白昼のアラカルト・デュオ ◆0zvBiGoI0k
◆
「三玖さん、大丈夫かな」
「姉妹があんな殺され方をしたんだ、無理もないだろう」
「姉妹があんな殺され方をしたんだ、無理もないだろう」
立香が気絶した三玖を個室に寝かせて看ている間、ミクニと猛田は玄関前に出ていた。
外の見張り。大声が出たわけじゃないがそれなりに騒いだし、宥めるにも同性の方が適してるだろうという、合理的判断あってのことだ。
外の見張り。大声が出たわけじゃないがそれなりに騒いだし、宥めるにも同性の方が適してるだろうという、合理的判断あってのことだ。
言ってから記憶から消去しておきかった、惨殺体を目にした脳裏に蘇ってきてしまって、猛田は後悔した。。
シーツをかけて隠してあるが、あの死体は今も置かれている。嗅ぎたくもない異臭を漂わせて。
換気や清掃はしてあるからって、ホラー映画に出てくるクリーチャーじみた変死体が壁一つ隔てたところにあるなんて、想像しただけで気が滅入る。
この時の猛田は一分一秒でも早くこの家から離れたかった。外に出てるのはそういう意図もある。気絶してる三玖など放置して先に行きたいくらいだ。
中野三久という女は、高校生なだけあってかつての「キープ」より遥かに上物だったが、ああなっては使い物になるまい。
しかしそれはミクニも、そして立香も許すまい。かといって自分だけ出奔するのも自殺行為だ。お人好しと行動するデメリットを差し引いても、単独行動はリスクが高かった。
シーツをかけて隠してあるが、あの死体は今も置かれている。嗅ぎたくもない異臭を漂わせて。
換気や清掃はしてあるからって、ホラー映画に出てくるクリーチャーじみた変死体が壁一つ隔てたところにあるなんて、想像しただけで気が滅入る。
この時の猛田は一分一秒でも早くこの家から離れたかった。外に出てるのはそういう意図もある。気絶してる三玖など放置して先に行きたいくらいだ。
中野三久という女は、高校生なだけあってかつての「キープ」より遥かに上物だったが、ああなっては使い物になるまい。
しかしそれはミクニも、そして立香も許すまい。かといって自分だけ出奔するのも自殺行為だ。お人好しと行動するデメリットを差し引いても、単独行動はリスクが高かった。
「どうした猛田、顔色が悪いぞ」
「っ当たり前だろ。あんな死体を見たら……」
「っ当たり前だろ。あんな死体を見たら……」
ああ。本当に、あんな死体さえ見つけなければよかったのに。
心の中で毒づき、ますます気分を曇らせる。
心の中で毒づき、ますます気分を曇らせる。
「ああ、許せねえな。人を、三玖さんの妹をあんな風に殺すだなんて……いったい誰がやりやがったんだ」
「……は?」
「……は?」
自分が抱く気持ち悪さとはまったく別種の意味で同意を示したミクニに、思わず間抜けな声が出てしまった。
「は? ……ってなんだよ猛田。ジロジロ見て気持ちわりいな」
「……いや、何でもない。それよりあまり喋らないほうがいいだろう。俺達が騒いで敵をひきつけたら本末転倒だ。殺人者だって戻ってくるかも……」
「じゃあまずお前が黙れ! ったく……」
「……いや、何でもない。それよりあまり喋らないほうがいいだろう。俺達が騒いで敵をひきつけたら本末転倒だ。殺人者だって戻ってくるかも……」
「じゃあまずお前が黙れ! ったく……」
その場に座り込むミクニ。猛田も同じように座りそれ以降口を閉じて押し黙った。
考えたい事があり、自分一人で思考する時間が欲しかったからだ。
考えたい事があり、自分一人で思考する時間が欲しかったからだ。
『お前が死んでからも、ラブデスター実験は続いていたんだよ』
立香達と接触するまでの道すがら、猛田が死んだ後の実験の推移をミクニは語って聞かせた。
月代とは違うもうひとつのラブデスター実験が行われていた、敬王大学付属中等部からの刺客による誘拐。
もうひとりの試験管、お見合い制度による告白、そこで巻き起こる事件の数々。
敬王から帰還した後にも、残された月代生徒が疑心暗鬼の末ほぼ全滅という惨事。
続く豪華客船でのイベント「キスデスター」。
月代とは違うもうひとつのラブデスター実験が行われていた、敬王大学付属中等部からの刺客による誘拐。
もうひとりの試験管、お見合い制度による告白、そこで巻き起こる事件の数々。
敬王から帰還した後にも、残された月代生徒が疑心暗鬼の末ほぼ全滅という惨事。
続く豪華客船でのイベント「キスデスター」。
それが終わった時点で生き残ったのは、ミクニやジウらを含めて二十人にも満たないという。
