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  • 竜の涙6

竜の涙6

最終更新:2013年02月17日 06:06

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Chapter6「バケモノ」


 記憶のない仔竜ティル。
 その正体は果たして何者なのか。ティルの産みの親はどこにいるのか。
 ステイブルから北西へ。雪の降りしきるホワイトプラトウの山道を登って、ティルの姿によく似た種族の棲むという集落、スノゥグランド村を目指してリクたち一行は行く。
 ずいぶん山を登った。
 雪の林道をしばらく行くと、目前に開けた空間が姿を現した。レンガ造りの建物がその先に立ち並んでいる。
 建物は土台の下に木の柱が何本も立てられ、地面から床が離れている高床住居のようだ。
 ウクツの説明によると、高床住居は湿気や害獣を避けることを主な目的として建てられるため熱帯地方に多いが、これは南方だけの特色ではなく世界各地に見られるものらしい。
 アース大陸は北極に近い北部の大陸だ。その中でも大陸の北端に位置し、標高の高いこのあたりの地面には永久凍土の層が存在する。もし暖をとろうと火を起こせば、氷が溶けて地盤が沈下し建物が倒壊してしまうだろう。ゆえにこういった凍土地帯でも高床の建物が見られるのだ。
 もちろん害獣を避けるためや、他にも冷気を避けるためなどの目的もある。
「ということは、ここは何か出るのかもしれないな」
 ウクツは注意するようにと一同に呼び掛けるが、
「そんなもの、私が撃退してやるのだ。この『オオカミガデタゾー2号』の出番なのだよ!」
 タネはかせは、どこからともなく取り出した奇妙な機械を掲げて胸を張ってみせる。
「まーた、そんなの出す」
 一同はただ呆れてみせるばかりだ。
「オオカミってなんだ?」
 リシェだけが首を傾げた。リクがそれに答える。
「狼っていうのは…。リシェと似たような生き物らしいぞ。まぁ、俺は見たことないけど」
「そうか、狼か! オレも会ってみたいな」
「あぁ……まぁ、そうだな。なんというか、会えるといいな」
「……?」
 タネはかせは私が会わせてやろうと、一体いつの間に直したのだろうか、こんどはどこからともなくペンシルロケットを取り出す。
 が、それはもういいとウィルオンが一蹴した。
「まったく、君たち。少しは私を信頼してほしいものだね。いいじゃないか、ロマンがあって。せっかく発明したのに出番がなくちゃ『オオカミガデタゾー3号』も悲しむのだ」
「さっきと号数が違うぞ」
「きっと出番を欲するがあまり増えちゃったのだ」
 するとティルが集落のほうを指して言った。
「それじゃあ、さっそく出番だよ」
 スノゥグランド村はレンガの壁で周囲を囲まれている。そしてその外側を林の木々が取り囲んでいる。
 林道から村へと真っ直ぐ進んだ先の壁は途切れており、そこに村の門があった。
 門の前には二匹の獣がいて、唸り声を上げながらこちらを睨み付けている。村の門番か、あるいは……。
「あっ、あれぇー? ちょ、ちょっと調子が悪いのだよ。残念だなー、せっかく私の新しい発明の力を見せてやれると思ったのに。あははは…」
 さっきまでの自信はどこへやら。タネはかせはすでにウィルオンの陰に隠れていた。
 呆れるウィルオンをほうを獣たちの蒼い眼がぎろりと睨みつけている。
 と、獣のうちの一匹が口を開いた。
「おまえらは何者だ。名と用件を言え」
 獣のうち片方は黒と白、もう片方は茶と白の毛に覆われていて、それぞれブラシのように太い尾が逆立てられている。そして眉間にはしわが。
 敵意があるのは明らかだった。
「ワシらはただこの村の者に用があるだけだ。危害を加えるつもりはない」
