拝啓、桜舞い散るこの日に ◆3nT5BAosPA
若殿ミクニが目を覚ました時、彼の視界を埋め尽くしていたのは、ぼんやりとした暗闇であった。
次第に目が慣れてくる……その時になってようやく、彼は自分が木々に囲まれた森に寝転がっていることに気が付いた。自由気ままに伸びた枝葉によって、空から降り注ぐ日光が遮られているのかと思ったが、木漏れ日すらもないことから、どうやら現在時刻は深夜らしい。
次第に目が慣れてくる……その時になってようやく、彼は自分が木々に囲まれた森に寝転がっていることに気が付いた。自由気ままに伸びた枝葉によって、空から降り注ぐ日光が遮られているのかと思ったが、木漏れ日すらもないことから、どうやら現在時刻は深夜らしい。
──ここは、どこだ……?
上半身を起こし、地べたに座った姿勢で思考する。どうして自分はこんな場所にいるのかを。
ミクニは月を舞台にした、真実の愛を求める大規模な実験『ラブデスター』に参加させられていた筈だ。
ミクニは月を舞台にした、真実の愛を求める大規模な実験『ラブデスター』に参加させられていた筈だ。
──じゃあ、ここも試験都市の一部なのか?
あるいは、他の試験都市に転送させられたのではないか? とある経緯から空間転送をしたことがあるミクニは、その経験からそんなことを考えた。
しかし、それならおかしい。
まずミクニに転送された瞬間の記憶はない。目覚める前で一番新しい記憶は、足元から何か得体の知れない暗闇に引きずり込まれたかのような、気味の悪い感覚だけだ。
それに、もしこれがラブデスター試験官のファウストたちによるものであれば、転送する前、あるいはミクニが目覚めた後に、なんらかのアナウンスが入る筈である。だが、それもない。どころか、周囲に誰かがいる気配すら感じられない。
つまるところ、ここが何処なのかも、自分が何故ここに居るのかも不明。分からないことづくしなのである。
しかし、それならおかしい。
まずミクニに転送された瞬間の記憶はない。目覚める前で一番新しい記憶は、足元から何か得体の知れない暗闇に引きずり込まれたかのような、気味の悪い感覚だけだ。
それに、もしこれがラブデスター試験官のファウストたちによるものであれば、転送する前、あるいはミクニが目覚めた後に、なんらかのアナウンスが入る筈である。だが、それもない。どころか、周囲に誰かがいる気配すら感じられない。
つまるところ、ここが何処なのかも、自分が何故ここに居るのかも不明。分からないことづくしなのである。
「あ゛ァ~ッ! ここでウジウジ考えてもしょうがねえッ! とりあえず森を出るぜッッ」
ミクニは起き上がるべく、手を地面に着けようとした。が、彼の手に触れたのは、ひんやりと冷たい地面ではなく、小さなリュックであった。
「ん? なんだこりゃ……」
己の手に伝わった異物感を確認すべく、目を向ける──その時だった。 ミクニの目が驚愕の色に染められたのは。
「! なッ……ないッ!?」
リュックに触れた手に──左手首にあるはずの装置が、ない。
装置。それは、ラブデスターという実験を最悪のデスゲームたらしめている要素の一つである──実験内で男女が告白する際に、互いの腕に装着された装置をくっつける。こうすることで、装置は彼らが相思相愛であるかを判定するのだ。
それだけなら巷のジョークグッズにありそうな相性測定器である。
しかし、違う。
ラブデスターにおける、この装置の機能は、それだけではない。
装置によって告白が成立したカップルはゲームクリアとなり、実験からの帰還ができる。だが、不成立となった場合、告白した側は、その場で『爆死(クラッシュ)』することになるのだ。 どころか、別に告白が不成立にならずとも、試験官の裁量次第でいつでも『爆死(クラッシュ)』を起こすことができるのである。めちゃくちゃだ。
