前園甲士様は告りたい-元公安の生存頭脳戦- ◆KbC2zbEtic
円城のナノロボを回収し、さしあたっての危機にも遭遇せず、前園甲士は上機嫌だった。
「クク…いいぞ、流れは確実に私にきている…」
呟きを漏らしながらほくそ笑み、懐からあるものを取り出す。
それは彼が持っていたステルスドローン。つい先ほど工藤達に譲渡されたのと同じ物だ。
ステルスドローンは複数支給されており、コッソリと彼は譲渡したものとは別に隠し持っていたのである。
それは彼が持っていたステルスドローン。つい先ほど工藤達に譲渡されたのと同じ物だ。
ステルスドローンは複数支給されており、コッソリと彼は譲渡したものとは別に隠し持っていたのである。
この殺し合いにおいて、情報と索敵は何よりも重要だ。
如何なる強者も、不意を撃たれれば脱落する可能性を孕んでいる。
そんな状況下で交換とは言え、ステルスドローンを全て手放す選択肢は前園の性格上ありえなかった。
如何なる強者も、不意を撃たれれば脱落する可能性を孕んでいる。
そんな状況下で交換とは言え、ステルスドローンを全て手放す選択肢は前園の性格上ありえなかった。
「さて、工藤たちは、と…んん?」
工藤たちの様子と周囲に危険人物――あの鬼の娘などがいないかを検めるためにステルスドローンを起動する。
ステルスドローンの働きにより工藤たちは直ぐに見つかった。
しかし、映像を見た前園は怪訝な声を漏らす。
まず、画面と音声、両方ともノイズがひどい。
映像に映っている空間自体が何か異様な…工藤の言葉を借りれば一種の異界のような空間と化していた。
そして、そこで工藤と姐切は何かと対峙している様だ。
黒い影のような…得体の知れない存在。それと対峙する工藤もまた、ナノロボ適合者のような物々しい雰囲気を出していたが、ドローンの映像だけでは詳細を探るのは不可能と判断。
ステルスドローンの働きにより工藤たちは直ぐに見つかった。
しかし、映像を見た前園は怪訝な声を漏らす。
まず、画面と音声、両方ともノイズがひどい。
映像に映っている空間自体が何か異様な…工藤の言葉を借りれば一種の異界のような空間と化していた。
そして、そこで工藤と姐切は何かと対峙している様だ。
黒い影のような…得体の知れない存在。それと対峙する工藤もまた、ナノロボ適合者のような物々しい雰囲気を出していたが、ドローンの映像だけでは詳細を探るのは不可能と判断。
(これは…少し合流するのは待った方がよさそうですね)
明かに、今工藤たちが対峙しているのはバケモノだ。
炎噴き出す黒く塗りつぶされたその威容は、あの鬼の娘のような存在と見て間違いない。
そんな怪物がいるところにノコノコ戻るのは前園からしてみれば愚挙以外の何物でもなかった。
炎噴き出す黒く塗りつぶされたその威容は、あの鬼の娘のような存在と見て間違いない。
そんな怪物がいるところにノコノコ戻るのは前園からしてみれば愚挙以外の何物でもなかった。
(まぁ…奪ったデイパックにあった”コレ”を試してもいいですが…真っ向からとなるとやはりリスクが高い)
愛月しのと竈門禰豆子から奪った支給品が入っているデイパックを撫でる。
非常に強力な威力であると説明書には書かれており、一体どれ程の物か確かめておきたい気持ちはあったが、あの参加者ですらないような怪物に使う価値があるのかは疑問だ。
工藤たちは所詮駒でしかない事実も鑑みて、此処は静観の構えを取る事に決めた。
非常に強力な威力であると説明書には書かれており、一体どれ程の物か確かめておきたい気持ちはあったが、あの参加者ですらないような怪物に使う価値があるのかは疑問だ。
工藤たちは所詮駒でしかない事実も鑑みて、此処は静観の構えを取る事に決めた。
「さて、静観するのはいいが…ならばこれからどうするか―――!?」
そう考え、再びドローンの映像に意識を戻すと、猛スピードで此方に向かってくる少女が見えた。
その速度は明らかに常人の領域を超えており、もしゲームに乗っている手合いなら今から遭遇を避けるのは困難だ。
迂闊だった、前園は舌打ちしながらドローンを呼び戻し、懐の拳銃を構える。
少女が鬼の娘と同類ならばこんなもの豆鉄砲でしかないが、それでもデイパックから新たに武器を取り出す時間は最早ない。
その速度は明らかに常人の領域を超えており、もしゲームに乗っている手合いなら今から遭遇を避けるのは困難だ。
迂闊だった、前園は舌打ちしながらドローンを呼び戻し、懐の拳銃を構える。
少女が鬼の娘と同類ならばこんなもの豆鉄砲でしかないが、それでもデイパックから新たに武器を取り出す時間は最早ない。
「止まりなさい!!」
前園がそう叫ぶのと、少女が路地の先から姿を現したのは殆ど同時だった。
◆
急がなければ。
オルテナウスの出力を全開にして、マシュは駆ける。
その速度は既に自動車並みだ。しかし、それでもパフォーマンスは異聞帯での物よりもかなり落ちる。
カルデアからのバックアップがほぼ絶たれている。その事をマシュは確信していた。
オルテナウスの出力を全開にして、マシュは駆ける。
その速度は既に自動車並みだ。しかし、それでもパフォーマンスは異聞帯での物よりもかなり落ちる。
