石上優は叫びたい ◆rjD2cwIMXU
自衛隊の基地を目指す。
永井圭の立てた方針は一切間違っていなかった。
殺し合いに巻き込まれたとなれば、誰だって武器は欲しい。出来れば遠くから一方的に攻撃できる銃器が。
70人という大多数で殺し合うならば当然そう簡単には決着はつかないわけで。そうなると食料も水も欲しい。
怪我をした時に備えて治療器具、施設も欲しい。そんな都合の良い建物などそうはないだろう。
ここまで条件がそろってくると、全ての条件を満たす自衛隊の基地を目指さないなど逆にあり得ないとさえ思ってしまう。
だから、やはり彼の方針は間違っていなかったのだ。
永井圭の立てた方針は一切間違っていなかった。
殺し合いに巻き込まれたとなれば、誰だって武器は欲しい。出来れば遠くから一方的に攻撃できる銃器が。
70人という大多数で殺し合うならば当然そう簡単には決着はつかないわけで。そうなると食料も水も欲しい。
怪我をした時に備えて治療器具、施設も欲しい。そんな都合の良い建物などそうはないだろう。
ここまで条件がそろってくると、全ての条件を満たす自衛隊の基地を目指さないなど逆にあり得ないとさえ思ってしまう。
だから、やはり彼の方針は間違っていなかったのだ。
問題はたった一つ。
それらの条件を求めているのは自分たちだけではなく。
「コラー!貴様ら待たんか! 我がZOI帝国の礎となれい!」
殺し合いに乗った人物が同じ理由で自衛隊の基地を目指していたということだった。
更に言うなら、運が悪いことに永井圭と石上優はそんなヤツとバッタリと遭遇してしまったことだった。
更に言うなら、運が悪いことに永井圭と石上優はそんなヤツとバッタリと遭遇してしまったことだった。
(にしても……運が悪いな)
想定していた状況の一つではあったが、それでも舌打ちの一つもしたくなる。
本来はもっと早く基地につく予定だったのだ。
そうだったなら今頃自分たちを追い回している筋肉野郎を蜂の巣に出来ていたかもしれないのに。
本来はもっと早く基地につく予定だったのだ。
そうだったなら今頃自分たちを追い回している筋肉野郎を蜂の巣に出来ていたかもしれないのに。
「もしかしたらあの高台からスナイパーが狙ってるかも……僕そういうゲームやったことあるんで分かるんですよ……」
なんて石上のビビリ丸出しの発想で迂回に迂回を重ねてきたのが仇になった。
林を抜け市街地に入り、基地まであと少しというところで数百メートル先からこちらに爆進してくる大男に捕捉されてしまったのだ。
あからさまにヤバい男だと、遠目からでも分かった。
意味の分からないことを叫びながら、力を誇示するかのように近くの大木を薙ぎ倒す。
それを見た時点で交流する気も交渉する気も失せた。なにあの馬鹿力。本当に人間か?
林を抜け市街地に入り、基地まであと少しというところで数百メートル先からこちらに爆進してくる大男に捕捉されてしまったのだ。
あからさまにヤバい男だと、遠目からでも分かった。
意味の分からないことを叫びながら、力を誇示するかのように近くの大木を薙ぎ倒す。
それを見た時点で交流する気も交渉する気も失せた。なにあの馬鹿力。本当に人間か?
