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  • 魔法戦争16

魔法戦争16

最終更新:2017年07月04日 03:05

jelly

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Chapter16「氷竜の国ニヴルヘイム」



「まったく。あやうく死ぬところじゃったぞ! 見境のない小娘め……」

 セッテの炎とアクエリアスの力によって、ようやく氷の中から解放されたクルスは、深いため息をついた。
 あたり一面はまだ凍ったままで、ヴァルトも依然として冷凍保存中だ。

「こいつはどうする?」

 とアクエリアスが聞くと、放っておけとクルスは答えた。

「こやつ、風の魔法は空気を操るようなものだからオレ様は窒息しない~とか豪語しておったからの。そこまで自信があるなら、捨て置いても死にはせんだろう」
「えっ? 氷の中って空気も凍ったりはしないんすかね」
「細かいことは気にするな。それよりこの小娘は一体誰なんじゃ」

 聞かれてアクエリアスは、再び「かの大国ニヴルヘイムの~」と大げさな名乗り口上を始めた。とくに何度も聞かされていることになる蒼い剣士は、少しうんざりしたような顔をしていたが、彼とフレイ以外はまだ互いの名を知らなかったので、ここで改めてそれぞれが自己紹介をすることになった。

 まずはそのままアクエリアスから。ニヴルヘイムの王女であることをやけに強調しながら、本人としては威厳たっぷりのつもりで故郷の自慢をこれでもかと交えて名乗り上げる。
 同じく王族であるフレイを目の前にして、しかもあくまでクエリアは第二王女であるのだが、恥を知ることのないこの幼い竜姫はやりきった思いで満足そうに自己紹介を終えた。
 続いて苦笑しながらフレイが手短に名乗る。

「よ、よろしくね、アクエリアス王女。僕はユミル国の王子のフレイだ。訳あって国を離れて旅をしている」

 フレイの言葉を皮切りにオットーとセッテ、そしてクルスも順に名を名乗った。

「それにしても、これまたちっこいのが出てきたもんっすねぇ。これはクルスといい勝負だ。ほら、おちびちゃん。アメちゃんやるっすよ」
「むむっ。おい、赤いの。さては貴様わたしを馬鹿にしてるだろ!」
「だってどう見たっておちびちゃんじゃないっすかぁ」

 クルスと初対面のときと同じ調子で、セッテはこのおちびちゃんをからかった。
 人の姿に化けたクルスの見た目は10才程度の少女だが、対してアクエリアスはそれよりもさらに幼く見える。幼女といっても過言ではない姿でやけに威張った話し方をするものだから、セッテにはそれが滑稽に思えてならなかったのだ。

「無礼者め! これでもわたしは貴様より遥かに長く生きているのだぞ。ニンゲン風情が調子にのるなっ!」
「おっ。なんか誰かさんにも同じようなこと言われた覚えがあるっす、ねぇ?」

 ちらりとクルスのほうを見ると、不満そうな顔でセッテをにらみ返している。

「そんな小娘といっしょにするな。そやつはまだガキじゃ」
「わたしがガキだと~!? これでもわたしはもう二百年以上生きているんだぞ」
「たったの二百年ではないか。私の半分も生きておらんことになるのう。偉そうなクチを叩くなら、せめて千年は生きてからにすることじゃな」
「ふーんだ。長生きしてればエライってわけじゃないもんね。その点わたしは王女様なんだから、実際にエライんだもんね~。どうだ、まいったか!」
「ほれ、すぐ調子に乗る。やっぱりガキじゃないか」
「ぬぬぬぅ~。う、うるさいぞババア!」
「バッ……!? お、お主、言ってはならぬことを言ってしまったようじゃのぅ」

 二人の竜の少女が火花を散らし、今にも殺し合いを始めそうな空気に王子は慌てふためき、緑と蒼が呆れてため息をつく隣で、赤は腹をかかえて大笑いした。

「そういえば、あなたの名前をまだ聞いていませんでしたね」

 ようやく場が落ち着いたところで、フレイは蒼い剣士に尋ねた。

「ああ、俺か。さっきも言ったが俺は傭兵をやってる。金次第でどんな荒事でもやってみせるぜ。人は俺のことを蒼き勇者と呼ぶ」
「いや。あの、名前……」
「不可能を可能にする男、双剣の覇者、それから蛇と呼ばれることもあったかな。だが俺は勇者の響きが一番気に入っている」

