南海怨身八裂心技 ◆3nT5BAosPA
摩訶不思議なタブレット(薬剤のほう)を摂取したことで肉体の損傷がほぼほぼ治った千翼は、新たな同行者、あるいは協力者である鑢七花と共に、次の行先を思案していた。
彼らふたりには行動の指針がある。
千翼は参加者全員の殺害。
七花は実の姉に拉致された所有者の奪還。
どちらも荒事なしには成し遂げられない目標である。
その上、聞いたところによれば、七花の姉はかなりの強物らしい。
千翼を瞬殺した七花よりも、遥かに格上の戦士だという。
そんな参加者とこれから戦わなければならないという事実は、千翼を憂慮させるのに十分だったが、この道が先ほども述べた彼の目的を達成するにはどっちみち通らなければいけない道であることも、また事実であった。
そもそも、今千翼がこうして生きて思考しているのも、『目的に協力する』という契約を七花と結んだからだ。
とはいえ、ここに来て「そんな相手に勝利する策なんて、思いつけない」と無能を晒せば、後に待っているのは七花によって齎される死くらいだろう。
しかし、七花との契約を早期に達成してしまう、つまり彼の姉をどうにかする策をすぐさま提案するのも、それはそれで問題である。
その場合、『千翼を瞬殺した七花よりも、遥かに格上の姉を相手に目的を成し遂げた七花』から、ほぼ間違いなく用済みと認定されるからだ。
そうなれば、後の結末は自明である。
己にとって益となる良策を求めながら、千翼は七花から渡されていたタブレット(電子機器のほう)を取り出した。
これはただのタブレット端末ではなく、支給品として配られたタブレット端末だ。ならば、その中にこのバトルロワイアルに関する何らかの情報が収められている可能性は否定できない。
そうして得た情報が、千翼が直面している難題を解決する糸口に繋がる可能性だって、同じくらい否めない。はずだ。多分。
端末内にはアプリケーションがダウンロードされていた。画面を埋めるほどに犇めいているそれらの中から、目についたひとつをタップする。
画面が切り替わる。
そこにはいくつかのテキストファイルがあった。どうやら千翼が選択したのは、メモ帳のような文章執筆用のアプリだったらしい。
テキストのひとつを開く。
出てきたのは、このバトルロワイアルでアドバンテージを取れる重要な情報……ではなく小説だった。
物語にカテゴリされる文字列が、画面内に並んでいる。
他のファイルを開いてみても、出てくるのは全て小説、あるいはそれに関するプロットのようなものだけだった。
バトルロワイアルに関する情報は1bも存在しない。
物書きが使っていたタブレットだったのだろうか。そんな代物が如何なる経緯を辿って七花の元に辿り着いたかは不明だが。
彼らふたりには行動の指針がある。
千翼は参加者全員の殺害。
七花は実の姉に拉致された所有者の奪還。
どちらも荒事なしには成し遂げられない目標である。
その上、聞いたところによれば、七花の姉はかなりの強物らしい。
千翼を瞬殺した七花よりも、遥かに格上の戦士だという。
そんな参加者とこれから戦わなければならないという事実は、千翼を憂慮させるのに十分だったが、この道が先ほども述べた彼の目的を達成するにはどっちみち通らなければいけない道であることも、また事実であった。
そもそも、今千翼がこうして生きて思考しているのも、『目的に協力する』という契約を七花と結んだからだ。
とはいえ、ここに来て「そんな相手に勝利する策なんて、思いつけない」と無能を晒せば、後に待っているのは七花によって齎される死くらいだろう。
しかし、七花との契約を早期に達成してしまう、つまり彼の姉をどうにかする策をすぐさま提案するのも、それはそれで問題である。