(亜人である俺や佐藤が名簿にいる時点で、普通じゃないやつらがいることは想定してたが……)
こうも分かりやすい超人とはな。
こちらが必死こいて這い上ったフェンスをひとっ飛びで飛び越える様には眩暈がする。
一瞬、自分のような亜人が操る影、IBMなのではないかとも思ったが、ヤツが近づけば近づくほど、どう見ても大柄な人間にしか見えない。
こちらが必死こいて這い上ったフェンスをひとっ飛びで飛び越える様には眩暈がする。
一瞬、自分のような亜人が操る影、IBMなのではないかとも思ったが、ヤツが近づけば近づくほど、どう見ても大柄な人間にしか見えない。
(さて、どうする。時間はない)
最初は豆粒くらいの大きさに見えていた男が、今や目鼻立ちまで見えつつある。
距離が詰まっている。単純な速さで向こうがこちらを上回っているのだ。
曲がり角をジグザグに進み相手に「カーブの際に減速する」ということを強いていなければ、最高速度で劣る圭たちはとっくに追いつかれていただろう。
しかしそれも限界。タイムリミットは残り数分といったところか。
距離が詰まっている。単純な速さで向こうがこちらを上回っているのだ。
曲がり角をジグザグに進み相手に「カーブの際に減速する」ということを強いていなければ、最高速度で劣る圭たちはとっくに追いつかれていただろう。
しかしそれも限界。タイムリミットは残り数分といったところか。
それまでにするべきことを決めねばならない。
立ち止まり迎え撃つ、という選択肢は出来れば取りたくなかった。
理由は単純。ヤツの能力に関してまだ分かっていないことがあるかもしれないからだ。
亜人のような再生力があるかもしれない。
何か飛び道具を持っているかもしれない。
それこそ、IBMのような力で異形を操れる可能性だってある。
これが自分と同じ亜人であったなら圭にもやりようはあっただろう。
もしくは、鍛えられているとはいえ人間の範疇に収まる存在ならば、何度もやりあったことがある。
しかし、素手で大木を折り、一度に5メートルはジャンプし、更に能力の全容がつかめていない男を相手取るには、今の圭はあまりにも無力だった。
亜人は死なない。
その再生力を応用していくつもの裏技じみた行為は行えるし、IBMという影のような偉業を扱える者もいる。
だがそれで、それだけで超人に絶対勝てるという確信も、自信も、圭は持ち合わせていない。
亜人は死なない。だけど、死なないだけなのだ。
身体能力は普通の人間と変わらないし、今は『どこまで死なないか』も分かっていない。
頼みの綱のIBMも、圭の言うことを全然聞いてくれない不良品だ。
亜人のような再生力があるかもしれない。
何か飛び道具を持っているかもしれない。
それこそ、IBMのような力で異形を操れる可能性だってある。
これが自分と同じ亜人であったなら圭にもやりようはあっただろう。
もしくは、鍛えられているとはいえ人間の範疇に収まる存在ならば、何度もやりあったことがある。
しかし、素手で大木を折り、一度に5メートルはジャンプし、更に能力の全容がつかめていない男を相手取るには、今の圭はあまりにも無力だった。
亜人は死なない。
その再生力を応用していくつもの裏技じみた行為は行えるし、IBMという影のような偉業を扱える者もいる。
だがそれで、それだけで超人に絶対勝てるという確信も、自信も、圭は持ち合わせていない。
亜人は死なない。だけど、死なないだけなのだ。
身体能力は普通の人間と変わらないし、今は『どこまで死なないか』も分かっていない。
頼みの綱のIBMも、圭の言うことを全然聞いてくれない不良品だ。
それに、よしんばそれでも勝利したとして、間違いなく同行者である石上には圭が亜人であることが分かってしまうだろう。
そんな時、今まで自分と普通に話していた人間が『死なない存在』であると知った時。
