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大いなる意志2D

最終更新:2013年07月06日 01:56

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第二章D「ネメーシス」


 アルバールに集った各国首脳たちは、グメーシス亜種を調査するために各地へ調査団を派遣した。
 キョクたちの所属する調査団デルタチーム一行は装甲車に乗り込み北東へ。マキナ首相直々の依頼で、マキナに出現したというグメーシス亜種の調査へ赴く。
 機械都市マキナ。発展を極めた機械製造の技術はその街並みにも見てとれて、都市のあちこちには金や銀の金属板にいくつものパイプが張り巡らされて蒸気を吹き上げている。中央には黄金色に輝くいくつものタワー。その周囲を取り囲むように銀の建物が立ち並び、蜘蛛の糸が張り巡らされて巣を形成しているかのように、その間をいくつものパイプが伝う。さらにその外周を覆うように、住宅街だろうか、銅の家々が軒を連ねる。
 そんな機械都市の外周は鋼鉄の壁で覆われて、まるで街そのものがひとつの巨大な機械か、あるいは要塞のようにも見える。壁には四方に見上げるような大きさの門がそれぞれ設けられていて、そこから都市の内側へと至る。
 デルタチームの装甲車一団は、その門のひとつを潜ってマキナの都市内へと入っていく。
「あちこち金属で固めて、まさに完全武装という感じね。ちょっと物騒だわ」
 車窓から飛び込んでくる機械都市の光景にシルマが言った。
「機械の街ダからな。いろいろゴツいのは仕方ない。けど、人々の心は温かいぞ」
『技術者が多いですからねぇ。職人気質の方が多いので、金属のように冷たいということはなくて、むしろそれを溶かしてしまいそうなほどに情熱を持った方が多いんですよ。ガイストも精神体のことに対してはとても一生懸命でしたしね』
 古来より代々続く王家が治めるフィーティン。功績を経て多数決の下に代表として選ばれた大統領が治めるヴェルスタンド。それらとは異なり、マキナでは特定の代表というものを持たない。この機械都市ではいくつかの研究者の派閥が存在し、その中で最も優れた勢力を持つ者が首相としてこの国を代表する顔となる。それゆえに、誰もがより高みを目指して心に情熱の炎を灯しているということなのだろう。
 もともとマキナは技術者たちの集まった集落でしかなかったところに、徐々に人が集まり規模が大きくなっていったことで誕生した国。その国を構成するのはほとんどが研究者や技術者なのだ。したがって、その機械都市という”大きな研究所”を運営するのは、そこで最も偉大な研究者あるいは技術者ということになる。そして現在の代表はガソイール首相。すなわち、彼は現在この国で最も勢力的な研究の責任者でもある。
 そのガソイールが言うには、ここでもグメーシスの亜種が確認されたという話なのだが、この金属の都市はその表面と同様に冷え切って静まり返っているように見えた。
「外装が派手なわりには静かな国なんだね」
「ほとんどが屋内で研究開発ばっかやってるような感じダからな。ダが、それにしても静か過ぎる。オレたちが出発する前はもっと活気があったはずダが……何かあったのか。そもそも今までグメーシスの亜種なんて見たこともなかったんダけどな」
『突然湧いて出たりでもしたのでしょうか。ともかく私たちの任務はその亜種の調査です。調査の基本は聴取から。まずは人口の集中している中層部分へ向かうのがいいでしょう』
 マキナの都市構造は主に三層に分けられる。
 中央の金のタワーは中枢地区。都市全体を支える重要な機械や、代表となった首相率いる研究に携わる一団だけが使用を許される特別な研究所。そして、その首相たちが代表としてこの国を運営するために必要な施設などがそこにある。研究所や施設はタワーの中に設けられているため、都市の中では上層部を占めた位置にあたる。
 それを取り囲むのが銀の建物群。主な研究所や各種施設、飛行艇や潜水艇の発着場などもここに位置し、マキナの人々の大部分がここで暮らしている。ここが都市の中層部にあたり、その地盤は鋼鉄の柱でしっかりと支えられている。
 外周の壁に近いあたりに並ぶ銅の家々は住宅街ではあるのだが、この下層部の人員構成は比較的貧困層で占められている。研究成果が芳しくない研究者たちは窓際ならぬ、この外壁付近へ次第に追いやられていく。良くも悪くもこの国は実力主義。エラキスのように実力を認められれば上へ上へと行けるが、力を示せなければすぐに転落してしまう。マキナの高い技術力は儚い犠牲の上に成り立っているのだ。
