第十五章「Delirium」
(執筆:日替わりゼリー)
ゲンダーたちが辛くも力の間を突破したその頃、ガイストはヴェルスタンドのとある地下施設にいた。彼は周囲を気にしながら、暗いその部屋で壁に設置された端末を操作していた。静寂の地下室に端末の操作音だけが響く。
「このままでは終われない…。これは僕が犯した罪だ。ゲンダーたちを必要以上に巻き込んではいけない…。償うのは僕だ、この命に代えても…!」
焦りからくる手の震えに抗いながら、ガイストは端末にあるコードを入力していく。
「よし、これで起動コードは入力完了だな。あとは…」
その時、地下室の闇を切り裂いて鋭い光が差し込んできた。光は真っ直ぐにガイストを照らしている。
「貴様、そこで何をしている!?」
光の向こうに誰かいるようだが、逆光で姿は見えない。しかし、ガイストはそれがすぐにヴェルスタンドの兵士だとわかった。
「しまった……ッ!」
相手は一人ではなかった。すぐに兵士たちが流れ込んできてガイストを羽交い絞めにする。
「ガイスト博士…だな?捜したぞ、この裏切り者め!おい、すぐに連れて行け!!」
ガイストを押さえつけていた兵士が命令すると、他の兵士たちが彼をどこかへ力づくで連れ去ろうとする。ただの科学者でしかないガイストには、兵士相手に成す術もなかった。
「くそ、こんなところで…!せめて、ゲンダーたちがあれに気づいてくれれば…ッ」
そしてガイストはどこかへ連行されていった。幸いにも兵士たちは端末が操作されていることには気がつかなかった。
「このままでは終われない…。これは僕が犯した罪だ。ゲンダーたちを必要以上に巻き込んではいけない…。償うのは僕だ、この命に代えても…!」
焦りからくる手の震えに抗いながら、ガイストは端末にあるコードを入力していく。
「よし、これで起動コードは入力完了だな。あとは…」
その時、地下室の闇を切り裂いて鋭い光が差し込んできた。光は真っ直ぐにガイストを照らしている。
「貴様、そこで何をしている!?」
光の向こうに誰かいるようだが、逆光で姿は見えない。しかし、ガイストはそれがすぐにヴェルスタンドの兵士だとわかった。
「しまった……ッ!」
相手は一人ではなかった。すぐに兵士たちが流れ込んできてガイストを羽交い絞めにする。
「ガイスト博士…だな?捜したぞ、この裏切り者め!おい、すぐに連れて行け!!」
ガイストを押さえつけていた兵士が命令すると、他の兵士たちが彼をどこかへ力づくで連れ去ろうとする。ただの科学者でしかないガイストには、兵士相手に成す術もなかった。
「くそ、こんなところで…!せめて、ゲンダーたちがあれに気づいてくれれば…ッ」
そしてガイストはどこかへ連行されていった。幸いにも兵士たちは端末が操作されていることには気がつかなかった。
「さて、こんどは何の部屋ダ?」
ゲンダーたちは力の間の次の部屋にいた。壁のプレートには部屋の名が記されている。
『どうやらここは精神の間…のようですね。一見、何もない部屋に見えます。もしかしたら、外界より時間の流れが遅いとか、重力が10倍であるとかするのでしょうか。だとすれば、私たちはここで修業をすべきなのかもしれませんね』
「それは精神と時の部屋ダ。別にオレは、オレより強いやつに会いに行くつもりなんかないぞ」
『まったくノリが悪いですね。まぁ、いいでしょう』
