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メタディア7

最終更新:2012年07月05日 01:05

jelly

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Chapter7「黒と赤」


「……これが癒に昔から伝わる諏砂之王の物語だ。そういえば噂になっている妖怪も頭が8つだったな。まさかとは思うが」
 逆牙羅詰所の蔵で絵巻を広げて昔話に興じるタワシたち。
「スサノオはどこ行っちゃったの?」
「子どもが旅に出るおはなしは?」
 ステイとシエラが興味深そうに続きを催促する。
「たしか続きの話もあったはずだ。はて、どこへしまったやら…。また出てきたら話してやろうな」
 言って絵巻を箪笥に片づける。
「ステイ、おまえさんがおると助かる。おまえさんなら、ワシらが開けられない引き出しを開けられるし、ワシらには高くて手の届かないところのものに手が届く。そうすると、こうして絵巻なんかが出てくる」
「おいらこの蔵気に入った。里にはなかった珍しいものがたくさんあるから」
「それはよかった。さて、ワシはちと鍛冶場へ行ってくるが?」
「もうちょっとここにいるよ」
 ステイは蔵に残ったが、シエラは鍛治を見たいと言ってタワシについて行った。
「そういえばコテツ呼びに来ないけど、妖怪退治まだかな」
 そんなことを考えていたその頃……

 平牙の東門に現れたそれは、まるで諏砂之王絵巻に登場する八岐大蛇そのものだった。
 山のように大きな大蛇の頭が7つも鎌首をもたげて、城壁の外からこの平牙の都を覗きこんでいる。さっき倒した頭を合わせれば8つの頭だ。薄暗く不穏に曇った空に14の赤い眼が光る。
「まさかあの八岐大蛇なのか!?」
「あ、あり得ん…! あれはただの伝承のはず…」
 城壁に開いた穴に引っ掛かっていたひとつの頭を退治することはできた。
 だがそれは相手が身動きが取れないところを狙って不意打ちで倒したにすぎない。
 こんどはそうはいかない。しかも、同等の相手が7つも同時に襲ってくるのだ。
「これは分が悪いぞ」
 こちらも頭数は7つ。すなわちコテツ、カリバー、ムサシとコジロー、そしてちくわ部隊の3匹。
 だがちくわ部隊は3匹で一人前。それに加えて、さっきの戦いで最後に大蛇が暴れた際にちくわたちは負傷してしまっていた。
「多勢に無勢、ここは一旦退くべきだ」
 ムサシではないが、尻尾を巻いて撤退する。
 果たしてこの巻き尾は幸運の証となるか。

 逆牙羅詰所に退き返すと、ちょうどステイと鉢合わせになった。
「あっ、コテツ。今から退治に行くの?」
「逆だ。今戻って来たとこだぜぃ…」
「ええーっ! おいらに黙って行ったの!? ずるい! ついてきていいって言ってたくせに!」
「いやステべぇ、あれはやめといたほうがいいぜ…」
 これまでの経緯をムサシが説明した。
「それってもしかして八岐大蛇なんじゃない!?」
 驚いてステイが目を大きく見開く。
「おめぇ、八岐大蛇を知ってたのか」
「わたあめのおやっさんに聞いた。じゃあ、スサノオ呼んできてまた封印してもらおうよ」
「おめぇなァ。あれはただの伝説だ。実在したかどうかもわからねぇし、いたとしても大昔のことだからもういねぇよ」
「じゃあ、スサノオの話みたいにお酒飲まして隙を突くとか」
「ここにあったのはおめぇが昨日全部呑んじまったじゃねぇか! それこそおめぇが大蛇(ウワバミ)だぜぃ…。それにあの量じゃとても足りねぇよ」
 大蛇が東門を突破して平牙に入ってくるのは時間の問題だろう。
 逆牙羅詰所は西門の近くにあったが、だからといって安心もしていられないし、東門の近くで暮らす住民を見捨てるわけにもいかない。
 タワシやシエラを加えて、詰所内部でどうするべきかと策を練る。
 たしかに8つの頭を見たが胴体は見ていない。あるいは八岐大蛇でなくただの8匹の大蛇なのかもしれない。
 だが、もしそうだったとしてもものの数で不利な事実は変わらない。
 平牙城の兵たちと協力できれば数ではこちらが有利になるが、城の侍たちは調査のために西へ向かってそのままだ。
「肝心なときにいねぇ。これだから城のやつらは…」
 八岐大蛇退治の伝承にヒントがないだろうかと絵巻を広げるタワシ。
 諏砂之王は大蛇を眠らせその隙を突いた。頭があとひとつのところで剣が折れるが機転を利かせて大蛇の牙で戦った。大蛇の牙は大蛇の尾を容易に切り裂いた。そして大蛇の尾から出てきた剣で大蛇は封印された。
「まずいきなり7つ頭をやっつけちまうんだもんな。相当すごかったんだな、スサノオってやつは」
「俺たちの武器では傷をつけることすら難しい。その大蛇の牙は使えるかもしれない」
「牙を武器にするんだね。じゃあおいらの出番だ。牙さえ手に入れば武器にしてみせるよ」
「ワシも行こう。普段は鍛治に使っている程度ものだが、氷術で多少は動きを止められるかもしれんしな」
 そうして決まった作戦はこうだ。
 絵巻にあやかって、既に退治した大蛇から牙を剥ぎ取る。それをステイやタワシが武器に加工して大蛇の硬い鱗を破る。
 頭数はコテツ、カリバー、ムサシ、コジロー、タワシ、ステイの6つ。残る大蛇の頭は7つ。ひとつ足りないが仕方ない。
 負傷したちくわたちはやむなく詰所に残すことにした。
「ちょっと待ってよ! あたいがいるじゃないの。これで7つになるでしょ?」
 自分を忘れるなとシエラが主張する。
「ステイ、シエラのために何か作ってたようだができたのか?」
「ああ、そういえば忘れてた。ごめんね」
「そういうことだ。おめぇはここで待ってるンだ」
「…ケチ」
 戦力的なこともあったが、シエラはあくまでただの迷子猫にすぎない。
 言わば逆牙羅にとってゲストのようなものなのだ。客に戦わせるわけにはいかない。
 ふて腐れるシエラとちくわ部隊を残して再度東門へ向かった。