カルデアからのバックアップがほぼ絶たれている。その事をマシュは確信していた。
その為バイタル等の体調・状態管理やオルテナウスの動作チェックは全て自分が行わなければならない。
だが、デミ・サーヴァントの自分はまだ良い。より逼迫しているのは名簿に名を連ねる…酒?童子の様なカルデア側サーヴァント達だろう。
抑止力によって召喚されたサーヴァントとは違い、カルデアのサーヴァントはカルデアの電力を変換し、藤丸立香を中継した魔力供給に依存している。
カルデアとのつながりが絶たれているという事は、その電力による魔力供給も当然カットされているはずだ。
サーヴァントは一騎一騎が非常に高性能な兵器である。しかしそれ故に存在するだけで大量の燃料を消費する。
それでも、ただ現界しているだけなら一切魔力供給がなくとも自前の魔力だけで数日は保つだろう。
しかし生憎、現在は殺し合いという生存競争の真っただ中。
戦いが激化すれば、補給を断たれたに等しい彼らは必然的に苦境に立たされる事となる。
村山の様な常人とサーヴァント、殺し合いをさせるならばこれぐらいのハンデは必要だろうとBBは判断したのだろう。
ともあれ、一刻も早く合流し、戦力を整える必要がある。しかし―――、
だが、デミ・サーヴァントの自分はまだ良い。より逼迫しているのは名簿に名を連ねる…酒?童子の様なカルデア側サーヴァント達だろう。
抑止力によって召喚されたサーヴァントとは違い、カルデアのサーヴァントはカルデアの電力を変換し、藤丸立香を中継した魔力供給に依存している。
カルデアとのつながりが絶たれているという事は、その電力による魔力供給も当然カットされているはずだ。
サーヴァントは一騎一騎が非常に高性能な兵器である。しかしそれ故に存在するだけで大量の燃料を消費する。
それでも、ただ現界しているだけなら一切魔力供給がなくとも自前の魔力だけで数日は保つだろう。
しかし生憎、現在は殺し合いという生存競争の真っただ中。
戦いが激化すれば、補給を断たれたに等しい彼らは必然的に苦境に立たされる事となる。
村山の様な常人とサーヴァント、殺し合いをさせるならばこれぐらいのハンデは必要だろうとBBは判断したのだろう。
ともあれ、一刻も早く合流し、戦力を整える必要がある。しかし―――、
(今は、クロオさんたちを…)
自分を妹と呼んだ二人。
凶行を働いたが、自分の言葉によって思い直してくれた二人。
自分だけを、危険から遠ざけようとしてくれた二人。
助けなければならない。危険すぎる特攻を止めなければならない。
その使命感が、マシュを突き動かしていた。
凶行を働いたが、自分の言葉によって思い直してくれた二人。
自分だけを、危険から遠ざけようとしてくれた二人。
助けなければならない。危険すぎる特攻を止めなければならない。
その使命感が、マシュを突き動かしていた。
だが、彼女は気づいていなかった。
その強すぎる決意が、使命感が、彼女の視野を狭めていたことに。
具体的に言えば、向かわなければならない教会とは逆方向へ進んでいることに。
そして、方角の誤認によって彼女は一つの出会いを果たすこととなる。
その強すぎる決意が、使命感が、彼女の視野を狭めていたことに。
具体的に言えば、向かわなければならない教会とは逆方向へ進んでいることに。
そして、方角の誤認によって彼女は一つの出会いを果たすこととなる。
「止まりなさい!」
駆け抜けた路地の先に現れたのはスーツを見事に着こなし、眼鏡をかけた男だった。
その手には拳銃が握られており、警戒していることが伺える。
急いでいたが、この偶発的な遭遇によってマシュは足を止めざるを得なかった。
その手には拳銃が握られており、警戒していることが伺える。
急いでいたが、この偶発的な遭遇によってマシュは足を止めざるを得なかった。
「落ち着いてください!此方に敵意はありません!!」
両手を上げて此方に敵意がないのをアピールする。
しかし、目の前の男の懐疑的な視線が消えることはなかった。
油断なく拳銃をオルテウスの装甲に覆われていない顔部分へと向け、牽制してくる。
しかし、目の前の男の懐疑的な視線が消えることはなかった。
油断なく拳銃をオルテウスの装甲に覆われていない顔部分へと向け、牽制してくる。
「さて、そんな鎧を着こんだ人間に言われてもな。
さっき君よりも小さな鬼の少女に襲われたばかりな以上、簡単に信用はできない」
「鬼の少女…酒?童子さん…?」
さっき君よりも小さな鬼の少女に襲われたばかりな以上、簡単に信用はできない」
「鬼の少女…酒?童子さん…?」
オルテナウスの武装を明らかに警戒する男。
しかし流石に拳銃を向けられた状態で武装解除するという選択肢はマシュにも選べない。
結果、にらみ合うような状況となり二人の間に緊張が走る。
しかし流石に拳銃を向けられた状態で武装解除するという選択肢はマシュにも選べない。
結果、にらみ合うような状況となり二人の間に緊張が走る。
「もしかしたらその鬼の少女は私の知り合いかもしれません。そうだった場合は必ず弁明します!