普通の人間がどんな反応をしていかなる行動をとるのか、圭は嫌なくらいに知っていた。
そして、残念ながら圭の目から見た石上は、普通の人間でしかなかったのだ。
そんな時、今まで自分と普通に話していた人間が『死なない存在』であると知った時。
普通の人間がどんな反応をしていかなる行動をとるのか、圭は嫌なくらいに知っていた。
そして、残念ながら圭の目から見た石上は、普通の人間でしかなかったのだ。
「石上」
だから、ただ運が悪かったのだ。
もっと石上と圭が親交を深める時間があれば。
もしくは、亜人であると明かすべき適したタイミングがあったなら。
全ては可能性の話でしかない。可能性を夢見て現実から逃避し死ぬなど、まっぴらごめんだ。
あったかもしれない甘美な夢を振り切りながら、圭は現実を鑑みて最もリスクの少ない道を選んだ。
もっと石上と圭が親交を深める時間があれば。
もしくは、亜人であると明かすべき適したタイミングがあったなら。
全ては可能性の話でしかない。可能性を夢見て現実から逃避し死ぬなど、まっぴらごめんだ。
あったかもしれない甘美な夢を振り切りながら、圭は現実を鑑みて最もリスクの少ない道を選んだ。
「アイツをかく乱するために、ここからは二手に分かれよう」
命の価値はTPOで変わる。
この場面においても、もしも圭が家族やそれに近しい間柄の人間と一緒だったならこの選択肢は取らなかっただろう。
なんとか全員で助かる方法を考え、自分が亜人であると明かして襲撃者に戦いを挑んでいたかもしれない。
だが石上はそうではなかった。
ついさっき知り合ったばかりの他人でしかなかった。
そして圭も、恐らくは完全なる不死ではなかった。
圭だって、死にたくなかった。
赤の他人の命の重さと自分の命の重さが、天秤にかけられる。
どちらも同じ天秤に乗せることは出来ない。
この場面においても、もしも圭が家族やそれに近しい間柄の人間と一緒だったならこの選択肢は取らなかっただろう。
なんとか全員で助かる方法を考え、自分が亜人であると明かして襲撃者に戦いを挑んでいたかもしれない。
だが石上はそうではなかった。
ついさっき知り合ったばかりの他人でしかなかった。
そして圭も、恐らくは完全なる不死ではなかった。
圭だって、死にたくなかった。
赤の他人の命の重さと自分の命の重さが、天秤にかけられる。
どちらも同じ天秤に乗せることは出来ない。
(それでも……運が良ければどちらも助かる)
もしも男が圭を追って来たならば。
石上も誰も見ていないところで亜人の力をフル活用して、なんとか勝てるように努力するだろう。
それで勝てたならば自衛隊基地で石上と合流して全てが丸く収まる。
ハッピーエンドの可能性は潰えてはいない。
だから、二分の一だ。石上もそれなら文句はないだろう。
僕は石上のために命を賭けて戦う気なんてないが、自分が助かるためなら戦える。
その時が来る瞬間まで、圭は自分を納得させるための言い訳を脳内で並べ立てた。
石上も誰も見ていないところで亜人の力をフル活用して、なんとか勝てるように努力するだろう。
それで勝てたならば自衛隊基地で石上と合流して全てが丸く収まる。
ハッピーエンドの可能性は潰えてはいない。
だから、二分の一だ。石上もそれなら文句はないだろう。
僕は石上のために命を賭けて戦う気なんてないが、自分が助かるためなら戦える。
その時が来る瞬間まで、圭は自分を納得させるための言い訳を脳内で並べ立てた。
「じゃあ次の曲がり角、僕は右な」
「……分かりました。それでは、基地で会いましょう」
石上との別れはとてもあっさりしていた。
漫画のように感傷に浸る時間などなかった。
少しでも足を止めればすぐそこまで迫りくる大男に追いつかれ、殺されるかもしれないのだ。
今は死に物狂いで走り続け、少しでもこの場から遠ざかることこそが重要だった。
それに、今は余計なことなど考えたくなかった。
漫画のように感傷に浸る時間などなかった。