 デルタチーム一行が下層部の貧民街を抜けて中層部へと向かう道中、一人のみすぼらしい身なりの男が物珍しそうな様子でエラキスの運転する装甲車をじっと見つめていた。彼の姿はすぐに後方へと流れて消えたが、目ざとくその姿を見つけたイザールはそれにつけて不満を漏らした。
「はぁ…。まったくマキナって技術は凄いけど、生活環境としてはあまり良い場所とは言えないようだね。あんな浮浪者がうろついてる状況を放置しているなんて。あんなのスマートじゃない。美しくないね」
「たしかにそうね。それに、なんだか治安も悪そうで怖いわ。研究者が片手間に政治をするよりも、もっとちゃんとした行政機関を配置するべきよ。スラム街が広がっているなんて政治体制が悪い証拠じゃない。ここの首相は何をやっているのかしら」
「……その首相が今回の任務の依頼者なんダけどな。一応言っとくが、さっきのやつもおそらくもとはマキナの研究者ダったんダからな。あいつダって好きでああなったわけじゃないはずダ。そんな汚いものでも見たような言い方は良くないぞ。それにマキナはもっと魅力のある国ダ。たったひとつの面を見たダけで決めつけないでくれ」
 精神体の暴走から20数年。しばらくマキナを拠点として活動していたゲンダーは、そんなマキナの現状のことも今ではよく理解している。しかし、初めてマキナへ来たばかりの、それも何一つ不自由せずに育ってきたのであろうイザールやシルマには、それを理解するのは難しいのかもしれない。
「磨き抜かれた金属の壁に僕の美しい顔を拝めるのはちょっと嬉しいけれど、やっぱりどうも落ち着かないよ」
「そうね。早く任務を終えて帰りたいわ。それにこのあたりは砂漠化が進んでいて砂埃がひどいもの」
 不満ばかり言う二人にゲンダーは怒りを感じた。
 もちろん、それは彼がこのマキナを拠点としているからだけではない。
「おまえら、あまりマキナを悪く言うなよな! ここはガイストの故郷でもあるんダ! おい、エラキス。おまえもマキナ兵ならここは怒るところダろう。自分の国が舐められて悔しくないのか?」
 聞かれてエラキスは片手でハンドルを握りながら肩をすくめて言う。
「Nothing. 俺はフィーティン出身だし何とも言えねーな。まぁ、俺は自分の技術が認めてもらえるなら何だっていいぜ」
「なんダよ、ドライなやつダな。本気で怒るぞ?」
『まあまあ。そのへんにしておきましょう。私たちはわざわざ喧嘩をするためにここへ来たのではありませんよ』
 メイヴに諌められてゲンダーの怒りの炎はひとまず鎮められた。しかし、後に炎は再び燃え上がる。より大きな、より煮えたぎる怒りの炎が。その火種はすでにこの時点で機械都市に湧き立っていた――


 マキナ中層部に到着し車を停めると、デルタチームはさっそくグメーシス亜種についての聴取を開始した。
 銀色の建物が並んでいるが、このあたりにあるもののほとんどは研究施設らしい。さすがは機械の国なのか、その入口はどれもが電子ロックと厳重なセキュリティシステムに守られていて、無断で入るのはもちろん、了解を得て入れてもらうことも難しい。そもそも部外者を迎えることを想定していないためか、内部に連絡できるインターホンの類は一切備え付けられていない。関係者をつかまえて事情を説明して入れてもらわなければならないのだろうが、周囲にはまるで人の姿が見当たらなかった。
「国民のほとんどが研究者みたいなもんだからな。みんな研究室に籠ってるのかもしれねーぜ」
「もっと人がいるところはないのかしら。例えば住宅街のような……さっきのスラム街は嫌よ」
「俺の知る限りじゃ、上のほうにはあまりない印象だな。ほとんどのやつらが研究室に住んでるようなもんだし、兵士たちには兵舎があるからな」
「仕方ない。僕たちにできるのは、なんとか人をつかまえて、どこでもいいから中に入れてもらえるように努力することぐらいだね。まさか貧民街の浮浪者がグメーシスの亜種なんか知ってるわけないだろうし…」
 デルタチームはゲンダーたちを含めてもたった11人しかいない。各国の小隊から隊長を含めて3人ずつしか調査団として集められていなかった。これは例えばブラボーチームが対象としている亜種のトメーシスのような、より危険な亜種の調査のほうに人員が割かれたためだ。
「この人数だと誰か見つけるにしても骨が折れそうダ。こういうときは……メイヴなんとかならないか?」
『それは明らかになんとかできると確信して聞いていますよね?』
「できないのか?」
『もう何年の付き合いだと思ってるんですか。言われなくても、すでに付近の研究所へ事情は連絡済みの返信待ちですよ』
「さすがメイヴ。もちろん信じてたぞ」
 この手際の良さ、これが噂の英雄たちなのかと団員たちは感心した。人数などもはや問題ではない。これまでに様々な事態を切り抜けてきた二人にはその程度、全くもって些細なことに過ぎないのだ。
