時を超えた遭遇 ◆ZUJmXB0CS.
ここは浅草花やしき。
ノイズ交じりのBGMが流れる舞台上に、一人の女性がいる。
そして舞台袖には、不安そうに舞台を見守っている支配人の姿がある。
ノイズ交じりのBGMが流れる舞台上に、一人の女性がいる。
そして舞台袖には、不安そうに舞台を見守っている支配人の姿がある。
(私の名前は山田奈緒子)
髪を後ろで結び、チャイナドレスを着た奈緒子は、祈るように両手でボールを抱えている。
その表情は艶やかで、余裕たっぷりといった様子だ。
その表情は艶やかで、余裕たっぷりといった様子だ。
(マジック界の歴史に名を遺すレベルの、天才マジシャンである)
奈緒子が手に念を込めるような仕草をすると、手を離してもボールは空中に浮いている。
いわゆる「ゾンビボール」と呼ばれるマジックだ。
ゆっくりとした動作で、浮遊したボールを右半身側から左半身側へと移動させる。
いわゆる「ゾンビボール」と呼ばれるマジックだ。
ゆっくりとした動作で、浮遊したボールを右半身側から左半身側へと移動させる。
(実力と美貌を兼ね備えているため、いつも会場は満員御礼)
BGMが終わり、マジックも無事に成功した。
奈緒子は笑顔で観客席を見るが、人の姿はほとんどない。
笑顔は渋面へと変化した。
奈緒子は笑顔で観客席を見るが、人の姿はほとんどない。
笑顔は渋面へと変化した。
(――とはいかない。現実は非常である)
観客席には、こっくりこっくり舟を漕ぐ老人と、その隣にいる仏頂面の少年。そして、黄色いニワトリのおもちゃを持つ男だけ。
男は拍手の代わりなのだろうか、おもちゃを「アオォーウ」と鳴らしている。
熱狂的なファンの奇行に、奈緒子は眉をひそめた。
視線を向けられて興奮したのか、連続で「アオアオアオォーウ!」と鳴らす男。
男は拍手の代わりなのだろうか、おもちゃを「アオォーウ」と鳴らしている。
熱狂的なファンの奇行に、奈緒子は眉をひそめた。
視線を向けられて興奮したのか、連続で「アオアオアオォーウ!」と鳴らす男。
「うるさい!」
思わず口が出る奈緒子。男はビクッとしたものの、止める気配はない。
奈緒子はいそいそと舞台袖に戻り、お決まりのようにクビを言い渡された。
奈緒子はいそいそと舞台袖に戻り、お決まりのようにクビを言い渡された。
「はぁ……」
帰路の途中で家族連れに笑われつつ、アパート「池田荘」の付近まで到着した奈緒子。
しかし、すぐには階段に向かわず、曲がり角からアパート前の様子をうかがう。
というのも、アパート前から、はしゃいでいる声が聞こえてきたからだ。
しかし、すぐには階段に向かわず、曲がり角からアパート前の様子をうかがう。
というのも、アパート前から、はしゃいでいる声が聞こえてきたからだ。
「ハルさん、ほら、アーン!」
「ん~!ありがとジャーミー!ほら、ジャーミーも食べて!」
「ん~!ありがとジャーミー!ほら、ジャーミーも食べて!」
ハットグを食べながら自撮りし合っているのは、「池田荘」の大家の池田ハルと、その夫のジャーミーだ。
二人は和気あいあいとした様子だが、今現在、家賃を滞納している奈緒子にとっては、会いたくない相手だった。
二人は和気あいあいとした様子だが、今現在、家賃を滞納している奈緒子にとっては、会いたくない相手だった。
「ハルさん、インテルバエしてるヨ~!」
「あら、そう?ほら、ジャーミーも一緒に撮りましょう~!」
「若いつもりかっ!」
「あら、そう?ほら、ジャーミーも一緒に撮りましょう~!」
「若いつもりかっ!」
反射的にツッコミを入れてしまう奈緒子。
「ん?山田の声がしたねぇ……」
(ヤバい!)