部屋は一面、真っ白な壁に覆われていて、それ以外には何もなかった。先へ進むべき扉のようなものさえも見当たらなかった。
「出口がないぞ!知恵の間はなぞなぞ、力の間は動く壁…。こんどはどんな謎を解けばいいんダ?」
ゲンダーはメイヴに問いかけた…はずだったが、いつの間にかそこにはメイヴの姿はなかった。
「メイヴ…?どこにいったんダ!そういえば、グメーシスの姿も見当たらない」
動く壁によって退路は塞がれてしまっているので、まさに閉じ込められたといえる状態だった。メイヴがゲンダーをからかって隠れているとも考えられない。文字通り突然消えてしまったのである。
「どういうことダ…。これがこの部屋の謎なのか。オレ一人でなんとかしなくちゃならないのか?」
しかし、ゲンダーの問いかけに答える者は誰もいなかった。
ゲンダーたちは力の間の次の部屋にいた。壁のプレートには部屋の名が記されている。
『どうやらここは精神の間…のようですね。一見、何もない部屋に見えます。もしかしたら、外界より時間の流れが遅いとか、重力が10倍であるとかするのでしょうか。だとすれば、私たちはここで修業をすべきなのかもしれませんね』
「それは精神と時の部屋ダ。別にオレは、オレより強いやつに会いに行くつもりなんかないぞ」
『まったくノリが悪いですね。まぁ、いいでしょう』
部屋は一面、真っ白な壁に覆われていて、それ以外には何もなかった。先へ進むべき扉のようなものさえも見当たらなかった。
「出口がないぞ!知恵の間はなぞなぞ、力の間は動く壁…。こんどはどんな謎を解けばいいんダ?」
ゲンダーはメイヴに問いかけた…はずだったが、いつの間にかそこにはメイヴの姿はなかった。
「メイヴ…?どこにいったんダ!そういえば、グメーシスの姿も見当たらない」
動く壁によって退路は塞がれてしまっているので、まさに閉じ込められたといえる状態だった。メイヴがゲンダーをからかって隠れているとも考えられない。文字通り突然消えてしまったのである。
「どういうことダ…。これがこの部屋の謎なのか。オレ一人でなんとかしなくちゃならないのか?」
しかし、ゲンダーの問いかけに答える者は誰もいなかった。
どこかに隠し扉でもあるのかと部屋の壁という壁を調べてみたが、何も発見はなかった。
気がつくと部屋の中には白い霧が充満している。こんどは何が起こるというのだろうか。
「……ダー…」
ふと、誰かの声が聞こえたような気がした。
「…?」
聞き覚えのある声だ。
「ゲ…ダー…。ゲンダー…」
声は明らかにオレの名前を呼んでいる。
「誰ダ?メイヴ…は違うよな。どこにいるんダ?」
そいつは霧の向こうからゆっくりと姿を現した。
「ゲンダー…。私の声が聞こえているはずだ。聞こえていたら返事をしてみてくれ、キョクゲンダー」
それは、なんとヘイヴだった。
「ヘイヴ…!?コールドスリープに入ったんじゃなかったのか!どうしてここへ!?」
突然、目の前に現れたヘイヴ。わかっている。ヘイヴはたしかにオレの目の前でコールドスリープに入った。ここにヘイヴがいるはずがない、そう理解している…つもりだった。
だが理性とは裏腹にオレの感情は昂っている。怪しいとわかっていながらも、つい自分で自分を抑えられなくなり、ヘイヴに駆け寄ってしまう。胸が熱くなる。これは、嬉しさ…?
