君の知らないものばかり ◆3nT5BAosPA
夜明けが近い──上田次郎は明るくなっていく視界と、背後から感じる太陽の温もりから、そのことを察していた。
夜が明けるのは良いことだ。
暗い道より明るい道の方が馬を走らせ易いし、日光で周囲が照らされれば、他の参加者を見つけやすくなるからだ──そして何より。
夜が明けるのは良いことだ。
暗い道より明るい道の方が馬を走らせ易いし、日光で周囲が照らされれば、他の参加者を見つけやすくなるからだ──そして何より。
「(この私の、聡明さが外見に十二分に表れている美貌が、よりはっきり見えるようになるのだからね!)」
天然のスポットライトに照らされている自分の姿は、さぞかし映像映えしているだろう──どこに隠されているかも分からないカメラを意識しながら、上田はそんなことを考えた。
どうやら彼が抱いている『この殺し合いはドッキリの企画だ』という盛大な勘違いは未だに継続中らしい。そんな誤解に加えて酒気で酔っているので、彼の思考は暴走状態になっていた。もしここに警察がいれば、飲酒運転を咎められ、馬から降ろされることは間違いあるまい。
曲がりなりにも学者の地位を持っているものが陥っていい精神状態ではないのだが、それを指摘するものはこの場にいなかった。
上田の相棒である山田奈緒子がこの場に居れば、喝のひとつでも入れて正気に戻していたかもしれないが、彼の後ろに現在座っているのは、胸のサイズ以外山田と似ても似つかない酒呑童子である。そもそも、上田がこんな精神状態になった原因は彼女のスキルにあるのだ。その彼女がこの現状を愉しんで見ている以上、上田のテンションが元に戻る可能性は期待できまい。
そんなわけで、当面の目的地である『教会』に辿り着くまで、この暴走機関車が止まることは無いように思われた──が。
どうやら彼が抱いている『この殺し合いはドッキリの企画だ』という盛大な勘違いは未だに継続中らしい。そんな誤解に加えて酒気で酔っているので、彼の思考は暴走状態になっていた。もしここに警察がいれば、飲酒運転を咎められ、馬から降ろされることは間違いあるまい。
曲がりなりにも学者の地位を持っているものが陥っていい精神状態ではないのだが、それを指摘するものはこの場にいなかった。
上田の相棒である山田奈緒子がこの場に居れば、喝のひとつでも入れて正気に戻していたかもしれないが、彼の後ろに現在座っているのは、胸のサイズ以外山田と似ても似つかない酒呑童子である。そもそも、上田がこんな精神状態になった原因は彼女のスキルにあるのだ。その彼女がこの現状を愉しんで見ている以上、上田のテンションが元に戻る可能性は期待できまい。
そんなわけで、当面の目的地である『教会』に辿り着くまで、この暴走機関車が止まることは無いように思われた──が。
「……ん?」
バイクが、ある──真っ赤に染まった車体で、激しい自己主張をしているバイクが、民家の傍に停められているのだ。
そんな、どうしても目を引く存在を視界の端に捉えた上田は、全速力で走らせていた馬の速度を落とし、そちらの方に向かって行った。
そんな、どうしても目を引く存在を視界の端に捉えた上田は、全速力で走らせていた馬の速度を落とし、そちらの方に向かって行った。
「見てください、酒呑童子さん。痕です。タイヤの痕がありますよ」
上田が指摘する通り、バイクからはタイヤ痕が伸びていた。しかも、それは上田たちが向かっている『教会』方面に続いている。つまり、このバイクは『教会』の方からやって来たということだ。
しかし、肝心の運転手の姿が見当たらない。ここに乗り捨てて、何処かに去って行ってしまったのだろうか?
しかし、肝心の運転手の姿が見当たらない。ここに乗り捨てて、何処かに去って行ってしまったのだろうか?