そういうわけで、ラブデスター被験者にとって、腕に着けられた装置は、死の象徴に等しかった。
それが外れているなど、到底信じられないことである。
もし外すことが可能ならば、とっくにしていたはずだ。ミクニが知る者の中には、生きながら装置を外すのに成功した人物がひとりいたが、それも片腕を失うという多大なる犠牲を払って為されたことである。とてもではないが、五体満足の状態で外せるような代物ではない。
絶対に外れるはずがない装置が消えている──そんな異常事態を目にして、平静でいられるほど、ミクニのメンタルは図太くなかった。
装置。それは、ラブデスターという実験を最悪のデスゲームたらしめている要素の一つである──実験内で男女が告白する際に、互いの腕に装着された装置をくっつける。こうすることで、装置は彼らが相思相愛であるかを判定するのだ。
それだけなら巷のジョークグッズにありそうな相性測定器である。
しかし、違う。
ラブデスターにおける、この装置の機能は、それだけではない。
装置によって告白が成立したカップルはゲームクリアとなり、実験からの帰還ができる。だが、不成立となった場合、告白した側は、その場で『爆死(クラッシュ)』することになるのだ。 どころか、別に告白が不成立にならずとも、試験官の裁量次第でいつでも『爆死(クラッシュ)』を起こすことができるのである。めちゃくちゃだ。
そういうわけで、ラブデスター被験者にとって、腕に着けられた装置は、死の象徴に等しかった。
それが外れているなど、到底信じられないことである。
もし外すことが可能ならば、とっくにしていたはずだ。ミクニが知る者の中には、生きながら装置を外すのに成功した人物がひとりいたが、それも片腕を失うという多大なる犠牲を払って為されたことである。とてもではないが、五体満足の状態で外せるような代物ではない。
絶対に外れるはずがない装置が消えている──そんな異常事態を目にして、平静でいられるほど、ミクニのメンタルは図太くなかった。
そして、瞠目すべき事態はまだ続くことになる。
『あーあー、テステス。マイクのテスト中……みなさん聞こえていますかー?』
突如、若い女の声がミクニの聴覚に飛び込んできた。咄嗟に辺りを見回す。しかし、彼の周囲にあるのは、先程確認したときと変わらず木、木、木ばかりであった。人どころかイキモノの気配すら感じられない。
ならば幻聴か? あり得ないことを立て続けに経験したことによるショックが、ミクニに聴こえるはずのない声を聴かせたのだろうか。
ならば幻聴か? あり得ないことを立て続けに経験したことによるショックが、ミクニに聴こえるはずのない声を聴かせたのだろうか。
『あはははは! 幻聴(バーチャル)? そんなわけありません! これはれっきとした肉声(リアル)ですよ。アナタたちの聴覚をハッキングして伝えているので、たとえ水中にいようが地下にいようがバッチリ届く、BBちゃんのキュートな肉声です』
しかし、声の主はそんな推測を見透かしていたかのように、否定の言葉を口にした。
あなたたち? ハッキング? BB?
聞き手の困惑を置いてきぼりにして、声は続く。
あなたたち? ハッキング? BB?
聞き手の困惑を置いてきぼりにして、声は続く。
『これからみなさんにお届けするのは、絶海の孤島からのアポカリプティックサウンド! 大人しく視聴する準備はできましたか? 鑑賞のお供の菓子(スナック)の準備はオッケー? できてない? かまいません! それでも無理矢理に始まるのが『この番組』ですから! ……それではいきましょう! せ~のっ!』
BB~~、チャンネル~~!