ヘイヴはしかしゲンダーの質問には答えず、視線はゲンダーから外したまま話し始めた。
「キョクゲンダー。今日の研究を始めるぞ、昨日の続きからだ。すぐに準備してくれ」
ヘイヴはどこか虚ろな様子だった。
「何を言ってるんダ、ヘイヴ?昨日って、ヘイヴはコールドスリープ状態で眠っていたんじゃないのか」
ヘイヴに触れようとすると、その姿は霧の中に溶け込んでしまった。
「キョクゲンダー。おまえに頼みがある。もちろん、聞いてくれるな?」
ヘイヴはいつの間にか、少し離れた場所に移動していた。不思議に思いながらも、ヘイヴに問いかけてみる。
「ああ、ヘイヴの頼みなら当然ダガ…。それより、ここは何なんダ?」
しかし、ヘイヴはこちらの声など聞こえていないかのように話を続けた。
「すぐにここを離れろ。緊急脱出用のシャトルミサイルがあることは知っているな?それを使うといい。まずは機械都市マキナに向かうといいだろう」
ヘイヴはわけのわからないことを言っている。
「一体、どうしてしまったんダ、ヘイヴ!?ここにもシャトルがあるのか?オレたちマキナにはもう行ってきたんだ!それより、メイヴはどこへ行ってしまったんダ!?」
「私の研究を渡すわけにはいかな、いか、い、イカナ…イ」
「ヘ、ヘイヴ…!?」
オレは様子のおかしいヘイヴに困惑していた。嬉しさは途端に不安へと変わる。
「私はこの時代に生まれたことを悔やむ。悔やむぞ、悔やむ悔やむくやむくくくやむや悔やむやクやムクヤムクヤムムクヤムくヤ…む。私はァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
叫びながらヘイヴの姿は崩れてなくなってしまった。背筋に冷たいものを感じる…。驚いて振り向くと、目の前すぐ近くにヘイヴの姿があった。
「うわっ…!?」
「キョクゲンダー!おまえ…まさか感情がある…のか?いや、まさか。あり得ん。そんなことはあり得ん…!」
あれほど会いたかったヘイヴの姿が目の前にあるというのに、もはやオレは恐怖しか感じられなかった。
「キョクゲンダー…」
「おい、キョクゲンダー」
「こっちだ、キョクゲンダー」
気がつくと、周囲にはいくつものヘイヴの姿がある。オレは囲まれていた。
「あり得ない…」
「アリエナイ…」
「フツウジャナイ…」
「ナゼダ、リカイデキナイ…」
ヘイヴたちは口々に言う。
「セツメイガツカナイ。アリエナイ…」
「オマエハフツウジャナイ」
「ワカラナイワカラナイ。ワカラ…ワワカカララナナイイ。。。ナイ」
ヘイヴたちがオレを否定する。
やはり、ヘイヴはオレが感情を持っていることがどうしても解明できずにコールドスリープで未来の技術に託すことにしたのだろうか。オレの存在がヘイヴを苦しませてしまっていたのだろうか。
「や、やめてくれ…。オレにだってわからないんダ!オレだって悩んでるんダ!オレは…オレは…っ!!」
「キョク…ゲ……ン…ダー…。オ、マ、エ、ハ…」
「や、やめろ!聞きたくない…!!」
気がつくと部屋の中には白い霧が充満している。こんどは何が起こるというのだろうか。
「……ダー…」
ふと、誰かの声が聞こえたような気がした。
「…?」
聞き覚えのある声だ。
「ゲ…ダー…。ゲンダー…」
声は明らかにオレの名前を呼んでいる。
「誰ダ?メイヴ…は違うよな。どこにいるんダ?」
そいつは霧の向こうからゆっくりと姿を現した。
「ゲンダー…。私の声が聞こえているはずだ。聞こえていたら返事をしてみてくれ、キョクゲンダー」
それは、なんとヘイヴだった。
「ヘイヴ…!?コールドスリープに入ったんじゃなかったのか!どうしてここへ!?」
突然、目の前に現れたヘイヴ。わかっている。ヘイヴはたしかにオレの目の前でコールドスリープに入った。ここにヘイヴがいるはずがない、そう理解している…つもりだった。
だが理性とは裏腹にオレの感情は昂っている。怪しいとわかっていながらも、つい自分で自分を抑えられなくなり、ヘイヴに駆け寄ってしまう。胸が熱くなる。これは、嬉しさ…?
