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ブラックボックス9

最終更新:2016年11月05日 22:06

jelly

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第9章「Repelling(対立)」



【研究報告書】
 代表者署名:ヘイヴ・プロディズィ

 まずリュッケンの鉄鉱脈から採掘された未知の物質Xを「黒石」と呼称することとする。
 黒石は『新時代のエネルギー源となり得ることが期待される新物質』である。
 発見者は当初これを鉄鉱石だと考えていたが、実験の結果、熱しても融解せず、またあらゆる溶液に反応しないことから、鉄でないことはおろか現在の我々の知りうるあらゆる元素とも異なる物質であることが判明した。
 これが発見された場所の調査を行ったところ、その地下深くから強大なエネルギー反応が観測された。おそらく、あの場所に黒石は他にも複数埋没していると思われる。反応箇所の地層年代を測定したところ、数百年前の地層であることがわかっている。

 我々の見解はこうである。
 第一に、未知の元素で構成されていることから、これは惑星外すなわち宇宙から来たものと考えられる。
 第二に、リュッケン鉱山は盆地に位置しており、地質調査によればもともとはクレーターであった可能性が高い。
 第三に、イジェクタ層(隕石衝突の衝撃で飛散した地表成分と隕石の構成成分の混合地層)が確認された。
 以上のことから、黒石は隕石であると結論付ける。
 鉄やケイ素を含んでいないため厳密には隕石の定義より外れるが、宇宙から飛来した石のような固形物として、広義に解釈して便宜上これを隕石とみなすことにする。
 黒石とは数百年前に飛来した隕石である。

 黒石の構成成分の正体は依然として不明のままであるが、これまでの研究によって、これは無機物よりもむしろ有機物に近い性質であることがわかった。黒石の内部にはエネルギーが蓄えられていることが観測されたからだ。つまり「黒石」と呼んではいるが、成分上は「石」ではない。例えるならば石炭のようなものをイメージしてもらうと理解しやすいかもしれない。

 黒石が含有するエネルギー量を測定したところ、従来の化石燃料の数倍~十数倍のエネルギーを秘めていることが判明した。熱によって反応しないので従来の方法ではエネルギーを取り出すことはできないが、通電性がありエネルギーの移動は確認できる。なお電気を介してのエネルギー移動においては熱として失われるエネルギーが非常に多いため、燃料としての利用は難しい。
 また黒石のエネルギーは特定の精神波に反応して増減しているのが観察された。これはつまり精神がなんらかの影響を黒石に与えて、知らず知らずのうちにそのエネルギーの移動を起こしているのではないかと推測される。
 精神科学の技術を応用すれば、新たな発見があるかもしれない。
 黒石を新たなエネルギー源として活用する方法の確立を目指したい。