「いや、そうでもないみたいやね」
上田の背中に摑まっている酒呑童子は、その考察を否定した。
サーヴァントである彼女には分かるのだ。すぐ傍に、他のサーヴァントの気配があるのが。
サーヴァントである彼女には分かるのだ。すぐ傍に、他のサーヴァントの気配があるのが。
「隠れてないで大人しゅう出てきたらどない? ふふ、怖がらんでも、出てきたところを取って食ろうたりはせえへんよ。まあ、出てこなかった場合はどうなるか分からんけど」
気配が感じられる方向に声をかける。もっとも、彼女の気分がコロッと変われば、今しがた口にした言葉を反故にして、呼びかけに油断して出てきた相手を頭から食べることもあるのだが──それもまた一興。
鬼の首魁の台詞が終わり、沈黙が場を支配した。しかし、しばらくするとバイクの傍の物陰から、カツンッとハイヒールで歩くときに響くような音が聞こえた。
鬼の首魁の台詞が終わり、沈黙が場を支配した。しかし、しばらくするとバイクの傍の物陰から、カツンッとハイヒールで歩くときに響くような音が聞こえた。
それと同時に、人影が現れる──そこにいたのは、ひとりの少女だった。
少女の姿を認めた酒呑童子は、何か得心したような表情を浮かべた。
少女の姿を認めた酒呑童子は、何か得心したような表情を浮かべた。
「そういえばあんたはんの名前も名簿にあったねえ。メルト……ええと」
「……リリス──メルトリリスよ」
「ああ、そうそう。かんにんしてなあ──溶解(メルト)の部分は、ちゃーんと覚えとったんよ。うちもどろどろに蕩かすのが専売特許みたいなもんやしね」
「……リリス──メルトリリスよ」
「ああ、そうそう。かんにんしてなあ──溶解(メルト)の部分は、ちゃーんと覚えとったんよ。うちもどろどろに蕩かすのが専売特許みたいなもんやしね」
だから『メルト』の部分は印象に残っていたとでも言うのだろうか──どこまで本気か分からない冗談を言いながら、酒呑童子は口元を歪めた。
少女──メルトリリスの心中には警戒が渦巻いていた。
目の前の鬼のような恰好をしている女は、様子からして自分のことを知っているようである。しかし自分は彼女のことを知らない。その認識の不一致が、メルトリリスを悩ませていた……頭から角を生やした娘に見覚えがないわけではないのだが、己の記録にあるそれと、目の前の鬼は、角という共通点以外は全くの別人だ。
それもそのはず。酒呑童子はメルトリリスたちがカルデアに召喚されて以降という、メルトリリスにとって未来の時系列から、このバトルロワイアルに召致されているからだ。一方的な認知が生じるのも当然だった。
少女──メルトリリスの心中には警戒が渦巻いていた。
目の前の鬼のような恰好をしている女は、様子からして自分のことを知っているようである。しかし自分は彼女のことを知らない。その認識の不一致が、メルトリリスを悩ませていた……頭から角を生やした娘に見覚えがないわけではないのだが、己の記録にあるそれと、目の前の鬼は、角という共通点以外は全くの別人だ。
それもそのはず。酒呑童子はメルトリリスたちがカルデアに召喚されて以降という、メルトリリスにとって未来の時系列から、このバトルロワイアルに召致されているからだ。一方的な認知が生じるのも当然だった。
「たしか、あんたはんはBBと知り合いやろ? 今回のことで、何か知っていることでもないん?」
「仮に知っているとして、出会ったばかりの貴女に教えると思う?」
「……いけずやなぁ。口の堅い子は嫌われるで?」
「仮に知っているとして、出会ったばかりの貴女に教えると思う?」
「……いけずやなぁ。口の堅い子は嫌われるで?」
ふたりの間に剣呑な空気が流れる。
「言っておくけど、今の私はかなり不機嫌なの。だから貴女みたいな怪しい輩を見ると、蹴り倒したくなるわ」
「へえ、そうなん。うちは一向にかまへんで? カルデアであんたはんと手合わせすることなんてなかったから、これはいい機会やし。……それに、ほら。あんたはんの体ってとろとろの液体なんやろ? 杯に容れたらいい酒になりそうやわあって前から思ってたんよ──だから」