 再度名を問おうとしたフレイの言葉を遮って、勇者は最後まで言い切った。誰もが訝しげな表情をしていたが、クルスだけが真剣な面持ちで勇者に問う。

「己の名を知らぬと言うことか。さぞ数奇な生を歩んできたと見える」
「なに、自分を生かす力もそばにいる奴を死なせない力も持ってる。悪い人生じゃなかったぜ。当然、これからもな」

 飄々(ひょうひょう)と答える彼の雰囲気に重くなった空気がゆるむ。暗闇を照らし、周囲を明るくする彼の人柄ゆえに人は彼を勇者と呼ぶのだろう。

「しかし名前がないと不便なのでは?」

 そう問いかけるフレイの疑問に対しては、

「人は俺を勇者と呼ぶ。呼び名があれば、名前はなくてもなんとかなるもんさ。そろそろ俺の方から勇者と名乗ってやろうかと思ってるぐらいだぜ」

 イタズラでもするかのように楽しそうな表情で答えた。

「とは言ってものう。蒼の勇者ゆうしゃでは決まりが悪かろう。もしよかったら、私が名付け親となってやっても良いぞ」
「待て! それならわたしが名前を考える!」

 目を輝かせてアクエリアスが手を挙げた。偉そうな態度こそ取っているが、こういうところは素直で子どもらしい。

「まあいいが、変な名前だけは付けてくれるなよ、お嬢ちゃん」
「お嬢ちゃんと呼ぶなと言っただろ! いいから少し待ってろ」

 そう言って少し考え込むと、すぐに閃いた様子で再び元気に手を挙げる。

「そうだ、これがいい! 偉大なる水竜アクエリアス様の忠実なるしも――」
「却下」
「むっ…………じゃあフリード。フリードというのはどうだ? 遥か昔、数々の劣勢を覆したといわれる戦場の英雄の名だぞ。書庫にあった本で読んだ」

 この案にはクルスも太鼓判を押した。

「その名なら私も聞いたことがある。数々の伝説にその名は出てくるが、地竜族に伝わる話で言えば、我らが長老様のひとりフェギオン様が若かりし頃に世話になった人間の名もフリードだったとか」
「へぇ、伝説の英雄か。うれしいこと言ってくれるじゃないの。悪くない。ならばこれからはフリードと名乗ることにしよう」

 蒼き勇者改めフリードはまんざらでもない様子で、それを見ているアクエリアスもまた、やや照れた様子で満足していた。

「名前をやるのは助けてくれたお礼で、それ以上でもそれ以下でもないからな! これからお前のことをフリードと呼ぶから、お前もわたしのことは愛称のクエリアで呼べ。いいか、これはすごく名誉なことなんだぞ。感謝しろ」
「ああ、わかったぜ。ありがとうな、クエリアお嬢ちゃん」
「だーかーらー……お譲ちゃんって呼ぶなーっ!!」




 しばらくフリードとクエリアがじゃれ合ってから落ち着いた後、凍り付いた魔導船グリンブルスティを指してクエリアが言った。

「さてと。それじゃあ、そろそろ出発だぞ。わたしは故郷のニヴルヘイムに帰らなければならない。船の氷を溶かしてやるから、ニヴルに向かえ」

 もとよりフレイたちはニヴルヘイムに向かうつもりではいた。ムスペルスで火竜の協力を得られなかったため、次に頼るべきはニヴルヘイムの氷竜だ。
 ニヴルヘイムでは現在鎖国政策が行われており、同胞以外の者が近づくと攻撃されるという噂が流れている。噂の真偽はともかく鎖国中なのは事実であり、どうやって入れてもらうかという答えはまだ出ていなかった。

「しかしニヴルの王女だと言い張るクエリア殿がいるなら、その心配もないと見てよいかと。では王子、次の目的地は変わりなくニヴルでよろしいですね?」
「そうだな。フリードが言ってた依頼主がいるというアルヴという場所も気になるけど、幼い子を無闇に連れまわすわけにもいかない。まずはクエリアを家に帰してあげなくちゃね。ニヴルの女王に謁見するいい理由にもなるし」
「いや、二人ともちょっと待つっすよ! セッちゃんはどうするっすか。ひどい怪我をしてるし、置いて行くわけにもいかないっすよ」
「それもそうだな……」