「……こんなところか。そこの君、報告書をいつものところに届けてくれ」
 ヘイヴは仕上げたばかりの報告書を手近な助手に押し付けると、さっそく黒石の研究に戻った。
 今日は以前から協力を要請していた精神科学の研究者が派遣されてきている。ルートヴィッヒ大統領からの許可が下りたのだ。これでようやく進展を望むことができる。
「装置の用意は整ったぞ、ヘイヴ。いつでも始められる」
 声をかけてきた初老の男の名は、ベンジャミン・スヴェン博士。マキナの機械技師だ。
 この研究所には、スヴェンを除けば、ヴェルスタンド人の科学者だけが勤務している。
 ヴェルスタンドとマキナは政治上の関係は悪かったが、科学者たちにとってそんなことはどうでもよかった。
 重要なのは研究で成果を出すことだ。誰の出身がどこであるかはその成果を左右したりはしない。
「ああ、待たせた。スヴェン、いつもすまんな」
「気にするな。わしも黒石には興味が尽きない、ただそれだけさ」
 そしてヘイヴとスヴェンは旧知の仲であり親友同士でもあった。
 黒石の研究を始めたことを知ったスヴェンは、自らヘイヴへの協力を買って出たのである。
「では始めてくれ。その装置で精神波のパターンを観測できるんだな?」
「レーダーの応用でな。精神の波紋を可視化できる」
「ふむ。では皆、集まってくれ。これが例のサンプルだ」
 助手たちを寄せ集めて懐から取り出して見せたのは容器に入った微量の黒い液体。それは水銀のような粘性と鈍い輝きを放っている。
 特定の思念が黒石になんらかの影響を及ぼすことが判明し、これまでにも様々なパターンの思念と黒石の見せる反応の関係性を調べる実験を行ってきたが、これはその過程で偶然できた液化黒石だった。
 もし黒石を液化する方法を特定できれば、石油と同様に扱うことができるかもしれない。そしてその黒液は石油の十倍以上のエネルギーを秘めている。だからどの思念が黒石を液化させたのかをヘイヴは特定したがっていた。今回の実験はそのためのもので、精神科学を専門とする研究者たちを呼び寄せたのはそのためだ。
 精神科学の研究者たちが精神波を分類方法をまず解説し、実際にそれぞれの精神波を浴びせて黒石の反応を調べる。
 もちろん精神とは目に見えないものなので、黒石が何らかの反応を見せても、それがどのパターンの思念によるものだったのかを確認することはできない。そこでスヴェンの精神波可視化装置の出番というわけだ。
 実験は思っていたよりも順調に進んだ。
 どうやら黒石は触れている者の精神が高揚することで液化を始めるらしい。黒石からのエネルギーが流こんでくるのか、液化した黒石を触れている者は一種の興奮状態になるようだ。逆に精神が沈静化すれば、黒液はそれを機敏に感じ取ったかのように、速やかに反応してまた石のようになってしまう。
「すばらしい。なんて不思議な物質なんだ! 冷却したわけでもないのに固まってしまうなんて。こんなの聞いたことないぞ。あははは、すごいぞ! これは世紀の大発見かもしれんな!」
 黒石はヘイヴの手の中でゲル状になり、まるで生きているかのように固まったり液体になったりを繰り返した。
「ほう、面白そうだな。わしにも試させてくれ」
 スヴェンがヘイヴから黒石を受け取ると、ためしに黒石に向かって強く念じてみた。
 すると見る見るうちに黒石は水飴のような粘性の高い液体へと変わった。それと同時に黒石のエネルギーの影響なのか、軽い頭痛と共に胸の奥に深く突き刺さる重だるさのような奇妙な感覚が押し寄せてきた。それはスヴェンをひどくイライラさせた。
「むぅ……な、なんだこの感じは? ちょっとこれは……わしにはきついな」
「どうした。年寄りには刺激が強すぎたか?」
 初老のスヴェンには最近になって白髪が目立つようになってきた。ヘイヴはよくそれをからかっていたが、温厚なスヴェンはいつも笑って返したものだった。
 しかし、このときのスヴェンはいつもとは違った。
「誰が年寄りだ!! おまえこそ、わしとそう年は変わらんだろう。少し若いからっていい気になるな!」
 黒石を投げつけると、突然ヘイヴの胸倉につかみかかり、凄い剣幕で怒り始めたのだ。
「スヴェン!? お、落ち着くんだ。いつもの冗談だろうに。一体どうしたんだ急に」
 こんなスヴェンの様子はこれまでに一度も見たことがなかった。
 指摘されてはっと我に返ったスヴェンは、慌ててつかみかかった手を離した。
「す、すまん……わしがどうかしてたよ。なんだったんだ、今のは? 急に頭に血が昇ったようになって…」
「ふむ……黒石の興奮作用のせいかもしれん。それか、ただの更年期障害かもな。まあ心配はいらんよ」
「だがさっきの感覚は普通じゃなかったぞ。本当にその石は大丈夫なのか。変な副作用があるんじゃないだろうな」
「そのための精神科学の先生方だ。これからそれを彼らに調べてもらう」
 黒液に触れたことによって起こる一種の興奮状態。その正体を突き止めるために、次のような実験を行った。
 研究者の一人が黒石を手にして念じる。すると黒石が活性化し液化する。その研究者は興奮状態に陥る。あらかじめ彼には脳波を測定する機械を頭に被っておいてもらい、黒液が精神に具体的にどういう現象を引き起こしているかを観察する。
 この方法でこの研究所にいる全員分のデータを取り、それぞれのデータを参照、比較して現象の実体をつかもうというものだ。
 そしてこの実験の結果、黒石は液化した際に微量に気化しており、それを吸い込むことで脳内のカテコラミンの分泌を活性化させることがわかった。
「カテコラミンとはなんだ? わしは化学のほうはさっぱりでなぁ」
「ふむ。カテコールアミンとも言うが、神経伝達物質の一種だな。ドーパミンとかノルアドレナリン、そしてアドレナリンと言われれば聞いたことがあるんじゃないか?」
「名前ぐらいはな。アドレナリンがたくさん出るから興奮するということでいいのか」