その場合、『千翼を瞬殺した七花よりも、遥かに格上の姉を相手に目的を成し遂げた七花』から、ほぼ間違いなく用済みと認定されるからだ。
そうなれば、後の結末は自明である。
己にとって益となる良策を求めながら、千翼は七花から渡されていたタブレット(電子機器のほう)を取り出した。
これはただのタブレット端末ではなく、支給品として配られたタブレット端末だ。ならば、その中にこのバトルロワイアルに関する何らかの情報が収められている可能性は否定できない。
そうして得た情報が、千翼が直面している難題を解決する糸口に繋がる可能性だって、同じくらい否めない。はずだ。多分。
端末内にはアプリケーションがダウンロードされていた。画面を埋めるほどに犇めいているそれらの中から、目についたひとつをタップする。
画面が切り替わる。
そこにはいくつかのテキストファイルがあった。どうやら千翼が選択したのは、メモ帳のような文章執筆用のアプリだったらしい。
テキストのひとつを開く。
出てきたのは、このバトルロワイアルでアドバンテージを取れる重要な情報……ではなく小説だった。
物語にカテゴリされる文字列が、画面内に並んでいる。
他のファイルを開いてみても、出てくるのは全て小説、あるいはそれに関するプロットのようなものだけだった。
バトルロワイアルに関する情報は1bも存在しない。
物書きが使っていたタブレットだったのだろうか。そんな代物が如何なる経緯を辿って七花の元に辿り着いたかは不明だが。
「すげえな。本当に使えてる」
千翼の対面から画面を覗き込んでいる七花は、感心した様子で呟いた。
「残念だけど、意味のない情報しかなかったぞ」
落胆と共に、千翼は執筆用アプリケーションを閉じた。
続けて他のアプリの調査をするのもアリかもしれないが、その必要性は限りなく低いと言えよう。今は他のアプリケーションならぬアプローチを探した方が良さそうだ──その時だった。
何かが千翼たちの近くを通り過ぎていった。
それは凡人では目に追えないほどの速度で地を駆けていたが、七花は剣士としての感覚で、千翼はアマゾンとしての探知力で、その存在を捕らえることができた。
気配は北の方角に去っていった。千翼達には目もくれない様子だった。というより、あの急ぎ方は千翼たち、つまり殺し合いにおける己以外の参加者という最も警戒すべき対象よりも重要な何かが、行き先にあるように思えた。
続けて他のアプリの調査をするのもアリかもしれないが、その必要性は限りなく低いと言えよう。今は他のアプリケーションならぬアプローチを探した方が良さそうだ──その時だった。
何かが千翼たちの近くを通り過ぎていった。
それは凡人では目に追えないほどの速度で地を駆けていたが、七花は剣士としての感覚で、千翼はアマゾンとしての探知力で、その存在を捕らえることができた。
気配は北の方角に去っていった。千翼達には目もくれない様子だった。というより、あの急ぎ方は千翼たち、つまり殺し合いにおける己以外の参加者という最も警戒すべき対象よりも重要な何かが、行き先にあるように思えた。
「どうする」
七花は千翼に判断を委ねた。
「追うか? 今なら多分追いつけると思うぜ」
「もちろん追う」
「もちろん追う」
デイバックにタブレットを収納しながら、千翼は言った。
「俺の目的はさっき話しただろ。だったら、アイツを見逃す理由はない。それに、お前と協力するためにも、まずはお前の強さを戦う相手ではない味方の立場から見る必要がある……と思う」
「了解」
「了解」
そういうことになった。
◆
◆
すっかり陽光の白みが大半を占めた空間を駆け抜けた先で、猛丸の目の前に現れたのは、地面に倒れ伏す犬養幻之介だった。