だから…道を開けてくれませんか?早く教会に行かないと……!」
「教会?」
だから…道を開けてくれませんか?早く教会に行かないと……!」
「教会?」
マシュの言葉に訝しむような顔をする男。
そして、銃をこちらに向けたまま何かを考えている様だった。
一刻も早く教会へ馳せ参じなければならないマシュの焦りが募る。
オルテナウスを起動した状態ならば銃弾一発程度問題はない。
いっそ無視して行ってしまおうか、生真面目な性格である彼女の思考にその考えが過った時だった。
そして、銃をこちらに向けたまま何かを考えている様だった。
一刻も早く教会へ馳せ参じなければならないマシュの焦りが募る。
オルテナウスを起動した状態ならば銃弾一発程度問題はない。
いっそ無視して行ってしまおうか、生真面目な性格である彼女の思考にその考えが過った時だった。
「……いいでしょう、急いでいるのは分かりました。しかし、君は大きな勘違いをしている」
そう言って、「前園甲士といいます」と、男は名乗りながら銃口を下ろしたのだ。
どうやら此方に敵意がない事は理解してもらえたらしい。
銃を懐に仕舞いなおす前園を見てマシュも俄かに安堵し、名乗り返す。
どうやら此方に敵意がない事は理解してもらえたらしい。
銃を懐に仕舞いなおす前園を見てマシュも俄かに安堵し、名乗り返す。
「……マシュ・キリエライトと言います。それで…その、勘違いと言うのは?」
「それを教える前にまずその鎧はどうにかなりませんか?
私は君を完全に信用したわけではないので」
「それを教える前にまずその鎧はどうにかなりませんか?
私は君を完全に信用したわけではないので」
オルテナウスをどうにかしろという要求にマシュは顔を曇らせる。
しかし、先に銃を下ろしたのは彼方なので断りにくい。前園は魔術師ではないようだし、敵意も今のところ感じられない。
オルテナウスの装甲が威圧感を与えてしまうというのも分からない話ではない。
加えて、酒?童子が彼を襲ったのではないかという疑惑もある。
仕方なく、敵ではない事を理解してもらうために一度マシュはオルテナウスを解除することにした。
しかし、先に銃を下ろしたのは彼方なので断りにくい。前園は魔術師ではないようだし、敵意も今のところ感じられない。
オルテナウスの装甲が威圧感を与えてしまうというのも分からない話ではない。
加えて、酒?童子が彼を襲ったのではないかという疑惑もある。
仕方なく、敵ではない事を理解してもらうために一度マシュはオルテナウスを解除することにした。
「これで、いいでしょうか?」
「えぇ、結構です。時間もないようですので単刀直入に言えば―――教会は逆方向です」
「えぇ、結構です。時間もないようですので単刀直入に言えば―――教会は逆方向です」
「え?」と素っ頓狂な声を上げてマシュは前園を見つめる。
彼はやはり、という顔を浮かべるとデイパックの中から地図を取り出し、周りの風景と照らし合わせながら教示した。
例え初めて歩く大地であっても、しっかりと確認を行えば聡明な彼女は前園のもたらした情報が誤りや偽りでないことは直ぐに理解することができた。
彼はやはり、という顔を浮かべるとデイパックの中から地図を取り出し、周りの風景と照らし合わせながら教示した。
例え初めて歩く大地であっても、しっかりと確認を行えば聡明な彼女は前園のもたらした情報が誤りや偽りでないことは直ぐに理解することができた。
「……す、すみません!ありがとうございます!!」
「いえ、良いですよ。土地勘がないなら仕方ありませんし。君なら遅かれ早かれ気づいたでしょう。
礼と言っては何ですが、少しだけ情報交換をしませんか?勿論手短に」
「いえ、良いですよ。土地勘がないなら仕方ありませんし。君なら遅かれ早かれ気づいたでしょう。
礼と言っては何ですが、少しだけ情報交換をしませんか?勿論手短に」
深く頭を下げるマシュに対し、事務的に提案を行う前園。
マシュは僅かに逡巡するが、道を間違えてロスするはずだった時間を想えば…とこれを了承する。
マシュは僅かに逡巡するが、道を間違えてロスするはずだった時間を想えば…とこれを了承する。
「さて、まずは…何故教会に向かっているか教えてもらえますか?」
「はい、いきさつを話すと…」
「はい、いきさつを話すと…」