「そうだな…。ひとつずつ見ていこうか」
 ドーパミンとは意欲、モチベーションを高める作用があり、これが分泌されると精神は「快楽」を感じる。しかし、これが過剰に分泌されると思考機能が必要以上に働いてしまい、幻覚や妄想を引き起こす可能性がある。また欲求が暴走することによって、依存症状に陥ることもあり得る。
 ノルアドレナリンは危険を察知したときなどに分泌され、集中力や判断力を高めたり痛覚を遮蔽したりする、言わば身を守るために働く闘争本能である。精神への影響としては「怒り」に関連する。これが過剰に分泌されると緊張が高まって怒りやすくなり、攻撃的になったり恐怖感に囚われる可能性もある。
 アドレナリンはノルアドレナリンと似ているが、あちらが精神に作用するのに対してこちらは身体に作用する。血圧が上昇し筋肉を増強して運動能力を高めたりする作用があるが、精神へはあまり作用しない。
「つまり一言で言ってしまえば、怒りっぽくなるということだな?」
「身もフタもない言い方だが……まぁ理解できたならそれでいい。とにかく精神的に不安定になるということだ」
「それにしても幻覚に妄想、さらには依存性だと? 加えて攻撃的になる。そう聞くとずいぶん危険そうな代物に聞こえるぞ」
「あくまで極端な例の話だ。それにこれらは生物における生理現象でもある。そこまで恐れる必要はないはずだ」
「だ……だけどなぁ、ヘイヴ。さっき黒液に触れたときの感覚。あれは普通じゃなかったぞ」
 スヴェンはまださっきヘイヴに怒鳴ってしまったときのことが忘れられずにいた。
 うまく言葉で説明できないが、怒りっぽくなるとか、興奮するとか、そういう単純なものではないように感じたのだ。
 あのときの自分は、まるで自分ではなかった。そう、例えるならば、自分の精神が黒石の発するエネルギーか、あるいは得体の知れない何かに囚われて暴走……いや、操られて意に反した行動を取らされていたような気さえする。
 黒石が意思をもっていて、触れたものを操っている。というのはさすがに考えが飛躍しすぎていて、それこそ妄想と言われるかもしれないが、そう考えてもおかしくないほどに奇妙な感覚で、自分の精神に悪い影響を与えていたと思えてならなかったのだ。
「わしは不安なんだ。そもそも未知の物質なんだろう。科学的にまだ判明していない作用があって、それが原因でとんでもない事態を起こす可能性だってあるんだぞ。そもそもたかが石コロが精神に作用するというのが普通じゃないんだ。怪しい、怪しすぎる。我々はもしかしたら、本当はすごく危険なことをしているんじゃないか?」
「スヴェン……心配するのはわかるが、いくらなんでも考えすぎだ。たしかに精神に作用する石なんて聞いたことはないが、扱い方を間違えなければ大丈夫だ。原理は理解できたんだからな。これからはもう対策だって立てられる。心配はいらんさ」
「し、しかし……」
「ほら、いつまでも怖がってないで研究を続けるぞ。なんせ我々の研究には人類の未来がかかっているんだからな」
 一抹の不安を残しながらも、黒石の研究は続行された。
 たしかに以前より研究中に議論から言い争いに発展することが目に見えて増えた。だが、これは黒石の影響によるものであって一時的な作用であるし、原因はしっかりとわかっているので心配するほどのことではない。そう考えていた。
 研究は順調に進み、黒石を次世代のエネルギー資源として活用できる日ももう目前と言えるほどまでに好調だった。
 しかしスヴェンの不安は最後まで消えることはなく、事あるごとにヘイヴに対して「この研究はやめるべきだ」とまでさえ言うようになっていた。
「やはり黒石は危険だ。ヘイヴ、悪いことは言わない。今ならまだ間に合う。黒石は封印するべきだ」
「何を言うんだ! せっかくあともう少しというところまで来たんだぞ」
「君は考えたことがあるか? ルートヴィッヒ大統領はこの黒石を兵器にも搭載しようとしているんだ。黒石が精神に与える攻撃性の強化、破壊衝動は当然その兵器を扱う兵士にも及ぶ。そうなれば一体何が起こる?」
「何が言いたいんだ」
「必要以上に敵に攻撃するかもしれない。奪わなくていい命を奪うかもしれない。いや、もしかしたら暴走して同士討ちを始める可能性だって……」
「かもしれない、かもしれない。君はいつもそうだな! 可能性はあくまで可能性だ。どんなものにだってリスクは必ず存在するんだ。それじゃあ君は交通事故が怖いから車には一切乗らないというのか?」
「それとこれとでは話が違うだろう。それにいくら可能性が低かったとしてもゼロではない。万が一ってこともある。危険すぎる!」
「……スヴェン。こんなことは言いたくないが、君はもしかしたら黒石の影響で妄想に囚われているんじゃないか」
「それなら言わせてもらうが、ヘイヴ。君こそ黒石依存症に罹っているんじゃないか?」
 二人は互いに黙ったままにらみ合う。
 そんな緊張状態に耐え切れなくなったヘイヴが声を張り上げた。
「ええい、やめだやめだ! なぁ、一旦落ち着こう。お互いちょっとイライラしてるだけだ。これも黒石の影響のせいだ。君が不安に囚われるのもきっと黒石のせいだ。でもそれだけだろう? それが原因で誰かが怪我をしたわけでも死んだわけでもない。何度も言うが、扱い方さえ間違えなければ、これほど優れたエネルギー資源は他にないんだ。これは人類を新たな時代へ導く希望なんだぞ。これが皆を幸せにするんだ。そう信じて、私はこれまで頑張ってきたんだ。今更ここまできて立ち止まるわけにはいかん」
「すまなかった。でもやっぱりわしは……」
「スヴェン…!」
 親友である二人でさえ、こういった口論になることが少なくはなかった。
 そしてついにある程度の成果を出し、ヴェルスタンド軍の兵器に試験的に黒石を搭載するという話が持ち上がってきた頃にその事件は起こった。ヘイヴには決して忘れることができない深い後悔を胸に刻み込んだ、あの事件が。