少しでも足を止めればすぐそこまで迫りくる大男に追いつかれ、殺されるかもしれないのだ。
今は死に物狂いで走り続け、少しでもこの場から遠ざかることこそが重要だった。
それに、今は余計なことなど考えたくなかった。
走って、走って。
自衛隊の基地が目前まで見えて来て。
ようやく後ろを振り返った時、圭は一人だった。
大男は圭を追いかけてきていなかった。
当然、石上もいなかった。
その意味が分からぬほど、圭は愚かではなかった。
都合の良いハッピーエンドに至るための最初の二分の一を外した。
それだけの話だ。
自衛隊の基地が目前まで見えて来て。
ようやく後ろを振り返った時、圭は一人だった。
大男は圭を追いかけてきていなかった。
当然、石上もいなかった。
その意味が分からぬほど、圭は愚かではなかった。
都合の良いハッピーエンドに至るための最初の二分の一を外した。
それだけの話だ。
圭は、引き返さなかった。
「逃げて、何が悪い」
♪
「ばっ……ばけものっ……」
「ワハハハハッ!それで終わりか、若僧?」
追いかけっこの果て、ついにお目当ての逃亡者を追いつめた先で。
もうやるしかないと決死の覚悟を決めた少年の表情が絶望に染まっていくのを見て。
彼の放った銃弾を鋼鉄化した皮膚でバコンと跳ね返しながら、今之川権三は笑った。
今、コイツは人を殺す咎を背負うつもりで拳銃を権三に向けたのだろう。
その想いを、ゴミのように踏みにじる。そう、貴様はワシにとって道端に落ちているジュースの缶にすぎん。
2対1だったにもかかわらず逃げ惑うということは、自分たちにはロクに力がないと公言しているに等しい。
そう考えれば、あとは楽しい狩りの時間に過ぎなかった。最終的に二手に分かれたのは面倒だったが。
もうやるしかないと決死の覚悟を決めた少年の表情が絶望に染まっていくのを見て。
彼の放った銃弾を鋼鉄化した皮膚でバコンと跳ね返しながら、今之川権三は笑った。
今、コイツは人を殺す咎を背負うつもりで拳銃を権三に向けたのだろう。
その想いを、ゴミのように踏みにじる。そう、貴様はワシにとって道端に落ちているジュースの缶にすぎん。
2対1だったにもかかわらず逃げ惑うということは、自分たちにはロクに力がないと公言しているに等しい。
そう考えれば、あとは楽しい狩りの時間に過ぎなかった。最終的に二手に分かれたのは面倒だったが。
「奥の手もなしとはつまらんぞい!つまらんぞい!」
そう言いながらも権三は喜色を隠そうともしない。
どうとでも出来る圧倒的格下を前にした全能感が権三の心を満たしていく。
権三が即座に少年を殺さないのは、先ほど出会った恐るべき男にしてやられた鬱憤を晴らすためでしかない。
このジュースを飲み干して鉄分を補給する前にちょいと缶蹴りをしてやるか、という気まぐれでしかなかった。
どうとでも出来る圧倒的格下を前にした全能感が権三の心を満たしていく。
権三が即座に少年を殺さないのは、先ほど出会った恐るべき男にしてやられた鬱憤を晴らすためでしかない。
このジュースを飲み干して鉄分を補給する前にちょいと缶蹴りをしてやるか、という気まぐれでしかなかった。
青ざめていく少年の顔を観察しながらわざとのっそりのっそり近づいて、まずは拳銃を彼の手から無理やりむしり取る。
ひょっろこいモヤシ男の抵抗など、今の権三にとっては赤ん坊と綱引きをするようなものだった。
彼の目の前で拳銃を紙細工のようにぐしゃりと潰した時の表情もまた溜まらない。
ついに少年はその場にへたり込み、小便を漏らし始めた。
ひょっろこいモヤシ男の抵抗など、今の権三にとっては赤ん坊と綱引きをするようなものだった。
彼の目の前で拳銃を紙細工のようにぐしゃりと潰した時の表情もまた溜まらない。
ついに少年はその場にへたり込み、小便を漏らし始めた。
楽しくて楽しくてたまらなかった。