彼女はまずクロオと累の存在と、彼らに出会ったいきさつについて触れ、そこから更に彼らが窮地に陥っているかもしれない事実を伝えた。
その話に対して、前園が食いついたのは累という鬼と、あの方という鬼たちの主についてだ。
彼に問われるまま、マシュは鬼が日光が苦手らしい事と、鬼である累達と確かに理解し合えたことを伝える。
ついでに酒?童子の事も話すと、彼を襲ったのは酒?童子ではないようだったことに胸をなで下ろした。
その話に対して、前園が食いついたのは累という鬼と、あの方という鬼たちの主についてだ。
彼に問われるまま、マシュは鬼が日光が苦手らしい事と、鬼である累達と確かに理解し合えたことを伝える。
ついでに酒?童子の事も話すと、彼を襲ったのは酒?童子ではないようだったことに胸をなで下ろした。
「……成程、いきさつは分かりました。では、最後に一つだけ
何故、貴方は襲い掛かってきた相手を助けようと?」
何故、貴方は襲い掛かってきた相手を助けようと?」
感情のくみ取りにくい声で問いかけてくる前園。
その瞳は眼鏡の反射によって伺うことはできない。
しかし、そんな前園に対してマシュはふっと微笑みを浮かべて、
揺るぎない意思を籠めて、返答する。
その瞳は眼鏡の反射によって伺うことはできない。
しかし、そんな前園に対してマシュはふっと微笑みを浮かべて、
揺るぎない意思を籠めて、返答する。
「……それは、私の先輩もきっと同じ選択をするからです」
人類史を守るために、多くの時代を、世界を巡り。
数えきれない物をその掌から零れ落として、それでもなお、震えながら手を伸ばすことを諦めないあの人ならば。
殺し合いでも変わらず、手を差し伸べ続けるだろう。
マシュはそんな彼の事を尊敬していたし、彼の様にありたいと思っていた。
そして、累もクロオも最後には自分の思いを理解し、危険から遠ざけようとしてくれたのだ。
……未来のないかもしれない身で、それでも自分を守ろうと。
ならば、自分もなけなしの勇気を振り絞らないわけにはいかない。
彼らの信頼に、か細くも確かに繋がった絆に答えないわけにはいかない。
かつて、轟音と炎にかき消されそうになっていた自分を見つけ、手を握ってくれた先輩の様に。
それが、マシュ・キリエライトの答えだった。
数えきれない物をその掌から零れ落として、それでもなお、震えながら手を伸ばすことを諦めないあの人ならば。
殺し合いでも変わらず、手を差し伸べ続けるだろう。
マシュはそんな彼の事を尊敬していたし、彼の様にありたいと思っていた。
そして、累もクロオも最後には自分の思いを理解し、危険から遠ざけようとしてくれたのだ。
……未来のないかもしれない身で、それでも自分を守ろうと。
ならば、自分もなけなしの勇気を振り絞らないわけにはいかない。
彼らの信頼に、か細くも確かに繋がった絆に答えないわけにはいかない。
かつて、轟音と炎にかき消されそうになっていた自分を見つけ、手を握ってくれた先輩の様に。
それが、マシュ・キリエライトの答えだった。
「……そうですか。それならもう、行くと良い。
可能なら私も同行したい所だが、残念ながら足手まといになるだろう」
「いえいえ!此方こそ…!前園さんのお陰で助かりました」
「フフ…貴重な情報、感謝します。君の先輩と、キミは実に良い人間らしい」
可能なら私も同行したい所だが、残念ながら足手まといになるだろう」
「いえいえ!此方こそ…!前園さんのお陰で助かりました」
「フフ…貴重な情報、感謝します。君の先輩と、キミは実に良い人間らしい」
深く頭を下げる前園に対して、釣られるようにマシュもお辞儀を返す。
接触こそ険悪だったものの、前園甲士という男は最後まで紳士的であった。
五分に満たない邂逅であったが、また一人、信頼できる人間に出会えたことは僥倖だと言えるだろう。
そう考えた所で、
接触こそ険悪だったものの、前園甲士という男は最後まで紳士的であった。
五分に満たない邂逅であったが、また一人、信頼できる人間に出会えたことは僥倖だと言えるだろう。
そう考えた所で、
「―――けど、だから」
下げていた頭を上げる。
最後に前園をもう一度一瞥してからオルテナウスを再展開しよう、そう思った時だった。
前園の姿が消えていた。
立ち去ったにしては早すぎる。かといって、今自分がいる道には隠れる場所なんて何処にもない。
――――不吉な何かが背筋を駆け抜ける。