(ヤバい!)
今、ハルに捕まると、家賃の滞納を言い逃れできない。
そう考えて逃げようとした奈緒子だったが、振り向きざまに何かにぶつかった。
そう考えて逃げようとした奈緒子だったが、振り向きざまに何かにぶつかった。
「にゃっ!」
「やあ、相変わらず貧相な表情と胸だな」
「やあ、相変わらず貧相な表情と胸だな」
奈緒子が顔を上げると、そこにいたのは長身の男――上田次郎だった。
手には黄色いニワトリのおもちゃを持っている。
手には黄色いニワトリのおもちゃを持っている。
「上田!なんでここに?」
「尺の都合だ。話は早い方がいいだろう?」
「尺の都合だ。話は早い方がいいだろう?」
困惑する奈緒子をよそに、上田はニワトリを鳴らした。
「面白いだろう、これ」
「流行なのか?……いや、それより、話ってなんです?」
「流行なのか?……いや、それより、話ってなんです?」
奈緒子は怪訝な表情を上田に向けた。
今まで何度も、上田が話を持ちかけてきたことで、事件に巻き込まれてきたのだ。
不信を抱かないはずもない。
今まで何度も、上田が話を持ちかけてきたことで、事件に巻き込まれてきたのだ。
不信を抱かないはずもない。
「……単刀直入に話そう。鬼を見たことはあるか?」
「は?オニ?桃太郎とか、金太郎とか、浦島太郎に出てくるやつですか?」
「浦島太郎に鬼は出ない」
「は?オニ?桃太郎とか、金太郎とか、浦島太郎に出てくるやつですか?」
「浦島太郎に鬼は出ない」
呆れたように訂正する上田。
それから少しだけ躊躇うそぶりを見せて、話し始めた。
それから少しだけ躊躇うそぶりを見せて、話し始めた。
「先日、刃取(はとる)島の呂和井有(ろわいある)村の村長の娘が、研究室を尋ねてきてね」
「はとる島の、ろわいある村……?」
「なんでも、その村には言い伝えがあるらしい。
数年に一度、鬼が現れて、手あたり次第に住民を食らうそうだ。
被害者は一人だけのときもあれば、数十人のときもあったという」
「ちょちょ、待ってください」
「はとる島の、ろわいある村……?」
「なんでも、その村には言い伝えがあるらしい。
数年に一度、鬼が現れて、手あたり次第に住民を食らうそうだ。
被害者は一人だけのときもあれば、数十人のときもあったという」
「ちょちょ、待ってください」
神妙な顔つきで話す上田を、奈緒子が遮る。
「死人が出ているなら、警察の仕事じゃないですか?」
「もちろん、警察も事件を認知しているそうだ。
だが、鬼が現れ出してから十五年以上、警察は鬼を捕まえられていない。
しかも、警察を含めて誰も、肝心の鬼の姿を見ていない。
警察が通報を受けて向かうと、あるのは鬼に食い殺された死体だけ。
捜査はされるものの、目撃者の類もおらず、結果として迷宮入りしてしまうそうだ」
「……」
「な?奇妙だろう?」
「もちろん、警察も事件を認知しているそうだ。
だが、鬼が現れ出してから十五年以上、警察は鬼を捕まえられていない。
しかも、警察を含めて誰も、肝心の鬼の姿を見ていない。
警察が通報を受けて向かうと、あるのは鬼に食い殺された死体だけ。
捜査はされるものの、目撃者の類もおらず、結果として迷宮入りしてしまうそうだ」
「……」
「な?奇妙だろう?」
微笑んで、ニワトリを鳴らす上田。
その笑顔がどことなくぎこちないことを、奈緒子は見抜いていた。
その笑顔がどことなくぎこちないことを、奈緒子は見抜いていた。
「そんな状況に堪りかねた村長の娘さんが、鬼退治と称して霊能力者を呼ぶことにしたそうだ」
「霊能力者を?」
「ああ。だが、霊能力者を呼ぶのもタダではないらしくてね。
インチキ霊能力者に騙されたくないから、真贋を見分けて欲しいと頼まれたんだ。