「Awesome! あっさり解決かよ。メイヴがいれば任務完了も亜種問題の解決もあっという間の気がするぜ」
『さて、では私たちはどうしましょうか。返事が来るまでいくつかに別れて少しでも情報を集めてもいいですし……あるいは、少し前に出発の挨拶をしたばかりですが、ベイ博士に挨拶しにでも行きますか。彼に新しい仲間を紹介してあげましょう』
「ベイ博士?」
 突然出てきた知らない名前に、イザールが訊いた。同様にシルマや他の調査団員たちも首を傾げている。
 そんな中でエラキスだけは驚いた様子で言った。
「ベイ博士……ってベイクーロか!? メイヴ、あいつと知り合いだったのかよ!」
『おや、顔見知りでしたか。それは不思議な縁を感じますね。とりあえず、まず知らない方のために紹介しておきましょうか。ベイ博士というのは……』
 メイヴが説明しかけたところに、突然サイレンが鳴り響き始めた。
 音は機械都市のあちこちのスピーカーから発せられているらしく、中枢タワーの背後には赤い光の筋が幾本も左右に揺れて危険を知らせているのが目に入る。それに呼応するかのように、遠方から人々の叫び声が聴こえて来た。
「また火事だ! あちこちで燃え広がっているぞ!」
「出火原因はなんなんだ!? 何かがショートしたのか!」
「炎の勢いが強すぎる……早く避難するんだ! 消防隊はまだか!?」
 続いて何かが爆発して金属が地面に倒れる音。立ち昇る黒い煙。
 何人かの研究者たちが血相を変えてゲンダーたちの脇を走り過ぎて行った。
「な、なんダ? 何があったんダ」
 そのうちの一人を引き止めて訊くと、
「ああ、おまえはベイさんとこのゲンダーじゃないか! まさか知らないのか!? 今、マキナで何が起こっているのか!」
 曰く、ゲンダーたちが出発してから、このマキナの各地で原因不明の火災が相次いでいるのだという。すでに複数の研究施設が被害を受けており、多くのマキナ人はフィーティンやヴェルスタンドに避難を開始しているという。
『道理で。やけに静かだとは思っていました。各研究所からなかなか返信が来ないのはそのせいでしょうかね』
「原因不明の火事か。これはもしかすると……」
『ええ。おそらく亜種ですね。あなた、火事の現場で何か変わったものを見かけませんでしたか? 例えばグメーシスのような』
 グメーシスの亜種はそれぞれ変わった能力を持っている。原種のグメーシスは触れたものを塩に変えてしまったが、他の亜種はそれとは異なる現象を触れたものに起こす。そこで考えられるのはつまりこうだ。今回の相次ぐ火事もグメーシスの亜種の能力によるものではないのか、と。
 メイヴは何か心当たりはないのかと研究員に訊いてみた。
 が、彼はただ「わからない」と答えたのみで、そのままメイヴたちにも避難を促しつつ都市の外へと去って行った。
『ふむ。仕方ありませんね。これは実際に現場へ向かったほうが早そうです』
「そうダな。行ってみよう。研究員たちはあっちから走って来た。ってことはあっちへ向かえばいいんダろう」
 機械の二人はそう提案した。
 百聞は一見に如かず。もし本当に亜種が原因なら、まだ現場にそれがいるかもしれない。すなわち、火事を引き起こすような能力を持っているグメーシスの亜種が。


 火災の現場に赴く。銀色だった機械都市の街並みは、燃え盛る炎を映して赤く輝き、あるいは焼け焦げて黒くくすんでしまっている。金属の壁は炎の熱に溶かされて、それはまるで煮えたぎる溶岩のように、炎を吐き出しながら周囲を覆っている。何かが弾ける音と爆発、奇妙な色の煙と悪臭が漂い、警報と人々の悲鳴が混ざり合いながら四方を飛び交う。
「これは……思ったより酷いぞ」
 崩れた建物の向こうからは今も助けを求める声が聴こえてくる。事態は思った以上に深刻な様子だった。
「グメーどころじゃなさそうダ。なんとかしないと!」
『そのとおりです。情報を集めるにも、肝心のマキナの人々が死んでしまっては何も聞けませんからね。手分けして彼らを救出しましょう』
 まだあちこちで炎が燃え盛っている。迂闊に近づくのは危険だ。
 そこでゲンダーとメイヴが瓦礫の撤去や逃げ遅れた被害者の捜索を率先して行い、残りの調査団員が彼らを誘導して避難を手助けすることが提案された。機械の二人は、少なくとも人間よりは炎に強い。多少は身体の表面が焦げたりするかもしれないが、もし炎に包まれてしまっても、火傷を負って倒れてしまうようなことはない。
「Wait! 俺にも捜索を手伝わせてくれ。マキナは俺の第二の故郷だ。もっと力になりたい。じっとしてられねえんだ!」