「へえ、そうなん。うちは一向にかまへんで? カルデアであんたはんと手合わせすることなんてなかったから、これはいい機会やし。……それに、ほら。あんたはんの体ってとろとろの液体なんやろ? 杯に容れたらいい酒になりそうやわあって前から思ってたんよ──だから」
酒呑童子は目を細め、弧を描いていた口の周りを舌なめずりした。
それは、見るものをぞっとさせる──鬼の顔だった。
それは、見るものをぞっとさせる──鬼の顔だった。
「これを機に試してみるのも、いいかもしれんどすなあ」
場の緊迫が最大まで高まった。
あとほんの少しのきっかけでもあれば、彼女たちが殺し合いを開始するのに十分な合図となるだろう。
世界の全てが二体の人外の動向を見守るように静まり返っていた──だが。
あとほんの少しのきっかけでもあれば、彼女たちが殺し合いを開始するのに十分な合図となるだろう。
世界の全てが二体の人外の動向を見守るように静まり返っていた──だが。
「待ちなさい!」
上田は本日二度目の制止の声を張り上げた。
「誰もが認める天才物理学者、上田次郎の頭脳と観察眼を用いれば、酒呑童子さんとメルトリリスさんが顔見知りの関係であることはよく分かります」
「違うわ」
「違うわ」
鬼のような少女の名が大江山の首魁である『酒呑童子』であることすら今知ったばかりであるメルトリリスは抗議の声を挙げたが、自分と酒に酔っている自称天才の耳には届かなかった。
「狭い島内で強制される殺し合い(という設定のテレビの企画)において、貴女たちがすべきなのは、いがみ合うことではなく、互いに手を取り合って協力することです。違いますか?」
上田は心の中でガッツポーズをした。
危うい空気が流れているふたりの間に入り、仲を取り持つ自分の姿が魅力的に映っていることを確信する。どころか、「(あまり目立ちすぎると私の独壇場になって良くないかもしれないな)」などという無用な心配までする始末だ。
知り合い同士の仲裁をするという行為から、自分の知り合いである山田もこの企画にいることを、ふと思い出した。あの貧乳は今どこで何をしているのだろう。少なくとも豪華客船にはいないな。彼女みたいな万年金欠の人間が足を踏み入れるには、これ以上なく相応しくない場所だし。あと胸のサイズ的に山との縁が絶無なので、島中央の那田蜘蛛山にも居ないだろう。
危うい空気が流れているふたりの間に入り、仲を取り持つ自分の姿が魅力的に映っていることを確信する。どころか、「(あまり目立ちすぎると私の独壇場になって良くないかもしれないな)」などという無用な心配までする始末だ。
知り合い同士の仲裁をするという行為から、自分の知り合いである山田もこの企画にいることを、ふと思い出した。あの貧乳は今どこで何をしているのだろう。少なくとも豪華客船にはいないな。彼女みたいな万年金欠の人間が足を踏み入れるには、これ以上なく相応しくない場所だし。あと胸のサイズ的に山との縁が絶無なので、島中央の那田蜘蛛山にも居ないだろう。
「……なんなのよこいつ。せっかくの昂ぶりが冷めたわ」
「同感やね。まあ、こないなとこが旦那はんの面白いところでもあるんやけど」
「同感やね。まあ、こないなとこが旦那はんの面白いところでもあるんやけど」
言って、メルトリリスと酒呑童子は臨戦態勢を解いた。限り限りまで緊迫していた空気は一気に弛緩する
「メルトリリスさん、私たちは今、この島から脱出するための手段を探しています」
「脱出するための手段って……そんなのあるわけがないじゃない」
「それが見つかるかもしれないんですよ。『研究所』を調査したり、『USB』を調べたりすればね──酒呑童子さん、お願いします」
「はいはい、ちょっと待ってなあ」
「脱出するための手段って……そんなのあるわけがないじゃない」