霊基を覚醒させ、オルテナウスを戦闘状態に移行させようとする。
最後に前園をもう一度一瞥してからオルテナウスを再展開しよう、そう思った時だった。
前園の姿が消えていた。
立ち去ったにしては早すぎる。かといって、今自分がいる道には隠れる場所なんて何処にもない。
――――不吉な何かが背筋を駆け抜ける。
霊基を覚醒させ、オルテナウスを戦闘状態に移行させようとする。
しかし、前園を探したその一瞬。探してしまったその一瞬は、
「だから、死ぬんだよ」
彼女にとって余りにも致命的だった。
直後。全ての色彩を、逆光が塗りつぶした。
直後。全ての色彩を、逆光が塗りつぶした。
◆
何が、起きたのだろう。
突然、目の前が光って……
私は朦朧とする意識で立ち上がろうとする。けれど立ち上がることはできなかった。
私の下半身は吹き飛んで、消失していたから。
オルテナウスによる防御が、間に合わなかったのだ。
助からないことは、見ただけでわかった。
突然、目の前が光って……
私は朦朧とする意識で立ち上がろうとする。けれど立ち上がることはできなかった。
私の下半身は吹き飛んで、消失していたから。
オルテナウスによる防御が、間に合わなかったのだ。
助からないことは、見ただけでわかった。
「せん、ぱい……」
死がすぐそこまで来たのを感じるのはこれで三度目だ。
一度目の時も漠然とした恐怖はあった。けれど何も知らなかった私は「ああ、そうか」と受け入れていた感情もあって、
二度目の、時間神殿では先輩を守るために恐怖はなかった。
それなのに…三度目の今はどうしようもなく「死」が恐ろしい。
一度目の時も漠然とした恐怖はあった。けれど何も知らなかった私は「ああ、そうか」と受け入れていた感情もあって、
二度目の、時間神殿では先輩を守るために恐怖はなかった。
それなのに…三度目の今はどうしようもなく「死」が恐ろしい。
「先輩…ッ!」
だって、まだ何もできていない。
あの二人を助ける事も、
この殺し合いを止める事も、
凍結された汎人類史を救う事も、
何もなかった私に世界を教えてくれたあの人の笑顔を、もう一度見る事も―――、
あの二人を助ける事も、
この殺し合いを止める事も、
凍結された汎人類史を救う事も、
何もなかった私に世界を教えてくれたあの人の笑顔を、もう一度見る事も―――、
「どうか」
だけれど、もう私にはもう何もできない。
それが口惜しく、無念だった。
だから、ただ願う。この殺し合いで流される血が私が最後でありますように、と。
先輩が生き残り、この殺し合いを脱出して、
それが口惜しく、無念だった。
だから、ただ願う。この殺し合いで流される血が私が最後でありますように、と。
先輩が生き残り、この殺し合いを脱出して、
「どうか、ご無事で…」
そしていつかきっと、ささやかで、暖かで、幸せな日々に戻れますように。
それだけを、ただ願う。
それだけを、ただ願う。
【マシュ・キリエライト Fate/Grand Order 死亡】
◆
―――マシュ・キリエライトのミスは三つ。
一つは累の血鬼術によって作られた繭に包まれていたため、鬼舞辻無惨が教会のすぐ傍まで来ていることに気づけなかった事。
もしその事に気づいていれば、一刻の猶予もない程逼迫した状況を鑑みて、
彼女は銃を向ける前園を無視、そのまま教会に向かえずとも、命を落とすことは無かっただろう。
一つは累の血鬼術によって作られた繭に包まれていたため、鬼舞辻無惨が教会のすぐ傍まで来ていることに気づけなかった事。
もしその事に気づいていれば、一刻の猶予もない程逼迫した状況を鑑みて、
彼女は銃を向ける前園を無視、そのまま教会に向かえずとも、命を落とすことは無かっただろう。
もう一つは情報交換の際、急ぐあまりBBについての情報を提示するのを怠ってしまった点だ。
主催と関りがあると言えば、誰もがその情報に食いつく。
そしてそれは、前園すら例外ではなかっただろう。
だが、しかしBBとの複雑な関係を話せばカルデアや人理の修復等の説明をしなければならず、確実に情報交換に時間を割かれる。
そうなれば、自分が情報交換をしている間に累とクロオが窮地に陥る恐れがあった。
加えて、前園が鬼の情報に食いついた事もあり、最低限の情報交換にとどめてしまった。