 東門に辿り着くとそこに大蛇の姿はなかった。
 退治したはずの頭まで消えている。さっそく倒した頭から牙を剥ぎ取るという作戦が崩れてしまった。
 本当にここで見たのかとタワシが訊く。
 だが見間違えのはずがない。目の前には大蛇が暴れて壊れた壁がたしかに存在し、それが原因でちくわ部隊が負傷したのだから。
 もし本当に8つの頭が同じ胴体から伸びているものだったとしたら、やられた頭の傷を癒すために敵も退いたのかもしれない。そう考えて壊された壁を潜ってその先、桜舞平原へと進み出る。
 すると平原の真ん中にいつの間にか、以前はなかった森ができている。
 不思議に思って近づくと、森からは大蛇の首がひとつ伸び出でた。首がこちらを確認すると、続けて複数の頭が顔を出す。
 大蛇の背には苔や木が生えていた。それがとぐろを巻いて森に見えていたのだ。
 森からは8つの頭と尾が生えている。さっき退治したはずの傷を持つ頭もそこにあった。
 間違いない。まさしくあれは伝承に登場していたような八岐大蛇なのだ。
 中央の頭が口を開く。
「戻ってくると思っていたぞ。随分と長く閉じ込められていた。外の様子は大きく変わってしまったようだが、そこに住む者の程度は大して変わっていないと見える。先程は手荒い歓迎ご苦労。どうやら我もその礼をせねばならぬようだな」
 大蛇のそれぞれの頭がこちらを睨みつける。
「閉じ込められてた……? もしかしてほんとにあの話に出てきた八岐大蛇!?」
「それよりおまえたち、話が違うではないか! 頭をひとつ退治したと言わんかったか!?」
「なんとかしてやつの牙を奪い取らなければ、効果的な攻撃は難しそうだな」
 大蛇の大きさは軽くコテツたちの数十倍はある。ここにいる全員がまとめて一呑みにされてしまいそうなほどだ。
「じゃあさ。わざと食べられて中から攻撃するのは? よくあるじゃない、漫画とかで」
「無茶言うンじゃねぇよ! だったらステイ、おめぇがやれよ」
「えー、ここはコテツの出番でしょ。がんばれきなこ餅」
「こンなときに冗談言うなァ!」
 コテツを抱え上げて大蛇へ近寄るステイ。それに必死に抵抗するコテツ。
「とにかくワシがなんとかしてみよう。あとは頼むぞ、おまえたち」
 そう言ってタワシが一歩前へ出る。
 大蛇の周囲に氷の粒が浮かんで現れたかと思うと、それは一点に凝縮し大蛇を包み込む。すると大蛇が丸ごと氷漬けになった。
「氷術か! さっすがおやっさん、やるぅ!」
 ムサシが絶賛するが、大蛇は内側から氷を打ち破りすぐに自由になってしまった。
「ふむ。しばらく見ないうちに面白い術を覚えたか。だがそんなもの我には通用せぬわ」
「無駄か…!」
「いや、続けてくれ。少しでも隙ができればいいンだ。その隙にオイラたちが大蛇の牙を手に入れる!」
「そうか、頼むぞ」
 再びタワシの氷術。大蛇が凍りつく。
 その隙にコテツたちは大蛇の背を駆け上ろうと試みる。それはまるで諏砂之王の伝承のように。
 だが現実は伝承のようにはうまくはいかない。大蛇の背の木々が邪魔をして思うように上れない。
 そうしているうちにも大蛇はすぐに自由を取り戻してしまう。
 空を飛べるステイは空中から槍で大蛇の牙を狙うが、大蛇はすぐに動き出してしまうのでこれもうまくいかない。
「せめてあの木さえなんとかなれば…」
 ならば、とタワシがいつもの煙管を取り出す。
 魔道具である煙管からは煙ではなく、激しく燃え盛る炎が噴き出して大蛇を火だるまにした。
「おやっさんすげぇ! 焼蛇定食だぜ。やったんじゃねぇか!?」
 大蛇の鱗は炎をものともしなかったが、背中の木々は焼き尽くされてなくなった。
「さすがは伝説の大蛇様ってわけか…。だがこれで邪魔な木はなくなった!」
 再び大蛇を凍らせる。その背をコテツ、カリバーが駆け上り、その後にムサシとコジローが続く。
 凍った牙を打ち折り斬り落とし、それを空中でステイが拾い集める。
 大蛇の牙は毒の牙だ。刀を咥えて扱うサムライわんこたちには毒の牙は扱えない。毒の牙の扱いはステイに託されていた。
 ステイはいつぞやのメーディの鎌から作った薙刀に牙を固定すると、タワシが作ってくれる隙に合わせて空中から大蛇に斬りかかった。諏砂之王のように一撃で大蛇の首を落とすことはできなかったが、大蛇の鱗を貫いて攻撃することには成功した。
「なんて切れ味……これで勝てる!」
 タワシが凍らせて隙を作る。そしてステイが鱗を打ち破った場所を狙って、背を駆け上ったカリバーやコジローが刀で一閃。コテツやムサシが木刀を突き立てる。
「よし、おいらだって…!」
 空中から牙刀を構えて斜め一直線に突撃する。
 見よう見まねの一閃。すると大蛇の首3本がまとめて宙を舞った。
「おおっ! その調子だぞ、ステべぇ!」
「うわっ、おいら式一閃強ッ!」
 言うまでもなく大蛇の牙の威力なのであるが、調子付いたステイが続けて攻撃。牙刀を振り回すとさらに3つの首が飛んだ。