ヘイヴはしかしゲンダーの質問には答えず、視線はゲンダーから外したまま話し始めた。
「キョクゲンダー。今日の研究を始めるぞ、昨日の続きからだ。すぐに準備してくれ」
ヘイヴはどこか虚ろな様子だった。
「何を言ってるんダ、ヘイヴ?昨日って、ヘイヴはコールドスリープ状態で眠っていたんじゃないのか」
ヘイヴに触れようとすると、その姿は霧の中に溶け込んでしまった。
「キョクゲンダー。おまえに頼みがある。もちろん、聞いてくれるな?」
ヘイヴはいつの間にか、少し離れた場所に移動していた。不思議に思いながらも、ヘイヴに問いかけてみる。
「ああ、ヘイヴの頼みなら当然ダガ…。それより、ここは何なんダ?」
しかし、ヘイヴはこちらの声など聞こえていないかのように話を続けた。
「すぐにここを離れろ。緊急脱出用のシャトルミサイルがあることは知っているな?それを使うといい。まずは機械都市マキナに向かうといいだろう」
ヘイヴはわけのわからないことを言っている。
「一体、どうしてしまったんダ、ヘイヴ!?ここにもシャトルがあるのか?オレたちマキナにはもう行ってきたんだ!それより、メイヴはどこへ行ってしまったんダ!?」
「私の研究を渡すわけにはいかな、いか、い、イカナ…イ」
「ヘ、ヘイヴ…!?」
オレは様子のおかしいヘイヴに困惑していた。嬉しさは途端に不安へと変わる。
「私はこの時代に生まれたことを悔やむ。悔やむぞ、悔やむ悔やむくやむくくくやむや悔やむやクやムクヤムクヤムムクヤムくヤ…む。私はァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
叫びながらヘイヴの姿は崩れてなくなってしまった。背筋に冷たいものを感じる…。驚いて振り向くと、目の前すぐ近くにヘイヴの姿があった。
「うわっ…!?」
「キョクゲンダー!おまえ…まさか感情がある…のか?いや、まさか。あり得ん。そんなことはあり得ん…!」
あれほど会いたかったヘイヴの姿が目の前にあるというのに、もはやオレは恐怖しか感じられなかった。
「キョクゲンダー…」
「おい、キョクゲンダー」
「こっちだ、キョクゲンダー」
気がつくと、周囲にはいくつものヘイヴの姿がある。オレは囲まれていた。
「あり得ない…」
「アリエナイ…」
「フツウジャナイ…」
「ナゼダ、リカイデキナイ…」
ヘイヴたちは口々に言う。
「セツメイガツカナイ。アリエナイ…」
「オマエハフツウジャナイ」
「ワカラナイワカラナイ。ワカラ…ワワカカララナナイイ。。。ナイ」
ヘイヴたちがオレを否定する。
やはり、ヘイヴはオレが感情を持っていることがどうしても解明できずにコールドスリープで未来の技術に託すことにしたのだろうか。オレの存在がヘイヴを苦しませてしまっていたのだろうか。
「や、やめてくれ…。オレにだってわからないんダ!オレだって悩んでるんダ!オレは…オレは…っ!!」
「キョク…ゲ……ン…ダー…。オ、マ、エ、ハ…」
「や、やめろ!聞きたくない…!!」
「駄作だ」
ヘイヴは冷たく言い放った。すると、他のヘイヴたちもそれに続く。
「駄作だ。駄作だ。駄作駄作駄作ダサク。駄作だだ。駄駄さクダさクダ作駄作駄作駄作ダ駄作駄作駄作サ駄作駄作駄作ク駄作駄作だダサ駄作さくサクさクク駄作クさククククククククククククククク…」
「駄作だ。駄作だ。駄作駄作駄作ダサク。駄作だだ。駄駄さクダさクダ作駄作駄作駄作ダ駄作駄作駄作サ駄作駄作駄作ク駄作駄作だダサ駄作さくサクさクク駄作クさククククククククククククククク…」

「も、もう…やめてくれぇぇぇぇえええええええ!!」
思いがけず、複数のヘイヴに向かって汁千本を乱射していた。汁千本を受けたヘイヴは次々に溶けていく。
「ナゼダ…キョクゲンダー…」
「ワタシ…ノ……タイ…セツ…ナ、キョ…クゲ」
「ワタシノコエガキコエテイ…イル…イルイル。イル。。。イイイル」
ヘイヴたちは跡形もなく消えてなくなった。
「な、なん…ダ。これは…」