もし、BBとの関係を匂わせていれば、前園の中での彼女の利用価値はより高い物となり、圧裂弾を放たれることもなかったはずである。
主催と関りがあると言えば、誰もがその情報に食いつく。
そしてそれは、前園すら例外ではなかっただろう。
だが、しかしBBとの複雑な関係を話せばカルデアや人理の修復等の説明をしなければならず、確実に情報交換に時間を割かれる。
そうなれば、自分が情報交換をしている間に累とクロオが窮地に陥る恐れがあった。
加えて、前園が鬼の情報に食いついた事もあり、最低限の情報交換にとどめてしまった。
もし、BBとの関係を匂わせていれば、前園の中での彼女の利用価値はより高い物となり、圧裂弾を放たれることもなかったはずである。
そして―――累とクロオが彼女の説得に心を揺さぶられてしまった事。
もし、彼らがマシュの説得に応じずとも、オルテナウスの出力を最大まで上昇させれば脱出は可能だった。
その場合、彼女の警戒心は高いまま維持され、前園を前にしても奇襲を許すことは無かっただろう。
しかし人理を巡る旅路の果てに色彩を得た彼女は、手を差し伸べることを選び、それを成功させた。
その成功は麻薬の様に作用し、危機に対する嗅覚を鈍らせたのである。
もし、彼らがマシュの説得に応じずとも、オルテナウスの出力を最大まで上昇させれば脱出は可能だった。
その場合、彼女の警戒心は高いまま維持され、前園を前にしても奇襲を許すことは無かっただろう。
しかし人理を巡る旅路の果てに色彩を得た彼女は、手を差し伸べることを選び、それを成功させた。
その成功は麻薬の様に作用し、危機に対する嗅覚を鈍らせたのである。
人の悪意を知らなかったわけではない。人理修復の旅路で幾度となく彼女も直面してきた。
しかし、その時は隣には常にダヴィンチが、Dr.ロマンが、ホームズが、抑止力によって召喚された英霊が、そして藤丸立香が居た。
彼らが常にマシュを守り、導いてきたために、個人として人の悪意と相対する対峙した経験が彼女には足りなかった。
しかし、その時は隣には常にダヴィンチが、Dr.ロマンが、ホームズが、抑止力によって召喚された英霊が、そして藤丸立香が居た。
彼らが常にマシュを守り、導いてきたために、個人として人の悪意と相対する対峙した経験が彼女には足りなかった。
信頼は美徳であり、それによって生まれる絆は強く尊い。それは一つの真理だ。
けれど彼女はこの世には煮ても焼いても食えない人間もいる。その事を今一度心しておくべきだった。
金のためなら同僚の刑事を殺し、国をも裏切り、殺した同僚の息子すら利用する事を厭わない男。
―――生き恥。誰もがそう評する所業である。しかし前園甲士に生き恥を感じるような羞恥心はない。
それ故に、魔術王ゲーティアすら成しえなかった人類完殺を成功させることができたのだ。
けれど彼女はこの世には煮ても焼いても食えない人間もいる。その事を今一度心しておくべきだった。
金のためなら同僚の刑事を殺し、国をも裏切り、殺した同僚の息子すら利用する事を厭わない男。
―――生き恥。誰もがそう評する所業である。しかし前園甲士に生き恥を感じるような羞恥心はない。
それ故に、魔術王ゲーティアすら成しえなかった人類完殺を成功させることができたのだ。
「やっすい絆で命をかけるなんてアホらしいよね。三十億くれるなら俺は神をも裏切るよ」
ヘラヘラと、前園は手にした二つの切り札を見ながら先程までとは打って変わって軽薄な笑みを浮かべた。
一つは銃。
銃と言っても愛月しのから手に入れたベレッタではない。
溶源性細胞の始祖たるオリジナルアマゾンすら一撃で爆散させ、撃滅する魔銃。
その名を、圧裂弾と言った。
もう一つはマントの切れ端。
唯のマントの切れ端ではない。纏うものを不可視にする英霊ロビンフッドの宝具、『顔のない王(ノーフェイス・メイキング)』であった。
まず地図を取り出す際、顔のない王で包んだ圧裂弾を取り出し、意識をそらした所で顔のない王を自身に使用、姿を隠し圧裂弾による銃撃を行う。
作戦は見事に成功し、主武装の盾を欠いた状態で対戦車砲を上回る火力の奇襲を受けては、さしものデミサーヴァントも耐えきることは不可能だった。
一つは銃。
銃と言っても愛月しのから手に入れたベレッタではない。
溶源性細胞の始祖たるオリジナルアマゾンすら一撃で爆散させ、撃滅する魔銃。
その名を、圧裂弾と言った。