かつて用済みとして「排除」しようとしたらみ、配下にしていた熊本や美円は生還したようだが、そこは今はいい。
かつて用済みとして「排除」しようとしたらみ、配下にしていた熊本や美円は生還したようだが、そこは今はいい。
無関係の百何人が死のうと、どうでもいい。
別の学校の生徒なら尚更だ。同情するにも値しない。
だが常にその中心に位置し、荒波に揉まれながらも生き残ったミクニに対しては―――少なからず衝撃だった。
別の学校の生徒なら尚更だ。同情するにも値しない。
だが常にその中心に位置し、荒波に揉まれながらも生き残ったミクニに対しては―――少なからず衝撃だった。
そんな目に遭ってもなお、こいつはあの時と変わらぬ正義感を発揮していた。
そして再会した猛田にさえも、変わらず手を差し伸べてきた。
そうした善人面は隠れ蓑には好都合で、そう計算してたからこそ同行を申し出た。
実験場での行いを洗いざらい暴露されたのには肝が冷えたが、それでも予定通りの流れだ。
だというのに、この気持ち悪さはいったい――――――
そして再会した猛田にさえも、変わらず手を差し伸べてきた。
そうした善人面は隠れ蓑には好都合で、そう計算してたからこそ同行を申し出た。
実験場での行いを洗いざらい暴露されたのには肝が冷えたが、それでも予定通りの流れだ。
だというのに、この気持ち悪さはいったい――――――
「おい、猛田!」
「なんだ、黙ってろと言ったのはお前……」
「そうじゃねえって、上を見ろ!」
「なんだ、黙ってろと言ったのはお前……」
「そうじゃねえって、上を見ろ!」
煩わしい声が割り込んできて考察が散り散りになった苛立ちは、ミクニが指差す天上を見て霧散した。
「何だ、鳥か、飛行機か……?」
空を一直線に横切る、黒い影。
暗がりであるのとその速さで禄に見きれなかったが、蝙蝠を人間サイズまで拡大したようなシルエットであった。
暗がりであるのとその速さで禄に見きれなかったが、蝙蝠を人間サイズまで拡大したようなシルエットであった。
「近くに降りたみたいだな。よし、見てくるぞ」
「ば、あんな明らかに危険物に近付こうだなんて正気か!?」
「ほんの少し様子を見るだけだ。危ないと思ったらすぐ引き返せばいい。なんならお前は残ってりゃいいだろ」
「ば、あんな明らかに危険物に近付こうだなんて正気か!?」
「ほんの少し様子を見るだけだ。危ないと思ったらすぐ引き返せばいい。なんならお前は残ってりゃいいだろ」
忠告も聞かず、ミクニは着地地点へと向かって行く。
猛田は暫し憔悴した心持ちでそれを眺め、自分に言い聞かせるように吐き捨てて後を追った。
猛田は暫し憔悴した心持ちでそれを眺め、自分に言い聞かせるように吐き捨てて後を追った。
「―――クソッ。今お前が死んだら俺の立場が危うくなるからだぞ!」
結局答えを出す時間は与えられなかった。
そこからは中野姉妹が集まってきて騒がしくなり、沖田総司に刀を詰められ、目の前でミクニがジウに殺されてと、さんざ精神をかき乱されて、放置した疑問を取り出す暇もなかったからだ。
そこからは中野姉妹が集まってきて騒がしくなり、沖田総司に刀を詰められ、目の前でミクニがジウに殺されてと、さんざ精神をかき乱されて、放置した疑問を取り出す暇もなかったからだ。
そして今。
猛田は漸く疑問を引っ張り出せる時間を与えられた。
未だ危機は去っておらず、盾になる備えも欠けた状態だが、今すぐに襲撃があるわけではない程度の安心だ。
すぐにでも追走するジウが現れてくるかもしれない恐怖こそ尽きないが、とにかくも心理的な余裕だけは戻ってきていた。
猛田は漸く疑問を引っ張り出せる時間を与えられた。
未だ危機は去っておらず、盾になる備えも欠けた状態だが、今すぐに襲撃があるわけではない程度の安心だ。
すぐにでも追走するジウが現れてくるかもしれない恐怖こそ尽きないが、とにかくも心理的な余裕だけは戻ってきていた。
C-6は【美術館】と名付けられた施設。
一花と離れた場所からすぐ近くにあった大型のランドマークに身を寄せて、足を止めた口実に使った休憩を改めて果たしている最中だ。
外の土にバイクらしきタイヤの跡が残っていたのを立香が見つけたが争った形跡もない。
先客もおらずほぼ手つかずの館内をゆっくりと見て回っている。体力の回復を待っているのもそうだが、一花が戻ってくるまで手持ち無沙汰なのが現状だ。
一花と離れた場所からすぐ近くにあった大型のランドマークに身を寄せて、足を止めた口実に使った休憩を改めて果たしている最中だ。
外の土にバイクらしきタイヤの跡が残っていたのを立香が見つけたが争った形跡もない。
