くそ…何が起こったってんだ…?
此処は、あの村ですらないみてえだが…
あのファニー・ヴァレンタインとかいう『化物野郎』が、女を見せしめに…
そして…この場にいる全員で殺し合いをしろ、と…
馬鹿げている…何がどうなってやがるって言うんだ…
何が目的だって言うんだ…?
とにかく、俺達は…会場に送り込まれた。

そして…会場を彷徨った俺が見つけたのは、あの化物共…
この殺し合い、どうやら化物も混ざり込んでいるようだ…
クソ、やっぱり此処に来ても奴らがいるのか…
相手が化物ならば…俺はこの猟銃で…殺す。
化物共ならば…殺す。

殺す。
殺す。
殺す。

―――殺してやる。




彼は、哀れにも気付いていなかった。

この場に彼の言う『化物』は存在していないと言うことに。

彼が見つけた『化物』とは、紛れもない『人間』であるということに。

自らが、既に『堕ちている』ということに。


――――化物は、彼自身であると言うことに。


志村晃。


羽根屍人と化した老齢の猟師が、銃を構える。



◆◆◆◆◆◆






(―――何だ…ヤツは?)


3-E地点の雛見沢村。
山奥の寒村である、典型的な日本の田舎町であるこの場所。
畑に覆われた細い道路にて、一人の軍服姿の男が右手を前に突き出していた。
何度も響き渡る発砲音。それは軍服の男―――『エウゲニー・ボリソヴィッチ・ヴォルギン』大佐を狙って放たれるものだ。
その右腕からはバチバチと音が響いており、電撃を纏っている。
強烈な破裂音と感電音が小刻みに同時に響き、弾丸が弾き落とされていく。
ヴォルギン大佐は全身に一千万ボルトの電流を流すことが可能な特異体質の持ち主。
その電流を右腕に収束させ、雷の盾の如く放たれてきた弾丸を防いでいたのだ。
いかなる弾丸であろうと、この高圧電流による防御ならばどんな一撃も通すことはない。
弾丸を防ぎつつ、ヴォルギンは目を細めて自身を襲う襲撃者の姿を確認する。

―――それはまさに『化物』と呼ぶに相応しい襲撃者であることに、彼は気付いていた。

その背中からは羽根を生やし、昆虫の如し頭部を持っている。
昆虫人間とでも呼ぶべき外見だ。その両手には猟銃を携え、低空を飛行しながらこちらに向けて構えている。
襲撃者の異様な姿に、残虐で名高いヴォルギンも嫌悪感を覚える。
あのような姿をした生物が実在するだと?
奴は本物の化物なのか?それとも…人為的に生み出された生物兵器か何かなのか?
疑問は尽きない。未知の敵を前に内心焦りも抱く。
だが、容赦なく発砲を繰り返す『化物』を前に怯むことはない。
決して隙を見せるつもりなどなかった。


「フン、どちらにせよ―――敵であるのなら、殺すまでよ」


強烈な轟音のような電撃音と共に、ヴォルギンはその全身に電撃を身に纏う。
サンダーボルトの異名を取る強力な電撃体質の持ち主である彼が力を発揮する。
まともな理性も自我も持たぬであろう化物を前に、遅れを取るつもりなどない。
そして、電流を纏った両手が前に突き出される。

目の前の軍人の行動に気付き――猟銃を構えていた『化物』は、本能的に危険を感じた。
先ほどから様子がおかしいことには気付いていた。
こちらが放つ弾丸が一発も当たらない。いや、全て防がれている。
奴は何かが違う。何かがおかしい。相当に危険だ―――と。
そんな相手が、攻撃態勢を取り始めたのだ。警戒を感じずにはいられない―――!






「―――墜ちろッ!!」


―――そして、一千万ボルトの電撃が稲妻の如く『化物』目掛け放たれる!
携える猟銃に引き寄せられるように電撃の軌道が曲がる。
回避を行おうとするも、雷のスピードに間に合うわけがない。
猟銃ごと電撃に直撃した『化物』は、激しく感電し焼け焦がされながら地面へと叩き墜ちる―――
まるで蝿のように道路に落下し、畑で転がるように倒れていた。
ヴォルギンは、『化物』が倒れたことを確認し…両腕を下ろす。
そのまま腕に電流を纏わせながら、畑に足を踏み入れ『化物』にゆっくりと歩み寄った…


「…どんな化物かと思えば、この程度か?」


痙攣を繰り返しながらまるで胎児のような体勢で倒れている『化物』を見下ろし、ヴォルギンは呟く。
殺し合いの会場に送り込まれ、名簿を確認していた際にこの化物の襲撃を受けた。
突然の奇襲による射撃であったが、幸い回避が間に合い左肩の掠り傷程度の負傷で済んだ。
その後は奴の弾丸を電撃でいなし…この結果だ。
近くで見下ろしてみれば…この化物、最初の場で殺された女の化物にどことなく似ている。
あのファニー・ヴァレンタインとかいう男は『赤い水を接種し、不死身になった』等と言っていたが…
こいつも、不死身の化物だというのか?にしては随分と呆気無い。
そもそも『接種すると不死身になる赤い水』などが本当に存在するのか?
あの主催者共がハッタリを噛ましている可能性だって大いにある。
そんなオカルトめいた物が存在するとも思えない。だが…目の前のコイツは、正真正銘の化物であること。
それだけは確かだ。昆虫のような翼で飛行していたのは事実なのだ――――