 今、セルシウスは船の隣で静かに寝息を立てている。
 一度はヴァルトの突風に邪魔をされたが、再びセッテとクルスが力を合わせることで応急処置は施した。とは言え、ちゃんとした治療を行ったわけではなく、仲間が二人増えたところで誰も回復の魔法が使えない事実にも変わりはなかった。

 まだ意識を取り戻していないのでこのまま放っていくわけにもいかないが、火竜の巨体を乗せられるほど船は大きくない。仮に乗せられたとしても、ニヴルの氷竜とムスペの火竜は仲が悪いので、このまま連れて行くわけにもいかない。
 案の定、事情を知らないクエリアはそんなやつ放っておけと騒いでいる。

「やめるんだ、クエリア。セルシウスはセッテの親友で……」

 騒ぐ子どもをたしなめようとするフレイをそっと制して、セッテは決心した。

「いいんすよ。おれのわがままでフレイ様の目的を邪魔しちゃいけないっす」
「わがままだなんて、僕はそんな」
「だから決めました。おれ、ここに残ってセッちゃんを看てるっすよ。おれの火で少しはセッちゃんに元気を分けられる。だから目を覚ますまで、そばにいてやろうと思うんすよ」

 そこまで言うなら、とフレイは首を縦に振った。
 こんどは代わってオットーが問う。

「しかしおまえ一人で大丈夫なのか、セッテ」
「大丈夫っすよ、兄貴。セッちゃんが元気になったら、乗せてもらってすぐに追いつくっすから!」

 彼一人をここに残していくことはオットーもフレイも心配だったが、セッテの決意に満ちたその目を見て彼を信じることにした。
 こうしてセッテとセルシウスをこの場に残すことになり、それぞれ出発の準備を終えると、クエリア先導のもと船が浮上を開始した。

「それじゃあ、こんどこそニヴルヘイムへしゅっぱーつ! わたしの故郷へ行くのだから、ここからはわたしが船長だぞ。クエリア船長にけいれーい!」
「何を言うか。これは私の船じゃぞ。それにこの船を動かしているのも私だ。だから船長は私に決まっておる。ほれお主ら、クルス船長に敬礼せぬか」
「ちがうちがうちっがーう! クエリア船長! わたしが船長をやる!!」
「ならぬ! これだけは譲れんぞ。私が船長だ。お主らもそう思うだろう?」

 船が進み始めるや否や、二人の竜の少女はどちらがリーダーかをめぐって言い争いを始めた。そんな様子を見て、フリードは肩をすくめた。

「うん。正直言うとな、ぶっちゃけどうでもいい」




 そうして賑やかな様子で北のほうへと舵を取ると、進むにつれて空が暗くなっていき、次第に雪がちらつくようになった。ニヴルヘイムに近づいている証拠だ。

 氷竜の国、ニヴルヘイムは雪と氷の国。
 ムスペルスは巨大な雲塊の中に火山の大陸が納まっていたが、こちらは巨大な島雲の上にこれまた巨大な氷の塊が載っている。大地があるムスペルスとは違い、ニヴルヘイムの国土はこの大氷塊そのものだ。

 氷とは言っても表面は起伏が激しく、山もあれば谷もあり、氷の裂け目には溶けた氷の一部が溜まって泉のようになっているところもある。そしてそれはムスペルスの国土に負けず劣らずの広さを持っている。少なくとも竜の棲む国だけあって、ユミルの国土の数倍は大きい。

 また氷の上だけではなく、氷山の一角が如く雲に埋もれた地下部分にも氷竜たちの領域は存在する。氷を削ったりくり抜いたりした広大な地下空間が大氷塊の中に広がっており、その最下層にニヴル城がある。エリューズニルと呼ばれる氷でできた彫刻のような城だ。
 地下空間は夜になると、ここだけに棲む光虫を使ったランプで照らされて幻想的に輝き、ライトアップされた氷の城はこの世のどんな物よりも美しいという。
 そんなニヴルヘイムの様子を、クエリアは自慢げに語ってみせた。