先客もおらずほぼ手つかずの館内をゆっくりと見て回っている。体力の回復を待っているのもそうだが、一花が戻ってくるまで手持ち無沙汰なのが現状だ。
「北斎にゴッホの芸術画、鎧兜にギリシャの出土品から詩集の原本……? なんか乱雑というか散らかってるというか。
ひょっとして触媒になるのかな、これ……」
ひょっとして触媒になるのかな、これ……」
前を行って陳列棚を物色する立香。
現在の彼女は元あった服を脱ぎ捨て、カルデア戦闘服なるコスチュームに着替えている。
体操選手が着るようなタイトな格好で恥ずかしげもなく外を闊歩しているのはなんとも言えない倒錯性を感じさせる。
前を見れば想像と違って意外と質量のある胸元が谷間だけ露出され、後ろからは引き締まった腰から尻、脚にかけてのラインがタイツで更に強調されている。
中野姉妹を間近にして目立たないが、立香もまたかなりの美少女である。常に表情に怯えがある面々よりも、余裕を保っていられる垢抜けた様はむしろ最も魅力的かもしれない。
そんな中の上、いや上の中から上の女が露出度の高い格好で微笑んでくるものだから、猛田の心中は生命と関わりない意味で穏やかではない。
つい、見入って生唾を飲み込んでしまう。
現在の彼女は元あった服を脱ぎ捨て、カルデア戦闘服なるコスチュームに着替えている。
体操選手が着るようなタイトな格好で恥ずかしげもなく外を闊歩しているのはなんとも言えない倒錯性を感じさせる。
前を見れば想像と違って意外と質量のある胸元が谷間だけ露出され、後ろからは引き締まった腰から尻、脚にかけてのラインがタイツで更に強調されている。
中野姉妹を間近にして目立たないが、立香もまたかなりの美少女である。常に表情に怯えがある面々よりも、余裕を保っていられる垢抜けた様はむしろ最も魅力的かもしれない。
そんな中の上、いや上の中から上の女が露出度の高い格好で微笑んでくるものだから、猛田の心中は生命と関わりない意味で穏やかではない。
つい、見入って生唾を飲み込んでしまう。
「くん───猛田くん?」
「ぉわあっ!?」
「ぉわあっ!?」
妄想していた顔が間近まで迫っていたのに気が動転して大声を上げてしまった。
広大で静謐な美術館内で猛田の声が長く反響する。
広大で静謐な美術館内で猛田の声が長く反響する。
「やっぱり休んでいたほうがいいんじゃない? そんな長く見て回るわけにもいかないから二乃達のとこに戻っていても───」
「いいやいやいやぁ? まだなんてこともないですよ。立香さんほどじゃないが二乃さん達よりは異常事態にも慣れてますから。肉体労働よりは頭脳担当ですけど喋るにも体力はいりますしそれなら歩く分に回せばまだどうということは」
「そっか。色々やってんだもんね」
「いぅ───────っはい」
「いいやいやいやぁ? まだなんてこともないですよ。立香さんほどじゃないが二乃さん達よりは異常事態にも慣れてますから。肉体労働よりは頭脳担当ですけど喋るにも体力はいりますしそれなら歩く分に回せばまだどうということは」
「そっか。色々やってんだもんね」
「いぅ───────っはい」
過去の失態を揶揄されたような気がして、喉がひきつってしまう。
彼女に限ってそんなつつきはしないとしてもやはりバツが悪くなる。猛田は立香にかける感情が単なる劣情のものだけでないと自覚していた。
どうしてこうも彼女が気になるのか。
彼女に限ってそんなつつきはしないとしてもやはりバツが悪くなる。猛田は立香にかける感情が単なる劣情のものだけでないと自覚していた。
どうしてこうも彼女が気になるのか。
”決まってる。ミクニと同じで、この人も「死」に怯えちゃいない”
中野四葉の変死体を目撃した瞬間、猛田は情けなくも腰を抜かした。
跡形も死体が残らない「告白」失敗の爆死(クラッシュ)とはワケが違う。
精神を追い詰められて絶望から飛び降りて自殺するのなら、まだ人間らしい死だ。目の前に飛び込んできたソレは、そんなものを超越した破壊の惨状だった。
その中で迅速に行動したのが、先頭に立っていた立香であり―――猛田の後ろにいたミクニだった。
恐怖がないわけではないが、身が竦むより先に体を動かさなくてはならないと弁えてるような動作。
「告白」失敗以外でも、暴徒化した生徒の手で殺された生徒もいたとミクニは語っていた。
実験の終盤まで生き抜いたミクニはもう、生半可な「死」に対して臆することはない。
そんなミクニと同じく「死」に機敏に対応した立香。猛田の焦点とはつまりそこだった。
跡形も死体が残らない「告白」失敗の爆死(クラッシュ)とはワケが違う。