とても嫌な気分だった。まるで、胸を槍で貫き抉られたような気分だ。なんだか目眩がする…。
思いがけず、複数のヘイヴに向かって汁千本を乱射していた。汁千本を受けたヘイヴは次々に溶けていく。
「ナゼダ…キョクゲンダー…」
「ワタシ…ノ……タイ…セツ…ナ、キョ…クゲ」
「ワタシノコエガキコエテイ…イル…イルイル。イル。。。イイイル」
ヘイヴたちは跡形もなく消えてなくなった。
「な、なん…ダ。これは…」
とても嫌な気分だった。まるで、胸を槍で貫き抉られたような気分だ。なんだか目眩がする…。
そしてオレはそのまま意識を失ってしまったようだった。どれぐらい時間が経ったのかはわからなかったが、気がつくとすぐそばにはメイヴがいた。
「メイヴ…?よかった…。どこいってたんダ…。大丈夫か?」
『それはこちらの台詞です、ゲンダー。こんなところで倒れているなんてどうしたのですか』
どうやらメイヴはいつも通りのようだ。よかった…、と安心したのも束の間、再びオレは異変に襲われた。
たしかオレは精神の間にいたはずだ。しかし、そこは精神の間ではなく、ガイストクッペルの6番ラボの地下施設だった。
「どうしてこんなところに…」
嫌な予感がした。そして、その予感は思い描いた通りに的中した。
『あちらを!』
メイヴの示す先を見ると一段と濃い紫の霧があった。見覚えのある光景だ。
『ゲンダー、どうやら中央の機械が発生源のようです』
「やめろ、メイヴ!それに触っちゃだめダ!」
『アクセスしてみなければわかりません』
「だめなんダ!その機械が原因でおまえは大変な目にあうんダ!!」
しかしメイヴは話をまったく聞こうともしないで、機械にアクセスする。
『何とかなります。さすがに中枢に比べればザルですね。地下では地上とは別のネットワークが構成されているようですが、この機械内の情報に限れば抜き放題ですよ』
いつものように複数のウィンドウを開き、データを写し取っていく。データを垣間見ると、見覚えのある情報が表示されている。霧の特性、精神体の特性、地下の地図もあった。データに目を通していると、メイヴからの言葉を表示するウインドウが消えてしまっていた。
「ああ、やっぱり…」
顔を上げてメイヴの方を見ると、メイヴの目や体が発光している。データのやり取りを示す文字の表示はさらに速度を増し、もはや目で追うのは困難になった。
オレは以前にメイヴが暴走したときのことを思い出して、左腕を大きく振りかぶって、メイヴの側頭部に叩きつける。激しい音が響き、メイヴの体が横倒しになる。左手が少しへこんだ気がするが、気にしている場合ではない。
しかし、メイヴの暴走はこれで治まるものではなかった。
『痛いですね、ゲンダー』
『父さんにもぶたれたことないのに』
『敵の襲撃を確認、直ちに防衛態勢に入ります』
『破壊セヨ、破壊セヨ』
メイヴの発光はさらに激しくなり、こんどはメイヴの言葉を表示するウィンドウが数えきれないほどの勢いで大量に現れ始めた。
『敵を殲滅セヨ』
「なんてこった、メイヴまでおかしくなっちまったのか!オレは敵じゃない、ゲンダーだ!おまえの味方ダ!!」
メイヴはアームを格納させると、なんと砲台に変形し始めた。
『拡散波動砲エネルギー充填』
メイヴの発光は収まり、その光は一点に集めれてゆく。
『エネルギー充填120%』
メイヴが砲台に変化したことも驚いたが、それどころではない。
『電影クロスゲージ明度20…』
オレの直感が警鐘を鳴らしている。
『標的ロックオン完了』
これはすぐに逃げなければ危ない…!そう思ったときにはすでに遅かった。
『波動砲発射!!』
「!!」
「メイヴ…?よかった…。どこいってたんダ…。大丈夫か?」
『それはこちらの台詞です、ゲンダー。こんなところで倒れているなんてどうしたのですか』
どうやらメイヴはいつも通りのようだ。よかった…、と安心したのも束の間、再びオレは異変に襲われた。