 だが、エラキスは危険を顧みず前へと歩み出た。同様に部下のマキナ兵たちも申し出る。彼らは自分たちの街が炎に呑み込まれて崩壊していく様子を黙って見ていられなかった。逃げてきた研究員の話によるとマキナでは原因不明の火災が相次いでいるという。火事現場はここだけではない、つまり被害者はここにいる者だけではない。そして、それは原因を断たないことには相次ぎ続けるだろう。
 メイヴは少し考えた後に言った。
『……あなたたちの気持ちはよくわかりました。ですが、原因の究明よりも人々の救命のほうが大切です』
「何言ってんだ! たしかにそれも大事だが、火事を食い止めないとさらに多くの被害者を出すことになるじゃねーか!」
『ふむ……わかりました。では人員を割きましょうか。エラキス、あなたはたしか飛行艇パイロットでしたね。空中から水か消火剤を散布することはできませんか? それから、火事の原因はグメーシスの亜種である可能性が考えられます。もし空中からそれらしい姿を確認できればすぐに連絡してください。できますか?』
「Roger! わかってくれて嬉しいぜ。Leave it to me!」
 了解を得ると、エラキスはマキナ兵の部下二名を引き連れてさっそく駆けて行った。この銀の中層部には飛行艇や潜水艇の研究施設も多く集まっている。彼らが準備を終えるのにそう時間はかからないだろう。
 彼らが走って行ったのを見届けると、こちらもさっそく行動を開始した。
 崩れ落ちた瓦礫をゲンダーが汁千本で溶かして撤去していく。汁千本とは、サボテンの姿をしたゲンダーの身体中にある針を模した部分から発射される溶解性の液のことだ。これはゲンダーの必殺技でもあり、過去にはなんどもこの技で活躍を見せてきたものだ。
 ゲンダーが瓦礫を取り除くと、メイヴは胴体から長く伸びるアームを使って負傷して身動きの取れない被害者たちを安全な場所へと運ぶ。武骨な鋼の手を頼りなさそうなワイヤーで繋いだようなそのアームは、ひと一人程度の重さなら難なく持ちあげることができ、さらに機械でありながら負傷者の身体をこれ以上傷つけないようにと、不要な力を加えることなく優しく持ちあげて運ぶことができる。安全な場所へと移された負傷者はイザールやシルマを中心に、残る調査団員たちが肩を支えたりしながら避難を助けた。
 こうして付近の負傷者はあらかた救出し終えた頃だったろうか。
 手の空いた団員たちが消火用具をかき集めてきて、付近の炎の勢いも弱まって来たと見えたそのとき。爆音と熱風とともに突然、目の前に巨大な火柱が立ち上った。
「ネメェエエェエェェェッ!!」
 炎の柱の中には丸い影、そして何かの鳴き声のようなものが微かに聴こえてくる。
「なんダ!? ついに現れたのか、火事の原因が!」
『センサーにグメーシスに酷似した反応を感知。間違いありません、亜種です!』
 炎に包まれたそれの姿は、炎の勢いと陽炎による空気の揺らぎによってうまく捉えることができない。だがメイヴのセンサーはしっかりとその正体を捉えている。
 遠隔モニタにメイヴが捉えた情報が列記されていく。その姿はグメーシスに酷似した銀色、そして流線型の身体。胴体の刻印には「怒」と刻まれ、それを象徴するかのように亜種は激しい敵意をこちらに向けている。その燃え盛るような荒々しい気性は、メイヴのセンサーがなくても、その炎の壁を通して直に心に伝わってくるのがわかった。
「ネメェェェエエエェェッ!!」
 亜種が再び咆哮をあげた。
『鳴き声から考えるに、あれはネメーシスと呼んだところでしょうか。ネメシス……つまり義憤ですか。なるほど、それで怒っているわけですね』
「ネメーシスか…。ところで、あいつはなぜ、一体何に怒っているんダ。マキナのやつらがなんかしたのか?」
『それはわかりません。ところでやつら、なんで自分の名前通りの鳴き声を発するんでしょう。ちょっと面白いですね』
「鳴き声が先か、名前が先か……ってそんなこと考えてる場合じゃない! 襲ってくるぞ!」
 ネメーシスは大きく咆えると、炎を身にまとい回転しながら飛びかかって来た。赤い炎の軌跡が尾を引いて宙に一閃を描く。
 これにゲンダーが汁千本で応戦するが、グメーシスの例に漏れず、攻撃はその身体をすり抜けて炎の向こうへと消えた。実体を持たないグメーシスは物理的な干渉を受け付けない。
 迫るネメーシスの突撃を寸でのところでかわす。翻って再度の一撃。
 だが、やはりゲンダーの攻撃はネメーシスには通用しない。
「駄目か。原種と違って炎をまとってるから、もしかしたらと思ったんダが」
『ならば対グメーシスの正攻法です。これでも食らえ!』
 メイヴの筒状の胴体、その頭からは負傷者を救出したあのアームが伸びている。これをメイヴは格納すると、代わりにそこから大きなパラボラを現してネメーシスへと向けた。
 過去のグメーシスとの戦いからわかっていること。それは、音が弱点だということだ。