その直後のこと。


ヴォルギンが、咄嗟に後方へと下がる。


そして間髪入れず――――無数の剣が、何処からともなく飛んできた。


矢の如く飛んできた剣は畑の地に、倒れ込んでいた『化物』の身に突き刺さる。


ヴォルギンは回避をした直後、すぐさま剣が飛んできた方向を見た――


「―――今度は、何だ…!?」

また、襲撃者か…!
今のは何だ…!?まるで『剣の刃が直接放たれた』ように見えたのだ。
それも一発ではなく、複数。銃弾なんかじゃない、紛れもない『刃』だ。
まるで複数の刃をほぼ同時に投擲したかのような攻撃―――!
ヴォルギンが、睨むように鋭い視線を向ける先にいたのは――――







 ――――起動 起動 起動 起動――――



 ――――対象を認識




近代的な装甲を身に纏った、白髪の少女だった。
翼のような刃を背中に漂わせ、機械のような冷たい口調でぼそぼそと言葉を発している。
まるで感情が一切無いかのようにも見える。
ヴォルギンは、目の前に現れた少女を驚愕した様子で見据える。




「小娘、だと…?」

そう、『襲撃者』と思わしき者は十代の齢にしか見えぬ少女だったのだ。
その手に剣を握り締めているわけでもない。いや、背中から翼のような刃を携えている。
だが、彼女もまた―――人間とはまた別の、おぞましき何かであることは理解出来た。
それは本能が察知したような感覚。
目の前の少女に対する警戒心が、ヴォルギンの中で渦巻いていたのだ―――!


少女の周囲に、複数の剣が精製される。
そして―――紅いモノアイが、ヴォルギンの姿を捉えた。





「対象の殲滅を開始します」





彼女の名は「ニュー・サーティーン」。
次元干渉用接触素体の第十三番目素体。
「災厄の引き金」。蒼の、黒き獣の片割れ。
目の前の軍人の排除を―――開始した。


◆◆◆◆◆◆



ラグナ、どこ?

ニューね、独りぼっちになっちゃったんだよ。

あの女が邪魔してさ、窯に一人で堕ちちゃったんだよ。

ラグナってば、あの女と逃げちゃったんだもんね。

でもね、ニューはずっとラグナのこと忘れなかったよ。

だから此処に来ることが出来たんだよね?

だからまたラグナと合える時が来たんだよね?

すっごく嬉しいんだ。

また、ラグナと殺し合える。

また、ラグナを感じることが出来る。

また、ラグナと解け合える。



ねえ、ラグナ。


今度こそ、一緒になろう。


もう誰にも邪魔されないように。


邪魔な奴らは、みーんな片付けてさ。


そして。


―――ひとつになって、何もかも壊しちゃおう?





【3-E 雛見沢村/1日目/深夜】

【エウゲニー・ボリソヴィッチ・ヴォルギン@METAL GEAR SOLID3】
[状態]:疲労(小)、左肩に掠り傷
[装備]:なし
[道具]:ランダム支給品(1~3)、基本支給品一式
[思考・状況]
基本行動方針:とにかく生き残る。最終的に主催者を抹殺する。
1:目の前の少女(ν-No.13-)を殺す。
2:首輪の解除及びこの会場から脱出する為の方法を捜す。手段は選ばない。
3:ザ・ボス、オセロットと合流。スネークは見つけ次第殺す。
4:死んだはずのジ・エンド、ソコロフの名に疑問。
5:あの化物は一体何なのか?赤い水とは何なのか?
※参戦時期はグロズニィグラードの格納庫でスネークと一騎打ちをする直前です。
※制限の度合いは不明です。

【志村晃@SIREN】
[状態]:羽根屍人、感電による全身火傷(中)、胴体に大きな刺傷(出血多量)、シェル化
[装備]:22年式村田銃(2/8)@SIREN
[道具]:予備弾薬(16発)基本支給品一式
[思考・状況]
基本行動方針:化物を殺す。
※参戦時期は海還りによって羽根屍人化した直後です。
※屍人化しており、人間が化物の姿に見えています。心臓完全破壊、もしくは首輪爆破によって死亡します。
※シェル化状態の為、傷が少しずつ治癒しています。シェル化中は余程の攻撃でなければ受け付けなくなります。
 また、シェル化状態は数分程度で終了し復活します。

ν-No.13-BLAZBLUE
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:ランダム支給品(1~3)、基本支給品一式
[思考・状況]
基本行動方針:ラグナと一つになる。
1:ラグナ―――どこにいるの?
2:ラグナ以外の『敵』は全て殲滅する。
※参戦時期はカラミティトリガーのトゥルーエンド、ノエルの介入によって単独で釜に落ちた直後です。
※制限の度合いは不明です。


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最終更新:2015年01月14日 19:24