大人気『どんとこい!超常現象』シリーズの著者であり、ノーベル賞受賞を嘱望されるこの私にね」
「霊能力者を?」
「ああ。だが、霊能力者を呼ぶのもタダではないらしくてね。
インチキ霊能力者に騙されたくないから、真贋を見分けて欲しいと頼まれたんだ。
大人気『どんとこい!超常現象』シリーズの著者であり、ノーベル賞受賞を嘱望されるこの私にね」
例によって著書を取り出し、自慢げに語る上田。
何十回、何百回と見たドヤ顔である。
何十回、何百回と見たドヤ顔である。
「どうだ。霊能力者を見破る手伝いをしたくないか?」
「要するに、鬼が怖いから一緒に来てくれってことですよね」
「要するに、鬼が怖いから一緒に来てくれってことですよね」
一瞬の沈黙。
「ハハハ、何を馬鹿な。私は鬼なんて信じていない」
「とにかく、お断りします。わざわざ危険な目に遭いたくありません」
「待てっ!」
「とにかく、お断りします。わざわざ危険な目に遭いたくありません」
「待てっ!」
上田は勢いよく制止した。
そして懐から紙を取り出すと、奈緒子の目の前に突き出した。
奈緒子は出された紙に書いてある文字を読んで、それを即座に理解した。
そして懐から紙を取り出すと、奈緒子の目の前に突き出した。
奈緒子は出された紙に書いてある文字を読んで、それを即座に理解した。
「上田……」
「先々月の家賃までは支払い済みだ。先月の分を出して欲しければ、大人しくついてくることだな」
「汚いぞ!上田!」
「先々月の家賃までは支払い済みだ。先月の分を出して欲しければ、大人しくついてくることだな」
「汚いぞ!上田!」
その後、ギャーギャーと何やら言い合いながら、二人は上田号に乗り込む。
ある意味では“いつも通り”の風景。
しかし、その風景が壊れることになるとは、この時点では二人とも予想していなかった。
ある意味では“いつも通り”の風景。
しかし、その風景が壊れることになるとは、この時点では二人とも予想していなかった。
■
「たしかそんな夢を見ていて、気がついたらこの島に……」
「いや、あれは夢じゃなくて現実?うーん……。
あ、夢と言えば……あのBBって女、どんなトリックを使ったんだ?」
あ、夢と言えば……あのBBって女、どんなトリックを使ったんだ?」
奈緒子は思考を切り替えて、殺し合いの主催者について考え始めた。
つい先程、主催者を名乗るBBは、奈緒子たち参加者に向けて、視覚や聴覚を“ハッキング”したと話していた。
冷静に考えて、他人の感覚を操作することが、現実に出来るわけがない。
つまり、何らかのトリックを用いた可能性が高い。
しかし、マジックに精通した奈緒子でも、そのトリックは見当もつかなかった。
つい先程、主催者を名乗るBBは、奈緒子たち参加者に向けて、視覚や聴覚を“ハッキング”したと話していた。
冷静に考えて、他人の感覚を操作することが、現実に出来るわけがない。
つまり、何らかのトリックを用いた可能性が高い。
しかし、マジックに精通した奈緒子でも、そのトリックは見当もつかなかった。
「殺し合いなんて乗るもんか。そのトリック……絶対に暴いてみせる!」
宣言と同時、奈緒子は虚空に向けてビシッ!と指を突き付けた。
ジッチャンの名にかけて!はどうにか耐えた。
ジッチャンの名にかけて!はどうにか耐えた。
(考えても仕方ない。とりあえず、上田さんを探すか)
名簿によると、奈緒子の知人は上田次郎だけだった。
唯一の知人がデカイだけの男なのはシャクだが、そもそも友人が少ないのだから、いるだけマシだと考えることにした。
もちろん、上田次郎がBBのトリックを暴くことなんて微塵も期待していない。
ただ、空手が強いから、ボディーガードになりそうだと考えたまでだ。
脳内でそんな言い訳をしながら、奈緒子は外に出た。