 グメーシスは精神体という物質からできている。精神は本来は目に見えないもの、そして触れないものだ。それゆえに物理的な干渉はできない。が、目には目を、精神には精神。それには精神的な干渉、とくに音による干渉が有効なのだ。
 パラボラからはパチパチとものが弾けるような音が発される。
 これはパルス波だ。精神体は音に弱いが、とくにこのパルス波が効果的であることがわかっている。そして、それはグメーシスも同様。これを受けたグメーシスは身体が痺れて動けなくなってしまうのだ。
 メイヴの発したパルス波がネメーシスを捉えた。
『これはただのスピーカーじゃありません。ちょっとマキナの最新技術を取り入れさせてもらっていますのでね…』
 音とは空気の振動、波である。それは一定の周期を保ちながら、一定の方向へと流れていく。だがこの特殊なパラボラは違う。マキナの最新技術を応用したこのパラボラは、音の波動をある程度コントロールすることができる特殊なスピーカーになるのだ。
 発せられたパルス波は、ネメーシスの身体を包む込むような波を示した。本来なら虚空の彼方へと流れ飛んでしまうはずの音は、いつまでも対象の周囲を包んで纏わりつく。その奇跡はまるで無限大の記号を描くかのように伸びている。
「すごい…。これがマキナの科学力、そして英雄メイヴの力なのか…!」
 イザールは息を呑んだ。
 音の軌跡は目には見えなかったが、ネメーシスをまとう炎がまるで四方から押さえ付けられているかのような、不自然な揺らぎを見せている。
 炎さえも捻じ曲げるそのパルス波の音圧は相当なものなのだろう。ついにネメーシスがまとう炎は音の力によってかき消されてしまった。
「やった! 効いてるわよ!」
 シルマが思わず言った。
『ああ……思わず言ってしまいましたか。すみません、お嬢さん。こういうときの「やった」は…』
 しかし、消えた炎に反してネメーシス自体はまるで涼しい顔をしている。いや、その表情は敵意に満ちて炎のように燃え盛っていたが。そしてネメーシスが再び咆えると、激しくバチィッと大きく何かが弾け飛ぶ音が聞こえた後に再び……いや、前以上に激しい炎が明々と燃え上がり、ネメーシスの身体を包み込んだ。
「やってないフラグ、ダな。くそッ、あいつめ。音も効かないのか!?」
『亜種ですからね。例外ということなのでしょう。さて、どうしたものか……』
 炎とは弾けてパチパチと音を鳴らすもの。それもまたパルス波を生み出す要因となり得る。常に炎に包まれているネメーシスは、そのパルス波を最も身近で、浴びるように受けていると言っても過言ではない。ゆえに、原種のグメーシスとは違ってネメーシスにはパルス波への耐性ができてしまっていたのだ。
「弱点がないんて……どうするんダ?」
『いえ、まだ弱点がないと決まったわけではありません。それを見つけていないだけです』
「ならどうやって見つける。ゆっくりと観察してる時間はないぞ」
『なに、簡単なことですよ。思い付くことを全部試せばいいまで。いいでしょう、面白いじゃないですか。私のデータベースにまだ載ってない未知なる特性をもつ亜種! ああ、実に興味深いです。またとない研究材料です。この私が知らないことがまだあるなんて! どうやら私を本気にさせてしまったようですねぇ!!』
 目には目を、炎には炎を。
 今、メイヴの心に炎が燈った。怒りの炎に対するは探究心の炎。
『あっはっはっはっは!! こいつめ、これでも食らえ! これはどうだ! ならばこいつは? ふーむ、駄目か。だったら、こいつをお見舞いしてやりますよ! ああ面白い、面白いやつめ!!』
 すでに救出と避難を終えて周囲には人影はない。一般人を巻き込むことがないのをこれ幸いとしてか、メイヴは筒状の胴体から数々の重火器や光学兵器を取り出すと、これでもかというほどにぶっ放し始めた。
 破裂、炸裂、大爆裂。炎と煙が舞い、閃光と旋風が渦を巻く。
 燃え盛る銀の街並みは音を立てて崩れていく。これではもはやどちらが災害なのかもわからない。
「エラキスがいたら黙っていなかったダろうな…。おい、メイヴ! いくらなんでもやりすぎダ!」
『あっひゃっひゃ! 街がごみのようだぁ!!』
「駄目ダ、まるで聞こえてない。相変わらず暴走癖があるな、こいつは……」
 かつてメイヴの身体の中にはブラックボックスという部品が組み込まれていた。これは非常に高い演算能力を持つ未知なる漆黒の球体であり、もともとメイヴはそのブラックボックスを守るために作られた機械だった。
 ゲンダーやメイヴの生みの親、ヘイヴ博士はブラックボックスの研究者だったが、その研究の過程で、そしてブラックボックスの強大な力を悪用されることを恐れて、それを守るための外枠としてメイヴを作ったのだ。