 立て続けに合わせて6つの頭を斬り落とした。残るは中央の頭と、一度は倒したあの頭のみ。
 勝機が見えた。これなら勝てる。
 誰もがそう信じかけたそのときだった。
「おやっさん、腕輪が…!」
 タワシの魔道具である腕輪が割れてしまった。腕輪に込められた魔力を使い切ってしまったらしい。
 これでは氷術は扱えない。もう大蛇の動きを封じることはできなくなった。
「大丈夫! まだこの牙の薙刀があるから!」
 そうは言ってみせるステイだったが、大蛇は攻撃の隙を与えてはくれない。噛みついてくる残り2つの頭をかわすので精一杯だった。
「所詮おまえたちはその程度なのだ。諦めて我に服従して生贄と酒を差し出すか、そうでなければ大人しく喰われるがいい。好きなほうを選ばせてやろう。さぁ、恐怖しろ! そして我を崇めよ!」
 すでに6つの頭を斬り落とされているにも関わらず、大蛇は余裕を見せている。
 すると下方から叫び声が聞こえてきた。これはムサシの声だ。
「うわっ、なんだこれ! 気持ち悪ィ!」
 斬り落とした頭はいつの間にか黒い液体と化して大蛇の本体に吸収されようとしている。
 まるで黒い液体が自ら意思を持つかのように大蛇のほうへとにじり寄って行く。
「これは…!? あの伝承の通りだとすれば、あれを吸収させてはならんぞ! 頭が復活してしまう!」
 液化が起こったのは大蛇の頭だけではなかった。
「牙が溶けた!?」
 ステイの薙刀に固定されていた牙も黒い液体となって大蛇へと引き寄せられていく。
 させまいとタワシが残った魔道具の煙管で炎術を繰り出すが液体に炎が有効なわけもなく、黒い液体のほとんどが大蛇に吸収されてしまった。
 斬られた大蛇の首が次々と生えてくる。さらには傷さえもすべて治ってしまった。
「これで振り出しに戻ったな。もうおかしな術も使えまい」
 大蛇が嗤う。
「やつに炎術は効かんぞ」
「あの鱗には俺の剣も、コジローの刀も、当然木刀も歯が立たないぞ。どうする?」
「どうするったって、なンとかまた牙を奪ってステイに託すしか方法がねぇだろ!」
 牙を奪うためにはもちろん大蛇の頭に近づかなければならない。大蛇の頭の位置が高すぎて、手が届くのは空が飛べるステイだけだ。それ以外が牙を狙おうとするなら、大蛇の身体を登るか頭のほうから近付いてくるのを待つしかない。
 しかしどの方法にしても頭に近づくのは危険が伴う。大蛇の頭はコテツたちを丸呑みにするには十分すぎる大きさがあった。動きを止められれば少しは安心だが、タワシの氷術はもう使えない。
 ステイは大蛇の牙を狙って薙刀で攻撃しようとするが、大蛇の8つの頭がそれを許さない。
 頭は一向に下がってくる様子もない。見かねてコテツが大蛇の尾を駆け上がろうとするが、大蛇は尾を振り回し叩きつけてそれを阻む。
 地上からも空中からも大蛇の牙へは近付くことすらできない。
「せめてあいつの動きさえ止められれば……そうだ!」
 何を閃いたのか、ムサシがステイを呼び寄せる。
「どうするの?」
「考えがある。おれっちの指示するように飛んでくれ」
 そしてステイの背に飛び乗り、再び大蛇へと向かっていく。
「あいつら、どうするつもりだ?」
 一見したところ、ムサシがステイに乗っていること以外に何か変わったような気はしない。
 むしろ大蛇の攻撃がより激しくなったような気がする。大蛇の攻撃をずいぶんと引きつけてはかわしているようだが、これではやられるのも時間の問題なのではないか。
 そこで不意にステイが大蛇の頭上に飛び上がった。続いて何を思ったのかムサシがステイから飛び降りた。
 ムサシは下にステイは上に、それぞれ正反対の方向へ進む。それぞれを大蛇の頭が追う。
 すると突然、大蛇の頭の動きが止まった。
 大蛇の首が絡まり合い身動きが取れなくなってしまったのだ。
「不覚…! なんたること!」
 大蛇はうろたえている。
 落ちるムサシを旋回したステイが受け止めた。
「へへっ、どんなもんだぃ! さぁ、今のうちにやっちまいな!」
「まったくお主は無茶をする…!」
 やれやれとコジローが刀を構え直した。
「無茶なんかじゃねぇさ。おれっちの巻きシッポは幸運の証だぜぃ? ライバルのおまえと決着をつける前におちおちくたばってられるかってんだよ!」
 これで好機を得た。この隙を突いて再び牙を打ち折り、それを使ってすぐにもステイが反撃を開始する。
 牙を使って大蛇の鱗を打ち破り、そこを狙って逆牙羅の面々が攻撃を打ち込む。そしてステイによる牙の一閃でひとつ、またひとつと大蛇の首が落ちていく。
「おのれ、弱者が分際で…! だが、いくら我が頭を斬り落とそうと無駄なこと! 貴様ら如きに我は倒せぬ!」
 大蛇が咆えるが抵抗することはできず、ステイの一閃によって今、大蛇の最後の頭が宙を舞った。
 最後の頭はもの言わず大地に落ちた。