もう一つはマントの切れ端。
唯のマントの切れ端ではない。纏うものを不可視にする英霊ロビンフッドの宝具、『顔のない王(ノーフェイス・メイキング)』であった。
まず地図を取り出す際、顔のない王で包んだ圧裂弾を取り出し、意識をそらした所で顔のない王を自身に使用、姿を隠し圧裂弾による銃撃を行う。
作戦は見事に成功し、主武装の盾を欠いた状態で対戦車砲を上回る火力の奇襲を受けては、さしものデミサーヴァントも耐えきることは不可能だった。
「しかし…期待以上の威力だった。これならあの鬼相手でも通じそうだな」
実験台となってくれた少女に感謝の意を示しながら前園は銃を仕舞い、圧裂弾の衝撃で吹き飛んだ少女のデイパックも回収する。
この威力ならば、ナノホストや鬼の娘の様な超人相手にも十分に切り札となりうる。
もっとも、予備弾はあと五発しかないため積極的に殺して回ることは不可能だが。
方針としては、また暫く集団に溶け込み、機を伺うこととなるだろう。
この威力ならば、ナノホストや鬼の娘の様な超人相手にも十分に切り札となりうる。
もっとも、予備弾はあと五発しかないため積極的に殺して回ることは不可能だが。
方針としては、また暫く集団に溶け込み、機を伺うこととなるだろう。
「フッ、どうせ鬼に殺されるかもしれなかったんだ。
それなら、オレの役に立って死んだほうがよかっただろう?」
それなら、オレの役に立って死んだほうがよかっただろう?」
前園がマシュを殺した理由は一言でいうならば、丁度良かったからだ。
適度に隙があり、仲間を助けるために鬼に挑みに行くという死んでもおかしくない理由があった。
だから、自分の持つ切り札の実験台になってもらうことにした。(もし圧裂弾で標的が死亡しなかった場合、透明化したまま逃走する腹積もりだった)
適度に隙があり、仲間を助けるために鬼に挑みに行くという死んでもおかしくない理由があった。
だから、自分の持つ切り札の実験台になってもらうことにした。(もし圧裂弾で標的が死亡しなかった場合、透明化したまま逃走する腹積もりだった)
そして、彼女を殺した犯人は全て鬼達の首魁になすりつけてしまえばいい。
全く丁度いい実験台よこしてくれたものだ。彼女を襲い、挙句絆されたらしい二人組の少年は。
そう思う一方で、両親に教わらなかったのか?と前園は心中でせせら笑う。
嘘つき、卑怯者…そんな悪い子供ほど、自分の様な本当に悪い大人の恰好の餌食になると言うのに。
もっとも、餌食になったのは彼らではなく、彼らが守ろうとした少女というのは皮肉な話だが。
少女が死んだのも知らず、せいぜい鬼同士つぶし合ってくれればいい。
日光が苦手という情報を得、教会にいるのが分かっているのなら近づかなければいいのだ。
全く丁度いい実験台よこしてくれたものだ。彼女を襲い、挙句絆されたらしい二人組の少年は。
そう思う一方で、両親に教わらなかったのか?と前園は心中でせせら笑う。
嘘つき、卑怯者…そんな悪い子供ほど、自分の様な本当に悪い大人の恰好の餌食になると言うのに。
もっとも、餌食になったのは彼らではなく、彼らが守ろうとした少女というのは皮肉な話だが。
少女が死んだのも知らず、せいぜい鬼同士つぶし合ってくれればいい。
日光が苦手という情報を得、教会にいるのが分かっているのなら近づかなければいいのだ。
「さて…工藤たちのほうは…と」
ドローンを起動し、工藤たちの方角へ向かわせる。
すると既に自体は終息したようで、あの影の怪物はいないようだった。
映像も先程までと違い正常なものに戻っている。
姐切に何某かの異常があったようなのは気がかりだが、今なら合流しても問題はないだろう。
すると既に自体は終息したようで、あの影の怪物はいないようだった。
映像も先程までと違い正常なものに戻っている。
姐切に何某かの異常があったようなのは気がかりだが、今なら合流しても問題はないだろう。
(さて、圧裂弾の爆発音を聞いていた時のためのカバーストーリーを考えておかなければな…)
歩きながら考えていると、不意に今しがた殺した少女が慕っていた先輩とやらの存在が脳裏を過る。
名前を聞くのを忘れていたのは痛いが、まぁ出会ったら精々利用してやるとしよう。
そして、最後に「君の後輩を殺したのは、この前園甲士様だ?」と告白したらどんな顔をするだろうか。