 今ではブラックボックスはすでに取り外されて、マキナの然るべき機関で研究が行われているが、そのブラックボックスを正しく扱える者を見つけるために、メイヴはゲンダーとともに大樹大陸を旅をしたこともあった。?メイヴの高い演算能力もこのブラックボックス由来である。
 過去にメイヴはそのブラックボックスの力をうまくコントロールできずに暴走したことがあった。それが取り外された今では、手がつけられない程に暴走することはなくなったが、どうやらそれがメイヴの性格に多少の影響を与えたらしい。20数年経った今でも、いつも冷静なメイヴがときどきこうして感情を高ぶらせることがあった。
 そんなメイヴをゲンダーはいつも慣れた様子で対処してきた。もうずいぶん長い付き合いなのだ。彼以上にメイヴのことを知っている者はいない。彼以外にメイヴの相棒が務まる者はいないのだ。そして今回も――
「メイヴ、そろそろ頭を冷やす時間ダぞ」
 ゲンダーは右腕を大きく振りかぶりメイヴの頭を思い切り45度の角度で叩きつけた。古来よりおかしくなった機械を直す手っ取り早い方法といえばこれに限る。少々腕がへこんだ気がするが気にしない。
『ばるすッ! えー……少々取り乱しましたが、ネメーシスのことが少しずつわかってきましたよ』
 半ば暴走しかけながらも、その裏でデータはしっかりと取っている。さすがはメイヴ、そういう点ではやはり有能であった。
『ゲンダー。あなたの言うことは正しいようです』
「え、オレ何か言ったか?」
『ええ。「頭を冷やす」ですよ。さっき私が冷却銃を試した時のことなのですが…』
 ネメーシスはメイヴの放ったミサイルもロケットランチャーもプラズマレーザーでさえも一切回避しようとしなかった。そして実際にそれはネメーシスに直撃しても何ら効果は示さなかった。だが、そんなネメーシスがひとつだけ反応したものがあった。
「それが冷凍ビームなのか?」
『冷却銃です。……ええ。たしかに、ネメーシスはこの攻撃だけは回避しようとしていました。もちろん、私にかかれば逃げる対象に攻撃を命中させるのは容易いことですから、キンキンに冷えたのを一発お見舞いしてやりました。一瞬は凍りついて静かになりましたよ。まぁ、すぐに発火して動きだしちゃいましたがね』
「ふうん。そのアイスビームがねぇ」
『凍らせてからミサイルでもぶち込みましょうか。マザーブレインまで後少しですね! ……とまぁ冗談は置いといて、つまりネメーシスは冷気が苦手だと考えられるわけです。火は熱い、熱いものは冷やす。考えてみればごく自然な答えですよね』
「なるほど。それで頭を冷やす、か」
 デルタチームは亜種の調査のためにここまで来ている。その対処方法を見出すのも当然ながら調査の一環だ。弱点がわかってしまえば、容易に対策を立てることができる。それがグメーシス亜種から大陸を救うことに繋がるのだから。
 しかしこれで任務完了というわけではない。大局を考えるなら知っておくべきは亜種の特性や弱点だけではない。そもそもなぜグメーシスの亜種が、どうやって各地に発生しているのか。そのメカニズムがわからなければ未然に被害を防ぐことは難しい。いくら弱点がわかっても、現れた亜種を退けることしかできない。エラキスが言っていたように、原因を断たなければさらに多くの被害を出しかねないのだ。
『とはいえ、ゆっくり観察している時間はありませんからね。その時間は後で設けたいところです。つまりは、できることならあの亜種を捕獲して帰りたい。亜種についてはまだ研究する必要があります』
「なるほどな。『弱点の仮説の実証を兼ねて、凍らせてお持ち帰りしましょう』ってところダな」
『そういうことです。よく私の言いたいことがわかりましたね』
「おまえの言いそうなことダ。何度も言うが、長い付き合いダからな」
『それなら話が早い。ついでに丁寧にラッピングしてアルバール本部へのお土産にしてやりましょう』
 メイヴはこの場にいる調査団員を集めると、ネメーシス捕獲作戦について説明するのだった。


 ネメーシスは再び炎に身をまといながら、空中から憎々しそうな表情でこちらを睨みつけていた。
 一体何にそんなに怒っているのだろうか。いくら「怒」の刻印を見つめても、相手を睨み返しても、その理由はどこにも見えてこない。
「ネメっ! ネメェェェッ!」
 向こうに狙いを定めると、敵意を感じ取ったのか再びネメーシスが咆える。
「メイヴ、何か言ってるぞ。通訳通訳」
『眠ぇーですって。きっと眠いんでしょうね』
「そりゃ無理があるダろ!」
『ですね!』
 言って二人同時に攻撃を仕掛ける。
 ゲンダーは汁千本を放って敵を撹乱する。その一撃はネメーシスの身体をすり抜けてしまうので無効だが、だからといって無意味ではない。汁千本はその名のとおり、千の溶解液を放つ線ではなく面による攻撃。それに紛れ込ますようにメイヴは冷却銃を放つ。千の汁の中に凍てつく一閃が幾本か走る。