「それが見つかるかもしれないんですよ。『研究所』を調査したり、『USB』を調べたりすればね──酒呑童子さん、お願いします」
「はいはい、ちょっと待ってなあ」
酒呑童子は応じて、自身のバッグから上田が求めたものを取り出した。出てきたのは厳重なカバーが施されたUSBだった。
「見てくださいよこのUSB! いかにも怪しいでしょう!? 何か重要な秘密が隠されていると見るべきだ、いや、隠されていなくてはならない! 企画的に!」
「…………」
「…………」
上田が提示した脱出プランを聞き、沈思黙考するメルトリリス。
この会場から脱出するのが不可能なことを、彼女はよく知っている。だから、たかだかUSB一本に収まっている情報如きに脱出の糸口が見出せるわけがないと判断した──しかし。
しかし上田たちが言う通り、支給品に入っていたUSBが怪しいのも事実だ。
このバトルロワイアルの殆どはBBの管理下にある。参加者の命も、会場の設備も、そして支給品のアイテムもだ。ならば、そこに紛れ込んでいるUSBにも、何らかの意図があると考えるのが普通ではないか? 脱出手段ではなくとも、メッセージくらいならあるかもしれない。それに島の隅にあっても強い存在感を放っている『研究所』が気になるというのも事実であった。勿論、あの腹黒のことだから、USBや『研究所』の正体が意味深に置かれているだけの無意味なスカの可能性も十分にあるのだが……。
この会場から脱出するのが不可能なことを、彼女はよく知っている。だから、たかだかUSB一本に収まっている情報如きに脱出の糸口が見出せるわけがないと判断した──しかし。
しかし上田たちが言う通り、支給品に入っていたUSBが怪しいのも事実だ。
このバトルロワイアルの殆どはBBの管理下にある。参加者の命も、会場の設備も、そして支給品のアイテムもだ。ならば、そこに紛れ込んでいるUSBにも、何らかの意図があると考えるのが普通ではないか? 脱出手段ではなくとも、メッセージくらいならあるかもしれない。それに島の隅にあっても強い存在感を放っている『研究所』が気になるというのも事実であった。勿論、あの腹黒のことだから、USBや『研究所』の正体が意味深に置かれているだけの無意味なスカの可能性も十分にあるのだが……。
「たしかメルトリリスはプログラムとかに関係があるんよねえ? だったら、USBの解析にも役立ってくれそうな気がするけど、どうなん?」
カルデアで誰かから聞いた覚えのあるメルトリリスのプロフィールを思い出しながら、酒呑童子は口を挟んだ。この殺し合いの主催であるBBとの繋がりが深いメルトリリスを手元に置いておけば、今後愉快な展開を招くことは間違いないので、酒呑童子はメルトリリスを仲間に引き入れることに異論はない。故に出した追加情報であった。
「おお、そうなんですか!? だったら心強い!! どうです? 私たちと一緒に行動しませんか?」
「……貴方たち──特にシュテンのことは信用も信頼もしていないけれど、研究所やUSBが怪しいというのは認めるわ。調査が終わるまでなら、一緒に行動してあげる。もしかすれば、あの女への嫌がらせに繋がるかもしれないし」
「……貴方たち──特にシュテンのことは信用も信頼もしていないけれど、研究所やUSBが怪しいというのは認めるわ。調査が終わるまでなら、一緒に行動してあげる。もしかすれば、あの女への嫌がらせに繋がるかもしれないし」
そう言うメルトリリスだが、自分の情報を知っている怪しいサーヴァントを野放しにしておけないという理由ももちろんあった。
彼女の返答を聞き、上田は安堵する。
彼女の返答を聞き、上田は安堵する。
「(それにしても……)」
上田はメルトリリスを改めて観察する──彼は彼女に出会ってからずっと、驚愕していた。
メルトリリスの顔は、このバトルロワイアルの主催であるBBにそっくりだ──そして、それ以上に上田を驚かせていたのは、彼女の服装である。
穿いて、いない。