たしかオレは精神の間にいたはずだ。しかし、そこは精神の間ではなく、ガイストクッペルの6番ラボの地下施設だった。
「どうしてこんなところに…」
嫌な予感がした。そして、その予感は思い描いた通りに的中した。
『あちらを!』
メイヴの示す先を見ると一段と濃い紫の霧があった。見覚えのある光景だ。
『ゲンダー、どうやら中央の機械が発生源のようです』
「やめろ、メイヴ!それに触っちゃだめダ!」
『アクセスしてみなければわかりません』
「だめなんダ!その機械が原因でおまえは大変な目にあうんダ!!」
しかしメイヴは話をまったく聞こうともしないで、機械にアクセスする。
『何とかなります。さすがに中枢に比べればザルですね。地下では地上とは別のネットワークが構成されているようですが、この機械内の情報に限れば抜き放題ですよ』
いつものように複数のウィンドウを開き、データを写し取っていく。データを垣間見ると、見覚えのある情報が表示されている。霧の特性、精神体の特性、地下の地図もあった。データに目を通していると、メイヴからの言葉を表示するウインドウが消えてしまっていた。
「ああ、やっぱり…」
顔を上げてメイヴの方を見ると、メイヴの目や体が発光している。データのやり取りを示す文字の表示はさらに速度を増し、もはや目で追うのは困難になった。
オレは以前にメイヴが暴走したときのことを思い出して、左腕を大きく振りかぶって、メイヴの側頭部に叩きつける。激しい音が響き、メイヴの体が横倒しになる。左手が少しへこんだ気がするが、気にしている場合ではない。
しかし、メイヴの暴走はこれで治まるものではなかった。
『痛いですね、ゲンダー』
『父さんにもぶたれたことないのに』
『敵の襲撃を確認、直ちに防衛態勢に入ります』
『破壊セヨ、破壊セヨ』
メイヴの発光はさらに激しくなり、こんどはメイヴの言葉を表示するウィンドウが数えきれないほどの勢いで大量に現れ始めた。
『敵を殲滅セヨ』
「なんてこった、メイヴまでおかしくなっちまったのか!オレは敵じゃない、ゲンダーだ!おまえの味方ダ!!」
メイヴはアームを格納させると、なんと砲台に変形し始めた。
『拡散波動砲エネルギー充填』
メイヴの発光は収まり、その光は一点に集めれてゆく。
『エネルギー充填120%』
メイヴが砲台に変化したことも驚いたが、それどころではない。
『電影クロスゲージ明度20…』
オレの直感が警鐘を鳴らしている。
『標的ロックオン完了』
これはすぐに逃げなければ危ない…!そう思ったときにはすでに遅かった。
『波動砲発射!!』
「!!」
高濃度のエネルギー派がゲンダーに迫る。
もうおしまいか、まさかメイヴにやられることになるとは、などと思いつつ、走馬灯のように今までの旅を思い巡らせていると突如、空間に裂け目が現れ、そこからグメーシスが飛び出してきた。
「グメメェェェエエエエエッ!!」
グメーシスが果敢にゲンダーと波動砲の間に立ち塞がる。波動砲は粉に変化して消えた。
「た、助かった…のか?」
ゲンダーは力が抜けたようで動けなかった。
グメーシスはゲンダーに構うことなく空間を飛びまわる。グメーシスが飛びまわった後からは次々に粉が生成され、空間の裂け目がどんどん広がってゆく。暴走したメイヴは姿を消していた。
空間の裂け目はさらに広がり、ついには崩壊してガラスのように崩れ落ちた。
崩壊した空間の外はもとの精神の間だった。
『ゲンダー!正気に戻ったのですね!』
目の前にウィンドウが現れた。
「う、うわっ!?」
驚いて後ずさるゲンダー。
『どうしたんですか、ゲンダー。…余程、恐ろしい目に遭ったのですね。かわいそうに』
「メイヴ!?おまえ、暴走したはずじゃ…」
『それは、むしろゲンダーのほうですね』
メイヴの近くには破壊された何かの機械があった。
精神の間に充満していた霧はこの機械から発せられたもので、この霧は包まれた者の不安や恐怖心を煽り幻覚を見せるというものだった。