「ゲンノスキ……?」
口から洩れた言葉に、返事は無い。幻之介は胸に開いた穴から多量の血を流している。死んでいた。
兄弟の如く親しんでいた男の死を理解した途端、猛丸は腕をわなわなと震わせながら、幻之介の遺体を抱きかかえた。とっくに血は乾いているため、体が汚れることはない。どうやら死んでからそれなりの時間が経過していたようだ。
猛丸の姿を物陰から見つめるふたりの男が居た──七花と千翼である。
追跡の末に無事追いついたのだが、彼らはそれ以上の行動をしていなかった。七花は千翼が次に出す指示を待っていたし、そして千翼は──
兄弟の如く親しんでいた男の死を理解した途端、猛丸は腕をわなわなと震わせながら、幻之介の遺体を抱きかかえた。とっくに血は乾いているため、体が汚れることはない。どうやら死んでからそれなりの時間が経過していたようだ。
猛丸の姿を物陰から見つめるふたりの男が居た──七花と千翼である。
追跡の末に無事追いついたのだが、彼らはそれ以上の行動をしていなかった。七花は千翼が次に出す指示を待っていたし、そして千翼は──
(あの男は……)
亡骸を前に慟哭する半裸の男を見て、己の心が痛む感覚を味わっていたのだ。
千翼にとって猛丸は、言葉を交わした事も無い見ず知らずの人間だ。だがそれでも猛丸の様子から、彼が抱きかかえている遺体とどのような間柄だったのかは推測できる。きっと、大切な人だったのだろう。
そして、そんな存在を失ってしまった心境も、痛いほど分かってしまう。何せ、千翼はそれと同じ心境を経験したばかりなのだから。
まるで数時間前の自分を見ているような感覚は、千翼の思考に暫しの停滞を生む。
しかし、何度目かの呼吸の後、彼は意を決したように告げた。
千翼にとって猛丸は、言葉を交わした事も無い見ず知らずの人間だ。だがそれでも猛丸の様子から、彼が抱きかかえている遺体とどのような間柄だったのかは推測できる。きっと、大切な人だったのだろう。
そして、そんな存在を失ってしまった心境も、痛いほど分かってしまう。何せ、千翼はそれと同じ心境を経験したばかりなのだから。
まるで数時間前の自分を見ているような感覚は、千翼の思考に暫しの停滞を生む。
しかし、何度目かの呼吸の後、彼は意を決したように告げた。
「……やるぞ、七花」
躊躇はしない。するわけにはいかない。ここで止まるわけにはいかないから。
そんな覚悟と共に出された千翼の指示を聞いた七花は、
そんな覚悟と共に出された千翼の指示を聞いた七花は、
「了解」
と、先ほどと同じく短い返事をした。
千翼とは対照的に軽い口調だった。
千翼とは対照的に軽い口調だった。
「何か作戦はあるか?」
「そうだな……」
「そうだな……」
顎に手を当てて考える千翼。
そもそも、長瀬達と共にアマゾンを狩っていた頃から戦いの前線に立っていた彼にとって、指示を出すなんて役割は縁が遠いのだが、だからと言って全くの無計画で戦いに臨むわけにはいくまい。
参考として、この島に来るまでのアマゾンとの戦い──そして、この島に来てからの参加者達との戦いを思い返す。
その後、彼が出した指示は、
そもそも、長瀬達と共にアマゾンを狩っていた頃から戦いの前線に立っていた彼にとって、指示を出すなんて役割は縁が遠いのだが、だからと言って全くの無計画で戦いに臨むわけにはいくまい。
参考として、この島に来るまでのアマゾンとの戦い──そして、この島に来てからの参加者達との戦いを思い返す。
その後、彼が出した指示は、
「相手に反撃する隙を与えないよう、最初から全力で攻撃してくれ」
だった。