「ニヴルは世界一美しい国なんだぞ。そんな国に暮らす氷竜や水竜はもちろん世界一美しいのだ。つまり、わたしは世界一美しいってことだ」
「つまりお譲ちゃんの国には世界一美しいやつが何人もいるのか。変な話だな」
「う、うるさいな! 細かいことを気にするんじゃない。禿げるぞ!」
「ご忠告感謝します、王女さま。でも俺の家系は代々白髪になる遺伝子でなぁ」

 クエリアが口を開けばフリードが茶々を入れ、フリードが何か言うたびにクエリアがむきになって言い返す。端からみても、この二人はやけに仲が良いらしい。

 しばらく進むとニヴルヘイムの衛兵なのであろう氷竜が集まってきて、船を取り囲んだ。氷竜たちはニヴルヘイムが鎖国中であることを述べて、引き返さなければ容赦なく排除すると警告したが、船の上にクエリアの姿を確認するとすぐに目の色を変えた。幼女の姿に化けていても、どうやら気配や雰囲気からそれがただの幼女ではなく、自分たちの王女だということが氷竜たちにはわかったらしい。

 王女アクエリアス姫が行方不明になっていたことは、当然ながらニヴルヘイムの国中に知れ渡っていることであり、その王女と同行していることで最初はクエリアをさらった犯人だと誤解されそうになった。
 氷竜たちは攻撃的な態度でもって迫ってくる。そこでクエリアが一歩前に出ると事情を説明し始めた。

「待て。こいつらは敵ではない。わたしの新しい家来だ」
「だから俺は家来になったつもりはないと何度言えば……」
「フリードは黙ってろ。ええとそれで、わたしはあの日はフヴェルゲルミルの泉のあたりを散歩していたのだが、見慣れない黒い竜を見かけたので声をかけてみようと近寄ったら眩しい光を浴びたんだ。そのとき光の向こうに人陰を見た気がする。そこで意識を失って、気がついたらこの男に捕まっていたというわけだ」
「お、おいおい! よけいに誤解されそうなことを言うんじゃないぜ。俺は拉致られてたお譲ちゃんを助けに行ってやったんだからな」
「わたしは嘘は言ってないからな(さっきの仕返しだもんね!)」
「いやぁー、このとおりすごくお元気でして。ほんとアクエリアス姫様がご無事でよかったですよー。あははは……(だからって今はないだろ!)」

 そんなクエリアとフリードの様子を見て、衛兵たちは態度を改めた。
 王女を救ってくれたことに対して感謝の意を述べると、鎖国中ではあるが特別にと入国することを認めてくれた。
 氷の城で女王が再会を待ちわびているということで、すぐにでも城へ赴いてほしいと氷竜のうちの一頭が案内をしてくれることになった。

 幼いとはいえ、クエリアはニヴルヘイムの王族には違いないのだ。その心をつかんでいるフリードの存在は、これからの交渉に役立つかもしれないとフレイは期待していた。

――だが、その期待はすぐに裏切られることになる。

「妾(わらわ)の娘を見つけ出し、無事に連れ帰ってきてくれたことには感謝する。もちろん謝礼はさせてもらうつもりであるぞ。だがこれとそれとは別の話。そう簡単な話ではないのだ、ヒトの子よ」

 クエリアを氷城エリューズニルへと送り届けると、フレイは一人で女王の間に来るようにと呼ばれた。氷の女王ヘルと謁見し、フレイはユミル国の現状と事情を話した後に、トロウを止めるために氷竜の力を貸して欲しいと女王に嘆願した。

 だが、氷の女王は首を縦に振らなかった。
 この国が現在鎖国中なのはもう何度も聞いた話だが、その理由は外部との接触を一切絶つことで国を護るためなのだという。

「知ってのとおり、ユミルの戦争の噂といい、ムスペの火竜王の動向といい、今の空は不穏な空気に包まれている。そのトロウとかいう男のせいだという事情はわかった。だがそうであるなら、なおさら我々氷竜は警戒を強めなければならない」

 つまり自分の国を護るので精一杯で、手を貸すような余裕はない。協力することはできないと、交渉の余地もなくきっぱりと断られてしまった。

 肩を落としてフレイは女王の間を後にした。
 結局、火竜の協力も氷竜の助けも得ることはできなかった。今までやってきたことは無駄だったのか。すべて無駄足だったというのか。
 城内の氷の階段に腰を落として、フレイは頭を抱え込んでしまった。