ミクニの心情とは真逆の、陽気で軽いことこの上ない調子で、女の声はそう言った。
ミクニの心情とは真逆の、陽気で軽いことこの上ない調子で、女の声はそう言った。
X X X X X
高校生活最大のイベントと言っても過言ではない修学旅行の真っ最中だったはずなのに、気が付けば見知らぬ場所に居た中野二乃の視界は、『BBチャンネル』なる単語を聞いた途端、まるでテレビのノイズ画面のような『なにか』に塗りつぶされた。
ノイズの中央には桜の花弁のようなアイコンがクルクルと回っており、その下方には『now hacking……』という文章がある。
次第にノイズは薄くなり、五秒も経てば花弁アイコンの回転は終わった。花弁アイコンと入れ違いに『OK!』の表示が出る。そして次の瞬間、視界はまたもや変わった。
軽快ではあるが聞くものを不安定な気持ちにさせる音楽をBGMに、桜の花びらが舞う。似たような映像が何カットか続いた後で、女のシルエットが登場し、それに被さるようにド派手なピンクの配色をされた文字が現れた。それが先ほどの声が言った『BBチャンネル』のタイトルロゴであることに気づくまで、そう時間はかからなかった。
ノイズの中央には桜の花弁のようなアイコンがクルクルと回っており、その下方には『now hacking……』という文章がある。
次第にノイズは薄くなり、五秒も経てば花弁アイコンの回転は終わった。花弁アイコンと入れ違いに『OK!』の表示が出る。そして次の瞬間、視界はまたもや変わった。
軽快ではあるが聞くものを不安定な気持ちにさせる音楽をBGMに、桜の花びらが舞う。似たような映像が何カットか続いた後で、女のシルエットが登場し、それに被さるようにド派手なピンクの配色をされた文字が現れた。それが先ほどの声が言った『BBチャンネル』のタイトルロゴであることに気づくまで、そう時間はかからなかった。
──いったい何なのよこれは……っ!
二乃は思考する。
というより、思考しかできない。
視覚と聴覚が奇妙な映像音楽に支配されている今、彼女にそれら以外の感覚は無かった。口を開いて発声することさえ叶わない。
どころか、彼女の視覚内には、自分の手すら映っていなかった……まるで肉体が目と耳だけ残してこの世から消え去ってしまったみたいだ。
人より物を知らないことをこれまでの人生で何度も思い知らされてきた二乃であるが、確かに分かることがひとつある。こんな、人の視覚と聴覚を乗っ取るような技術はあり得ないということだ。VRヘッドセットを付けているならまだしも、それもない状態でこのような幻覚じみたものを見せるのは、不可思議極まりないことである。もっとも、そんな確信を得たところで、彼女の現状が好転することは無いのだが。
おそらくここまでは『BBチャンネル』のオープニングのようなものだったのだろう。タイトルロゴが消えると、ニュース番組のようなセットが映される。そして、拍手や歓声と共に、画面の端からひとりの女が現れた。
黒衣を身に纏い、赤いリボンと紫色の長髪が印象的な女だった。
というより、思考しかできない。
視覚と聴覚が奇妙な映像音楽に支配されている今、彼女にそれら以外の感覚は無かった。口を開いて発声することさえ叶わない。
どころか、彼女の視覚内には、自分の手すら映っていなかった……まるで肉体が目と耳だけ残してこの世から消え去ってしまったみたいだ。
人より物を知らないことをこれまでの人生で何度も思い知らされてきた二乃であるが、確かに分かることがひとつある。こんな、人の視覚と聴覚を乗っ取るような技術はあり得ないということだ。VRヘッドセットを付けているならまだしも、それもない状態でこのような幻覚じみたものを見せるのは、不可思議極まりないことである。もっとも、そんな確信を得たところで、彼女の現状が好転することは無いのだが。
おそらくここまでは『BBチャンネル』のオープニングのようなものだったのだろう。タイトルロゴが消えると、ニュース番組のようなセットが映される。そして、拍手や歓声と共に、画面の端からひとりの女が現れた。
黒衣を身に纏い、赤いリボンと紫色の長髪が印象的な女だった。