精神を追い詰められて絶望から飛び降りて自殺するのなら、まだ人間らしい死だ。目の前に飛び込んできたソレは、そんなものを超越した破壊の惨状だった。
その中で迅速に行動したのが、先頭に立っていた立香であり―――猛田の後ろにいたミクニだった。
恐怖がないわけではないが、身が竦むより先に体を動かさなくてはならないと弁えてるような動作。
「告白」失敗以外でも、暴徒化した生徒の手で殺された生徒もいたとミクニは語っていた。
実験の終盤まで生き抜いたミクニはもう、生半可な「死」に対して臆することはない。
そんなミクニと同じく「死」に機敏に対応した立香。猛田の焦点とはつまりそこだった。
どことなく堅気には思えない振る舞いがある、謎めいた女。
彼女もミクニと同じく「死」を多く見てきたのだろうか。
分からない。「死」を知ったからといってそんなにも達観を持てるものなのか。
猛田は好みの女(キープ)ばかりを傅かせて支配する、愛の独裁者になりたかった。
だから邪魔者は「排除」してきたし、しようとした。自滅させ、駒の手で処罰させた。それで何人死のうが知ったことじゃなかった。
そうでもなければ、「死」など関わりたくもなかった。
初めて「死」に触れた、 引き返しがつかなくなったあの瞬間と同様に。
彼女もミクニと同じく「死」を多く見てきたのだろうか。
分からない。「死」を知ったからといってそんなにも達観を持てるものなのか。
猛田は好みの女(キープ)ばかりを傅かせて支配する、愛の独裁者になりたかった。
だから邪魔者は「排除」してきたし、しようとした。自滅させ、駒の手で処罰させた。それで何人死のうが知ったことじゃなかった。
そうでもなければ、「死」など関わりたくもなかった。
初めて「死」に触れた、 引き返しがつかなくなったあの瞬間と同様に。
「……ん?」
なにか、決定的な閃きが頭を掠めたような気がしたが、それはすぐに煙になってかき消えてしまった。
振り返ってもなにが立ってるわけもなく、猛田はただ不可解に首をひねるしかなかった。
振り返ってもなにが立ってるわけもなく、猛田はただ不可解に首をひねるしかなかった。
◆
一度目の定時放送が始まり、ミクニが愛月しのの名を聞いて狼狽する少し前─────。
「……そんなの、おかしい」
「そ、そう言われてもなー。残念ながら現在は召喚のご縁がなかったということなのでどうしようもないというか」
「織田信長がいる。上杉謙信がいる。豊臣秀吉の縁者に幕末の志士もいる。なのになんで武田信玄がいないの? ライバルの謙信までいるのに、絶対おかしい。あとオール信長ってふざけてるの?」
「そ、そう言われてもなー。残念ながら現在は召喚のご縁がなかったということなのでどうしようもないというか」
「織田信長がいる。上杉謙信がいる。豊臣秀吉の縁者に幕末の志士もいる。なのになんで武田信玄がいないの? ライバルの謙信までいるのに、絶対おかしい。あとオール信長ってふざけてるの?」
物静かな常時とは打って変わった三玖に、立香は「やべ。話題のチョイスミスった」と後悔していた。
共通の話題になりそうな戦日本の武将をとっかかりにしてみたが、三玖にとっては肝心要の武将が欠場してるのが大層納得いかないものらしい。
ずいずいと詰められていき、いまや人類最後のマスターは壁際まで追い詰められている。
そしてこちらに返せる答えは以上のものしかないので、甘んじて至近距離から睨み付けを受ける他ないのだった。
興味のある対象への変な方向にアグレッシブさは、姉妹の中で揃って備わってるのかもしれない。
隣の一花と二乃に助けを求める目線を向けるが我関せず、なんか面白そうだから放っておこうの意地悪い笑みしか返されない。無情也。
共通の話題になりそうな戦日本の武将をとっかかりにしてみたが、三玖にとっては肝心要の武将が欠場してるのが大層納得いかないものらしい。
ずいずいと詰められていき、いまや人類最後のマスターは壁際まで追い詰められている。
そしてこちらに返せる答えは以上のものしかないので、甘んじて至近距離から睨み付けを受ける他ないのだった。
興味のある対象への変な方向にアグレッシブさは、姉妹の中で揃って備わってるのかもしれない。
隣の一花と二乃に助けを求める目線を向けるが我関せず、なんか面白そうだから放っておこうの意地悪い笑みしか返されない。無情也。
「そっぽ向かないで。まだ事情聴取中。ほら立香、ぜんぶ吐けば楽になるよ」
「えぇー……」
「えぇー……」
ぐいぐいと缶ジュースを頬に押し付けるやわらか尋問。
なし崩し的に集まった九人組のうちの四人が一室に集まった、ささやかな女子会。
