鬼神爆走紅蓮隊・凛 ◆0zvBiGoI0k
◆
認識できるものは痛みだけだ。
周りで起きている戦闘の余波も、砕けたり割れたりする壁の軋みも、体内で強制的に変化させられる肉体の膨張も。
全てが掠れている。鼓膜を掻き乱す雑音にしか聞こえない。
はっきりと感じられるのは、自分の存在自体が卸金で磨り潰されているかのような痛みだけだ。
周りで起きている戦闘の余波も、砕けたり割れたりする壁の軋みも、体内で強制的に変化させられる肉体の膨張も。
全てが掠れている。鼓膜を掻き乱す雑音にしか聞こえない。
はっきりと感じられるのは、自分の存在自体が卸金で磨り潰されているかのような痛みだけだ。
痛み。痛み。痛み。
時間の感覚は消し飛び、状態の因果すら判然としない。
累の体は未だ主導権を無惨に握られたままだ。
頚椎を引きずり出された体は再生せず、糸を生成する器官だけ増設されている。
膨れ上がった胴に、八つの手足から止めどなく糸を排出している格好は、かつて彼の『兄』の役を宛てられていた鬼と瓜二つだった。
この地下で戦っているのは誰もが、瓦礫の雨程度では死にはしない頑強さを誇っているのだから、天井の落盤を縫い止めるのは本来は無用の備え。
そうはいかないのは日の下に出れない無惨だけだ。まさに今の累は命綱ともいうべき存在になっている。
時間の感覚は消し飛び、状態の因果すら判然としない。
累の体は未だ主導権を無惨に握られたままだ。
頚椎を引きずり出された体は再生せず、糸を生成する器官だけ増設されている。
膨れ上がった胴に、八つの手足から止めどなく糸を排出している格好は、かつて彼の『兄』の役を宛てられていた鬼と瓜二つだった。
この地下で戦っているのは誰もが、瓦礫の雨程度では死にはしない頑強さを誇っているのだから、天井の落盤を縫い止めるのは本来は無用の備え。
そうはいかないのは日の下に出れない無惨だけだ。まさに今の累は命綱ともいうべき存在になっている。
それが自分の役割。利用され消耗される使い切り。
一時の間に合わせが存在意義であり命令である以上、逆らう意思も理由も飛ばして肉体はそれの為の装置に成り下がる。
一時の間に合わせが存在意義であり命令である以上、逆らう意思も理由も飛ばして肉体はそれの為の装置に成り下がる。
「うぇ、気持ちワリ。デカい蜘蛛みてぇ」
雑音だらけの世界で聞こえた声は、やはり雑音としか捉えられず。
音に向けて、骨肉を滑らかに寸断する鋼線が熱源目がけて自動的に振るわれる。
音に向けて、骨肉を滑らかに寸断する鋼線が熱源目がけて自動的に振るわれる。
「包帯のガキから聞いたけどさ、おまえ、マシュちゃん逃したんだって?
そっちから捕まえといて逃がすとか、何考えてんだかわっかんねぇな? ま、無事ならいいけどね」
そっちから捕まえといて逃がすとか、何考えてんだかわっかんねぇな? ま、無事ならいいけどね」
なのに、雑音は続いていた。
鬼でもない人間なら体も命も柔らかく断ち切れているはずなのに。
どういうわけか、雑音が僅かに和らいだ。音と映像が正常に認識される。
立っていたのは、見覚えのある顔だった。稀血の女、妹、マシュの連れにいた青い鉢巻きの男。
鬼でもない人間なら体も命も柔らかく断ち切れているはずなのに。
どういうわけか、雑音が僅かに和らいだ。音と映像が正常に認識される。
立っていたのは、見覚えのある顔だった。稀血の女、妹、マシュの連れにいた青い鉢巻きの男。
「んじゃ面倒な手間が省けたってことで……本題、いくぜ。
リベンジだ」
リベンジだ」
明らかに戦闘の意思を滾らせて近づいてくる男を見て、累は何が何だか分からなくなった。
マシュを助ける為にここに来たのではないのか。 いないと知ったなら、すぐに立ち去ればいいだろうに。
男の身体能力は知っていた。直に対戦して底はとうに割れている。筋力反射力、いずれも鬼に遠く及ばない。
軽く叩き伏せたあの時、力を隠していた風にも見えなかった。
油断して一発をもらっていたが、それすらどうということのない威力でたかが知れている。
半日も経ってないのに学習能力がないのか。それとも単に忘れた馬鹿なのか?