 ウクツが慎重に言葉を選びながら問いかけに答えた。
「そうか。一体どんな用だ? 場合によってはここを通すわけにはいかないな」
 事情を獣たちに説明する。
 黒い獣はティルとウクツの顔を交互に見る。茶の獣はずっとウィルオンのほうを見張っていた。
「……まぁいいだろう。通っていい」
 どうやら納得したらしく、獣たちは通行を許可してくれた。
「どうしたんだ。ずいぶん警戒してるみたいだけど」
 同じ獣だからこそ何かわかるものがあるのだろうか、リシェが獣たちに話しかける。
「ああ、おまえは大丈夫そうだね。実は……」
 こんどは茶の獣が口を開いた。
 彼が言うには、どうやら最近この近辺ではバケモノが出るのだそうだ。村の者が奇声を聞いたり、突然追いかけられるなどの被害を受けているという。そのバケモノが村を襲わないようにこうして門を守っているのだと。
「バケモノだって?」
「目撃者が言うには、ひょうたんのような姿をしていて、頭の上から変な棒状のもの生やしているらしい」
 視線がタネはかせに集中する。
 さっきから門番たちはウィルオンに注意を払っていたようだったが、どうやらその対象はウィルオンではなく、その背後に隠れたタネはかせだったらしい。
 タネはかせはたしかにひょうたんのような姿をしていた。そして、頭の上からは毛のような何かが一本だけ生えている。
「あっはっは! たしかにタネはかせはバケモノだよな! おれが保証するぞ」
「なっ、メタメタ君に言われたくないのだ! 羽の生えたアメーバだってかなり変なイキモノだろう!」
 黒い獣が問う。
「おまえは何者だ?」
 するとタネはかせは不機嫌そうに答えたのだった。
「なにぃ? この私を知らんだと。いいだろう、教えてやるのだ。聞いて驚け、そしてその心に我が名をしかと刻むがいい! 私は世界一……いや、宇宙一の…!!」
「バケモノです」
 すかさずティルが横から口を割り込ませる。
「危険ですので、エサを与えないように」
 さらにメタメタがダメ押しする。
「のぉぉぉおおおぉぉぉおおぅ!!」
 効果は抜群だ。タネはかせはのた打ち回った。
「なんだって! それは大変だ。噂のバケモノに違いないね。今すぐ排除しないと」
「は、は、は、ハイジョ……なのだ!?」
 茶色い獣まで追い打ちをかけた。しかし黒い獣はそうは思わないようだった。
「いや、それは噂になっているものとはおそらく違うな。噂のバケモノは足が一本だという報告を受けている。こいつはこいつでかなり怪しいがな」
「そうなのか。でも怪しいなら目を離すわけにはいかないね」
「ああ。俺はこいつらを案内すると同時に、あいつの監視もしようと思う。門番はナウィ、おまえに任せてもいいか?」
「わかったよ。それじゃ、ウォーレのアニキ。そいつらのことは頼んだよ」
 二匹の獣は別れて、ナウィは門番を続行、ウォーレはリクたちに同行することになった。
「それじゃあ村に入らせてもらうぞ。まずは村長に会いたいんだが」
 ウォーレは村長のことは村の者に聞けと言った。
「村の者か。だれかいないかな、と……あれは!」
 リクは村の中に見覚えのある姿を見つけた。赤い鱗の幼き竜だ。
「ウィー!!」

 リクたちは懐かしい顔との再会を喜んだ。
 ウィーもリクたちのことはちゃんと覚えていてくれたらしい。共に再会を喜び合い、成長したウィルオンの姿に予想通りの驚きを見せ、そして薬草のおかげで母親が元気になったことを伝えた。
 村長に話を聞きたいウクツはさっそくウィーに村長の所在を問う。
「親父に用があって来たのか。残念だけど親父は今出かけてるんだ。たぶん数日は戻らないんじゃないかな」
「えっ、ウィーは村長のところの子だったのか!」
「一応な」
 村を治める者なら一族のことにも詳しいだろうと踏んでいたが、いないとあっては仕方がない。
