殺し合いの利点 ◆2lsK9hNTNE
静かな林の中、BBという女の説明が終わった後も石上優は動けずにいた
(嘘だろ……? 藤原先輩が?)
見せしめのように首輪を爆破された少女、彼女は石上の知り合いだった。石上の通う秀知院学園の先輩であり、同じ生徒会に働く仲間だった。常識知らずで腹黒くて恥の欠落した人だったが、決して悪い人間では無かったし、間違ってもあんな無残に殺されていい人間ではなかった。
(いや……だけどあの映像は本物だったのか?)
突然得体の知れないなにかに引きずり込まれり、テレパシーみたいに声と映像が送られてきたり。
異常な出来事が続いているのだ。あの映像だって幻覚で、本当の藤原先輩は生きているのかもしれない。
異常な出来事が続いているのだ。あの映像だって幻覚で、本当の藤原先輩は生きているのかもしれない。
(そうだ。あんなおかしな奴のやったこと、素直に真に受けるほうがどうかしてる!)
そう考えて石上は自分を持ち直す。それは逃避ではあったが、自分を保つ手段として悪いことではなかった。
と、その時近くからガサリと音が聞こえた。
と、その時近くからガサリと音が聞こえた。
「だ、誰だ!」
石上はとっさに近くにあったリュックに手を突っ込み、掴んだ物を取り出した。拳銃だった。両手で持ってもなお軽くない重量が、これが玩具などではなく本物であることを主張している。
自分で出した物体に自分で慄いた。手が震える。それでも石上は銃を音のした方向へと向けた。
木の陰から両手を上げながら男が出てきた。
自分で出した物体に自分で慄いた。手が震える。それでも石上は銃を音のした方向へと向けた。
木の陰から両手を上げながら男が出てきた。
「撃つな。僕は殺し合いに乗るつもりはない」
あまり特徴のない男だった。歳は石上と大きく離れてはなさそうだ。高校生だろうか? しかし服装はどこかの警備員かなにかのようにも見える。
「口ではなんとでも言えるだろ、そんなの!」
「わかってる! だから証明としていまからリュックをそっちに投げる。動くけど撃つなよ」
「わかってる! だから証明としていまからリュックをそっちに投げる。動くけど撃つなよ」
男はそう言って、背負っていたリュックサックを外した。勢いをつけるため前後に揺らす。妙な動きが無いか、男を観察することに石上の全神経が注がれた。
リュックが投げられ石上の近くに落ちる。なにも起こらない。男は動かずに立ち止まま言った。
リュックが投げられ石上の近くに落ちる。なにも起こらない。男は動かずに立ち止まま言った。
「君が殺し合いに乗ってないなら近づいて話し合いたい。承諾するなら銃を下ろしてくれ」
石上の頭に先程の映像が過る。動かなくなった藤原千花。まだあの光景を信じたわけではないが、自分がああなってもおかしくない状況に置かれているのは間違いないことだった。
目の前の男は本当に殺し合いに乗っていないのか? リュックを投げたのも僕を油断させるための罠じゃないのか?
疑念は際限なく湧いてくる。確かなのはここであの男を撃てば自分が殺されることはないだろうということ。引き金に掛けた指が揺れた。だが、
目の前の男は本当に殺し合いに乗っていないのか? リュックを投げたのも僕を油断させるための罠じゃないのか?