マシュを助ける為にここに来たのではないのか。 いないと知ったなら、すぐに立ち去ればいいだろうに。
男の身体能力は知っていた。直に対戦して底はとうに割れている。筋力反射力、いずれも鬼に遠く及ばない。
軽く叩き伏せたあの時、力を隠していた風にも見えなかった。
油断して一発をもらっていたが、それすらどうということのない威力でたかが知れている。
半日も経ってないのに学習能力がないのか。それとも単に忘れた馬鹿なのか?
累の困惑とは無関係に、操られた体から糸が展開される。
正面からの無謀な突進の愚挙に迫る死の檻。最高硬度の糸を渦巻き状に形成して撃ち放つ。
この切断の鋼線から只人が逃げる手段はない。そして男は、逃げるそぶりさえ見せない。
死の網にかかる直前に右腕を前に出す。何の防御にもならない無駄な抵抗。非力で凡庸な筈の拳。
何故かその拳が、一瞬光を纏い、刀でも斬れない鋼糸に斬られるどころか簡単に押しのけ、振り払ったのだ。
正面からの無謀な突進の愚挙に迫る死の檻。最高硬度の糸を渦巻き状に形成して撃ち放つ。
この切断の鋼線から只人が逃げる手段はない。そして男は、逃げるそぶりさえ見せない。
死の網にかかる直前に右腕を前に出す。何の防御にもならない無駄な抵抗。非力で凡庸な筈の拳。
何故かその拳が、一瞬光を纏い、刀でも斬れない鋼糸に斬られるどころか簡単に押しのけ、振り払ったのだ。
聖なる篭手の加護が働いて光が斬撃を防いだ。そうとしか映らない光景。
その恩寵を授かった男は、敬虔さを欠片も見せない表情で自分の腕を見つめていた。
折り曲げた男の肘先から水滴が落ちる。血の匂いはしない。鮮烈な赤ではなく透き通った水が、両の篭手をくまなく濡らしている。
発光の原因は、付着した水滴が外からほんの僅か、一筋ほど漏れた太陽の光を反射したためだ。
証拠に、光を浴びた累の体から焦げ付いた煙が上がっている。一秒以下の照射で鬼の体は消滅してしまう。
ならば糸が破かれたのも陽光に当てられたからか。それは違う気がする。光が出たのは本当にごく短い時間だった。
それに糸の輪郭が急速に解れたのは、拳を振るって飛沫となった雫に触れた時なのだ。
その恩寵を授かった男は、敬虔さを欠片も見せない表情で自分の腕を見つめていた。
折り曲げた男の肘先から水滴が落ちる。血の匂いはしない。鮮烈な赤ではなく透き通った水が、両の篭手をくまなく濡らしている。
発光の原因は、付着した水滴が外からほんの僅か、一筋ほど漏れた太陽の光を反射したためだ。
証拠に、光を浴びた累の体から焦げ付いた煙が上がっている。一秒以下の照射で鬼の体は消滅してしまう。
ならば糸が破かれたのも陽光に当てられたからか。それは違う気がする。光が出たのは本当にごく短い時間だった。
それに糸の輪郭が急速に解れたのは、拳を振るって飛沫となった雫に触れた時なのだ。
村山の両腕を濡らしてるのは単なる水ではない。
神便鬼毒酒。累とクロオと共謀し、無惨に反逆する際に仕掛けておいた道具のうちの一つ。
曰く呑んだ人に強力を与え、呑んだ鬼の身動きを封じる神酒。
酒呑童子の宝具として成立するにあたって、あらゆるものを溶融する毒の水を放出する効果と変じた。
広範囲を覆う対軍宝具であるそれを、村山は篭手にかけて対鬼用のコーティングとして使用した。
全てはこの手で直接鬼を叩くため。糸程度では満足しない。絶死を覆した隙を逃さず突進する。
神便鬼毒酒。累とクロオと共謀し、無惨に反逆する際に仕掛けておいた道具のうちの一つ。
曰く呑んだ人に強力を与え、呑んだ鬼の身動きを封じる神酒。
酒呑童子の宝具として成立するにあたって、あらゆるものを溶融する毒の水を放出する効果と変じた。
広範囲を覆う対軍宝具であるそれを、村山は篭手にかけて対鬼用のコーティングとして使用した。
全てはこの手で直接鬼を叩くため。糸程度では満足しない。絶死を覆した隙を逃さず突進する。
「ヅ……!」
雨あられに鋼糸を腕で弾きながら本体目がけて突っ切る。
篭手で払え切れなかった糸の数条が、腹を打つも肉が裂かれる事はない。
神便鬼毒は篭手だけでなく上着にも染み込ませてある。
絞れば大量に水が出てくるほど染み込ませた服は防弾チョッキとして機能していた。