 聞くと、村長は隣のアイスグランド村に向かったらしい。この村と同じくグランディアの竜族が暮らしている村だ。
 ここから近いらしく、村長を追ってその村に向かおうということはすぐに決まった。
「けど、今日はもう遅い。出発は明日にしたほうがいいだろうな」
 空を見上げれば陽が沈みかけていて、雪は夕陽に染まっていた。
「それならいい場所があるぞ」
 ウィーに勧められて向かった先には一回り大きな建物が。看板には『雪見温泉』と記されている。
 ホワイトプラトウの山々は、今は活動こそしていないが歴とした火山であり、熱せられた地下水があちこちで間欠泉として吹き出している。ここもそんな山の恩恵を受けた温泉のうちのひとつだった。
 一行は今晩はこの温泉宿に落ち着くことにした。
 入ってすぐに受付があり、そこから左手に温泉、右手に宿泊用の部屋が並ぶという構造だ。
 ウクツに宿泊の手続きを任せてティルたちはまっすぐ温泉へ走る。
「温泉温泉~♪」
「おまえたち、はしゃぎすぎて転ぶんじゃないぞ」
 左手に向かうとくつろげそうな広めの空間があり、その先に番台が見える。
 そして見覚えのある姿も。
「あれっ、なんか久しぶりだねぇ」
「ウィザじゃないか!」
 かつて水門の城の一件で行動を共にした魔法を操る鳥人族だ。
 数年前と変わらない姿でウィザはそこにいた。
「だれだ、こいつ?」
 初対面のメタメタはウィザをじろじろと眺めながら、その周りをぐるりと飛んで回る。
「メタっち、あれはウィザだよ。マホウつかいなんだ」
 ティルが簡単に紹介した。
「ふーん。マホウは興味ないけど、トリってところは興味あるなぁ」
「そうなの? よろしくね、メタっち」
「よろしくー。ウィザってうまそうだよな。おれの腹の中には興味ない? ヤキトリにして食っていいか」
「そうだねぇ。焼かれるよりは茹でられたほうがマシかな……って初対面でいきなり食おうとするな!」
 言うが早いかすでにメタメタはウィザの右脚を呑み込もうとしていた。
 ウィザの反撃『ファイア』の魔法で逆にメタメタが焼かれたが、けろりとした様子でまるで効いていない。
「しょうがねぇな。今日のところはリシェでガマンしとこう。リシェ焼いて食おう」
「おまえ、リシェ好きだな…」
 最近はどうしていたのか、まさか偶然こんなところで会うなんて、というようなことを一通り話し終えると、ウィザと別れていよいよ温泉へ。
 待ちきれないといった様子でティルが番台のほうへと駆けていった。
 番台にはのれんがふたつ掛かっているが、そこに書かれているのは成湯、仔湯。グランディア竜は成竜と仔竜で身体の大きさが大きく異なるため、このように分けられているのだ。おそらくは水深が違うのだろう。
「ということは混浴なのか。きゃー、おれ恥ずかしいぞ。タネはかせ、じろじろ見てんじゃねぇよ」
「見てないのだ! というか、いつも裸みたいなもんじゃないか」
 体格からすれば、ティルとウィー、メタメタ、タネはかせは仔湯。残りが成湯と別れるのが適当だろう。
「あー、こりゃー珍しいお客さんだ。いらっしゃい」
 番台に座るグランディアの竜が広げていた新聞からリクたちに目を移し、眠そうな様子で挨拶を送る。
 その横をティルとウィー、メタメタが大はしゃぎで走り抜けた。
「おっちゃん、村長にツケといてくれ」
「ボクもツケといてくれ~♪」
「じゃあ、おれもおれも」
 番頭は新聞に視線を戻したままで、あいよと相槌を打つ。
「いやいや、さすがにそれは村長に悪いだろ。おい、おっちゃん。あいつらと俺の分はタネはかせにツケといてくれ」
「じゃあ俺も。ありがとう、タネはかせ」
 リクとウィルオンはそっけなく番台の横を通り過ぎてのれんをくぐる。
「なんでそうなるのだ!」
 そして番頭は容赦なくタネはかせに代金を要求した。


「フェザー出身か。遠いところから来たもんだ」
 温泉宿の外ではリシェとウォーレ、ナウィが集まって話に花を咲かせていた。