 ステイが地上に舞い降りると、逆牙羅の面々がそれに駆け寄った。
「やったな、ステべぇ! おまえのおかげだ! さすがはおれっちの弟分だぜ!」
「おまえがいなければ俺たちはさらに苦戦を強いられていただろう。逆牙羅を代表して礼を言わせてもらおう」
「もうお主も拙者たちの立派な仲間だな」
 仲間たちはステイの活躍を称賛した。
「コテツ、おいらやったよ!」
「……しょうがねぇな。今回は認めてやるよ」
「あっ、もしかしておいらにトドメをとられて悔しい?」
「うるせぇな! 別に悔しくなンかねぇよ!」
 コテツはそっぽを向いた。
「素直じゃないんだから」
 タワシも称賛の輪の中にいなかったが、それはコテツとは理由が違った。
「おまえたち。喜んでいるところに水を差すようだが、あれを見ろ」
 示す先を見るとそこには何もなかった。
 あるはずの斬り落とした大蛇の頭がどこにもなかった。
 大蛇の首はすべて落とされた。これで大蛇を倒したはずだった。
 にも関わらず、斬られた大蛇の首は黒い液体と化して胴体へと合流しようとしている。このままではまた振り出しに戻ってしまう。
 そして大蛇の頭がひとつ蘇ると宣言した。
「だから言ったであろう、我は倒せぬと。我は不死身だ!!」
 液化した大蛇の首たちは次々と胴体へと向かっていく。
「頭がなくなっても生きてるなんて……反則だろ!」
 悔しそうな顔でムサシが叫ぶ。
「あやつ、キリがないぞ」
「そういえば昔話でもそうだったよね。だからスサノオは封印することにしたんだ」
「だったらまた封印すりゃいいンじゃねぇのか?」
「だめだ。平牙には封印術を施せる者がおらん。梅華にならあるいはおるかもしれんが…」
 平牙と梅華京は古来より仲が良くなかった。まず協力が得られるかどうかが問題だ。
 仮に協力を得られたとしても、今から呼びに行っていたのではとても間に合わない。その間に平牙が陥落してしまうだろう。
「あの液体さえどうにかできれば…」
 黒い液体が本体と合流することさえ防げれば大蛇の首が復活することを防げる。あるいは首をすべて失わせた状態を維持できれば、本体はいずれ力尽きるかもしれない。しかし黒い液体は斬っても燃やしてもまるでびくともしない。ここでタワシが氷術を使えればどうにかなったのかもしれないが、今となってはどうすることもできない。
「もうだめだ…。おれたちじゃ平牙を護れないんだ…」
 ムサシが力なく呟いた。
「諦めるな! それでも拙者の好敵手か! お主には幸運の尾があるのだろう!?」
 コジローが励ますが、運だけでは勝てないと今度はコテツが呟いた。
「オイラにもっと力がありさえすれば…」
 コテツは己の無力さを悔いていた。
 過去のとある出来事でコテツは己の無力さ思い知らされたことがあった。守りたいものも守れず後悔するのはもう嫌だ。その思いからコテツは力を求めて修行の旅に出たのだ。
 なのにこの現状はどうだ。このまま戦いが長引けば平牙を護るどころか、己の身を守れるかどうかすらも不確かではないか。
「くそっ、今までの修行は何だったンだ。また失うのか……オイラの力が及ばないせいで……!」
 悔んでいても仕方がない。そうしている間にも大蛇の首がひとつ、またひとつと蘇っていく。
 もはや打つ手なし、万事休すか。
 そう思われた時、どこからともなく大量の水が壁のように押し寄せてくるのが見えた。
 津波? 否、桜舞平原からは海が見えるが、海が荒れている様子はない。それに水壁は海とは反対の方向、平牙のほうからやってくる。
 山のように大きい大蛇を超えて水壁はさらに大きかった。それは通り道にある平原の木々を巻き込みながら迫る。
「な、なンだこれ…」
「それよりも早く逃げないとおいらたちも危ないよ!」
 しかし水壁は左右に分かれて器用にコテツたちを避けて進むと、大蛇だけを呑み込んだ。
「木を隠すなら森の中。メーを隠すならメタディアの中。液体を隠すなら水の中ってね」
 黒い液体は水に呑み込まれて動きを止めた。
 水の壁は液体を閉じ込めると、球体のように変化して宙に浮かんだ。
「言ったでしょ。あたいも連れてけって」
 水の壁の向こうから現れたのはシエラだった。
 目の前で起こった物理法則を無視した光景に驚きながら訊いた。
「これ……おめぇがやったのか!?」
「ムサシのシッポが幸運のシッポなら、あたいのカギシッポは魔法の杖だもんねぇ」
「しえしえって魔法使いだったの!?」
 これにはステイも驚いて訊いた。
「あれっ、言わなかったっけ? こう見えてもあたい結構やるんだよ」
 驚いたことにシエラは魔法を嗜んでいたのだ。
 水の魔法に長けるシエラは、強い魔力を感じてここに駆け付けたのだという。
「ま、あたいのことはあとあと。妖怪っていうからどんなものかとおもったら、また大変なのが相手なのね。あの黒いの何かわかる?」
「いや、まったくわけがわからない。あれのせいで、いくら斬ってもすぐに大蛇が蘇ってしまうンだ」
「あたいにも詳しくはわからないけど、あれは魔力の塊だね。それもかなり強力なやつ」
 シエラが言うには、あれは魔力が液化したものかもしれないとのことだ。
 そもそも魔力という概念上のエネルギーのようなものが液体になるのかどうかは疑問だが、今はそんなことを議論している場合ではない。
 現在、第4世界の魔法は精神力を魔力に代替させて魔法を発現させるが、かつて魔法が発明され栄えた第3世界のものは今のものとは違っていた。
 精神力という代替物ではなく、本来の魔力によって生み出される魔法は今のものより遥かに強大だったという。
 そんな強大な魔力をあの黒い液体から感じるのだとシエラは言う。
 つまり大蛇は魔力から構成されている存在である可能性が高い。だからこそ物理的な攻撃があまり効果を成さなかったのだ。
「おめぇ、なンでそンなこと知ってるンだ…」
「魔法のことはちょっと、ね。そんなことより、あれをなんとかしなくちゃ! きっと物理的な力で勝てる相手じゃないよ!」
 魔力そのものは純粋な力、エネルギーにすぎない。
 それ自身が意思を持ち、ましてや襲いかかってくるようなものではない。
 だがあの大蛇は身体が魔力で構成されているにも関わらず、意思を持ち攻撃してくる。
「よ、よくわからねぇが、つまりあれは生き物じゃねぇってことなのか?」
「そうねぇ…。魔力のゴーストみたいなものなんじゃないかな。魔法のオバケってこと」
 なぜそれが意思を持つのかを考えていても仕方がない。
 ただそれは間違いなく敵として今目の前に立ちはだかっている。
「魔力のゴーストか…。それならばその魔力を使い果たしてしまえばやつは消滅してしまうのではないか?」
 カリバーが訊いた。癒の出身ではなく、別の大陸にあるシェル国で育ったカリバーは少し魔法の知識があるようだった。
「それはそうなんだけど、魔法を使えば自身がすり減るってことはきっとあいつもわかってるはず。実際、魔法で攻撃してこなかったんじゃない? 自然消滅を待つのは難しいと思うねぇ」
「じゃあどうすりゃいいンだ!?」
「魔力なら吸収してしまえばいいんだけど、あんな強力なのとてもじゃないけど無理。自分の許容量を遥かに超えて魔力中毒になっちゃう。ここは魔法をぶつけて魔力同士を反発させて弾き出して地道に削っていくしかないけど、あたいとタワシだけじゃどんなに時間がかかることか…」
「だがやるしかあるまいな。微力だがワシも出来る限りのことをしよう。本来ワシは魔法は扱えん。魔道具がいつまでもつか…」
 コテツは蚊帳の外だった。もちろんコテツには魔法の類は扱えない。さっきの話も半分わかったようなわからないような具合だ。
 自分の力はもしかするとシエラにも劣るのではないかと、ふと不安になる。