千翼が見た限り、このバトルロワイアルは常識を超えたような技や術を使う者たちが犇めく魔境だ。これから戦う相手が、そんな例外共の例から外れていないとは思えない。予想していない攻撃を出されても十全な対処が出来るほど連携が取れたコンビとは言い難い千翼と七花にとって、相手がカードを切る展開は避けるべき事態だろう。
ならばどうすべきか? 答えは簡単。そもそもカードを切る暇を与えなければいい。
千翼が見た限り、このバトルロワイアルは常識を超えたような技や術を使う者たちが犇めく魔境だ。これから戦う相手が、そんな例外共の例から外れていないとは思えない。予想していない攻撃を出されても十全な対処が出来るほど連携が取れたコンビとは言い難い千翼と七花にとって、相手がカードを切る展開は避けるべき事態だろう。
ならばどうすべきか? 答えは簡単。そもそもカードを切る暇を与えなければいい。
「了解。俺は全力で隙の無い攻撃をしよう──千翼はここから見ていてくれ」
『全力で隙の無い技』にアテがあるのか、七花は与えられた指示をすんなりと聞き入れた。
「虚刀流七の構え『杜若』」
地面に両手を付き、過剰なまでの前傾姿勢を取る。千翼が生きる時代において『クラウチング』と呼ばれる構えを取った七花は、照準を合わせるかのように視線を前に向けた。
彼が構えを選択したのは、二ヶ月ほど前に『鈍』の所有者にして居合の達人である宇練銀閣との戦いにおいても用いられた構えなので、験を担ごうとしているからではない。突撃の姿勢を取る構えは短時間での決着が求められる今回のような場合にピッタリだからだ。
脚に力を込めた七花は、空気の壁を突き破って加速した。
彼が構えを選択したのは、二ヶ月ほど前に『鈍』の所有者にして居合の達人である宇練銀閣との戦いにおいても用いられた構えなので、験を担ごうとしているからではない。突撃の姿勢を取る構えは短時間での決着が求められる今回のような場合にピッタリだからだ。
脚に力を込めた七花は、空気の壁を突き破って加速した。
「あんたに恨みはないけどさ、俺の持ち主……じゃあなかった、協力者の指示なんだ。全力でやらせてもらうぜ」
刹那。
直線的な軌道を走り抜けた末に、真上に飛び上がる。途中で猛丸は気が付いたが、もう遅い。
成人男性の亡骸を抱えている彼に、音を置き去りにする速度で走っている七花への反撃など不可能だからだ。
できることと言えば、繰り出された斧刀の如き踵落とし──虚刀流七の奥義『落花狼藉』──を避けるくらいである。とっくに事切れている幻之介を庇うような体勢で回避したが、限り限りのところで避けられず、肩の肉を抉られた。穿抜の如き突進から繋げられた攻撃を喰らっても頭部への直撃を免れただけ、幸運だったと言えよう。
しかし、七花の攻撃はそれでは終わらない。『隙の無い全力の攻撃』という指示を受けた彼が、虚刀流が、ここで終わるはずがないのだ。
何せ、彼が今見せているのはたった一つの奥義ではなく、最終奥義、『七花八裂』なのだから。
最終奥義『七花八裂』。
七つの奥義を続けざまに放つそれは、虚刀流の技の中で最も隙が無く、全力の技と言えよう。
踵落としを終えて着地した後、次なる奥義を放とうとする──虚刀流四の奥義『柳緑花紅』。
数刻前にクラゲアマゾンを相手に披露した奥義だ。
しかし。
七花が拳を作り、上半身を捩じろうとしたタイミングで猛丸は動いた──そんなタイミングに動いたところで、回避も逃亡も防御も攻撃も間に合うはずがない。
だから彼がおこなった動作はたった一つ。己の肩から溢れた鮮血を、七花の顔面目掛けて飛ばすことだった。
血の目潰し程度であれば、虚刀流七代目当主の行動を妨げるものではないので、そのまま無視して攻撃を続行できよう──しかし、猛丸の血飛沫は普通ではなかった。
空中にまき散らされたそれは、黒曜石の如く硬質化したのだ!