疑念は際限なく湧いてくる。確かなのはここであの男を撃てば自分が殺されることはないだろうということ。引き金に掛けた指が揺れた。だが、
「……わかった。承諾する」
石上は撃たないことを選んだ。決めてになったのも先ほどの藤原千花の姿だ。人をあんな状態にするような覚悟は石上には無かった。
男は工藤仁と名乗った。石上と同じようになにかに引きずり込まれたような感覚がして、気がついたらここにいたという。高校三年生らしいが、肝が座っているというか、いやに落ち着いている。まだ事実とは認めていないが、知人の死を見せられた直後の石上からすれば癪に障るくらい冷静だった。
実際に「どうしてそんな冷静でいられるんですか」とつい口に出してしまったが、
実際に「どうしてそんな冷静でいられるんですか」とつい口に出してしまったが、
「昔からそういう質なんだ。妹にもよく冷たいって言われる」
そう自嘲するように言った。
「いえ、すいません。八つ当たりみたいなこと言って」
不快に感じてはしまったが、その冷静さは間違いなく頼りになるし、石上が幾分か落ち着きを取り戻せたのも彼の論理的な語り口のおかげでもある。
「まあ多少イラつくくらいはしょうがないよ。ただでさえ混乱することだらけだっていうのに、殺し合いと真偽不明の知人の殺害、おまけに参加者の中に佐藤みたいな奴までいるっていうんだから」
「佐藤?」
「佐藤?」
知らない名前で聞き返すと、工藤は意外そうにした。
「名簿に載ってただろ。ほとんどの参加者はフルネームで書かれてるのに、佐藤とだけ書かれてるってことは、たぶん亜人の佐藤のことだろ?」
名簿、そういえばBBがそんなことを言っていた気がする。直前の爆破映像のせいでろくに頭に入っていなかった。
「ちょっと待ってください。いま確認します」
リュックを漁ってそれらしき物を取り出す。佐藤の名前を探すが、見つける前に別の名前に石上の目は止まった
「会長……四宮先輩……」
「知り合いの名前でもあった?」
「はい……僕の通ってる高校の会長と副会長の名前が……僕、生徒会の会計をやってるんです」
「知り合いの名前でもあった?」
「はい……僕の通ってる高校の会長と副会長の名前が……僕、生徒会の会計をやってるんです」
またしても先程の爆破映像が浮かぶ。もしかしたらいまこうしている間にも会長と四宮先輩が死んでしまうかもしれない。石上はいますぐ走り出して、ふたりを探したい衝動に駆られた。だが首を振ってその誘惑を断ち切る。
ここで考え無しに動いてもふたりを助けられるわけがない。重要なのは自分の状況をしっかりと確認すること。そしてその後にどう行動するかしっかりと考えることだ。
石上は自分のリュックの中を確認した。それから工藤の支給品を教えてもらったり、会長と四宮先輩の特徴を教えたり、情報交換を行った。
そして話はもっとも重要なポイント、これからどうするかという段階に至った。
地面に広げた地図を指さしながら石上は言った。
石上は自分のリュックの中を確認した。それから工藤の支給品を教えてもらったり、会長と四宮先輩の特徴を教えたり、情報交換を行った。
そして話はもっとも重要なポイント、これからどうするかという段階に至った。
地面に広げた地図を指さしながら石上は言った。
「僕は秀知院学園に行きたいと思っています。僕たちが通っている学園なので、もしかしたら会長たちがそこに向かってるかも」
「良い考えとは言えないな。その人たちが石上の言う通りに向かっているとしても、タイミングが合わなければすれ違いになる。仮に合流できたとしても、強力な武器を持った危険な参加者と遭遇したらまとめて殺されるかもしれない」
「……じゃあ工藤さんはどこに向かうのがいいと思うんですか?」
「自衛隊入間基地だ」
「良い考えとは言えないな。その人たちが石上の言う通りに向かっているとしても、タイミングが合わなければすれ違いになる。仮に合流できたとしても、強力な武器を持った危険な参加者と遭遇したらまとめて殺されるかもしれない」
「……じゃあ工藤さんはどこに向かうのがいいと思うんですか?」
「自衛隊入間基地だ」
工藤は秀知院学園の反対方向にある施設を指さした。
「自衛隊の基地なら、身を守るための武器や、治療器具、予備の水や食料なんかもあるはずだ。もちろん名前や外観だけでなく内装もちゃんと再現されてればだけど。銃まで支給して殺し合わせようって奴だ、武器くらいは期待できる。懸念は同じようなことを考えた危険な参加者も集まりそうってことだけど、幸い僕たちの位置は入間基地と近いから着くまでに時間は掛からない」
全く反論のしようがない提案に石上は舌を巻いた。会長たちを助けるという観点に置いても、わずかな可能性に賭けて秀知院学園に行くより、会った時に備えて入念な準備をしておくほうがずっと建設的だ。
「わかりました。入間基地に行きましょう」
石上が頷くと、時間は無駄にできないとばかりに工藤は立ち上がった。石上も後に続きながら、ふと気になったことを尋ねた。。
「そういえば亜人の佐藤っていうのはなんなんですか?」
「……ニュースで報道された凶悪犯だよ。聞いたことない?」
「いえ、あんまりニュースとか見ないんで」
「そっか。それなら仕方ないね」
「……ニュースで報道された凶悪犯だよ。聞いたことない?」
「いえ、あんまりニュースとか見ないんで」
「そっか。それなら仕方ないね」
X X X X X
(んなわけないだろ!)