 目には目を、魔力には魔力を。
 早速シエラの魔法による攻撃が開始された。
 大蛇を囲む水球から水滴が飛び散ると勢い良く大蛇に向かって降り注ぎ、それはまるで無数の矢のように大蛇の身体を射抜いた。
「すごい! 効いてるの!?」
 期待した様子でステイが訊くがシエラの表情は固い。
「だめ。水に耐性があるみたいで、全然魔力を散らせない。あたいの魔法じゃあいつには勝てない…」
 蛇とは古来より水を司るものだとされている。もしかするとあれは水の魔力が液化したものなのかもしれない。
「そうなるとワシの炎術でも手が出せんな。氷術さえ使えれば…」
 シエラは水の魔法しか扱えないようだ。一方タワシは氷の腕輪を失い炎術しか扱えない。
「物語みたいに封印はできないの? あの黒い液体はうまく水に閉じ込められてるじゃない!」
 ステイは水の中に閉じ込めることを提案するが、それには大蛇全体をすべて液化させる必要があった。
 だがそのためには本体を微塵斬りにしなければならない。それこそキリのないような話だ。
「それにあの水球はあたいが魔法で作りだしたものだから、ずっとあのままじゃないの。あたいがずっと見張ってるわけにもいかないし…」
「そうだ、たしか物語では大蛇の尾から剣が出てきたんだ。スサノオはそれを使って大蛇を封印したけど、つまりその剣にも何か力があるんじゃないの?」
「ふむ、伝説の天之叢雲剣か。だが実在するものかどうかはわからんし、仮にあったとしても諏砂之王が封印に使ってしまってもう存在しないだろう。あいつが伝承に出てくる八岐大蛇と同一のものとは限らんしな」
「じゃあその封印に使った剣はどこに行ったの? 誰が封印を解いたの?」
「考えていても仕方がねぇだろ。目の前にこうして大蛇がいる。原因よりこいつをなンとかするのが先だ」
 大蛇の尾を斬ってみれば、もしかすると封印に使われた剣が出てくるかもしれない。
 そのためには、再度大蛇の牙を奪わない限りはその尾を切断することはできないだろう。
 魔力の存在である大蛇だからこそ、同じく魔力でできている牙でなければ斬ることができないのだ。
 しかしいくら斬ったところであの大蛇を倒すことはできないし、もし大蛇の尾から剣がでてきたとしても、ここには大蛇を封印することができる者がいない。
 今度こそ本当に打つ手はなしか、と思われた時だった。
「君たち、面白そうなことをしているね」
 頭上に影が覆ったかと思うと、そこから声と同時にひとつの姿が降って来た。
「おめぇ……メーディ!?」
 現れたのはメーディだった。
「ふーん、ただの化け物に見えたけどまさかアレがねぇ…」
 驚くコテツに構うこともなく、メーディは大蛇や黒い液体を眺めて何やら呟いている。
「誰かは知らんがおまえさん、あの大蛇について何か知っておるのか?」
「最初はどうでもよかったんだけどね。あれが原液の塊とわかれば話は違ってくる」
「原液……? 何のことを言ってるんだ」
 その問いには答えず、逆にメーディが問い掛けた。
「君たちあの大蛇が邪魔なんでしょ。もしあいつに回収されたりでもしたらボクとしても困る。だから取引しようじゃないか。ボクがあの大蛇を退治してあげる代わりに、大蛇の魔力は全部ボクのもの。どうだい、君たちにとっても損な話じゃないと思うけど」
「オイラたちは魔力なンかどうでも構わねぇが……つまりあいつを倒せるっていうのか?」
「もらっていいんだね。それだけ聞ければ十分だ」
 言うが早いかメーディの姿が目の前から消えたかと思えば、何かの力で水の球体が掻き消されてしまった。
 突然のことに驚くシエラだったが、驚くべきはそれだけではなかった。
「なんだ貴様。おまえも我に歯向かうというのか」
「うるさいな、原液の分際で」
 メーディが悪魔のような形相で大蛇を睨む。
「な、なんだ貴様は! 一体何者……!!」
 一瞬空気が凍りついたかと思うと、漆黒の雷が轟音とともに静まり返った空間を引き裂いた。
 それとともに激しい旋風が周囲を襲う。地響きと雷鳴が轟き渡る。空を引き裂き漆黒が覆う。
 平牙上空に立ち込めていた暗雲は霧散し紅い月が顔を出す。血のように紅く爛れた十五夜の満月だ。
 視線を地上に戻すとすでにそこに大蛇の姿はなくなっており、黒く液化した大蛇の最後の頭をメーディが飲み込むのがちらりと見えたが、それを終えるとにやりと笑いながらメーディも煙のように消えてしまった。
 何が起こったのか理解できるものはいなかった。ただわかるのは、突然メーディが現れて大蛇諸とも消えてしまったということだけだ。
 あれだけ苦戦した八岐大蛇が、悪夢から覚めたかのように目の前から忽然と消えた。
 一同が混乱する中、シエラだけは冷静だった。いや、あるいは最も混乱していたとも言えるかもしれない。
 シエラはメーディに言いようもない恐怖を感じていた。いや、恐怖という表現は正確ではないかもしれない。
 ただメーディが大蛇を睨みつけた本当に僅かな瞬間、大蛇などものの比ではない程の膨大な魔力を感じ取った。それもどす黒い、禍々しい、まるで闇そのもののような。