そのうち三人、五つ子の三姉妹はそれぞれの近況を体外は知ってるので、必然の流れで部外者の、物珍しい秘密を抱える立香が的にされた。
なし崩し的に集まった九人組のうちの四人が一室に集まった、ささやかな女子会。
そのうち三人、五つ子の三姉妹はそれぞれの近況を体外は知ってるので、必然の流れで部外者の、物珍しい秘密を抱える立香が的にされた。
「カルデ……アだっけ? その立香が行ってた施設って」
「献血に行ったら突然拉致されて北極まで連れてこられた? 完全に犯罪じゃない。訴えれば勝てるわよ絶対」
「安土桃山時代には行ったことないの? 邪馬台国には行ったけど真選組が支配した? なんで?」
「なんでかなぁ……うんほんとになんでだろうな」
「献血に行ったら突然拉致されて北極まで連れてこられた? 完全に犯罪じゃない。訴えれば勝てるわよ絶対」
「安土桃山時代には行ったことないの? 邪馬台国には行ったけど真選組が支配した? なんで?」
「なんでかなぁ……うんほんとになんでだろうな」
先立っての情報交換で、レイシフトと特異点、カルデアとサーヴァント、BBとの関係性について説明はしていたが、三人はそれよりも身近な情報に食いつくものがあったようだ。
「で、色々あってバイトなのに一人で仕事してるってこと。うーん……女優の視点だけど大丈夫なのそこ? 給料ちゃんと出てる? 福利厚生しっかりしてる?」
「バイト……バイトぉ? まあ正式な職員じゃないからそうなのかもしれない……。あ、いちおう給料は入ってるけど、使い道がないから実感ないなぁ」
「しかも何人もの大人にマスター呼ばわりされてるとか……どこの執事喫茶かって感じよね。聞けば聞くほど胡散臭い場所にしか思えないんだけど」
「なにか誤解されてる気がする……ああ昔はよくわからないけど、今は皆いい人たちだよ。
それに主人(マスター)ていったって、単に契約上でそうなってるだけで本当に主なわけじゃないし。
ざっと200人ぐらいいるけどけっこうおっかないのもいてさ───」
「200以上の人にご主人様って呼ばれてるの?」
「あ」
「バイト……バイトぉ? まあ正式な職員じゃないからそうなのかもしれない……。あ、いちおう給料は入ってるけど、使い道がないから実感ないなぁ」
「しかも何人もの大人にマスター呼ばわりされてるとか……どこの執事喫茶かって感じよね。聞けば聞くほど胡散臭い場所にしか思えないんだけど」
「なにか誤解されてる気がする……ああ昔はよくわからないけど、今は皆いい人たちだよ。
それに主人(マスター)ていったって、単に契約上でそうなってるだけで本当に主なわけじゃないし。
ざっと200人ぐらいいるけどけっこうおっかないのもいてさ───」
「200以上の人にご主人様って呼ばれてるの?」
「あ」
話題がカルデアについてに移ってから、素人目の、客観的な視点でも、明らかに怪しい雇用形態に立香の身の心配をしていた一花達だったが、
途中の言葉に、なにか酷く勘違いな意味を抱いてしまった。
途中の言葉に、なにか酷く勘違いな意味を抱いてしまった。
「ヤバイわね……この年で逆ハーレムとか。猛田のことどうこう言えないんじゃないかしら」
「いや違うからね? そもそもちゃんと女の人達もいるし───」
「ちゃんと女の人も?」
「あ゛」
「いや違うからね? そもそもちゃんと女の人達もいるし───」
「ちゃんと女の人も?」
「あ゛」
火に 油 だった。
「……わーお、オープンというかなんていうか……ワールドワイドだね。国際的。
うんまあ、いいんじゃないかな? そういうのには寛容なのは。ところでもうちょっと三久から離れてもらってもいい?」
「待って、本人を置いて話を発展させないで。弁明、弁明の時間を下さい! しっかりまるっと誤解が解けるやつだから───!」
「などと言っておりますが、三久は?」
「……じゃあまず、信長と沖田が水着に着替えた理由について」
「ノッブはノリが熱盛になったからで大した理由はないかな。沖田さんは、ユニバース由来のジェットパックを装着して病気が治ったからって」
「ダメ。有罪」
「なぜに!?」
うんまあ、いいんじゃないかな? そういうのには寛容なのは。ところでもうちょっと三久から離れてもらってもいい?」
「待って、本人を置いて話を発展させないで。弁明、弁明の時間を下さい! しっかりまるっと誤解が解けるやつだから───!」
「などと言っておりますが、三久は?」
「……じゃあまず、信長と沖田が水着に着替えた理由について」