工藤は胸中で叫んだ。
ニュースを見てないから佐藤を知らない? そんなわけはない。あの佐藤だぞ。ネットで顔出しの犯行声明出しまくって、都心の高層ビルに飛行機まで落としたあの佐藤。避けようとしたって嫌でも耳に入る。ニュースを見ない程度で知らないはずがない。
テレビすらないようなよっぽどのど田舎の人間ならありえるかもしれないが、石上の立ち振る舞いからそうではないことはわかる。かといって嘘をついているようにも見えないし、そもそもこんな嘘をつく意味もない。それに石上は佐藤どころか亜人という言葉にも馴染みがないようだった。
亜人。十七年前にアフリカで初めて発見された不死身の新人種。基本的には普通の人間と変わらず、怪我だってするが、死ぬとそれまで受けた傷も全て治癒して蘇生する人間。
工藤が物心ついた時にはすでに常識として世界中に知れ渡っていた。田舎どころか未開の部族でもなければ知らないなんてありえない。BBが引き起こす現象の数々よりも、亜人をそっちのほうがよっぽど不可解だ。
ニュースを見てないから佐藤を知らない? そんなわけはない。あの佐藤だぞ。ネットで顔出しの犯行声明出しまくって、都心の高層ビルに飛行機まで落としたあの佐藤。避けようとしたって嫌でも耳に入る。ニュースを見ない程度で知らないはずがない。
テレビすらないようなよっぽどのど田舎の人間ならありえるかもしれないが、石上の立ち振る舞いからそうではないことはわかる。かといって嘘をついているようにも見えないし、そもそもこんな嘘をつく意味もない。それに石上は佐藤どころか亜人という言葉にも馴染みがないようだった。
亜人。十七年前にアフリカで初めて発見された不死身の新人種。基本的には普通の人間と変わらず、怪我だってするが、死ぬとそれまで受けた傷も全て治癒して蘇生する人間。
工藤が物心ついた時にはすでに常識として世界中に知れ渡っていた。田舎どころか未開の部族でもなければ知らないなんてありえない。BBが引き起こす現象の数々よりも、亜人をそっちのほうがよっぽど不可解だ。
(ひょっとして他の参加者もこんな感じなのか? 偽名を名乗るべきじゃなかったか?)
そう。なにを隠そう工藤仁という名前は名簿を見て決めた嘘の名前だ。本名は永井圭という。永井自身が亜人であり、佐藤ほどではないがその名前は世界中に知られている。しかも同じ亜人の犯罪者である佐藤の仲間だと世間では考えられている。実際は逆に敵対しているのだが。
バカ正直に本名を名乗っても無駄に警戒されるだけだ。わざわざ名簿で自分と佐藤の名前が並んでいることから、関係のある人間の名前が近くに載ると推理し、知り合いが参加してなさそうな、名簿の最後――佐藤に次に名を連ねる工藤仁の名前を選択したのだが。余計な心配だったかもしれない。
バカ正直に本名を名乗っても無駄に警戒されるだけだ。わざわざ名簿で自分と佐藤の名前が並んでいることから、関係のある人間の名前が近くに載ると推理し、知り合いが参加してなさそうな、名簿の最後――佐藤に次に名を連ねる工藤仁の名前を選択したのだが。余計な心配だったかもしれない。
(まあでも、なんで石上が知らないかなんてすぐに考えなくてもいい。どの道情報が少なすぎてわかんないし)
少なくとも石上優という男は話が通じないような人間ではないし、理屈で感情を抑えられるだけの知能もある。知り合いの首と胴が離れる映像を見せられた直後という点も加味すれば、なかなかに使えそうな人間だ。
石上のことを見つけた時、彼が酷く動揺していることはひと目でわかった。わざと物音を立てて、反応を伺ったが、銃の持ち方は明らかな素人。丸腰でも対処できる相手と判断して、姿を見せて、リュックを投げた。話し合いに持ち込んで、当初からの目的地である入間基地への同行者を得ることに成功した。
永井には使える人間と武器が必要だった。
BBは言った。バトルロワイアルは最後にひとりになるまで続けられると。しかし不死身の亜人がふたり以上参加している時点で、それは達成不可能だ。
石上と同じように亜人の存在を知らなかったのかもしれない。達成できない条件を達成しようと右往左往する参加者たちを嘲笑っているだけかもしれない。だが永井の中ではもうひとつ別の可能性が浮かんでいた。