(僕にはこの程度のこともできないのか。所詮、僕の力というのはこんなものだというのか。たった一人の魔道士も退けられない。たったひとつの協力さえも得られない。自分の国すら護れなくて何が王子だ! ああ、くそう。みんなに合わせる顔がない……)

 フレイはため息をついた。
 それは深く深く、ニヴルヘイムの氷のように冷たかった。

 そんなフレイの肩に後ろから手をそえる者がひとり。
 振り返るとクルスの顔がそこにあった。今は少女の姿になっているので、座り込んでいるフレイとちょうど同じ高さに目線がある。

「そう気を落とすでない。お主はお主なりによくやっておる」
「でも火竜も氷竜も説得できなかった。クルスもせっかくここまで着いてきてくれたっていうのに、何も成果が出せなくてすまない。とんだ無駄足につきあわせてしまったね……」

 落ち込むフレイの顔をじっと覗きこみながら、クルスはやれやれと首を振った。

「何も成果がない? 無駄だったと? 何を言っておる。たしかにムスペもニヴルも味方にはつかなかったが、トロウのことは伝えられた。誤解されたまま攻め込まれるような心配はこれでなくなったじゃろう」
「それはそうだ。だけどもしトロウが侵攻を開始したら? ユミル側から手を出せば、当然相手は自衛のために迎え撃ってくる。そうなれば戦争は免れない」
「ならば、そうならないようにすればいいだけのことじゃ」
「そのためにムスペやニヴルの協力が必要だったんだ! 悔しいけど、僕の実力ではトロウには敵わない。トロウを止められないんだ」

 漆黒の魔道士トロウはまるで人間離れした強大な魔力を持つ。一度相対して、その力の差は理解している。自分の力じゃ勝てないのは痛感しているのだ。
 己の無力さを思って、フレイはただ悔し涙を流すのだった。

「お主は愚かじゃな」

 そんなフレイを励ますでもなく、突然クルスが言った。
 フレイはただうつむいたままで、静かに頷いた。

「そうだな。僕は愚かだ。国を背負うはずの王族として、まるで駄目で……」
「いや、そうではない。フレイよ、お主はなぜそうやって一人で背負い込もうとする。王族だからか? 王族ならなんでも一人でできるとでも思っておるのか?」
「僕はユミルの王子だ。父上がまともな状態でない今、国の問題の責任は僕が負わなければならないんだ」

 眉間にしわを寄せながら、フレイは暗い表情をしている。
 そんな様子を見て、クルスは呆れたような声を出した。

「はぁ。愚かというか、お主は馬鹿じゃな。馬鹿真面目じゃ」

 言ってクルスはちらりとフレイの顔に目をやる。
 フレイが黙っているので、そのまま続けた。

「なんでも一人でできる奴などおらん。人間であっても、竜であろうともな。たかだか一人の力なんて、神でもないのだから限界がある。そもそも親がいて初めて自分が生まれるのだから、私たちは一人じゃ誕生することもできんぞ。だから私たちは協力し合うというわけじゃな」
「…………わかってる。だからこそ僕はムスペやニヴルの協力を得るために……」
「いや、わかっておらんな。協力というのは力を合わせるということ。言い換えれば、相手の力を頼るということじゃ。お主はそれがわかっておらん」

 クルスは両手でフレイの頬をはさんで無理やり自分のほうを向かせると、フレイの目の奥を覗き込みながら厳しい口調で言った。

「もっと仲間を頼れ! なぜお主は一人で背負おうとする。なぜ一人で悩む。旅を共にしている私たちはただの飾りか? それに私だって竜だ。地竜ジオクルス様じゃぞ。ムスペやニヴルの竜じゃなくて私では不満かの?」
「…………!」

 返事はない。フレイは言葉に詰まっている。
 しかし、はっとして目を見開き、その瞳の奥に光が戻ったのをクルスは見逃さなかった。
 もう大丈夫だ。そう確信して、こんどは優しく声をかける。

「もっと仲間のことを信用しろ。それも主君の大事な仕事のひとつじゃぞ」

 そしてそのままフレイの首の後ろへと両手をまわして、そっと抱き寄せる。
 フレイは何も言わずに再び涙を流したが、それはもう悔しさの涙ではなかった。


Chapter16 END

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