唯一の知人がデカイだけの男なのはシャクだが、そもそも友人が少ないのだから、いるだけマシだと考えることにした。
もちろん、上田次郎がBBのトリックを暴くことなんて微塵も期待していない。
ただ、空手が強いから、ボディーガードになりそうだと考えたまでだ。
脳内でそんな言い訳をしながら、奈緒子は外に出た。
「それにしても、ずいぶん大きい船だな……ん?」
廊下を歩き、甲板に出てすぐ、奈緒子は眉をひそめた。
リュックサックが放置されていたのだ。形状も色も、奈緒子に与えられたものと同じリュックサックだ。
それはつまり、殺し合いの参加者の誰かが、ここにリュックを放置したということである。
リュックサックが放置されていたのだ。形状も色も、奈緒子に与えられたものと同じリュックサックだ。
それはつまり、殺し合いの参加者の誰かが、ここにリュックを放置したということである。
周囲に人の気配がないことを確かめて、奈緒子はリュックを検めた。
リュックには“猛丸”と名前が書いてある。確かに名簿にある名前だ。
リュックには“猛丸”と名前が書いてある。確かに名簿にある名前だ。
中身を漁ると、地図などの支給品一式、そしてランダムに配られたアイテムが出てきた。
奈緒子の手品道具。魔術協会制服。そして、複数の手榴弾。以上の三種類だ。
手品道具はさておき、手榴弾はいざというときに使えそうである。
しかし、魔術協会制服は、「回復魔術が使える」という説明書の記述からして、眉唾ものと言える。
奈緒子の手品道具。魔術協会制服。そして、複数の手榴弾。以上の三種類だ。
手品道具はさておき、手榴弾はいざというときに使えそうである。
しかし、魔術協会制服は、「回復魔術が使える」という説明書の記述からして、眉唾ものと言える。
(コスプレか?……って、それよりも)
これら三種類のアイテムは、取り出された形跡がない。
つまり、このリュックの持ち主“猛丸”は、中身に手を付けないまま放置したという事実が明らかになったのだ。
全く手を付けないまま放置されていたリュック、そして周囲には広がる海。
つまり、このリュックの持ち主“猛丸”は、中身に手を付けないまま放置したという事実が明らかになったのだ。
全く手を付けないまま放置されていたリュック、そして周囲には広がる海。
「まさか……」
自殺という言葉が、奈緒子の頭をよぎる。
この殺し合いに巻き込まれたことを苦にしてか、あるいは状況に混乱してか。
支給品を確認するよりも早く、絶望に呑まれてしまい、船から身を投げる参加者。
そんな想像は、容易にできる。できてしまう。
この殺し合いに巻き込まれたことを苦にしてか、あるいは状況に混乱してか。
支給品を確認するよりも早く、絶望に呑まれてしまい、船から身を投げる参加者。
そんな想像は、容易にできる。できてしまう。
奈緒子は甲板の端に行き、海を見下ろした。暗い海はどこまでも広がっている。
もしかしたら、人間が浮いているかもしれない。
そんな最悪の想像をしながら海を見渡すが、いかんせん暗いため判然としない。
もしかしたら、人間が浮いているかもしれない。
そんな最悪の想像をしながら海を見渡すが、いかんせん暗いため判然としない。
(くっ、懐中電灯でも探すか?)
奈緒子の頭に新たな案が浮かんだそのとき。
――ガギン!
何か、金属同士がぶつかる音が響いた。
波音とは異なる音。奈緒子は、その音がした方向、船の舳先に視線を向けて、耳を澄ませる。
波音とは異なる音。奈緒子は、その音がした方向、船の舳先に視線を向けて、耳を澄ませる。
――ガギン、ガギン、ガギン……。
すると、鈍い金属音が連続して聞こえてくる。
しかも、音は段々と近づいてきている。
しかも、音は段々と近づいてきている。
(なんだ、この音!?)