正義感の強い円城ならば憎悪を露にして向かってくるだろうが…その彼も、もういない。
名前を聞くのを忘れていたのは痛いが、まぁ出会ったら精々利用してやるとしよう。
そして、最後に「君の後輩を殺したのは、この前園甲士様だ?」と告白したらどんな顔をするだろうか。
正義感の強い円城ならば憎悪を露にして向かってくるだろうが…その彼も、もういない。
「まぁ…向かってきたところで後輩と同じ場所に送ってやるだけですが」
そうして、朝陽の祝福を浴びながら、蛇は再び歩き出す。
彼の背後に佇むハートとリンゴの生命の木が、目の前の男の凶行を止められないことを嘆くように、哀し気に煌めいていた。
彼の背後に佇むハートとリンゴの生命の木が、目の前の男の凶行を止められないことを嘆くように、哀し気に煌めいていた。
【C-3(南部)/1日目・朝】
【前園甲士@ナノハザード】
[状態]:健康
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品0~1、ベレッタM92F@現実、青酸カリ@現実、
人肉ハンバーグ@仮面ライダーアマゾンズ、ナノロボット(円城)のサンプル@ナノハザード 圧裂弾(5/6)@仮面ライダーアマゾンズ、『顔のない王』@Fate/Grand Order、ステルスドローン@ナノハザード、トンプソン・コンテンダー@Fate/Grand Order、救急箱@現実、22口径ロングライフル弾(29/30発)、ランダム支給品0~1(累のもの、未確認)
[思考・状況]
基本方針:人を殺してでも生き残る。
1:人間よりも強い『超人』を利用して禰豆子と殺し合わせる。
2:工藤・姐切を利用する
[備考]
※参戦時期、未定。後続に任せます。
[状態]:健康
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品0~1、ベレッタM92F@現実、青酸カリ@現実、
人肉ハンバーグ@仮面ライダーアマゾンズ、ナノロボット(円城)のサンプル@ナノハザード 圧裂弾(5/6)@仮面ライダーアマゾンズ、『顔のない王』@Fate/Grand Order、ステルスドローン@ナノハザード、トンプソン・コンテンダー@Fate/Grand Order、救急箱@現実、22口径ロングライフル弾(29/30発)、ランダム支給品0~1(累のもの、未確認)
[思考・状況]
基本方針:人を殺してでも生き残る。
1:人間よりも強い『超人』を利用して禰豆子と殺し合わせる。
2:工藤・姐切を利用する
[備考]
※参戦時期、未定。後続に任せます。
支給品解説
【圧裂弾@仮面ライダーアマゾンズ】
竈門禰豆子に支給。4Cが扱う対アマゾン用の兵器。一撃でアマゾンを確実に粉砕する威力を持ち、一体のアマゾンに命中するとそのアマゾンから弾丸の中の起爆性が非常に高い成分が拡散され、
他のアマゾンにも命中・大爆発する。その脅威的な破壊力から、市街地での使用は基本的に禁止されている。
竈門禰豆子に支給。4Cが扱う対アマゾン用の兵器。一撃でアマゾンを確実に粉砕する威力を持ち、一体のアマゾンに命中するとそのアマゾンから弾丸の中の起爆性が非常に高い成分が拡散され、
他のアマゾンにも命中・大爆発する。その脅威的な破壊力から、市街地での使用は基本的に禁止されている。
【顔のない王(ノーフェイス・メイキング)@Fate/Grand Order】
愛月しのに支給。英霊ロビンフッドの宝具である緑の外套。完全なる透明化、背景との同化ができる。
光学ステルスと熱ステルスの能力をもって気配遮断スキル並の力を有するが、電子ステルスは有していない為、触ってしまえば位置の特定は可能。
外套の切れ端であるものを使い指定したものを複数同時に透明化させたり、他人に貸し与えても効果は発動する。
愛月しのに支給。英霊ロビンフッドの宝具である緑の外套。完全なる透明化、背景との同化ができる。
光学ステルスと熱ステルスの能力をもって気配遮断スキル並の力を有するが、電子ステルスは有していない為、触ってしまえば位置の特定は可能。
外套の切れ端であるものを使い指定したものを複数同時に透明化させたり、他人に貸し与えても効果は発動する。
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