スカートとかパンツとかショーツとか、本来ならば下半身に位置しておくべき衣類を、メルトリリスは装備していなかった。
一応局部に金属製のビキニのようなものを穿いているが。それも細いし小さいしで、実に頼りないものである。
目撃した青少年の何かが危うくなりそうなファッションだ。
露出狂。痴女。変態──そんなアダルトなワードが上田の脳内を錯綜する。
彼が跨っている白馬は、己の首の後ろに触れている何か硬くて大きいものに不快感を示すように「ブルルッ」と短く鳴いた。
メルトリリスの顔は、このバトルロワイアルの主催であるBBにそっくりだ──そして、それ以上に上田を驚かせていたのは、彼女の服装である。
穿いて、いない。
スカートとかパンツとかショーツとか、本来ならば下半身に位置しておくべき衣類を、メルトリリスは装備していなかった。
一応局部に金属製のビキニのようなものを穿いているが。それも細いし小さいしで、実に頼りないものである。
目撃した青少年の何かが危うくなりそうなファッションだ。
露出狂。痴女。変態──そんなアダルトなワードが上田の脳内を錯綜する。
彼が跨っている白馬は、己の首の後ろに触れている何か硬くて大きいものに不快感を示すように「ブルルッ」と短く鳴いた。
「酒呑童子さんもそうだが、メルトリリスさんみたいな格好の参加者までいるなんて……放送コード的に大丈夫なのか? それとも深夜帯の番組なのか?」
興奮半分呆れ半分といった口調で呟く上田。
その言葉に反応したのは、先ほどまで彼と会話していたメルトリリスだった。
その言葉に反応したのは、先ほどまで彼と会話していたメルトリリスだった。
「さっきの『企画的に』もおかしかったけれど、今の『放送コード』や『深夜帯の番組』といい、貴方何を言っているのかしら?」
「あ」
「あ」
自分の口からうっかり漏れ出ていた言葉を思い出し、上田はバツが悪そうな顔をする。
彼は声のトーンを下げ、小声で囁いた。
彼は声のトーンを下げ、小声で囁いた。
「リアリティを損ねるようなことを言ってしまって申し訳ありません。今の発言はあとでスタッフに頼んでカットしてもらうことにしましょう。しかしだねぇ、貴女も地上波のテレビ番組に映るのならそれ相応の格好というものを……」
「……は?」
「……は?」
ポーンと、どこかから軽い音が鳴ったような気がした。
上田の言葉があまりにも予想外で、すぐに理解できなかったのか、メルトリリスはそれからしばらく黙っていた。
しかし数秒後、言葉の咀嚼が完了した彼女は、突然脚を高く上げた。
脚の具足の膝に付いている棘の切っ先は、馬に跨る上田の首元にまで届いている。
上田の言葉があまりにも予想外で、すぐに理解できなかったのか、メルトリリスはそれからしばらく黙っていた。
しかし数秒後、言葉の咀嚼が完了した彼女は、突然脚を高く上げた。
脚の具足の膝に付いている棘の切っ先は、馬に跨る上田の首元にまで届いている。
「どぅわ!?」
突然凶器を向けられた上田は素っ頓狂な叫び声を挙げた。
対するメルトリリスは静かな、しかし確かな怒気が感じられる声で語る。
対するメルトリリスは静かな、しかし確かな怒気が感じられる声で語る。
「自分がいる状況を『舞台の上のお芝居(トゥルーマン・ショー)』か何かだと思っているなんて、消費文化で堕落した頭もここまでおめでたいと笑えてくるわね。笑った拍子にうっかり首を刎ねてしまいそうだわ」
この殺し合いが、大衆娯楽で、バラエティで、お遊びで、フィクションだと?
ふざけるな。
そんなわけがない。
そうであってほしいが、そうではないのだ。
この殺し合いの前に『彼』が死んだことも。
この殺し合いの最中に白銀御行が死んだことも。
全部、れっきとした事実なのだ。
だというのに、この男は──!
ふざけるな。
そんなわけがない。
そうであってほしいが、そうではないのだ。
この殺し合いの前に『彼』が死んだことも。
この殺し合いの最中に白銀御行が死んだことも。
全部、れっきとした事実なのだ。
だというのに、この男は──!