反撃を許さないために『七花八裂』という全力技で先手を打とうとしたのに、まさか攻撃を浴びせたら出る血そのものが反撃に繋がるとは。
ひとつひとつが短刀のような礫に変化した血は、触れるもの全てに危害を与えると主張するかのようにぎらぎらと輝いている。こんなものが目に当たりでもしたら、それだけで戦闘は不可能になるだろう──七花は捩じりかけ体勢を利用し、血礫を回避した。
そんな無理矢理な回避をした所為で、構えが中断された『柳緑花紅』はまともな威力を発揮できなかった。本来なら相手の体内を破壊する『鎧通し』の技なのだが、衝撃の操作が不十分になり、ただ相手を押し飛ばす程度にしかなっていない。
直線的な軌道を走り抜けた末に、真上に飛び上がる。途中で猛丸は気が付いたが、もう遅い。
成人男性の亡骸を抱えている彼に、音を置き去りにする速度で走っている七花への反撃など不可能だからだ。
できることと言えば、繰り出された斧刀の如き踵落とし──虚刀流七の奥義『落花狼藉』──を避けるくらいである。とっくに事切れている幻之介を庇うような体勢で回避したが、限り限りのところで避けられず、肩の肉を抉られた。穿抜の如き突進から繋げられた攻撃を喰らっても頭部への直撃を免れただけ、幸運だったと言えよう。
しかし、七花の攻撃はそれでは終わらない。『隙の無い全力の攻撃』という指示を受けた彼が、虚刀流が、ここで終わるはずがないのだ。
何せ、彼が今見せているのはたった一つの奥義ではなく、最終奥義、『七花八裂』なのだから。
最終奥義『七花八裂』。
七つの奥義を続けざまに放つそれは、虚刀流の技の中で最も隙が無く、全力の技と言えよう。
踵落としを終えて着地した後、次なる奥義を放とうとする──虚刀流四の奥義『柳緑花紅』。
数刻前にクラゲアマゾンを相手に披露した奥義だ。
しかし。
七花が拳を作り、上半身を捩じろうとしたタイミングで猛丸は動いた──そんなタイミングに動いたところで、回避も逃亡も防御も攻撃も間に合うはずがない。
だから彼がおこなった動作はたった一つ。己の肩から溢れた鮮血を、七花の顔面目掛けて飛ばすことだった。
血の目潰し程度であれば、虚刀流七代目当主の行動を妨げるものではないので、そのまま無視して攻撃を続行できよう──しかし、猛丸の血飛沫は普通ではなかった。
空中にまき散らされたそれは、黒曜石の如く硬質化したのだ!
反撃を許さないために『七花八裂』という全力技で先手を打とうとしたのに、まさか攻撃を浴びせたら出る血そのものが反撃に繋がるとは。
ひとつひとつが短刀のような礫に変化した血は、触れるもの全てに危害を与えると主張するかのようにぎらぎらと輝いている。こんなものが目に当たりでもしたら、それだけで戦闘は不可能になるだろう──七花は捩じりかけ体勢を利用し、血礫を回避した。
そんな無理矢理な回避をした所為で、構えが中断された『柳緑花紅』はまともな威力を発揮できなかった。本来なら相手の体内を破壊する『鎧通し』の技なのだが、衝撃の操作が不十分になり、ただ相手を押し飛ばす程度にしかなっていない。
「う、うおおおっ!」
眼前で起きた奇なる現象に驚愕する七花。離れて見ていた千翼の反応も同様だった。
回避の後、七花は距離を取る。
回避の後、七花は距離を取る。
「まるで刀みたいな血だな。四季崎記紀の刀風に言うなら、血統ならぬ血刀だ」
原作の展開をやや先取りしてしまった感のある台詞を言って、構えを取り直す七花であった。
猛丸は目尻に涙が残っている瞳で睨みつける。警戒心と敵意が混ざった視線だった。
猛丸は目尻に涙が残っている瞳で睨みつける。警戒心と敵意が混ざった視線だった。
「いきなし出てきてふざっっけんな! たっ殺さりんど!」
獣の如く吠えた猛丸は、抱えていた幻之介の遺体を地面に置いて立ち上がると、七花に向かって駆け出した。友の死を嘆く前に、まずは邪魔な襲撃者を葬る必要があるからだ。手からは硬質化した血が短刀のように生えていた。
血剣の一閃が煌めく──七花はそれをかわす。