これもヴェルスタンドの精神兵器の一種であり、感情を持ち合わせていないメイヴや、同じく精神体であるグメーシスには効果を表さなかったが、感情を持つゲンダーはまんまと、この罠に嵌ってしまっていたのだった。
『ずいぶんうなされていたようで、どうしたものかと困りました。グメーシスが霧を浄化して、隠されていたこの機械を見つけてくれなければ解決はもっと遅れていたことでしょう。大変な思いをさせてしまって申し訳ありません』
改めて部屋を見ると上の階へと続く階段があった。おそらく、この階段もエスカレータになっているのだろう。
霧を発生させていた機械もこの階段も、どうやら霧の幻覚の効果で隠されていたらしい。
幻覚の効かないメイヴは充満した霧でこれらを見つけることが出来なかったが、グメーシスがなんとかこれを発見したというわけだ。
「では、オレがおかしくなっていたのか…」
『そういうことになります。もう大丈夫ですね?』
「ああ、大丈夫だ。オレは正気に戻った!」
『…その台詞は裏切りフラグですよ、ゲンダー。出口でクリスタルを奪って逃げないでくださいね』
「グメェ~」
ゲンダーの回復を待って、一行はさらに先を目指すことにした。
「ところでメイヴ、おまえは波動砲は撃てないのか?」
『なんですか、いきなり。あれは私自身にも負担が大きいので、そう易々とお見せすることはできません』
「撃てるのか…」
メイヴは『ロマンですから!』と言い切った。
もうおしまいか、まさかメイヴにやられることになるとは、などと思いつつ、走馬灯のように今までの旅を思い巡らせていると突如、空間に裂け目が現れ、そこからグメーシスが飛び出してきた。
「グメメェェェエエエエエッ!!」
グメーシスが果敢にゲンダーと波動砲の間に立ち塞がる。波動砲は粉に変化して消えた。
「た、助かった…のか?」
ゲンダーは力が抜けたようで動けなかった。
グメーシスはゲンダーに構うことなく空間を飛びまわる。グメーシスが飛びまわった後からは次々に粉が生成され、空間の裂け目がどんどん広がってゆく。暴走したメイヴは姿を消していた。
空間の裂け目はさらに広がり、ついには崩壊してガラスのように崩れ落ちた。
崩壊した空間の外はもとの精神の間だった。
『ゲンダー!正気に戻ったのですね!』
目の前にウィンドウが現れた。
「う、うわっ!?」
驚いて後ずさるゲンダー。
『どうしたんですか、ゲンダー。…余程、恐ろしい目に遭ったのですね。かわいそうに』
「メイヴ!?おまえ、暴走したはずじゃ…」
『それは、むしろゲンダーのほうですね』
メイヴの近くには破壊された何かの機械があった。
精神の間に充満していた霧はこの機械から発せられたもので、この霧は包まれた者の不安や恐怖心を煽り幻覚を見せるというものだった。
これもヴェルスタンドの精神兵器の一種であり、感情を持ち合わせていないメイヴや、同じく精神体であるグメーシスには効果を表さなかったが、感情を持つゲンダーはまんまと、この罠に嵌ってしまっていたのだった。
『ずいぶんうなされていたようで、どうしたものかと困りました。グメーシスが霧を浄化して、隠されていたこの機械を見つけてくれなければ解決はもっと遅れていたことでしょう。大変な思いをさせてしまって申し訳ありません』
改めて部屋を見ると上の階へと続く階段があった。おそらく、この階段もエスカレータになっているのだろう。
霧を発生させていた機械もこの階段も、どうやら霧の幻覚の効果で隠されていたらしい。
幻覚の効かないメイヴは充満した霧でこれらを見つけることが出来なかったが、グメーシスがなんとかこれを発見したというわけだ。
「では、オレがおかしくなっていたのか…」
『そういうことになります。もう大丈夫ですね?』
「ああ、大丈夫だ。オレは正気に戻った!」
『…その台詞は裏切りフラグですよ、ゲンダー。出口でクリスタルを奪って逃げないでくださいね』
「グメェ~」
ゲンダーの回復を待って、一行はさらに先を目指すことにした。