生前、人を超えたこの力で今まで自分をバカにした連中を嬲っていくのは気持ちよかった。
はじめて会った人間も、誰よりも税金を納めている自分を敬っていない時点で同罪だ。
特に学校に通っているガキなど、権三の税金で授業を受けさせていただいているようなもの。
ならば、この今之川権三の娯楽として使い潰されるのも当然と言える。
74歳独身にして新たに得たこの娯楽は、止められない止まらない麻薬のような中毒性があった。
はじめて会った人間も、誰よりも税金を納めている自分を敬っていない時点で同罪だ。
特に学校に通っているガキなど、権三の税金で授業を受けさせていただいているようなもの。
ならば、この今之川権三の娯楽として使い潰されるのも当然と言える。
74歳独身にして新たに得たこの娯楽は、止められない止まらない麻薬のような中毒性があった。
「さて、お前を殺すのは簡単ぞい。だが、それじゃ面白くないよなァ?」
支給品の名を拡声器という。
機械を通して声のボリュームを上げるためのもの。
聴衆に対しての演説も出来る。軍勢に対しての指令も出せる。
それに。
聴衆に対しての演説も出来る。軍勢に対しての指令も出せる。
それに。
「これを使って、お前のツレを連れ戻すぞい!」
遠くに逃げた「おかわり」に対しての呼びかけにも使える代物だった。
「命乞いをしても良い。素直に助けを求めても良い。
もしもお前の熱演を聞いて、逃げたヤツが戻って来たら……」
もしもお前の熱演を聞いて、逃げたヤツが戻って来たら……」
お前は逃がしてやってもいいぞい。権三は悪戯っ子の表情を作る。
嘘である。
そんなつもりはさらさらなかった。
ジュースを買って、当たりが出たらもう一本。
「これ」はその程度の遊びでしかなかった。
ジュースを買って、当たりが出たらもう一本。
「これ」はその程度の遊びでしかなかった。
泣き叫びながら仲間に助けを乞う哀れな少年を見るのは楽しい。
彼を救うために正義の味方面して戻ってきた仲間を叩き潰すのも楽しい。
もしくは、仲間に見放され恨み言を吐き出しながら死んでいく少年を嘲うのも楽しいだろう。
彼を救うために正義の味方面して戻ってきた仲間を叩き潰すのも楽しい。
もしくは、仲間に見放され恨み言を吐き出しながら死んでいく少年を嘲うのも楽しいだろう。
権三にとってはどう転んでも楽しくなるショータイム。
ワクワクしながらその始まりを待つ権三の前で。
少年は拡声器を拾い、息を吸い、吐いて。少し吐きそうになるのを堪えて。
ワクワクしながらその始まりを待つ権三の前で。
少年は拡声器を拾い、息を吸い、吐いて。少し吐きそうになるのを堪えて。
絞り出すように声を出した。
『う…………』
「う?」
『うるせえ バァカ!!』
♪
石上優には特技がある。
瞳を見ればその人の本性の5%を理解できるのだ。
だから、目の前の大男がとんでもなくゲスであることは理解していた。
5%どころか100%クソヤロウだと確信できた。
石上を見逃してやるなど真っ赤な嘘であることも、自分はもう助からないことも理解出来た。
出来てしまっていた。
瞳を見ればその人の本性の5%を理解できるのだ。
だから、目の前の大男がとんでもなくゲスであることは理解していた。
5%どころか100%クソヤロウだと確信できた。
石上を見逃してやるなど真っ赤な嘘であることも、自分はもう助からないことも理解出来た。
出来てしまっていた。
それはそうと死にたくもなかった。
はいそーですかと潔く自死してやるつもりもなかった。
10代半ばで生を終えることも認めたくなかった。
やりたいゲームは無数にあるし、大好きな先輩に告白も出来ていない。
僕は変わるんだ。少しずつでも変わっていくんだ。
最近、ようやく決意したばかりだった。
人生を諦めたくなど、なかった。
はいそーですかと潔く自死してやるつもりもなかった。
10代半ばで生を終えることも認めたくなかった。
