊びに来てくれよ。それじゃあ」
 ウィーは一礼すると、薬を握りしめて駆けていった。
「これで一件落着だよね。そういえばウィルオンたちはなんでここに?」
 ウィザが問いかける。ウィルオンはナープが父親を捜していることを説明した。
「ああ、ウィルオンの言う通りだ。ステイブルにいるかもしれないって聞いたんだけどはずれだったよ……。ほんと、いつになったら見つかるんだろうな」
「ナープは何でも背負い込み過ぎなんだよ。気持ちはわかるけどな。もっと自分のことに集中したっていいんだぞ? ティルのことだってそうだ。でもナープが…」
 ナープはしきりに辺りを見回していた。
「ん、どうしたんだ?」
 ナープの顔色は良くなかった。ナープの鱗は緑色でもともと顔色は良くないわけだが、今回はいつもに増して顔色が悪い。
「あれ…。ティルが……いない!」
「なんだって!?」

 これをきっかけに次々と彼らの歯車は狂い始めていく。それは後に国をも巻き込む問題となるのだが、今のナープたちにはそれを知る由もなかった……。


Chapter1 END

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