石上のことを見つけた時、彼が酷く動揺していることはひと目でわかった。わざと物音を立てて、反応を伺ったが、銃の持ち方は明らかな素人。丸腰でも対処できる相手と判断して、姿を見せて、リュックを投げた。話し合いに持ち込んで、当初からの目的地である入間基地への同行者を得ることに成功した。
永井には使える人間と武器が必要だった。
BBは言った。バトルロワイアルは最後にひとりになるまで続けられると。しかし不死身の亜人がふたり以上参加している時点で、それは達成不可能だ。
石上と同じように亜人の存在を知らなかったのかもしれない。達成できない条件を達成しようと右往左往する参加者たちを嘲笑っているだけかもしれない。だが永井の中ではもうひとつ別の可能性が浮かんでいた。
(もしかしたら、亜人の再生能力が抑制されているのかもしれない)
現在の研究では、亜人は寿命以外のあらゆる死から蘇生できるとされている。周りを海に囲まれた島だろうと溺死と蘇生を繰り返せば脱出は可能だ。人の人格を司る頭が切り離されれば元の人格は死んでしまうので、首輪で牽制はできるか(佐藤は気にしないが)、一度首輪が爆発したら終わりだ。簡単にバトルロワイアルから抜け出せる。
あの趣味の悪そうな女がそんなことを許すとは思えない。現代の常識を外れた現象をすでにいくつも起こしているのだ。亜人の能力にさえも干渉できると考えたほうが妥当だろう。
あの趣味の悪そうな女がそんなことを許すとは思えない。現代の常識を外れた現象をすでにいくつも起こしているのだ。亜人の能力にさえも干渉できると考えたほうが妥当だろう。
(そしてだとしたら)
永井は少し前に、仲間と協力して行った佐藤打倒の作戦を打ち破られたばかりだった。どうやったら佐藤を倒せるのか。もはやなにひとつとして方法は思いつかない。それでも戦うために永井は仲間たちと合流した。ここに連れてこられたのはそのすぐ後のことだった。
(倒せるかもしれない。佐藤を)
それはこの最低最悪のバトルロワイアルにおいての数少ない参加するメリットだ。
【C-4・林/1日目・深夜】
【石上優@かぐや様は告らせたい】
[状態]:
[装備]:拳銃(詳細は後続の書き手にお任せします)
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品0~2
[思考・状況]
基本方針:会長や四宮先輩と一緒に生き残る
1.自衛隊入間基地に向かう
2:会長と四宮先輩を探す
[備考]
※文化祭終了後からの参戦
※永井圭の名前を工藤仁だと思っています
※永井の支給品を教えてもらいましたが、どこまで本当のことを教えられたかわかりません
【石上優@かぐや様は告らせたい】
[状態]:
[装備]:拳銃(詳細は後続の書き手にお任せします)
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品0~2
[思考・状況]
基本方針:会長や四宮先輩と一緒に生き残る
1.自衛隊入間基地に向かう
2:会長と四宮先輩を探す
[備考]
※文化祭終了後からの参戦
※永井圭の名前を工藤仁だと思っています
※永井の支給品を教えてもらいましたが、どこまで本当のことを教えられたかわかりません
【永井圭@亜人】
[状態]:
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1~3
[思考・状況]
基本方針:佐藤を倒す
1.自衛隊入間基地に向かう
2:使える武器や人員の確保
[備考]
※File:48(10巻最終話)終了後からの参戦
※工藤仁と名乗っています
※亜人の蘇生能力になんらかの制限があるのではないかと考えています
[状態]:
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1~3
[思考・状況]
基本方針:佐藤を倒す
1.自衛隊入間基地に向かう
2:使える武器や人員の確保
[備考]
※File:48(10巻最終話)終了後からの参戦
※工藤仁と名乗っています
※亜人の蘇生能力になんらかの制限があるのではないかと考えています
| 前話 | お名前 | 次話 |
| Debut | 石上優 | 石上優は叫びたい |
| Debut | 永井圭 |