やりたいゲームは無数にあるし、大好きな先輩に告白も出来ていない。
僕は変わるんだ。少しずつでも変わっていくんだ。
最近、ようやく決意したばかりだった。
人生を諦めたくなど、なかった。
ならば。
石上が取るべき行為は、ひとまずは男に従い生き延びるチャンスをうかがうことだったのだろう。
情けなく命乞いをし、必死に声を張り、逃げ出した工藤に助けを乞い、一分でも一秒でも一瞬でも長く生きる努力をするべきだったのだろう。
自分の命を握っている、いつでも握りつぶせる目の前の男のご機嫌伺いをすることこそが長生きの秘訣だと分かってはいた。
自分の命を握っている、いつでも握りつぶせる目の前の男のご機嫌伺いをすることこそが長生きの秘訣だと分かってはいた。
だけど。
「これを使って、逃げたお前の仲間を連れ戻すぞい!」
それでも石上は許せなかったのだ。
自分が助かるための交渉材料として身内を売ること。
それは、石上の最も許せない行為だった。
それは、石上の中学時代を暗黒に染め上げた憎むべき男の行為だった。
それは、石上の中学時代を暗黒に染め上げた憎むべき男の行為だった。
『良い和解案があるんだけど』『お前、京子のこと好きなんだろ?』『今日、うち来いよ』
自分の彼女を売ったかつての怨敵と。
『僕は工藤さんを信じてます!』『助けてください!』『どうか戻ってきてください!!』
涙ながらに工藤を死地に誘う石上自身が脳内で被る。
ふざけるな。
そんな幻想を、石上は拳で思いっきり打ち据える。
それだけは、死んでも出来なかった。死んだ方がマシだった。
それだけは、死んでも出来なかった。死んだ方がマシだった。
もちろん、死ぬのは怖い。怖いのは嫌だ。
足はずっとガクガク震えてるし、股座はビショビショだ。
心臓はバクバクうるさくて、歯はカタカタ鳴りっぱなしだ。
腰は抜けて立ち上がることさえできない。
こんな状態で目の前の超人に立ち向かうなど、夢のまた夢だ。
足はずっとガクガク震えてるし、股座はビショビショだ。
心臓はバクバクうるさくて、歯はカタカタ鳴りっぱなしだ。
腰は抜けて立ち上がることさえできない。
こんな状態で目の前の超人に立ち向かうなど、夢のまた夢だ。
でも、そんな石上にも出来ることがあった。
渡された拡声器を震える手で拾う。決して手放さないよう、痛いくらい指に力を籠める。
ただ声を遠くに届けるための道具こそが、今の石上に残された最後の武器だ。
渡された拡声器を震える手で拾う。決して手放さないよう、痛いくらい指に力を籠める。
ただ声を遠くに届けるための道具こそが、今の石上に残された最後の武器だ。
ああ、そうだ。
今こそ。僕は。
怖くても戦えるやつになるんだ。
すぅ、と息を吸う。
おかしなことをしているぞ、と僕の中の僕が言う。僕を生かそうと、生存本能が言う。
ここが最終防衛ラインだ、超えると引き返すことはできないんだぞ、と必死に引き留める。
ここが最終防衛ラインだ、超えると引き返すことはできないんだぞ、と必死に引き留める。
だから僕は思い出した。
僕自身よりも、よっぽど信頼できる人を。
敬愛している一学年上の友達。
尊敬すべき我が秀知院学園生徒会の上役。
僕をどん底の底から掬い上げてくれた人。
僕を救ってくれた人。
敬愛している一学年上の友達。
尊敬すべき我が秀知院学園生徒会の上役。
僕をどん底の底から掬い上げてくれた人。
僕を救ってくれた人。
『お前はおかしくなんてない』
こんな僕を信じてくれた、白銀御行生徒会長の言葉を。
『だとしたら、お前の書くべき反省文はこうだろう!』
だとしたら、僕の告げるべき言葉は決まっていた。
『 『うるせえ バァカ!!』 』
♪
『なにそのヘッタクソな嘘!小学生でも見破れるわ!』
『身体は大人なのに頭脳は幼稚園児なんですかぁ!?頭んなかまで筋肉ミッチリですかぁ!?』
『てか、ぞいってなに!?なにその語尾!?キャラクター立ててますアピール!?』