「ところでメイヴ、おまえは波動砲は撃てないのか?」
『なんですか、いきなり。あれは私自身にも負担が大きいので、そう易々とお見せすることはできません』
「撃てるのか…」
メイヴは『ロマンですから!』と言い切った。
「大統領、見つけました!」
将軍と思しき兵士が敬礼して、大統領室へ姿を現す。続けて連れられてきたのはガイストだ。ガイストは後ろ手に拘束されている。
「うむ。御苦労」
将軍の向かいの椅子に深く腰を下ろしているのはヴェルスタンドの大統領だった。
「大統領…。私は許さない…!よくも故郷を…」
「ふん…。よくも言えたものだな、ガイスト君。君は我が国のために研究をしてくれていたのだろう。それが、何を未練たらしく故郷…だ。笑わせるな、裏切り者め」
大統領は怨めしくガイストを睨んだ。一緒に睨まれた将軍は震え上がっている。
「貴様、ガイストクッペルを捨てて逃げるときに、関連ドームのすべての施設を停止しおったな…!おかげで材料となる精神体が不足して、マキナへの攻撃が再開できないではないか!私にはカガクはわからん。すぐに施設を再開させろ!!」
「断る…と言ったら、どうするつもりですか?」
「すぐにでも貴様を処刑してやろう」
しかしガイストは表情ひとつ変えずに言い返した。
「私の家族も友人も故郷も何もかも、あなたの兵器に奪われた。私にはもう何も失うものなどない。もう何も恐いものなどない!死など恐れるに足りない!!」
「く…ッ。ならば、力づくでも言うことを聞かせてやる…。こいつを拷問にかけろ!殺さぬ程度に甚振ってやるのだ!!」
「はッ」
将軍はガイストを部屋から引きずり出そうとした。
去り際にガイストは不敵に呟いた。
「そうしていられるのも今のうちだ、大統領。きっと、あの二人ならやってくれる。頼んだぞ、ゲンダー、メイヴ…」
そしてガイストは扉の向こうに消えた。
将軍と思しき兵士が敬礼して、大統領室へ姿を現す。続けて連れられてきたのはガイストだ。ガイストは後ろ手に拘束されている。
「うむ。御苦労」
将軍の向かいの椅子に深く腰を下ろしているのはヴェルスタンドの大統領だった。
「大統領…。私は許さない…!よくも故郷を…」
「ふん…。よくも言えたものだな、ガイスト君。君は我が国のために研究をしてくれていたのだろう。それが、何を未練たらしく故郷…だ。笑わせるな、裏切り者め」
大統領は怨めしくガイストを睨んだ。一緒に睨まれた将軍は震え上がっている。
「貴様、ガイストクッペルを捨てて逃げるときに、関連ドームのすべての施設を停止しおったな…!おかげで材料となる精神体が不足して、マキナへの攻撃が再開できないではないか!私にはカガクはわからん。すぐに施設を再開させろ!!」
「断る…と言ったら、どうするつもりですか?」
「すぐにでも貴様を処刑してやろう」
しかしガイストは表情ひとつ変えずに言い返した。
「私の家族も友人も故郷も何もかも、あなたの兵器に奪われた。私にはもう何も失うものなどない。もう何も恐いものなどない!死など恐れるに足りない!!」
「く…ッ。ならば、力づくでも言うことを聞かせてやる…。こいつを拷問にかけろ!殺さぬ程度に甚振ってやるのだ!!」
「はッ」
将軍はガイストを部屋から引きずり出そうとした。
去り際にガイストは不敵に呟いた。
「そうしていられるのも今のうちだ、大統領。きっと、あの二人ならやってくれる。頼んだぞ、ゲンダー、メイヴ…」
そしてガイストは扉の向こうに消えた。
ゲンダーは何とも言えない胸騒ぎを感じていた。
『どうしたのですか、ゲンダー。まだ具合でも悪いのですか?』
「いや…。なんだか嫌な予感がしたんダ。先を急ごう!」
『どうしたのですか、ゲンダー。まだ具合でも悪いのですか?』
「いや…。なんだか嫌な予感がしたんダ。先を急ごう!」
Chapter15 END
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