「ノッブはノリが熱盛になったからで大した理由はないかな。沖田さんは、ユニバース由来のジェットパックを装着して病気が治ったからって」
「ダメ。有罪」
「なぜに!?」
会場からの脱出、BBの撃破、バトルロワイアルの攻略、そのどれにも関わらない小さな枝葉。立香も教える重要性もないと黙っていた部分を、三人はこぞって聞きたがっていた。
それは、クラスメイトがひとり海外に旅行に出た感想を求めるような、程度の軽い会話で。
ひと夏の甘い夜を聞いて色めき立つような、少し下世話な雑談。
「ただ面白そうだから」というだけの、何の意味もない時間の過ごし方。
それは、クラスメイトがひとり海外に旅行に出た感想を求めるような、程度の軽い会話で。
ひと夏の甘い夜を聞いて色めき立つような、少し下世話な雑談。
「ただ面白そうだから」というだけの、何の意味もない時間の過ごし方。
だから。
この時間はとても楽しかったと、立香は忘れず憶えている。
この時間はとても楽しかったと、立香は忘れず憶えている。
そして今。
美術館内のレストルーム、備え付けられたソファーで二乃と三玖は寄り添って座っている。
美術館内のレストルーム、備え付けられたソファーで二乃と三玖は寄り添って座っている。
「疲れた」
「まあ疲れるわよね、うん」
「まあ疲れるわよね、うん」
その顔は両名憔悴していた。少し仮眠した程度では肩の重さを取り除けない。
殺し合いという環境。妹二人の喪失。長姉のいつもの独断専行。
気の休まらない時はなく、直接害意が襲わずとも鉋で削られる屑のように刻一刻と削られていく。
飛び散る血を吸い、響く叫びを浴びて 息を吸うだけで精力を奪っていく特異な空気を、この場所は孕んでいる。
殺し合いという環境。妹二人の喪失。長姉のいつもの独断専行。
気の休まらない時はなく、直接害意が襲わずとも鉋で削られる屑のように刻一刻と削られていく。
飛び散る血を吸い、響く叫びを浴びて 息を吸うだけで精力を奪っていく特異な空気を、この場所は孕んでいる。
「あっウォーターサーバーあるじゃん」
体重をかけていた二乃肩が上に上がって、支えを失った上半身が横に倒れるのをすんでのところで堪える。
固いソファの背もたれは痛くなるので避けていたけど、仕方なく背中を預ける。
前を歩いて遠ざかっていく二乃を見て、唇が何かを紡ごうと震える。自分の体重ひとつ支えるのにも不安で、心細かった。
固いソファの背もたれは痛くなるので避けていたけど、仕方なく背中を預ける。
前を歩いて遠ざかっていく二乃を見て、唇が何かを紡ごうと震える。自分の体重ひとつ支えるのにも不安で、心細かった。
「なによ壊れてるじゃない……こんだけ大がかりな仕掛けしといてケチ臭いわね」
結局何も発する事なく口を閉ざしたのは、情けなさを出すまいとする細やかな意地か。あるいは姉を気遣ってのものか。
自信家で家事が上手く利発な印象が強い二乃だが、その実家族に拘る臆病な面があるのを三玖は知っている。
一花や三玖が緩衝材になったといっても、相当に堪えてるはずだ。何も考えず寄りかかっていい余裕はない。それは、三人の誰もがそうなのだけど。
自信家で家事が上手く利発な印象が強い二乃だが、その実家族に拘る臆病な面があるのを三玖は知っている。
一花や三玖が緩衝材になったといっても、相当に堪えてるはずだ。何も考えず寄りかかっていい余裕はない。それは、三人の誰もがそうなのだけど。
「うわ……なんでこんなところでもそれ持ってんのよ」
「白銀さんからもらった」
「誰それ」
「どこかの生徒会長。前に会って変な格好の女の子と別れた」
「白銀さんからもらった」
「誰それ」
「どこかの生徒会長。前に会って変な格好の女の子と別れた」
アイスボックスから取り出していた抹茶ソーダを見て、元の位置に座った二乃は露骨に顔を顰めた。
「たくさんあるし、あげよっか」
「いらないわよ。名前だけで胸焼けしそうだわ」
「この炭酸と渋みとの調和がいいのに……もったいない」
「いらないわよ。名前だけで胸焼けしそうだわ」
「この炭酸と渋みとの調和がいいのに……もったいない」
一口、二口と、乾いた喉を潤す。抹茶の深い苦味が舌内でシュワシュワと弾ける独特の味わいに、幾分か精神の均衡が戻ってきた。
満足げに頷きながら缶を傾ける三玖を見て、二乃が空の手を前に差し出した。
満足げに頷きながら缶を傾ける三玖を見て、二乃が空の手を前に差し出した。
「ん」
「いらないんじゃないの?」
「いいから」
「いらないんじゃないの?」
「いいから」
受け取ったニ本目のプルタブを開けヤケ気味に飲み下す二乃。
吹き出さない程度に何度か喉を鳴らして口を離すと、やはり渋い顔で。