「わしは何度も言ったぞ! 兵器に載せるのだけはやめておけ。こんどこそ死人が出るぞ!」
 スヴェンは黒石を危険だと言って譲らなかった。
 あくまで実験室の中で研究している分にはいい。しかし、これを外に持ち出して実際に使うのは危険すぎると。
「くどいぞ! 君は心配が過ぎるんだ。何度言ったらわかる。重要なのはリスクの大きさじゃない。正しく扱うことだ。人類は科学を生み出し、それによって飛躍的に文明を発達させてきたんだ。我々ならきっと黒石を制御できる」
 無論ヘイヴも譲らなかった。大統領からの期待を受けているし、黒石を実用化できれば人々の生活水準は目に見えて変わるはずだ。それに自分の名を歴史に残せるまたとないチャンスでもある。
「たしかに昔に比べて文明はすごい早さで進歩するようになったさ。しかし、それは人類全体を見た場合の話だ。すべての人が黒石を正しく扱えるかどうかはまた別の話だぞ」
「しつこいな。もう構ってられん! 私は報告書をまとめに行く」
 ふいとスヴェンに背中を向けてその場を立ち去ろうとするヘイヴ。
 しかし「まだ話は終わっていない」と、スヴェンはそのあとに続いて説教を続けた。
 実験室を出て通路を抜けて、研究所を出て屋外にある研究所二階の事務室への階段を昇って。
 ヘイヴはその間、ずっとあとをつけてくるスヴェンの言うことを一切聞かないようにした。
 研究所内はきっと気化した黒液が溜まっていて、それで皆ピリピリしているに違いない。だから外に出れば気分も晴れるだろう、とそう考えていた。
 ところが屋外へ出てもイライラはつのるばかりで、気持ちはまるで落ち着かなかった。
 スヴェンはなおもヘイヴを追って黒石の危険性をこれでもかと説いてくる。もう何度も聞かされて耳にタコができてしまった。
 とうとう階段の上までついてきて、それでもまだ話は終わらないようだ。
「だから黒石は絶対にやめといたほうがいい。今にとんでもないことに……」
「ええい、うるさいッ!! いい加減にしろよ!」
 気がつけば思わず突き飛ばしてしまっていた。
 もう目の前にスヴェンの姿はない。
 いやな予感がした。冷や汗がどっとあふれてくる。
 ここはどこだったか。私はどこを昇ってきたんだったか。
「大変だ! スヴェンさんが階段から落ちたぞ」
「足を滑らせたのか!?」
「誰か、早く救急車を呼んでくれ!」
 階段の下からは居合わせた者たちの驚いた声が聞こえてくる。
 しまった――と思ったときにはもう遅すぎた。
「スヴェン!!」
 大慌てで階段を駆け下りる。
 仰向けに倒れた友はぴくりとも動かない。頭からは血が出ている。
 ヘイヴは呆然と立ち尽くしていた。
 集まってきた人たちが何かを言っているが、まるで頭に入ってこない。
 目眩がする。指先にぴりぴりと痺れたような感覚がする。冷や汗は止まらない。
 やがてスヴェンは、到着した救急隊によって病院に搬送されていった。
 その後、数日間スヴェンは意識が戻らなかった。頭の打ち所が悪かったのだという。
 なんとか一命は取り留めたようだが右半身、とくに右足には後遺症として強い麻痺が残る可能性もあると医者はいう。
 不幸中の幸いか、誰もヘイヴがスヴェンを突き飛ばした瞬間は見ていなかったが、彼本人は誰か自分を突き飛ばしたのかを知っている。
 一度は見舞いに顔を出したヘイヴだったが、誰が犯人なのかを言われるのが怖かったのか、それとも合わせる顔がなかったのか、スヴェンが意識を取り戻してからは一度も行けていない。
「所長、この度はその……大変でしたね。スヴェンさんはあなたの大切なご友人だとお聞きしましたが…」
「あ、ああ。ありが、いや、す、すまない。心遣い感謝する。い、いや、人が怪我をしたのにありがとうは変か」
「大丈夫ですか、所長。顔色がよくありませんよ。少しお休みになられては…」