『グッドモーニング! ……いえ、この場合はバッドナイトが適切ですか? モニターの前のみなさん、こんばんは。これから役立つ情報目白押しの注目必至コンテンツ、『BBチャンネル』の時間です。司会進行は月の支配者にして、本バトルロワイアルの主催であるBBちゃん。視聴者は哀れにも参加者に選ばれてしまったみなさんとなります』
──バトルロワイアル……。
BBが悪意というものをキャンディーやマシュマロと一緒に煮詰めたような声で口にした言葉を、二乃は心の中で反復する。
その言葉の意味を、彼女は知っている。それをテーマにした漫画や映像作品が溢れている世の中に生きていて、知らない方がおかしいからだ──なんなら、今現在二乃たちがしている、一人の異性を巡っての恋愛争奪戦も、広義ではバトルロワイアルと言えなくもないだろう。
しかし、BBが今しがた口にした『バトルロワイアル』は二乃たちがやっているようなものではなく、むしろ世間一般のイメージに近い、フィクションの中で見られる方の……。
その言葉の意味を、彼女は知っている。それをテーマにした漫画や映像作品が溢れている世の中に生きていて、知らない方がおかしいからだ──なんなら、今現在二乃たちがしている、一人の異性を巡っての恋愛争奪戦も、広義ではバトルロワイアルと言えなくもないだろう。
しかし、BBが今しがた口にした『バトルロワイアル』は二乃たちがやっているようなものではなく、むしろ世間一般のイメージに近い、フィクションの中で見られる方の……。
『早速ですが、本題に入らせてもらいましょう』
前置きもそこそこに、BBは言った。
『これからみなさんには、殺し合いをしてもらいます』
X X X X X
殺し合い。
文字通りのグルーサムな意味を持つその言葉を聞いた瞬間、超天才売れっ子マジシャン(自称)である山田奈緒子は、ズガンッ! と頭を殴られた。
かのようなショックを受けた。
かつて、霊能力者同士による命を懸けた化かし合いの渦中に身を投じた経験がある彼女だからこそ分かる──バトルロワイアルの恐ろしさが。
命を懸けて戦うことの、恐ろしさが。
またあのような……否、『殺し合い』という言葉を直接使っている分、あの時以上に凄惨であろうバトルロワイアルが、開催されるのか?
文字通りのグルーサムな意味を持つその言葉を聞いた瞬間、超天才売れっ子マジシャン(自称)である山田奈緒子は、ズガンッ! と頭を殴られた。
かのようなショックを受けた。
かつて、霊能力者同士による命を懸けた化かし合いの渦中に身を投じた経験がある彼女だからこそ分かる──バトルロワイアルの恐ろしさが。
命を懸けて戦うことの、恐ろしさが。
またあのような……否、『殺し合い』という言葉を直接使っている分、あの時以上に凄惨であろうバトルロワイアルが、開催されるのか?
『そうです。デスデス。殺し合いDeath……いいですよねぇ、殺し合い。特に、『コ』で始まって『イ』で終わっているのが、とってもロマンチックです』
冗談めかした口調で言いながら、BBは続ける。
『これからみなさんには、殺し合いをしてもらいます……が、もちろんタダでとは言いません。あくまでBBちゃんは小悪魔であって、無償労働を強いるほど悪魔ではありませんので。殺し合いの末に最後の一人になった方は、元の世界に返してあげます。そして~~……!』
視聴者の期待を煽るような溜めをたっぷりした後、BBは次のように言った。
『なんと! 『どんな願いでも一つだけ叶えられる権利』も与えちゃいます!』
イエーーーイ!! とスタジオは沸いた。紙吹雪のオマケつきである。
その歓声は奈緒子のものでなければ、おそらく他の視聴者(さんかしゃ)のものでもあるまい。バラエティ番組でよくある笑い声SEの歓声版のようなものだろう。
その歓声は奈緒子のものでなければ、おそらく他の視聴者(さんかしゃ)のものでもあるまい。バラエティ番組でよくある笑い声SEの歓声版のようなものだろう。
『どんな願いでも叶う……素敵ですね。まるで『聖杯』みたいです。みなさんならどんな願いを叶えてもらいますか? 巨万の富? 恋の成就? 死者の蘇生? オールオッケー! このバトルロワイアルで優勝さえすれば、今アナタが頭に浮かべた願いは必ず叶います!』
ばんなそかな。
『もちろん、慎ましいサイズをしているおっぱいを、BBちゃん級まで大きくしたいという願いも、叶えられますよ!』
──殺し合いに参加までして、誰がそんなこと願うかっ!