「ここは寒いところだな。オレの故郷に似ててちょっと懐かしいぞ」
「へぇ、フェザーもここと似てるんだ。アニキもおいらもこの山のことしか知らないから、外って憧れるねぇ」
「故郷も山だったからな。ここみたいにいつでも雪が降ってるわけじゃなかったけど」
 フェザーはアース大陸から東へ海を渡った先のウィング大陸にある国だ。ちょうどビゲストの大陸の真北に位置する。
 ウィング大陸はその名の通り翼のような形をした大陸で、山脈によって大きくふたつに分断されている。翼の根元にあたるのがフェザー国で、山脈に隔たれた向こう側には鳥人族の国、ウィング王国が存在する。
 大陸の大部分はウィング王国で占められており、フェザーの領土は大陸の4分の1程度の小国だった。
「オレもきっと一生故郷から出ることはないんだろうなと思ってたけど、どういうわけか気がついたらリクたちといっしょにいたよ。おかげでステイブルにも行ったし、ここにも来れた。何が起こるかわからないもんだね」
「何が起こるかわからない、か。それを楽しめるぐらいの余裕が持てればいいんだがな」
 そう言ってウォーレが耳を立てる。
 つられてリシェも聴覚に意識を集中させると、山の向こうから微かに遠吠えが聴こえて来た。
「これは?」
「アイスグランドにいる仲間からの報告だ。どうやらあっちの村の近くで噂のバケモノが出たらしいね」
 ナウィが遠吠えで返事を送る。
 リシェの一族には遠吠えの習慣はなかったので、どういったことを伝え合っているのかはわからなかった。
「暗号みたいなものなのか? オレにはよくわからないや」
「そんなところだ。リシェたちのことも伝えておいた」
「えっ、オレたちのこと?」
「これであっちの村でまたバケモノと間違われることはないだろう」
「そっか、ありがとう。タネはかせには朗報だな」
 その後もいくつかの遠吠えでのやり取りがあり、しばらくすると静かになった。
 どうやら報告は終わったらしい。
「ウォーレとナウィは狼なのか? それとも犬なのか? オレ、狼は会ったことないな」
「おまえも含めて俺らは狼ではないな」
 かつて狼は存在していたらしいが、それも伝承上の話。もはやこの世界に狼はいないと言われている。
 地上が機械で繁栄していた時代には実際にいたらしいが、それもずいぶん大昔の話だ。機械の時代のヴァンドラム文明はすでに失われてしまっているのだ。
 ステイブル付近にもあったように、各地には機械文明の遺跡や遺物が残されている。それほどに昔の話なのだ。
 狼は伝説の存在とされていた。
「もういないのか、残念だな」
「まぁ、本当かどうかは知らないけど、おいらたちのご先祖様だと言われてるね」
「海の向こうのモシリ国には最近まで狼の一族の生き残りがいたという噂もある。だが、誰かが確かめたわけじゃないからなぁ。あそこは外との交わりをほとんど持たない国だし、隣国の癒ともあまり交流はないらしい」
「モシリか。そこにも行ってみたいな…」
 空を見上げる。
 夜空には銀色の月が浮かんでいた。上弦の三日月だ。
 この地方では月の陰を狼に見立てるが、欠けた現在の月ではその姿を見つけることはできない。
 リシェは月に向かって吠える。
 ウォーレたちを真似してみた慣れない遠吠えだった。


「んー、こんどはリシェの声か? いいねぇ、風流だねぇ」
 温泉を満喫する竜人族が二人。リクとウクツだ。ウィルオンは先に上がってしまっていた。
 番台ののれんを潜り、戸を開ければそこは屋外だった。
 雪見温泉は露天風呂になっていた。その名の通り、降り積もった雪を眺めつつ湯を楽しめるようになっている。さらに今夜はよく晴れていて月を楽しむこともできた。
「雪か。故郷を思い出すな。時にリク、おまえは故郷に残らなくて良かったのか? ワシの研究につきあわせてばかりですまんな」