四足獣の如き低姿勢から、足払いが放たれる──空中に飛び上がることで、それも回避した。
猛丸は地面に肩が抉れていない方の指先を付け、足払いの勢いを利用して回転する──ブレイクダンスのように振るわれた両脚の太腿にはいつの間にか亀裂が走っており、そこから血が滲んでいた。
遠心力で射出された血は一瞬で刃と化し、敵を両断すべく空中を走る。
血剣の一閃が煌めく──七花はそれをかわす。
四足獣の如き低姿勢から、足払いが放たれる──空中に飛び上がることで、それも回避した。
猛丸は地面に肩が抉れていない方の指先を付け、足払いの勢いを利用して回転する──ブレイクダンスのように振るわれた両脚の太腿にはいつの間にか亀裂が走っており、そこから血が滲んでいた。
遠心力で射出された血は一瞬で刃と化し、敵を両断すべく空中を走る。
「…………っ!」
七花が居るのは空中だ。そこではあらゆる回避が不可能であり、刃を正面から受けるしかない。
逃げ場のない相手を襲う必殺技──まさしく必ず殺す技だ。
だが。
七花は眼前限り限りまで迫った血剣を両手で挟むことで、制止に成功する──俗に言う真剣白刃取りである。否、虚刀流にとってみれば、これは真剣白刃取りですらない、名前の無い技だった。
逃げ場のない相手を襲う必殺技──まさしく必ず殺す技だ。
だが。
七花は眼前限り限りまで迫った血剣を両手で挟むことで、制止に成功する──俗に言う真剣白刃取りである。否、虚刀流にとってみれば、これは真剣白刃取りですらない、名前の無い技だった。
「そりゃ、急に血が固まったのを見た時は驚いたけどさ、それが取る形は刃だ──刀だ」
なら、虚刀流は十分戦えるんだぜ! ──と。
叫ぶ七花。彼の両手に挟まれた血剣は、とっくに元の液体に戻っていた。
足裏が地面に触れた瞬間、一の構え『鈴蘭』を取る。
その構えから繰り出される技は、虚刀流最速の奥義『鏡花水月』に他ならない──!
叫ぶ七花。彼の両手に挟まれた血剣は、とっくに元の液体に戻っていた。
足裏が地面に触れた瞬間、一の構え『鈴蘭』を取る。
その構えから繰り出される技は、虚刀流最速の奥義『鏡花水月』に他ならない──!
「中断してから少し間が空いたけど、残り五つを続けるぞ!!──虚刀流最終奥義『七花八裂』!!」
一の奥義『鏡花水月』。
二の奥義『花鳥風月』。
三の奥義『百花繚乱』。
五の奥義『飛花落葉』。
六の奥義『錦上添花』。
虚刀流五つの奥義。
先ほど打ったふたつを合わせれば、計七つの奥義。
それら一切の斬撃を、あらゆる打撃を、全ての衝撃をその身に受けた猛丸の肉体は吹き飛ばされる。
二の奥義『花鳥風月』。
三の奥義『百花繚乱』。
五の奥義『飛花落葉』。
六の奥義『錦上添花』。
虚刀流五つの奥義。
先ほど打ったふたつを合わせれば、計七つの奥義。
それら一切の斬撃を、あらゆる打撃を、全ての衝撃をその身に受けた猛丸の肉体は吹き飛ばされる。
「すまねーゲンノスキ……弔いも、何もできんかった……」
八つ裂きになった身体で、猛丸は呟いた。
奇しくもその姿は、彼がこのバトルロワイアルに呼ばれなかった未来で辿る結末と似た死に様だった。
奇しくもその姿は、彼がこのバトルロワイアルに呼ばれなかった未来で辿る結末と似た死に様だった。
【猛丸@衛府の七忍 死亡】
◆
鑢七花は勝利を収めた。
其処に異論を挟む余地はない。
実際にその現場にいた千翼は、はっきりと目にしている。
七花の体術が優れていることを、彼が扱う格闘術が刃の如き鮮血に遅れを取らなかったことを、そして──彼が最後に使った奥義『七花八裂』が、猛丸の体をバラバラに粉砕したことを。
バラバラ。
粉砕。
その光景はまるで──千翼の脳内に惨劇が再上映される。
辺り一面に転がった、肉、血、肉、肉、死体。
それら全ては、愛しいひとの残骸で──
其処に異論を挟む余地はない。
実際にその現場にいた千翼は、はっきりと目にしている。
七花の体術が優れていることを、彼が扱う格闘術が刃の如き鮮血に遅れを取らなかったことを、そして──彼が最後に使った奥義『七花八裂』が、猛丸の体をバラバラに粉砕したことを。