頭の中でそう突っ込んだ奈緒子であるが、かつてどんな願いでも叶えるという触れ込みの『神の象の像』に『巨乳になりたい』と願ったことがある彼女が、『そんなこと』を願わない可能性は怪しいものであった。
『続いてはルールを簡単に説明しますね……首輪を付けられていることには、もう気づきましたか?』
言われて奈緒子は気づく。『BBチャンネル』が流れる前に感じていた、自分の首周りにあった違和感は、首輪が原因であったことに。
『それはみなさんを縛る枷のようなもの。殺し合いに乗り気じゃないワンちゃんも、ルールに歯向かおうとするニャンちゃんも、みんなまとめて従順(ペット)にできちゃう、素晴らしいアイテムなんですよ──具体的にいうと、そうですね』
バトルロワイアルの会場から逃げ出そうとしたり、這入ってはいけないエリアに這入ったりすると、それは爆発します──と。
BBが説明した首輪の機能は、信じがたいものであった。
BBが説明した首輪の機能は、信じがたいものであった。
──ば……くは、つ……?
時には危険なマジックにチャレンジすることもある奈緒子は、間近で爆発を見たことが何度かある。だが、爆発が首元で起きた事は一度もない。そんな目に遭っていれば、頭と胴体が離れ離れになって、とっくに死んでいるからだ。
『おやおや? どうやら、首輪が爆弾だということをブラフだと思っている人が何人かいるようですね……え~ん! 信じてもらえなくて悲しいBBちゃんなのです』
どんなに騙されやすいひとでも一瞬でまるっとお見通しできるほどに、バレバレな泣き真似をするBB。
『だったら、そうですねぇ……』
嘘泣きで両目を覆っていた手を外し、伏せていた顔を上げる。
その時の彼女の両目は。
真っ赤に。
染まっていた。
その時の彼女の両目は。
真っ赤に。
染まっていた。
『ここで実際に、サンプルを見せてあげましょうか』
X X X X X
ナノマシンを取り込んだ影響により、実年齢74歳でありながら青年のような若々しい外見を獲得した超人、今之川権三は、腹を立てていた。
死んだかと思ったら、こんな辺鄙な場所に拉致されていただけでも憤慨ものだというのに、自分より遥かに年下の女が挑発するようなふざけた口調で話しているのだ。敬老概念を何よりも重視する権三にとって、これは屈辱以外の何物でもなかった。
もしこの映像が視覚と聴覚をハッキングしたものでなく、BBが目の前に直接居れば、権三は怒りに任せて拳を振るい、彼女の上半身を消し飛ばしていただろう。
しかし現在、彼の脳中には、煮えたぎるマグマのような怒りと一緒に、現状を観察する冷静さもあった。
死んだかと思ったら、こんな辺鄙な場所に拉致されていただけでも憤慨ものだというのに、自分より遥かに年下の女が挑発するようなふざけた口調で話しているのだ。敬老概念を何よりも重視する権三にとって、これは屈辱以外の何物でもなかった。
もしこの映像が視覚と聴覚をハッキングしたものでなく、BBが目の前に直接居れば、権三は怒りに任せて拳を振るい、彼女の上半身を消し飛ばしていただろう。
しかし現在、彼の脳中には、煮えたぎるマグマのような怒りと一緒に、現状を観察する冷静さもあった。
──わしの力なら、たとえダイナマイトの爆発をゼロ距離で受けてもダメージを負うことは無いはずぞい。だが……。
傲慢になりそうな思考を抑える権三。
BBを名乗る女は、首輪を付けたのだと自信満々に言ったのだ。ならばそれに見合うだけの性能が、首輪にあるはず……いや、なければならない。
BBを名乗る女は、首輪を付けたのだと自信満々に言ったのだ。ならばそれに見合うだけの性能が、首輪にあるはず……いや、なければならない。