殺し合いの最中、一人きりの甲板で、いきなり謎の音がし始める。
この島に居る一般人であれば、誰でも恐怖するだろう。
某教授なら、マジで失神する五秒前だ。
そして、天才マジシャンも例外ではなく、若干のパニック状態に陥る。
この島に居る一般人であれば、誰でも恐怖するだろう。
某教授なら、マジで失神する五秒前だ。
そして、天才マジシャンも例外ではなく、若干のパニック状態に陥る。
――ガギンガギンガギン……!
テンポを上げて鳴り響く音に、奈緒子の脚はすっかり竦んだ。
緊張のあまりその場から動けず、視線も外せない。
鈍い金属音は、数秒後に止んだ。
その一瞬の沈黙の後。
ビュン、と風を切る音と共に“何か”が跳躍し――奈緒子の目の前に着地した。
緊張のあまりその場から動けず、視線も外せない。
鈍い金属音は、数秒後に止んだ。
その一瞬の沈黙の後。
ビュン、と風を切る音と共に“何か”が跳躍し――奈緒子の目の前に着地した。
「わぁーっ!?」
思わず叫んで、頭の前で両腕を交差させて防御姿勢を取る奈緒子。
完全に目を閉じた状態で、「わぁーっ」と連呼する。
出てきたのは猛獣か、それとも妖怪か。
確認するのも恐ろしい。
完全に目を閉じた状態で、「わぁーっ」と連呼する。
出てきたのは猛獣か、それとも妖怪か。
確認するのも恐ろしい。
「んー?」
しかし、そうした予想に反して、どこか幼い声が甲板に響いた。
おそるおそる目を開いた奈緒子の視界には、身体の各所に入れ墨のようなものを施した、褐色の少年がいた。
おそるおそる目を開いた奈緒子の視界には、身体の各所に入れ墨のようなものを施した、褐色の少年がいた。
■
殺し合いが開始した直後、褐色の少年、猛丸は船の甲板に居た。
視界に急に現れた少女には少なからず驚かされたが、猛丸とて常人ならざる身。
霹鬼(ヒャッキー)の力に目覚めた日から、“ぶっとんだこと”には耐性がついている。
まだ童(ワラバー)と呼ばれる年齢だが、異常事態への順応は早い。
視界に急に現れた少女には少なからず驚かされたが、猛丸とて常人ならざる身。
霹鬼(ヒャッキー)の力に目覚めた日から、“ぶっとんだこと”には耐性がついている。
まだ童(ワラバー)と呼ばれる年齢だが、異常事態への順応は早い。
「俺(ワー)は戻る」
その猛丸の碧眼は、まっすぐと海を見据えていた。
ニライカナイの戦士の子孫であり、また獅子(シーサー)御獄の按司である猛丸には、使命がある。
首狩森(チブルムィー)の九十九城(グスク)で暮らす人々を守る使命が。
しかし、ここは首狩森ではなく、琉球でもない。
どことも知れない島である。
ニライカナイの戦士の子孫であり、また獅子(シーサー)御獄の按司である猛丸には、使命がある。
首狩森(チブルムィー)の九十九城(グスク)で暮らす人々を守る使命が。
しかし、ここは首狩森ではなく、琉球でもない。
どことも知れない島である。
「絶対に戻るさー」
それでも戻る。琉球に。首狩森に。九十九城に。
全てを包含した意志を猛丸は口にした。
その行為には、意志の確認ともう一つ、自らを奮い立たせる目的が含まれていた。
全てを包含した意志を猛丸は口にした。
その行為には、意志の確認ともう一つ、自らを奮い立たせる目的が含まれていた。
(怖えーよ、くぬ島……バケモンだらけだ)
猛丸は北西の方角を見て、身震いした。
動物的な本能か、それとも全身に流れる伐斬羅の血か。
どちらにせよ、身体が感じているのだ。この島に居る圧倒的な力の存在を。
動物的な本能か、それとも全身に流れる伐斬羅の血か。
どちらにせよ、身体が感じているのだ。この島に居る圧倒的な力の存在を。
(ゲンノスキ……どこにいるん?)