バラバラ。
粉砕。
その光景はまるで──千翼の脳内に惨劇が再上映される。
辺り一面に転がった、肉、血、肉、肉、死体。
それら全ては、愛しいひとの残骸で──
「あの技は……」
無論、千翼はイユが殺害された現場を実際に見たわけではない。
だが、イユと同じ状態になった猛丸を見て、心の何処かで確信した。
彼女はこの技を受けて死んだのだ──と。
だが、イユと同じ状態になった猛丸を見て、心の何処かで確信した。
彼女はこの技を受けて死んだのだ──と。
【C-6/1日目・朝】
【千翼@仮面ライダーアマゾンズ】
[状態]:ある程度の空腹、ダメージ再生中、イユへの強い想いと人を食べない鋼の決意、自己嫌悪 、痛み、精神的ショック
[道具]:基本支給品一式、万能布ハッサン@Fate/Grand Order(※イユの亡骸内包済)、ネオアマゾンズレジスター(イユ)@仮面ライダーアマゾンズ、賊刀・鎧@刀語 、ナノロボ用タブレットの瓶詰め@ナノハザード
[思考・状況]
基本方針:イユの痛みになって、一緒に生きる明日を目指す。
1:イユを生き返らせるために優勝する。そのために全員殺す。
2:イユと一緒に生きられる自分であり続けるために、絶対に人は食べない。
3:…………善逸、五月。ごめん。
4:アマゾン態になる時はできるかぎり鎧を纏うことで人を食う可能性を減らす。
5:あの技は……!?
[備考]
※参戦時期は10話「WAY TO NOWHERE」
※人肉を食すことで、自分の人格が変わり願いに影響が出てしまうことを強く忌避・警戒しています。
※賊刀・鎧をアマゾン態で装着時は若干サイズが小さくフィットしませんが、隙間を触手で埋めることで補っています。
※魔剣グラムは破壊されました。
※ダークウィングが蓮の仇として鏡の中から追跡しています。
[状態]:ある程度の空腹、ダメージ再生中、イユへの強い想いと人を食べない鋼の決意、自己嫌悪 、痛み、精神的ショック
[道具]:基本支給品一式、万能布ハッサン@Fate/Grand Order(※イユの亡骸内包済)、ネオアマゾンズレジスター(イユ)@仮面ライダーアマゾンズ、賊刀・鎧@刀語 、ナノロボ用タブレットの瓶詰め@ナノハザード
[思考・状況]
基本方針:イユの痛みになって、一緒に生きる明日を目指す。
1:イユを生き返らせるために優勝する。そのために全員殺す。
2:イユと一緒に生きられる自分であり続けるために、絶対に人は食べない。
3:…………善逸、五月。ごめん。
4:アマゾン態になる時はできるかぎり鎧を纏うことで人を食う可能性を減らす。
5:あの技は……!?
[備考]
※参戦時期は10話「WAY TO NOWHERE」
※人肉を食すことで、自分の人格が変わり願いに影響が出てしまうことを強く忌避・警戒しています。
※賊刀・鎧をアマゾン態で装着時は若干サイズが小さくフィットしませんが、隙間を触手で埋めることで補っています。
※魔剣グラムは破壊されました。
※ダークウィングが蓮の仇として鏡の中から追跡しています。
【鑢七花@刀語】
[状態]:健康、疲労(小)
[道具]:基本支給品一式、アンデルセンのタブレット@Fate/Grand Order
[思考・状況]
基本方針:姉ちゃんからとがめを取り戻す。姉ちゃんから。あの姉ちゃんから……
1:姉ちゃんからとがめを助ける。
2:ひとまず千翼に従う。
[備考]
※作品前半、とがめの髪がまだ長い頃。5話より前
[状態]:健康、疲労(小)
[道具]:基本支給品一式、アンデルセンのタブレット@Fate/Grand Order
[思考・状況]
基本方針:姉ちゃんからとがめを取り戻す。姉ちゃんから。あの姉ちゃんから……
1:姉ちゃんからとがめを助ける。
2:ひとまず千翼に従う。
[備考]
※作品前半、とがめの髪がまだ長い頃。5話より前
| 前話 | お名前 | 次話 |
| それを知らず | 鑢七花 | GATE OF SKY |
| 千翼 | ||
| 探し人はおらず | 猛丸 | Eliminated |