──それがどれほどのものなのか、これから見せてもらうぞい。
画面に意識を戻す。
『サンプルを見せる』と言ったBBは手に持っていた指示棒を振るった。
すると、それが合図であったかのように、何もない空間からボン! とカラフルな煙が噴出する。
時間が経つにつれて、水を加えた色水のように煙は薄くなっていく。
やがて煙が完全に晴れると、そこにはひとりの少女が立っていた。
着ている服は、どこぞの学校の制服だろうか。ウェーブのかかった桃色の髪をしており、頭に着けられた大きなリボンが、激しい自己主張をおこなっている──見た目からして、高校生くらいの年齢だろう。
自分のような上級国民には程遠い、アホみたいな見た目の女だな、と権三は心中で毒づいた。
『サンプルを見せる』と言ったBBは手に持っていた指示棒を振るった。
すると、それが合図であったかのように、何もない空間からボン! とカラフルな煙が噴出する。
時間が経つにつれて、水を加えた色水のように煙は薄くなっていく。
やがて煙が完全に晴れると、そこにはひとりの少女が立っていた。
着ている服は、どこぞの学校の制服だろうか。ウェーブのかかった桃色の髪をしており、頭に着けられた大きなリボンが、激しい自己主張をおこなっている──見た目からして、高校生くらいの年齢だろう。
自分のような上級国民には程遠い、アホみたいな見た目の女だな、と権三は心中で毒づいた。
『というわけで、参加者のひとりである彼女を特別にスタジオへ招待しました!』
なんと、彼女のような一般人も殺し合いの参加者のひとりらしい。たしかに、よく見てみると、その首元には冷たい銀色の輝きを放つ首輪が装着されていた。
ということは、リボンの少女はどこかからスタジオに、煙と同時に現れたことになるのだが……まぁ、BBは権三を東栗原からこんな辺鄙な所まで連れて来られた奴なのだ。女子ひとりをスタジオまでワープさせられたとしても、ダブルスタンダードは生じまい。
突然スタジオにやって来たことで混乱しているのが表情から簡単に見て取れる少女に対し、そして画面の向こう側にいる視聴者に対し、BBは言った。
ということは、リボンの少女はどこかからスタジオに、煙と同時に現れたことになるのだが……まぁ、BBは権三を東栗原からこんな辺鄙な所まで連れて来られた奴なのだ。女子ひとりをスタジオまでワープさせられたとしても、ダブルスタンダードは生じまい。
突然スタジオにやって来たことで混乱しているのが表情から簡単に見て取れる少女に対し、そして画面の向こう側にいる視聴者に対し、BBは言った。
『爆弾が本物だと証明してあげますから、よぅく見ていてくださいね! カウントダウンスタート! 3……2……1……』
ゼロ。
その瞬間だった、ボンッ! と先ほどと同じ軽い音がして、リボンの少女の首が吹き飛んだのは。
長髪を振り回しながら飛び上がる生首。噴き出す鮮血──あまりにもリアルで不可逆な死が、そこにはあった。
その瞬間だった、ボンッ! と先ほどと同じ軽い音がして、リボンの少女の首が吹き飛んだのは。
長髪を振り回しながら飛び上がる生首。噴き出す鮮血──あまりにもリアルで不可逆な死が、そこにはあった。
『──と、まぁ、こんな風に爆発します。ちなみにアナタたちの中には力自慢のかたが何人かいるかもしれませんけれど、首輪を壊そうとするのはオススメしません。その場合も爆発するように仕掛けられていますから』
つまり、権三が持ち前の怪力で首輪の破壊を試みても、それより先に起爆することになるわけだ。
BBは指示棒を再び振るった。すると、故・リボンの少女の肉体は、まるで最初からそこに無かったかのように消え失せた。