 とりあえず大蛇から平牙を護るという目的を果たして詰所に一同は引き返した。
 まるで釈然としない。空気は重かった。言うなれば目的は果たしたが戦いには負けたような感じだ。
 あれほど苦戦した大蛇を突然現れたメーディが一瞬のうちに倒してしまった。いや、喰ってしまったというべきか。
「なぁ……勝ったんだよ、な?」
「どうだろうな。すべてあいつが持っていってしまったからな。メーディが」
「あやつ、何者なのだ?」
「わからん。ステイはメタディアの一種だと言っておったがな」
「そういやナフもそンなことを言ってたよなァ…」
 エルナトの族長ナフの言う最も危険なメタディア、メーディ。
(メタディアが最近活発になってきている。とくにメーディというメタディアには気をつけなさい。ワシはもちろん、里の者みんなが束になってかかっても手も足もでない)
 コテツはナフの言葉を思い出していた。
(メーとかのことだろ? あンなの大したことねぇよ)
 あのときコテツはそう返した。そして今までもそうだと思っていた。
 しかし癒に来てからメーディとウェイヴの戦いを目にして、そして大蛇を一瞬で倒してしまったメーディを目の当たりにしてコテツはわけがわからなくなっていた。
「なンだよ、メタディアって。なンだよ、メーディって……」
 一体何者なのか。そしてその目的は何なのか。
 誰にもそれはわからない。いくら空を見上げても月はその答えを教えてはくれない。
 空からメーディの目のような紅い月がただこちらを睨んでいるだけだ。