 対してネメーシスは迫りくる無数の軌跡の中から、器用に凍てつく軌跡だけをかわしてみせた。
 グメーシス類は視覚に頼り切らず、熱の寒暖を感知することで周囲の状況を把握することがわかっている。ゆえに数多くの中から冷却銃の攻撃だけを簡単に見分けることができるのだ。
『くっ、やってくれますね。しかし……甘いッ!』
 その時、ネメーシスの後方から凍てつく一撃が放たれた。虚を突かれたネメーシスはそのまま着弾し、凍りついて地上に落ちた。いくら熱が感知できるとはいえ、死角からの熱まで感知することはできない。
 動かなくなった亜種をゲンダーが確認し、そのまま視線を上げると、冷却銃を片手に得意そうな様子のイザールの姿が目に入った。
 落ちたネメーシスは恨めしそうな顔で固まっている。しかし、次の瞬間には発火し始めて凍りついた身体を溶かし始めた。このまま燃え上がってしまっては、またすぐに復活されてしまう。
「そうはいくもんか。何怒ってんのか知らないが、ちょっとは頭を冷やせ!」
 すると、ゲンダーは燃え始めたネメーシスを動けないうちに勢い良く蹴り飛ばした。空高く飛び上がったネメーシスは弧を描き、そしてそのまま真っ直ぐに、とぷんと音を立てて落ちた。視線を落ちた先へと移すと、そこには水の張られた水槽が。ネメーシスは水槽の中に沈み、水底に静かに身を横たえていた。先程までの敵意は嘘のように、ネメーシスは身じろぎひとつ見せずに水の中で固まってしまった。
 炎を身にまとって活動するネメーシスの弱点は低温。常に高温の環境に適応しているネメーシスにとっては、常温の水でも十分に冷たかった。そして水中ではもちろん発火することができない。そのため、ネメーシスは体温を奪われて動けなくなってしまったのだ。
「作戦通りだ! これで任務完了だね」
 やったと言わんばかりにイザールが指を鳴らした。
「やったわね! ……えっと、こういうときの「やった」は大丈夫なほうの「やった」よね…?」
 続いてシルマが作戦の成功を確認する。
 メイヴが立てた作戦はこうだった。
 前方からゲンダーの汁千本で撹乱しつつメイヴが冷却銃でネメーシスを狙う。しかし、これはただの囮。敵の注意を引くためのものだ。メイヴは事前にイザールに予備の冷却銃を渡していた。二人がネメーシスの気を逸らしている隙に彼が背後から狙いをつける。こうすることで、確実にネメーシスを凍結させることが期待できた。
 そしてその間に、シルマと残る団員たちは水を張った大きな水槽を準備していたのだ。いくら凍らせても発火能力を持つネメーシスなら自らの炎で身体を熱して再び動き出せる。だが、だからこそ水中に放り込まれれば何もできなくなってしまうわけだ。
『ええ。同じフラグが二回も立つことはないでしょうし、無事に捕獲も完了しました。やりましたね。これで任務完了です』
 それを聞いて二人は揃ってため息をついた。
「ふう。それは良かった。まったく、こんな好戦的なやつが相手だとはね。砂漠のエメーシスが危険だかなんだか知らないけど、これだけの人員でよくやったもんだよ。いくらなんでもこの人数差は不公平なんじゃないかと、大丈夫なのかと心配してたんだ」
「チームは数じゃなくて質ということよね。それがよくわかったわ。メイヴ様の作戦、さすがでしたわ」
「オレは? ……まぁいいけどな」
 なんとか無事、マキナでの調査任務を終えることができた。ネメーシスを捕獲して研究サンプルも手に入れたところで、飛行艇を使っての方々の消火活動に向かったエラキスたちの帰還を待って、一行はアルバールの本部へ戻ろうということになった。
 亜種との戦いの間に周囲の炎も消えて……否、メイヴが建物ごと吹き飛ばして、結果的にはこの場の火災も収まったと見て問題ないだろう。別の意味で問題があるような気はするが。
 何かあったとき、集合はチームの装甲車で。アルバールを出発する前に予めそう決めていたデルタチームはエラキスたちと合流するために、停車した装甲車のもとへと向かった。


 装甲車に乗り込み仲間の合流を待つ。
 長時間の停車ゆえか、周囲の火事による熱気のせいか、車内には熱気が群がっていた。
「ああ…。嫌ねぇ。これじゃ汗でお化粧が崩れちゃうじゃないの」
 一人、シルマが不満を口にした。
「ちょっと待っててくださる? お手入れしなくちゃ」
「ああ、かまわんぞ。どうせエラキスたちが戻ってくるまで時間もあるわけダからな」
「それじゃあ失礼して…」
 そう言って、シルマは車を降りて化粧道具片手に手鏡を覗き込む。
「……それにしても薄暗いわね。マキナの人はこれで不便じゃないのかしら」