「どうしたじいちゃん、急に。俺はむしろ、じいちゃんの研究についていくと色んなところに行けて楽しいぞ。おかげでティルとかウィルオンとかにも会えたわけだしな。親父はどこかへつれてってくれたりはしなかったしなぁ」
「ゼロか…」
 ウクツは温泉の水面に視線を落とす。
 月が映っているが、揺れる水面にそれは歪んで見える。
「リク。ゼロのことはどう思っている?」
「さあな。嫌ってるわけじゃないけど、好きかと言われたらそれもどうだろうって感じ。いつも家にいなかったから記憶にあまり残ってないんだ」
「そうか…。ワシも研究でよく家を空けていたからな。そんなところばかり似てしまったか。すまんな」
「じいちゃんが謝ることじゃないさ。それに俺は色んなところに行けるのは面白いぞ。きっと、親父もそうなんだろう」
「だといいんだが……」
 ウクツは胸騒ぎを感じていた。
 根拠などは何もない。しかし、リクとゼロの間で何か良くないことが起こるような小さな予感がした。
(ただの気のせいならいいのだが)
 リクのほうを見る。
 孫はこちらに背中を向けていた。
 早くに妻を失い男手ひとつで息子を育ててきたが、自身の研究が忙しくあまりかまってやることができなかった。
 ゼロにもそれと同じことが起こっている。
 ゼロも早くに妻を失っていた。ゼロの妻、つまりリクの母親だ。
 そしてゼロは天竜の仕事が忙しくあまり息子であるリクをかまってやれていないようだった。
 ウクツは年をとってからようやく自分の間違いに気がつき、それに責任を感じていた。
 果たしてゼロは寂しさを感じてはいなかっただろうか……。
 リクの背中を再び見る。そこからはその心の内を読み取ることはできなかった。
(せめて孫には同じ想いをさせないようにしたいものだ)
 温泉の中央には竹で作られた柵があり、成湯と仔湯を隔てている。
 リクは柵の向こうに意識を向けているようだった。
「湯上りには冷えたコーヒー牛乳だよね~」
「おいティル、ちゃんと拭いてから出ろよ」
「ぶくぶくがぼぼぼぼ!(おれ一頭身だから湯につかると沈没しちゃんだけど!)」
 柵の向こうからは賑やかな声が聞こえてきていた。
「こんどはティルたちか。うーん、風流だねぇ」
「そ、そうか…?」


 夜は明けて、ウィーや門番たちに見送られて一行は隣のアイスグランド村へと出発した。
「バケモノに気をつけろよ!」
「大丈夫だ。こっちにもバケモノがいるんだから。メーにはメーを、ハニワにはハニワを。バケモノにはバケモノってね」
「だから私はバケモノじゃないのだ!」
 アイスグランドはスノゥグランドから西へ行ったところにあるグランディア竜の集落だ。
 標高はスノゥグランド村と同程度。山頂を間にはさんでちょうど向こう側になる。
 ふたつの村は交流が深いらしく、山肌に沿って迂回する形で道ができていた。その道を進んで隣の村へと向かう。
 道中ではバケモノのことが専らの話題になった。
「しっかしバケモノねぇ…。一体どんなやつが出てくるのやら。そういえばバケモノってどんなやつだっけ?」
「聞いた話じゃ、タネはかせにそっくりらしいけど……」
 改めて確認する。
 噂のバケモノはひょうたんのような姿をしていて、頭の上から何かを一本生やしているらしい。さらに足は一本。
 加えて、念のためスノゥグランドの村民から情報を集めていたが、それによると奇妙な顔つきで、奇声を発する、後をついてくる程度の被害はあったが実害はまだとくにないらしい。
「なんだそれ、気持ち悪いな。足が一本ってところ以外はまるでタネはかせじゃないか。……いや、こいつは実害があったな」
「だから違うって言ってるのだ!」
「それほどまでにタネはかせにそっくりなのかな」
「きっと私のかっこよさに憧れたかで私に扮しているのだよ。さっすが人気者の私なのだ。そうだ、そうに違いない!」