「いや、大丈夫だ。私は大丈夫。しかしスヴェンは……ああ…」
 後悔先に立たずとはこういうことを言うのか。こんなことなら最初からスヴェンの忠告を聞いておくべきだったのだ。
 自分なら大丈夫だと考えていた。自分に限ってそんなことはないと考えていた。
 黒石は正しく扱えば問題ないはずだった。制御できるはずだった。
 とんでもない。まったく制御なんてできていなかったのだ。
 口論の絶えなかった研究所。その時点で気付くべきだった。
 既に誰もが黒石の影響に呑まれてしまっていたというのに。
 ヘイヴは後悔と強い反省の念を覚えた。そしてようやく決意した。
「スヴェンの言うとおりだった。黒石は危険すぎる。副作用が大きすぎる。とても我々の手に負えるような代物ではなかったのだ。せっかくここまで研究を進めてくれた諸君には申し訳ないし、私としてもここで諦めるのはとても惜しい。しかし、黒石は得られるものの価値以上に危険性が高いと判断した」
 そしてヘイヴは宣言した。
「この研究は放棄する。黒石は非常に危険な物質だと結論付ける。黒石は封印することにする」
 反対の声も上がったが、ヘイヴの決意は固く、断固として聞き入れるつもりはなかった。
 とりわけ強く反対したのはルートヴィッヒ大統領だった。
「中止だと。認めんぞ! 忘れたのか。どれほどの人間がこの研究に期待を寄せていたと思っているのだ。いったいどれだけこの研究に出資したと思っている。おまえたち科学者はいつもわかっていない。ただで研究ができるのではないのだぞ。費やしてきた多額の税金がすべて無駄だったと知ったら国民はどう思うだろうな。それに黒石が実戦配備されればフィーティンとの戦争にだって勝てるんだぞ。その石は多大な利益を我が国にもたらすのだ。ゴールはもう目の前ではないか。それなのに中止だと! 許さんぞ! これは命令だ。すぐに研究に戻れ!!」
 しかし誰に何を言われても考えを変えるつもりはなかった。
 たしかに以前のヘイヴであれば大統領と同じことを考えただろう。だが黒石の危険性を痛いほど味わった今となっては、スヴェンの言っていたことがよく理解できる。
 黒石は近くにいる者の心を惑わす。精神を暴走させる。攻撃性、破壊衝動を生み出す。
 これが戦争に使われれば、スヴェンがずっと警告していたように、大変なことになる。
「人類には早すぎる代物だ。私にはとても制御できず、結果として彼に取り返しのつかないことをしてしまった。彼に合わせる顔がない。黒石は封印するべきだろう。私の研究もここまでだ」
 深夜、誰もいない研究所でヘイヴは人知れず黒石に関する資料を、サンプルとして置かれていた黒石も含めてすべて持ち出し、研究所内にデータとして残るものはすべて破棄した。
 あの大統領のことだ。ヘイヴが手を引いてもすぐに代わりの者を連れてきて研究の続きをやらせるだろう。
 そんなことはさせない。
 黒石は危険だ。封印しなければならない。
 研究資料もすべて封印する。もしまた新たに黒石が発掘されても、もう誰にも研究をさせるわけにはいかない。
(だから私はこの大陸を去ることに決めた。スヴェンに何も言わずに行くのだけが心残りだが、資料を隠し通すためには仕方がない)
 夜が明ける前にヘイヴは誰に知られることもなく大樹大陸を発った。
 ここからずっと東のほうに、今は人が住んでいない島があると聞いたことがある。
 そこなら誰にも邪魔されることはないはず。そこへ行こう。
 考えるのだ。黒石を封印する方法を。
 そしてヘイヴは姿を消した。
 このことが知れ渡るのは夜が明けてからだ。


第9章 了

ブラックボックス10
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