「いい? 次またそういうふざけた認識を口にしてみなさい。そんな考えをしている奴はどうせ長く生きられないでしょうし、私が直々に殺してやるわ。それとも今すぐ死んでみる?」
棘の切っ先が、日光を浴びて鋭く光る。
呼吸と血流の重要部位の真横に迫っている凶器への怖れから声も出ないのか、上田は顔を必死に横に振ることで己の意見を明示した。その態度は実に、苛立ちと嗜虐心を刺激するものだった。
呼吸と血流の重要部位の真横に迫っている凶器への怖れから声も出ないのか、上田は顔を必死に横に振ることで己の意見を明示した。その態度は実に、苛立ちと嗜虐心を刺激するものだった。
しばらく不快感に歪んだ表情で上田を睨みつけていたメルトリリスだったが、その顔が『別の要因』で歪んだ瞬間、彼女が上げていた脚は崩れるようにして下ろされた。
「(……へえ)」
後ろから一部始終を眺めていた酒呑童子は気が付く。メルトリリスが右足に大きな傷を抱えており、その痛みが原因で、彼女は脚を下したのだと。
カバーを施すことで外からは異常がないように見えるが、そうであると意識して見ていると、彼女が右足を気遣って動いているのは明らかだった。
おそらく、メルトリリスは以前何処かで戦闘に巻き込まれ、その際に右足を負傷したのだろう。けれども何とか生き延びてここまでやってきて、回復に専念していた。そして酒呑童子たちが訪れ、今に至るという経緯になるのだろうか。
カバーを施すことで外からは異常がないように見えるが、そうであると意識して見ていると、彼女が右足を気遣って動いているのは明らかだった。
おそらく、メルトリリスは以前何処かで戦闘に巻き込まれ、その際に右足を負傷したのだろう。けれども何とか生き延びてここまでやってきて、回復に専念していた。そして酒呑童子たちが訪れ、今に至るという経緯になるのだろうか。
「(どうしてこないなとこにいるんか不思議やったけど、そないな理由があったんやねえ。やちゅうにあんな気丈にふるまって……ふふ、いじらしいわあ)」
そして、もう一つ気が付いたことがある。鬼の気配がメルトリリスの右足の傷から感じられることだ。こちらは鬼の首魁である酒呑童子でなければ気が付けないものである。しかし、彼女が感じたことのない気配でもあった。鬼ではあるが、酒呑童子が知る鬼ではない──そんな気配である。
メルトリリスはその身のこなしを見るに、中々の手練れだ。そんな彼女に傷を負わせた鬼は、果たして──?
メルトリリスはその身のこなしを見るに、中々の手練れだ。そんな彼女に傷を負わせた鬼は、果たして──?
「(出来ることなら会ってみたいわあ)」
未知の鬼の存在に、人知れず笑みを浮かべる酒呑童子。彼女の考えを、鬼の考えを、余人が知ることなど、不可能なのだ。もしかすれば、彼女自身すら、自分の考えを分かっていないのかもしれない。そうであっても不思議ではない。鬼とはそういうイキモノなのだから。
上田は己の身に起きた事を処理するので精一杯だった。史上最高の頭脳を持つ彼でも処理に手古摺るほどに、今しがた起きた事は衝撃的な事だったのである。
メルトリリスが上田に向けた凶器は本物だった。そして、彼女が言った「殺してやる」も脅しやハッタリではない凄みが込められたものだった。インチキ霊能力者と戦ってきたこれまでの経験で、いくつもの殺意を目にしてきた上田だからこそ分かる。あれは演技では出せない本気の言葉だった。
ということはつまり──
上田は己の身に起きた事を処理するので精一杯だった。史上最高の頭脳を持つ彼でも処理に手古摺るほどに、今しがた起きた事は衝撃的な事だったのである。
メルトリリスが上田に向けた凶器は本物だった。そして、彼女が言った「殺してやる」も脅しやハッタリではない凄みが込められたものだった。インチキ霊能力者と戦ってきたこれまでの経験で、いくつもの殺意を目にしてきた上田だからこそ分かる。あれは演技では出せない本気の言葉だった。
ということはつまり──
「(もしかして、この殺し合いは──真剣(マジ)の……バトルロワイアルなのか?)」
バトルロワイアルが開幕して六時間が経ってようやく現状をマトモに認識し始めた上田は、こうしてあまりにも遅いスタートを切ったのであった。
【E-4 道中/早朝】
【酒呑童子@Fate/Grand Order】
[状態]:健康、左頬に打撲
[装備]:普段の服、白馬@TRICK、USBメモリ@HiGH&LOW
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品0~1
[思考・状況]