『さっぶ!!!うわ、さっぶ!!!!藤原先輩でもそこまではしませんよ!!!!』
『あ、言いすぎましたねぞい!!!ごめんなさいぞい!!!ぞいぞいぞぞい!!!!』
『工藤さん』
『逃げろ』
『………………』
『…………』
『……』
もう石上の叫び声は聞こえなかった。
煽りも罵りも嘲りも、二度と聞くことは出来なかった。
それは、彼が既に物言わぬ骸になり果てている何よりの証明だった。
煽りも罵りも嘲りも、二度と聞くことは出来なかった。
それは、彼が既に物言わぬ骸になり果てている何よりの証明だった。
だけど、石上は最後まで命乞いも、助けを呼ぶこともしなかった。
臆病で、口が悪くて、デリカシーがなくて、陰キャで。
でも、決して己の善性を見失わなかった男が。
己を貫き通したということだった。
臆病で、口が悪くて、デリカシーがなくて、陰キャで。
でも、決して己の善性を見失わなかった男が。
己を貫き通したということだった。
石上優が今之川権三に屈することは終ぞなかった。
だから。
【本日の勝敗】
【石上の勝利】
最後に。
『石上』
『よく耐えたな』
あの人が頭を撫でてくれた気がした。
そして、石上優は目を閉じた。
【石上優@かぐや様は告らせたい 死亡】
【C-4・市街地/1日目・黎明】
【永井圭@亜人】
[状態]: 健康
[装備]: なし
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1~3
[思考・状況]
基本方針:佐藤を倒す
1.???????
2.自衛隊入間基地に向かう
3:使える武器や人員の確保
[備考]
※File:48(10巻最終話)終了後からの参戦
※工藤仁と名乗っています
※亜人の蘇生能力になんらかの制限があるのではないかと考えています
※石上優の拡声器越しの叫びを聞きました。どう反応するかは後続の書き手にお任せします
[状態]: 健康
[装備]: なし
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1~3
[思考・状況]
基本方針:佐藤を倒す
1.???????
2.自衛隊入間基地に向かう
3:使える武器や人員の確保
[備考]
※File:48(10巻最終話)終了後からの参戦
※工藤仁と名乗っています
※亜人の蘇生能力になんらかの制限があるのではないかと考えています
※石上優の拡声器越しの叫びを聞きました。どう反応するかは後続の書き手にお任せします
【今之川権三@ナノハザード】
[状態]:健康 。ブチギレ。
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1~2 、拡声器
[思考・状況]
基本方針:全員ブチ殺してZOI帝国を作るぞい!
1.このクソガキ~!!!!
2.基本的に出会った奴は全員ブチ殺すぞい。
3.しかしあの千年男はヤバイぞい。一旦逃げて作戦を練らなければ……
[備考]
※本編で死亡した直後からの参戦です。
※近くに石上優の支給品(ランダム支給品1~2)が落ちています
[状態]:健康 。ブチギレ。
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1~2 、拡声器
[思考・状況]
基本方針:全員ブチ殺してZOI帝国を作るぞい!
1.このクソガキ~!!!!
2.基本的に出会った奴は全員ブチ殺すぞい。
3.しかしあの千年男はヤバイぞい。一旦逃げて作戦を練らなければ……
[備考]
※本編で死亡した直後からの参戦です。
※近くに石上優の支給品(ランダム支給品1~2)が落ちています
| 前話 | お名前 | 次話 |
| 殺し合いの利点 | 石上優 | Eliminated |
| 永井圭 | 鬼殺しの戦い | |
| 鬼は泥を見た。鬼は星を見た。 | 今之川権三 |