BBは指示棒を再び振るった。すると、故・リボンの少女の肉体は、まるで最初からそこに無かったかのように消え失せた。
『さて、次の説明をしますね。みなさんが目覚めた時、近くにリュックサックがありましたよね?』
そういえば……と、権三は自分の近くに小さなリュックがあったのを思い出した。何が入っているのか確認しようと手を伸ばしたタイミングで、『BBチャンネル』が始まったのである。
『それの中には食料品や飲料水、地図に名簿、ルールブック……そして、ひとつからみっつのアイテムがランダムで入っています。武器に便利グッズ、あるいは全く役に立たないガラクタか……どんなアイテムが入っているのかは、開けてからのお楽しみです』
悪戯っぽいウインクをするBB。
徒手空拳の戦闘スタイルを主とする権三にとって、武器は無用の長物だ。
けれども、自分以外の『参加者』が、BBから支給された武器を持っているかもしれないということを知れたのは大きかった。
拳銃や刀剣のような武器が相手なら負けるつもりは無い。だが、たとえば権三の生前の敗因となった、対テロリスト用のラバー銃が相手なら、話は別である。
そのような予想外の武器の存在も、念頭に置かなくてはならない。
なぜなら、このバトルロワイアルの主催は、既知の範囲を十分に逸脱しており、そんな彼女が開くイベントに、予想通りの展開があるとは到底思えないからだ。
徒手空拳の戦闘スタイルを主とする権三にとって、武器は無用の長物だ。
けれども、自分以外の『参加者』が、BBから支給された武器を持っているかもしれないということを知れたのは大きかった。
拳銃や刀剣のような武器が相手なら負けるつもりは無い。だが、たとえば権三の生前の敗因となった、対テロリスト用のラバー銃が相手なら、話は別である。
そのような予想外の武器の存在も、念頭に置かなくてはならない。
なぜなら、このバトルロワイアルの主催は、既知の範囲を十分に逸脱しており、そんな彼女が開くイベントに、予想通りの展開があるとは到底思えないからだ。
『最後は放送の説明です』
BBは最後のルール説明に入った。
『放送というと、今みなさんが観ている『BBチャンネル』ですね。これから六時間ごとに放送があって、それまでの間に発生した死者や禁止エリア、その他諸々が発表されます。……とはいえ、これはバトルロワイアルの放送──もしかしたら放送中に戦っている、なんてことがあるかもしれません。そんな時に視覚がハッキングされるわけにはいきませんよね? ですがご安心を! 今後される放送は音声だけのもの、言うならば『BBチャンネル・ラジオ版』になります。お楽しみに!』
相変わらず真意が読めない口調で、BBは説明を締めくくった。
『これで説明は終わりです。細かい説明はリュックにあるルールブックで分かるので、読んでおいてくださいね。──それじゃあゲームを始めましょう』
X X X X X
こうして彼ら彼女らの視界は、悪趣味な番組から各々の現在位置に戻った。
【藤原千花@かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~ 死亡】
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Opening
Opening
| 前話 | お名前 | 次話 |
| Debut | 若殿ミクニ | 共闘 |
| Debut | 中野二乃 | 時代を貫いて響くもの |
| Debut | 山田奈緒子 | 時を超えた遭遇 |
| Debut | 今之川権三 | 鬼は泥を見た。鬼は星を見た。 |
| Debut | 藤原千花 | Eliminated |