 少し前まで明々と燃え盛っていた炎はすでに鎮火して久しい。陽は暮れつつあり、火災が原因で多くの建物が機能しなくなっているせいもあってか、周囲はずいぶんと薄暗かった。
 砂漠化が進むこのマキナ周辺では砂塵が舞うためか、空はいつも曇っていて月や星、太陽が見えないことも珍しくない。それゆえに、故障や破損などで明かりが失われてしまえば、このあたりはすぐに真っ暗になってしまうのだ。
 暗い中でシルマが難儀していると、ふいにぽっと赤い明かりが彼女の顔を照らし出した。
「あら、ありがとう。誰か知らないけど気が効くわね」
 言って顔を上げると、
「ネメェ!」
「きゃっ!?」
 パチパチと火花の弾ける音。ムンムンと伝わってくる熱気。ゴウゴウと燃え盛る炎。
 何より、目の前にあのネメーシスが一匹、メラメラと燃え盛りながら浮かんでいるではないか。
「ど、どうして! たしかに捕獲したはず…」
 すると、右手側で新たにぽっと明かりが燈った。それに呼応するかのように、ひとつ、またひとつ。装甲車を中心に円を描くように次々に周囲に火が燈り、激しく燃え盛り始めたではないか。
 周囲には幾本もの火柱が立つ。その中にはそれぞれネメーシスの姿が微かに見える。見間違いか……否、四方八方からネメーシスの鳴き声が聴こえてくる。装甲車は炎の渦の中心に囚われていた。
「新手か!?」
 慌てて仲間たちが車から飛び出してきた。
「一匹じゃなかったなんて! どうしよう。前言撤回だよ! こんな人数じゃ対処し切れないよ!」
「慌てるんじゃない! 対処法はもうわかってるんダ。たとえ数が多くても一体ずつ確実に潰していけば…」
「でもこんな逃げ場のない状況じゃ…。僕たちは機械と違って火に弱いんだ!」
 イザールの手にはメイヴから借りた冷却銃がある。しかし、その手は震えてまるで狙いが定まらない。予め水槽を用意する暇も当然なかった。炎の渦に阻まれて逃げ道もなし。こうなってはメイヴだけが頼りだ。
 しかし当のメイヴはまるで冷静で、と言っても基本的にはいつも冷静なのだが、まるでもう問題は解決したかのような楽観的な様子で、一人してアルバールの本部に帰還した後の予定を立てているではないか。
「呑気してないでなんとかしてくれ」とゲンダーが声をかけると、メイヴはこう返した。
『心配は要りませんよ、ゲンダー。あなたこそ頭を冷やしてください。おあつらえ向きに、ちょうど雨が降るところですよ』
「雨ダって?」
 どうしてそんなことがわかるのか。と、ゲンダーが空を見上げた。
 すると頭上には一機の飛行艇。そこから降って来たのは大量の水と、聞き慣れた仲間の声だった。
「Hey guys! 楽しそうにしてんじゃねーか。おまえらのエースパイロットが戻ってきてやったぜ! ほら、お土産の雨だ」
 エラキスは飛行艇をゲンダーたちの頭上に寄せると、同乗している部下に命じて上空から水を散布させた。雨は炎の渦を消し去り、さらに水に濡れたネメーシスたちを無力化した。
『さすがです、エラキス。連絡を送ったと思ったら、あっという間に来ましたね』
「俺の異名を知ってるだろ? ガーネットスターとして当然だぜ」
『期待以上のはたらきです。この活躍はデータベースに記録しておきましょう』
 実は誰よりも早くネメーシスたちに囲まれていることをメイヴは察知していた。そこで彼は事前にエラキスに応援を要請していたのだ。
「やれやれダ。そういうことなら言ってくれよな」
『サプライズですよ、サプライズ。ちょっと刺激的で楽しかったでしょう?』
「はぁ。何年経ってもやっぱりおまえには敵わないみたいダな」
 そう言いつつも、顔を見合わせて笑う。つられてか、イザールもシルマも、兵士たちも笑った。
 彼らの活躍でマキナの火災は消し止められ、その原因となっていたネメーシスの対処方法も判明した。この亜種は水を散布すれば無力化できる。それによって、マキナでの亜種問題は一応の解決を見せることとなった。
 焼け落ちたり倒壊して機能しなくなった施設も多々あったが、マキナの技術力があればすぐに元通りの都市の様相を取り戻すことだろう。その一部はメイヴが破壊していたような気もするが、それは敢えて黙っておくことにした。


 かくしてネメーシスを退けて、その捕獲にも成功したデルタチームは、改めてアルバールへと引き返して出発した。
 彼らの作戦は開始されたばかり。これはまだその最初の一歩に過ぎない。
 調査の成果の報告のため。そして次なる任務に取りかかるため。そして大樹大陸をグメーシス亜種から救い出すため。
 デルタチームは一路、アルバールへと向かう。


第二章D 了

大いなる意志3
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