そして、名簿を見るまでもなく、運命の兄弟がいることも確信していた。
犬養幻之介。猛丸にとって、口噛酒を交わした間柄であり、唯一霹鬼の姿を見せた相手でもある。
合流が出来れば、これほど心強い相手もいない。
しかし、幻之介を探すということは、島に居る強者(チューバ)と出会うかもしれないということだ。
その可能性が、猛丸の心を迷わせていた。
犬養幻之介。猛丸にとって、口噛酒を交わした間柄であり、唯一霹鬼の姿を見せた相手でもある。
合流が出来れば、これほど心強い相手もいない。
しかし、幻之介を探すということは、島に居る強者(チューバ)と出会うかもしれないということだ。
その可能性が、猛丸の心を迷わせていた。
(ん、潜るか)
思い付いたら即行動。猛丸は甲板から勢いよく跳んだ。
いつも琉球の海でそうしているように、空中でアクロバットな動きをしながらザブンと潜る。
伐斬羅の血が流れる猛丸の肉体は、錨のごとく海底に潜っていく。
いつも琉球の海でそうしているように、空中でアクロバットな動きをしながらザブンと潜る。
伐斬羅の血が流れる猛丸の肉体は、錨のごとく海底に潜っていく。
(……くぬ海……?)
潜り始めて数秒。猛丸は得も言われぬ雰囲気を感じ取る。
そのまま海底にたどり着くと、あぐらをかき、座禅にも似た姿勢で目を閉じた。
海はとても静かであり――生命を感じない。
猛丸は首を傾げた。
そのまま海底にたどり着くと、あぐらをかき、座禅にも似た姿勢で目を閉じた。
海はとても静かであり――生命を感じない。
猛丸は首を傾げた。
(いつもなら、海ん底に座ると見える……んれー?)
どれくらい後か、猛丸はいよいよ諦めた。
己の知る琉球の海と、この海は異なると確信したのだ。
それゆえに、自分自身を見つめ直すことはできなかったが、迷いはすっかり消えていた。
己の知る琉球の海と、この海は異なると確信したのだ。
それゆえに、自分自身を見つめ直すことはできなかったが、迷いはすっかり消えていた。
(やっぱ、琉球ぬ海に戻りてー)
故郷に戻る。
その、ただ一つの純粋な思いを胸に、獅子童は動く。
その、ただ一つの純粋な思いを胸に、獅子童は動く。
■
つまり、ガギンという鈍い金属音は、硬質化した伐斬羅の血を船体に突き立てる音だったというわけだ。
そんなことはつゆ知らない奈緒子が、猛丸と対面して五分。
この場は膠着状態にあった。
もの珍しげに奈緒子を眺める猛丸と、その視線を警戒する奈緒子、という構図だ。
この場は膠着状態にあった。
もの珍しげに奈緒子を眺める猛丸と、その視線を警戒する奈緒子、という構図だ。
(――とにかく、話さないことには始まらない!)