吹き出さない程度に何度か喉を鳴らして口を離すと、やはり渋い顔で。
「マッズ、思った通りの味だわ。苦い顔したくなる時には丁度いいわね」
「む……」
「む……」
空元気でも充填はできたようだ。味の感想は不満なもののとりあえず気を抜ける。
「そういえば」
「ん」
「あの侍みたいな人。沖田さん」
「ほんとの侍みたいよ。やたら口調軽いけど」
「えー……」
「で、その沖田さんがなに?」
「二乃は最初に会ってから一緒にいたって言ってたけど」
「うん」
「フータローから乗り換えた?」
「はったおすわよあんた」
「ん」
「あの侍みたいな人。沖田さん」
「ほんとの侍みたいよ。やたら口調軽いけど」
「えー……」
「で、その沖田さんがなに?」
「二乃は最初に会ってから一緒にいたって言ってたけど」
「うん」
「フータローから乗り換えた?」
「はったおすわよあんた」
拳こそ出なかったものの、割と本気の怒気だった。
代わりに缶についた水滴を追った指で飛ばして三玖の頬を打つ。
代わりに缶についた水滴を追った指で飛ばして三玖の頬を打つ。
「つめたっなにすんの」
「あんたがあり得ない失言するからよ。フー君ほったらかして浮気なんてするわけないじゃない」
「付き合ってもないくせに浮気とか……」
「あんたがあり得ない失言するからよ。フー君ほったらかして浮気なんてするわけないじゃない」
「付き合ってもないくせに浮気とか……」
ここにきて自分が選ばれるのが既定路線みたいな物言い。この謎の自信の出どころは真面目に気になった。
「ていうかあんたはどうなのよ。まさか諦めた?」
「二乃は、諦めないだ。考えられない状況とか、そういうのじゃなく」
「当たり前でしょ。好きなんだもの。それが私の本心なんだから、捨てちゃったらそれこそどうにかなっちゃうわ」
「……二乃のそういう空気読まないところ、凄いよね。尊敬する」
「ほんとに褒めてんのかしら。馬鹿にしてないわよね」
「してない。してないよ」
「二乃は、諦めないだ。考えられない状況とか、そういうのじゃなく」
「当たり前でしょ。好きなんだもの。それが私の本心なんだから、捨てちゃったらそれこそどうにかなっちゃうわ」
「……二乃のそういう空気読まないところ、凄いよね。尊敬する」
「ほんとに褒めてんのかしら。馬鹿にしてないわよね」
「してない。してないよ」
自分の思いを偽って内にしまい込んでいたままじゃ、叶うなんて夢のまた夢。
自分を捨ててしまえば事故を保てず、生きていく事すらままならない。
意外と中々真理を捉えたような言葉だ。ただの恋愛脳にも聞こえるが。
自分を捨ててしまえば事故を保てず、生きていく事すらままならない。
意外と中々真理を捉えたような言葉だ。ただの恋愛脳にも聞こえるが。
「それに待つだけ待って、最後は置いてけぼりなんて、いやじゃない。
だから沖田さんにも、城戸さんに炭治郎にだって戻ってきて欲しいわよ」
「……色情魔?」
「どっからそんな言葉出てきたかぜーんぜんわかんないけど、要するに今度こそグーでいっていいのね?」
だから沖田さんにも、城戸さんに炭治郎にだって戻ってきて欲しいわよ」
「……色情魔?」
「どっからそんな言葉出てきたかぜーんぜんわかんないけど、要するに今度こそグーでいっていいのね?」
二度目の定時放送前。
振りかぶる腕を掴んで必至に抵抗する心を和ませる二人のじゃれあいが、何の意味もない泡沫の夢であると思い知らされる。
殺し合いから目を逸らす時間なんて与えないと突きつけられる事になる、数十分前の出来事である。
振りかぶる腕を掴んで必至に抵抗する心を和ませる二人のじゃれあいが、何の意味もない泡沫の夢であると思い知らされる。
殺し合いから目を逸らす時間なんて与えないと突きつけられる事になる、数十分前の出来事である。
【C-6/美術館/1日目・昼】
【藤丸立香(女主人公)@Fate/Grand Order】
[状態]:体力消耗、背中に斬り傷(治療済)、令呪三角、カルデア戦闘服装備
[道具]:基本支給品一式、魔術礼装・カルデア@Fate/Grand Order、カルデア戦闘服@Fate/Grand Order、ランダム支給品1~2(確認済み)、ファムのカードデッキ@仮面ライダー龍騎
[思考・状況]
基本方針:殺し合いを止める。いつも通り、出来る限り最善の結末を目指す。
0:美術館で休息。沖田達と合流しつつ北上して資料を集める
1:自分だけでは力不足なので、サーヴァントか頼れそうな人と合流したい
2:三玖達みんなを守る。サーヴァントのみんなのことはどう説明したものかな……!?