「これは思いもよらない収穫だったね」
 紅い月を背景に夜空を行く飛竜のようなメタディア、メリゥ。その背にはメーディの姿があった。
「まさか二本目が手に入るなんて。原液も手に入って言うことなしだよ」
 メーディの手には二本の剣があった。
「天之叢雲……か。すごい魔力だな、メーディ程じゃないけど」
「長きの封印の間に新たに剣が生成されるとは驚きだね。原液もまだまだ不思議がいっぱいだよ」
「それにしても、古代に封印された大蛇が原液だったとはな…」
「かつては魔力そのものは自然界に存在したからね。魔法もまだない太古に魔力をもとに生まれた生物がいたって何もおかしいことじゃない。メタディアがこうして存在してるんだからあり得ないことじゃないよね。それはメリゥが一番よく理解してるでしょ?」
 メリゥは静かに頷いた。
「ああ、そうだ。おれたちは作られたんじゃない、生まれたんだ! あんな心のカラッポのやつとは違う。おれたちがメタディアなんだ!」
「そゆこと。ボクたちはあいつの呪縛から解放されなくちゃならない。だからこそこれからも頼むよ、相棒」
「もちろんだ」
 そしてメーディたちは闇夜の向こうへと消えた。

 時を同じくして桜舞平原上空。大蛇と戦ったあの場所の上空に穴が開いた。
 何もない場所に突如として現れたその穴の向こうは何も見えない闇。この空間は異なる次元の世界。
 その闇の向こうから赤い二つの眼が地上を凝視している。
「強力な魔力反応を感知。反応地点座標に接続、境界展開完了」
 赤い眼が闇の向こうから身を乗り出して地上、さっきまで大蛇がいた辺りを観察する。
「魔力の根源特定失敗。魔力反応が消失した様子」
 赤い眼は闇の向こうにいる存在に命令する。
「回収失敗と判断。消失原因を探り可能な限り追跡せよ」
「御意。メダマを派遣します」
 赤い眼が穴の中へ戻ると上空の穴は跡形もなく消え、空には紅い月だけが残っていた。