「……それはない」
 などというような話に夢中になっていたが、ふと気がつくと遠くから誰かがこちらに手を振っていたことに気がつく。
 何か言っているような気もする。目を凝らすが、逆光のせいか相手の姿はよく見えない。
「なんだ? 俺たちに用かな」
 影は少しずつこちらに近づいてきているようだった。距離が狭まるにつれ、よりはっきりと相手の輪郭を認識することができるようになる。
 影の形には見覚えがあるような気がした。
 ひょうたんのような形だ。頭上に高く掲げた手を振り続けている。
「あれは……タ、タネはかせ!?」
「私はここにいるのだ。出たな、私に憧れる者よ!」
「いや違う。まさか、あれは……噂のバケモノ!!」
 バケモノらしき影はじりじりと距離を詰めてくる。
 気味の悪さを感じて思わず身構える。
 ついにバケモノは一行の目前に姿を現した。すると……
「マスター、会いたかったです~。ぼくのハートは大雨洪水猛吹雪でした」
 それは紫色のひょうたん型のボディに、頭上から一本の細いアームを生やした奇妙な機械だった。
 脚はなかったが、その代わりに胴体下部からは一本の支柱が伸びて、オフィスチェアの足のようなものが備え付けられている。
 バケモノはタネはかせをマスターと呼び、表情からはわからなかったが親しそうな言葉をかけた。
「タネリミ君じゃないか!」
 タネはかせが驚いた顔でそのバケモノの名を呼んだ。
「これがバケモノの正体? どういうことか説明してもらおうか」
「安心しろ、これは敵じゃないぞ。これぞ私の最高傑作のひとつ『タネリミット君』なのだ」
 タネリミットはタネはかせの手によって改造を施されたリミットだった。
 リミットとは、かつて機械の栄えた時代に誕生したと言われている自律走行型の謎の機械だ。その用途は機械文明の滅んでしまった今となっては不明だが、これもその機械文明の遺産のひとつだ。
 先の魔法文明時代に改良されたらしく、今でもたまに壊れていない野生化したリミットを見かけることがある。見ているとなぜか破壊したくなる衝動に駆られる。
 あるいは、各地でリミットのものと思われる残骸を拾うことが可能だ。
 そんなリミットをタネはかせが捕獲し、拾い集めたがらくたを使って補強、改造したのがこのタネリミットだった。
「なんだよ。バケモノ騒ぎも結局タネはかせのせいだったんじゃないか」
 ウィルオンが愚痴をこぼした。
「ま、まだこれが噂のバケモノとは限らないのだ。タネリミ君は安全なのだ! だからバケモノのわけがない!」
「ところで、なんでそのタネリミ君がこんなところにいるの?」
「ある日、散歩に行かせたっきり帰ってこなくなっちゃってたのだ」
 どうせタネはかせの発明品だ。安全なわけがない、これがバケモノに違いないと仲間たちは口々に言う。
 タネはかせは絶対に安全だと何度も力説する。
 しかし、その背後で機械は怪しげな動きを見せていた。
『ピピピ…。作戦αを始動します。標的”T”の確保、及びその他の殲滅。殲滅優先対象を設定完了…』
「ターゲットを確認したです」
 本来、機械であるリミットの表情は変化しない。が、タネリミットが妖しくにやりと表情を歪めたように見えた。
「危険分子を優先して抹消すべきだと判断しました。タネはかせを優先します。あれはなんか色々とヤヴァイです」
 タネリミが敵意をタネはかせに向ける。
 しかし、誰一人としてタネリミの異変に気がつかない。
「さぁ、『リミットギロチン』でイチコロにしてやりますよ…」
 タネリミの頭上、一本のアームの左右からそれぞれひとつずつ、ふたつの柱が伸び始める。
 ある程度、伸びきったところで柱は中央に向かって直角に折れ曲がり、タネリミの頭上中央できれいに合わさった。こうしてできた四角い枠には鋭い刃が吊り下げられた。
「くらえ!!」
 刃は勢いよく落下する!