どうやらお互いに危害を加えるつもりはないらしい。
そう判断した奈緒子は、猛丸に対しておっかなびっくりだが話しかけた。
そう判断した奈緒子は、猛丸に対しておっかなびっくりだが話しかけた。
「あ、あのー……」
「お前(ヤー)、石曼子(シマンズ)ぬ女か?」
「……はい?」
「お前(ヤー)、石曼子(シマンズ)ぬ女か?」
「……はい?」
訛りの強い猛丸の問いに、困惑する奈緒子。
相手が首を傾げていることから、どうにか質問されたことは理解する。
相手が首を傾げていることから、どうにか質問されたことは理解する。
「私は山田奈緒子……美人天才マジシャン、です」
「ナオコ……石曼子ぬ話し方あらんな。大和人か?」
「ヤマトンチュ?なんだそれ?……それより、もしかして沖縄の人?」
「ナオコ……石曼子ぬ話し方あらんな。大和人か?」
「ヤマトンチュ?なんだそれ?……それより、もしかして沖縄の人?」
質問は分からずとも、その独特な訛りは、忘れようとしても忘れられない。
過去に沖縄県の「黒門島」を訪れた経験が活きて、奈緒子は猛丸の出身を言い当てる。
しかし惜しいことに、猛丸にとって沖縄の名称は馴染みがないものだった。
過去に沖縄県の「黒門島」を訪れた経験が活きて、奈緒子は猛丸の出身を言い当てる。
しかし惜しいことに、猛丸にとって沖縄の名称は馴染みがないものだった。
「俺(ワー)は猛丸。琉球ぬ九十九城を守るヤナワラバーさー」
「琉球?いつの時代?」
「琉球?いつの時代?」
一方の奈緒子にしてみれば、琉球は歴史上の名称。
これが仮にも大学教授の上田であれば、琉球の知識も多分にあっただろうが、奈緒子にそれは望むべくもない。
どうやら、異文化コミュニケーションは難航しそうである。
これが仮にも大学教授の上田であれば、琉球の知識も多分にあっただろうが、奈緒子にそれは望むべくもない。
どうやら、異文化コミュニケーションは難航しそうである。
【G-7 豪華客船の甲板/1日目・深夜】
【山田奈緒子@TRICK】
[状態]:健康
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1~3、奈緒子の手品道具@TRICK、魔術協会制服@Fate/Grand Order、手榴弾×3
[思考・状況]
基本方針:元の生活に帰る。
1:褐色の少年(猛丸)と話す。いつの時代の人だ?
2:上田さんを探す。
[備考]
※参戦時期は第3シリーズ以降です。
※自分の支給品は確認済みです。
[状態]:健康
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1~3、奈緒子の手品道具@TRICK、魔術協会制服@Fate/Grand Order、手榴弾×3
[思考・状況]
基本方針:元の生活に帰る。
1:褐色の少年(猛丸)と話す。いつの時代の人だ?
2:上田さんを探す。
[備考]
※参戦時期は第3シリーズ以降です。
※自分の支給品は確認済みです。
【猛丸@衛府の七忍】
[状態]:健康
[道具]:
[思考・状況]
基本方針:琉球に戻る。
1:長髪の女性(奈緒子)と話す。大和人か?
2:ゲンノスキ(幻之介)を探す。
[備考]
※参戦時期は原作3巻終了時点です。
※自分の支給品を把握していません。
[状態]:健康
[道具]:
[思考・状況]
基本方針:琉球に戻る。
1:長髪の女性(奈緒子)と話す。大和人か?
2:ゲンノスキ(幻之介)を探す。
[備考]
※参戦時期は原作3巻終了時点です。
※自分の支給品を把握していません。
【奈緒子の手品道具@TRICK】
猛丸に支給された。
大人気天才マジシャン、山田奈緒子の商売道具一式。
作中で奈緒子が披露したマジックの道具が、いくつかセットになっている。例えば、ゾンビボールやトランプなど。
奈緒子の金銭事情を反映して、どれも安く手に入るものである。
猛丸に支給された。
大人気天才マジシャン、山田奈緒子の商売道具一式。
作中で奈緒子が披露したマジックの道具が、いくつかセットになっている。例えば、ゾンビボールやトランプなど。
奈緒子の金銭事情を反映して、どれも安く手に入るものである。
【魔術協会制服@Fate/Grand Order】
猛丸に支給された。
魔術協会の時計塔が優秀と認めた生徒に送られる魔術礼装。
スキルは「全体回復」・「霊子譲渡」・「コマンドシャッフル」の3つ。
どのように使用できるかは不明。
猛丸に支給された。
魔術協会の時計塔が優秀と認めた生徒に送られる魔術礼装。
スキルは「全体回復」・「霊子譲渡」・「コマンドシャッフル」の3つ。
どのように使用できるかは不明。
【手榴弾@現実】
猛丸に支給された。
3個セット。取り扱いには注意されたし。
猛丸に支給された。
3個セット。取り扱いには注意されたし。
| 前話 | お名前 | 次話 |
| 拝啓、桜舞い散るこの日に | 山田奈緒子 | 探し人はおらず |
| Debut | 猛丸 |