 翌朝。
「なんで、みんなそんなに落ち込んでるのさ。おいらたち平牙を守ったんでしょ!」
 寝覚めの悪い朝だった。ステイを除いて。
「メーディに助けられたのは不本意だが…」
「もしもメーディが来なかったら危なかったな」
「これじゃ役立たずの城の兵たちと大して変わらねぇや…」
 偵察に行った城の侍兵は結局帰ってこなかった。大蛇にやられたのだとか、恐れて逃げ出したという噂まで流れている。
「今回はたまたま解決できたが、次もこういくとは限らない。このままでは逆牙羅の名に泥を塗ってしまう。この一件でよくわかったが、俺もまだまだというわけだ」
 反省した様子でカリバーが言う。
「カリバーだけのせいじゃねぇさ。おれっちも未熟だったぜ」
「そうとも、カリバー殿。これは拙者たち全員の責任。これを機により一層、我々は己を磨くのに励むべきだと心得ることができた」
 逆牙羅の一同は揃って首を縦に振った。
「おまえたち…。それならば俺も安心して後を任せられるな」
「後を…? どういうことだよ」
 驚いてムサシが訊く。
 そこでカリバーは一同に向き直って言った。
「俺も旅に出ることにした。今ならコテツの気持ちもよくわかる。逆牙羅を束ねる者としてこれでは不甲斐ないからな」
「そんな…。それじゃあ逆牙羅はどうなるんだよ!」
「許せムサシ。少し俺に時間をくれ。強くなって必ず平牙に帰ってくると約束する。それまで逆牙羅はムサシ、そしてコジロー、おまえたちに任せたい。わかってくれ、そして黙って俺を送り出してくれ」
「カリバー殿…」
 コテツは一連の流れを少し離れて眺めていた。
(必ず帰る……か。オイラはいつになったら帰れるンだろうか)
 コテツはカリバーをかつての自分と重ねていた。
 強くなって必ず帰る。そう誓って故郷を後にしたあの日からもうどれだけの月日を経たことか。だが未だにその誓いは果たせそうにない。
 故郷に残してきた仲間は今どうしているのだろうか。
 自分の帰りを待っている者がいる。その期待に応えられるのは他の誰でもない、自分だ。
「オイラもこうしちゃいられねぇ!」
 急に大声を上げるコテツに一同の視線が集中する。
「オイラもそろそろ行くことにするぜぃ。いつまでも立ち止まってちゃいけねぇからな。世界は広い、癒やエルナトだけがすべてじゃねぇンだ。行き詰まるにはまだまだ早すぎるってな!」
 故郷を出てからずいぶん時間が経つが、それでもまだ癒を廻ってエルナトに少し寄っただけに過ぎない。
 世界にはまだ知らない場所、知らないものがある。強くなるためのヒントはまだまだたくさんあるに違いない。
 立ち止まっていては時間が勿体ない。何よりそれは自分の帰りを待っている者たちを裏切ることになる。
「おめぇも行っちまうのか。おれっち寂しいぜ」
「オイラもまだまだ旅の途中なンでね。心配すンな、またいつか癒に戻ってくるさ。今回みたいにな」
「また刀を折って帰ってくるなんてことはないようにな」
「う…。おやっさん、さっそく出鼻を挫くようなことはやめてくれ。オイラだって好きで折ってンじゃねぇからな」
「冗談だ。まぁ、道中に気を付けてな」
「ああ、おやっさんも元気でな。おめぇらもいつまでも落ち込ンでちゃいけねぇぞ」
 逆牙羅の一同と別れの挨拶を済ませて、カリバーとともに午後には平牙を出発した。もちろん、ステイやシエラを引き連れて。
 平牙から南へ。桜舞平原に出たところでカリバーと別れる。
「それじゃ、カリバーも達者でな」
「ああ、コテツも無茶はするなよ」
 一緒に来ないのかと問うステイに、カリバーはまずコテツがそうしたように、癒國を一周旅して廻るつもりだと答えた。
「旅は大勢のほうが楽しいと思うのにな」
「悪いなステイ。俺はここから北東の先刃(サキバ)へ向かう。あそこには有名な刀匠がいると聞くからな。各地を旅してこの剣カルブリヌスを鍛えるつもりだ。大蛇の鱗にも負けないような剣にな」
 カリバーは背負う剣を大切そうに眺めた。
「大事にしてるんだね。コテツと大違いだ」
「うるせぇな」
「これは俺の師匠から授かったものだ。命の次に大切なものだ」
 それに対してコテツたちは西へと向かう。
 癒の西端、鳴都。そこから出る船で南西の大陸、咲華羅(サッカラ)へと渡る予定だ。
「ステイだって、そンな数日ちょっとでエルナトに戻っても仕方ねぇだろ。それにシエラの家も探してやらなきゃなンねぇわけだし…。まァ、おめぇがカリバーと行きたいってンならオイラは止めないけどな」
「コテツ、俺に厄介を押し付けてもらっては困る」
「なにそれ、おいらを何だと思ってるのさ!」
 コテツとカリバーが揃って笑う。ついでにシエラも笑った。
 ふくれるステイを引きずって平牙を後にする。
 コテツたち一行は西へ。カリバーは東へ。
 一時は自信を失っていたコテツだったが、改めて目的を見つめ直して再び修行の旅を続けることを決心した。
(故郷のために、オイラはまだまだ強くならなくちゃならない。こンなところで立ち止まってなンかいられない)
 まだ見ぬ地、咲華羅の大陸を目指して一行は確かな足取りで西へ。
 そうだ。コテツの旅もステイの旅も、まだ始まったばかりなのだ。


Chapter7 END

メタディア8
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