 そしてイチコロで……
「リミッ……!?」
 アームを切断しつつ、刃はタネリミの頭に深々と喰い込んだ。アームは弧を描いて宙を舞い、ナイスなサムズアップの状態で見事に雪面に突き立った。
『アーム損傷100%。緊急事態、緊急事態』
 タネリミのものとは別の機械音声が警告を発している。
「ぎゃあああ! な、なんて手強い相手ですか。だが……まだだ、まだ終わらんよ! ならば『リミットマグネット』です」
 こんどはタネリミの頭上、アームがあったあたりに大きなU字磁石が現れた。
「磁力の恐ろしさ……とくと味わうがいいです!」
 磁石が激しい閃光を放つ。
 すると、山道の周囲にあった石や岩が引き寄せられタネリミの頭上に集結、巨大な岩の塊を生成する。
「くらえ!!」
 器用に磁力を操り、タネリミはその岩の塊を投じる。
 岩塊はタネリミの頭上から勢いよく真上に飛びそのまま落下、タネリミの真上に落ちた。
「ぎゃあああッ! 磁力は怖いですー!!」
『マグネット完全破損。リミットフェイス、ミリ波レーダー、他数か所に甚大な損傷を確認。警告、警告! リミット汁漏洩中、爆発の恐れあり! 搭乗員は直ちに避難をしてください。繰り返します……』
 ボロボロになりながら、岩塊の下からタネリミが這い出てきた。
「ぼ、ぼくは……し、死にま、しぇぇえええん…! こうなったら奥の手切り札隠し玉です。一発限りの必殺ウェポン『リミットミサイル』を使うときが来たのです!」
 アームのあったあたりから、こんどはミサイルが姿を現した。しかし発射装置などはなく弾頭だけだ。
 タネリミは狙いを標的に定めて弾頭を発射した。
 ミサイルは勢いよく標的に向かって飛んでいく。
 そして、そのミサイルからはタネリミがぶら下がり、弾頭同様勢いよく飛ぶ。
「ああ、なんかうまくいかなかったです!」
 どうやら想定では弾頭だけが飛んでいく予定だったらしい。
 タネリミの重みによってミサイルの軌道はがくりと下がり地面に墜落、閃光、そしてタネリミ共々爆発した。
「あああああああああああ!! ぼくは飛んでいます!!」
 タネリミは灰になった。
「燃えつきたぜ、真っ白にな…。そうです、ぼくは旅に出ています…」
 タネリミは勝手に自滅した。
「……さっきからあいつは何がしたかったんだ?」
「まぁ、タネはかせの機械だし変なんだろ」
 さすがにこれに気付かないなどということはなく、一同はタネリミの理解し難い行動に首を傾げるばかりだった。
「うーむ、たしかに変なのだ。おかしいのだ。どうしたタネリミ君! お腹か、お腹が痛いのか!」
 まるで説得力がないが、どうやらタネはかせにとってもこれは想定外の行動だったらしい。
 タネはかせは黒コゲになったタネリミの様子を確認していた。
 すると突然、またあの機械音声が響く。
『ピピピ…。応答なし、応答なし。強制終了します。再起動します。最大化します。最小化します。応答なし、応答なし。電源をぶっこ抜きますか? Yes or No』
「さっきから聞こえてくるけど、これはなんなんだ?」
「こんなもの私は付けてないのだ。ま、まさか私も知らない未知の機能が!? なんて面白いんだ、タネリミ君!」
「そんなわけないだろ」
 音を頼りにタネリミを探る。
 すると、タネリミにはどうやら覚えのない小さな機械が取り付けられていたことがわかった。
「なんなのだ、これは?」
「ハッ! 今までぼくはいませんでした!? ああ、マスター。ご無沙汰ございました。ぼくがお供しましょう」
 タネはかせがその機械を取り外すと、突然タネリミは起き上がり仲間になりたそうにこちらを見つめた。
 取り外された機械は『応答せよ、応答せよ』と音声を発したが、それっきり何も言わなくなった。
 これ以降、タネリミが(タネはかせが想定している範囲外では)暴走することはなかった。
 結局あれはなんだったのか。
 噂のバケモノの正体はタネリミだったのか。小さな機械は誰が何のために付けたのか。その目的は何だったのか。
 いくつかの疑問を残すことになったが、一行は気を取り直してアイスグランドの村へと再び足を進めることにした。
 タネリミットという仲間を加えつつ、彼らのティルを巡る旅はまだまだ続く。
「え? おい、こいつ連れてくのかよ」
「タネリミ君は良い子なのだ。私が保証するのだ」
「ふつつか酔い者ですがぼくタネリミット君です。くるしゅーないちこーよれ」
 また変な仲間が増えてしまった。


Chapter6 END

竜の涙7
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