基本方針:楽しめそうなら鬼は鬼らしく楽しむ
1:ひとまず上田と行動する。
2:小僧(村山)と会って強くなってたら再戦する
3:沖田総司とも再戦したい。
4:メルトリリスに傷を付けた鬼も面白そうだ。
[備考]
※2018年の水着イベント以降、カルデア召喚済
※神鞭鬼毒酒が没収されているため、第一宝具が使用できません
※スキル「果実の酒気」は多少制限されています。
[状態]:健康、左頬に打撲
[装備]:普段の服、白馬@TRICK、USBメモリ@HiGH&LOW
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品0~1
[思考・状況]
基本方針:楽しめそうなら鬼は鬼らしく楽しむ
1:ひとまず上田と行動する。
2:小僧(村山)と会って強くなってたら再戦する
3:沖田総司とも再戦したい。
4:メルトリリスに傷を付けた鬼も面白そうだ。
[備考]
※2018年の水着イベント以降、カルデア召喚済
※神鞭鬼毒酒が没収されているため、第一宝具が使用できません
※スキル「果実の酒気」は多少制限されています。
【上田次郎@TRICK】
[状態]:背中に本人も気付かない程度の出血、若干の酔い、混乱
[装備]:スーツ
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1~3
[思考・状況]
基本方針:この島からの華麗なる脱出。
1:酒呑童子、メルトリリスと行動する。
2:研究所に向かいたい。
3:USBの確認
[備考]
※参戦時期、未定。後続に任せます。
※殺し合いをテレビの企画だと考えています。←メルトから受けた説教でその考えが揺らいでいます。「あれ、もしかしてマジなんじゃね?」みたいな感じです。
[状態]:背中に本人も気付かない程度の出血、若干の酔い、混乱
[装備]:スーツ
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1~3
[思考・状況]
基本方針:この島からの華麗なる脱出。
1:酒呑童子、メルトリリスと行動する。
2:研究所に向かいたい。
3:USBの確認
[備考]
※参戦時期、未定。後続に任せます。
※殺し合いをテレビの企画だと考えています。←メルトから受けた説教でその考えが揺らいでいます。「あれ、もしかしてマジなんじゃね?」みたいな感じです。
【メルトリリス@Fate/Grand Order】
[状態]:損傷(両手)、右足損傷(大、満足な行動不可)←休憩で僅かに回復 、苛立ち
[道具]:基本支給品一式×2(自分のものと白銀のもの)、ランダム支給品0~2(確認済み)、ジャングレイダー@仮面ライダーアマゾンズ
[思考・状況]
基本方針:繋いだ心は、今も離れない
1:研究所とUSBを調べる。
2:…………。
3:この殺し合いにいる藤丸立香とは共には行けない。だけど再び道が交わることがあれば力を貸すくらいはいい。
[備考]
※『深海電脳楽土 SE.RA.PH』のメルトリリスです。
※損傷は修復されていますが完全ではありません。休み無く戦い続ければ破損していくでしょう。
※出逢っているのは『男の藤丸立香』です。
※『女の藤丸立香』については、彼とは別の存在であると認識していますが、同時にその魂の形がよく似ているとも感じています。
※藤丸立香、中野三玖、若殿ミクニ、猛田トシオと情報交換をしました。
[状態]:損傷(両手)、右足損傷(大、満足な行動不可)←休憩で僅かに回復 、苛立ち
[道具]:基本支給品一式×2(自分のものと白銀のもの)、ランダム支給品0~2(確認済み)、ジャングレイダー@仮面ライダーアマゾンズ
[思考・状況]
基本方針:繋いだ心は、今も離れない
1:研究所とUSBを調べる。
2:…………。
3:この殺し合いにいる藤丸立香とは共には行けない。だけど再び道が交わることがあれば力を貸すくらいはいい。
[備考]
※『深海電脳楽土 SE.RA.PH』のメルトリリスです。
※損傷は修復されていますが完全ではありません。休み無く戦い続ければ破損していくでしょう。
※出逢っているのは『男の藤丸立香』です。
※『女の藤丸立香』については、彼とは別の存在であると認識していますが、同時にその魂の形がよく似ているとも感じています。
※藤丸立香、中野三玖、若殿ミクニ、猛田トシオと情報交換をしました。
| 前話 | お名前 | 次話 |
| UNSTOPPABLE | 酒呑童子 | 鬼気怪壊 |
| 上田次郎 | ||
| 貴方の隣に立ちたくて | メルトリリス |