3:BBと話がしたい
4:清姫については──
[備考]
※参戦時期はノウム・カルデア発足後です。
※原作通り英霊の影を呼び出して戦わせることが可能ですが、面子などについては後続の書き手さんにお任せします。
※サーヴァント達が自分の知るカルデアの者だったり協力的な状態ではない可能性を考えています。
※カルデア礼装は使用すると一定時間のインターバルがあります。
[状態]:体力消耗、背中に斬り傷(治療済)、令呪三角、カルデア戦闘服装備
[道具]:基本支給品一式、魔術礼装・カルデア@Fate/Grand Order、カルデア戦闘服@Fate/Grand Order、ランダム支給品1~2(確認済み)、ファムのカードデッキ@仮面ライダー龍騎
[思考・状況]
基本方針:殺し合いを止める。いつも通り、出来る限り最善の結末を目指す。
0:美術館で休息。沖田達と合流しつつ北上して資料を集める
1:自分だけでは力不足なので、サーヴァントか頼れそうな人と合流したい
2:三玖達みんなを守る。サーヴァントのみんなのことはどう説明したものかな……!?
3:BBと話がしたい
4:清姫については──
[備考]
※参戦時期はノウム・カルデア発足後です。
※原作通り英霊の影を呼び出して戦わせることが可能ですが、面子などについては後続の書き手さんにお任せします。
※サーヴァント達が自分の知るカルデアの者だったり協力的な状態ではない可能性を考えています。
※カルデア礼装は使用すると一定時間のインターバルがあります。
【猛田トシオ@ラブデスター】
[状態]:健康
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1~3(確認済み)
[思考・状況]
基本方針:優勝商品を手に入れる?
1.藤丸立香は俺に気がある?
2.藤丸立香、い、良い女だ……
3.ミクニは──
[備考]
※死後からの参戦
[状態]:健康
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1~3(確認済み)
[思考・状況]
基本方針:優勝商品を手に入れる?
1.藤丸立香は俺に気がある?
2.藤丸立香、い、良い女だ……
3.ミクニは──
[備考]
※死後からの参戦
【中野二乃@五等分の花嫁】
[状態]:健康、精神的ショック
[装備]:制服にカーディガン
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品0~2
[思考・状況]
基本方針:好きな人と傍にいたい
1:沖田達と合流しつつ北上して資料を集める
2:PENTAGONはちょっと行きたかった、んだけど……
3:四葉と五月を殺した相手への怒り。それを上回る四葉と五月への哀しみ。
[備考]
※修学旅行中(少なくとも79話ラスト以降)からの参戦。
[状態]:健康、精神的ショック
[装備]:制服にカーディガン
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品0~2
[思考・状況]
基本方針:好きな人と傍にいたい
1:沖田達と合流しつつ北上して資料を集める
2:PENTAGONはちょっと行きたかった、んだけど……
3:四葉と五月を殺した相手への怒り。それを上回る四葉と五月への哀しみ。
[備考]
※修学旅行中(少なくとも79話ラスト以降)からの参戦。
【中野三玖@五等分の花嫁】
[状態]:首筋に引っ掻き傷(処置済み)、精神的ショック
[道具]:基本支給品一式、四葉のリボン、誓いの羽織@Fate/Grand Order、ランダム支給品0~2(確認済み)
[思考・状況]
基本方針:好きな人へ伝えたい
1:沖田達と合流しつつ北上して資料を集める
2:四葉と五月を殺した相手への怒り。それを上回る四葉と五月への哀しみ。
[備考]
※参戦時期は修学旅行中です。
[状態]:首筋に引っ掻き傷(処置済み)、精神的ショック
[道具]:基本支給品一式、四葉のリボン、誓いの羽織@Fate/Grand Order、ランダム支給品0~2(確認済み)
[思考・状況]
基本方針:好きな人へ伝えたい
1:沖田達と合流しつつ北上して資料を集める
2:四葉と五月を殺した相手への怒り。それを上回る四葉と五月への哀しみ。
[備考]
※参戦時期は修学旅行中です。
| 前話 | お名前 | 次話 |
| I Wanna Be... | 中野二乃 | |
| 中野三玖 | ||
| 藤丸立香 | ||
| 猛田トシオ |