だが防弾チョッキは銃弾の貫通こそ防ぐが着弾の衝撃を完全には殺せない。当たった部位の骨が折れるぐらいはざらにある。
常人である村山が酒を浴びても平然としていられるには、毒の濃度をギリギリまで下げる必要があった。
そして村山の身体能力が向上するわけでもない。脅威の程は落ちても依然窮地のまま。
得物が刃物から鈍器に変わっただけで、無数の凶器で殴りつけられる事には変わりない。
今の村山は、金属バットを持った集団に囲まれて一斉に襲われてるのに等しい状態だ。
篭手で払え切れなかった糸の数条が、腹を打つも肉が裂かれる事はない。
神便鬼毒は篭手だけでなく上着にも染み込ませてある。
絞れば大量に水が出てくるほど染み込ませた服は防弾チョッキとして機能していた。
だが防弾チョッキは銃弾の貫通こそ防ぐが着弾の衝撃を完全には殺せない。当たった部位の骨が折れるぐらいはざらにある。
常人である村山が酒を浴びても平然としていられるには、毒の濃度をギリギリまで下げる必要があった。
そして村山の身体能力が向上するわけでもない。脅威の程は落ちても依然窮地のまま。
得物が刃物から鈍器に変わっただけで、無数の凶器で殴りつけられる事には変わりない。
今の村山は、金属バットを持った集団に囲まれて一斉に襲われてるのに等しい状態だ。
「上等だろォが!」
望むところだ。
殴り合い、我慢勝負なら自分の領分だ。
たったひとつだけ鬼に村山が勝る経験値。
喧嘩に明け暮れ、鬼邪高で番長に登り詰めてからも日常に慣れ親しんだいつもの場所だ。
殴り合い、我慢勝負なら自分の領分だ。
たったひとつだけ鬼に村山が勝る経験値。
喧嘩に明け暮れ、鬼邪高で番長に登り詰めてからも日常に慣れ親しんだいつもの場所だ。
「はっはははははははは!!」
交差する腕で守った顔以外を止まない乱打に晒されながら哄笑する。破顔して爆笑であった。
命を張って、向かない策を練り、ここにきて漸く、村山が鬼と向かい合うだけの土台ができた。
状況が、空気が、村山に味方する。後押しをしてくれる。だからこうして進めるのだ。
命を張って、向かない策を練り、ここにきて漸く、村山が鬼と向かい合うだけの土台ができた。
状況が、空気が、村山に味方する。後押しをしてくれる。だからこうして進めるのだ。
逃げる事だけはしない。最初からそれだけは決めていた。
別に、戦うのにそう大きな理由があるわけではない。
鬼も、化物も、殺し合いも、実のところ深く考えてなんかいなかった。
喧嘩を売られて、やられて、しかも舐められたから、やり返す。
ガキっぽい、そんな単純(シンプル)な理由を背負ってこんなところまで来てしまった。
鬼も、化物も、殺し合いも、実のところ深く考えてなんかいなかった。
喧嘩を売られて、やられて、しかも舐められたから、やり返す。
ガキっぽい、そんな単純(シンプル)な理由を背負ってこんなところまで来てしまった。
それともうひとつ。
ここまでのやり取りと戦いを見て、村山は鬼についての事を何となく知った。醜悪なる鬼の様をこの目で見た。
ああ、駄目だ、あれは。
どんなに強くなれても、誰にも負けなくなっても、あんなのにはなりたくない。
そう、固く誓う。
自分達はろくな大人になんてなれやしないだろうが。
それでも、仲間を捨てて自分だけ助かろうなんてする奴よりは、ずっとマシな生き様だと、胸を張れるだろう。
ここまでのやり取りと戦いを見て、村山は鬼についての事を何となく知った。醜悪なる鬼の様をこの目で見た。
ああ、駄目だ、あれは。
どんなに強くなれても、誰にも負けなくなっても、あんなのにはなりたくない。
そう、固く誓う。
自分達はろくな大人になんてなれやしないだろうが。
それでも、仲間を捨てて自分だけ助かろうなんてする奴よりは、ずっとマシな生き様だと、胸を張れるだろう。
「確かにテメエは強いよ」
村山は認める。
鬼は強い。ただの人ではやはり勝てないのだろう。
刃なき拳では頸を落とせない。殺し合いという舞台で殺すのは無理かもしれない。
鬼は強い。ただの人ではやはり勝てないのだろう。
刃なき拳では頸を落とせない。殺し合いという舞台で殺すのは無理かもしれない。
「でも喧嘩なら───不良が勝つんだよぉ!!」
最後の助走をつけて強く、強く大地を蹴って跳び立つ。
片手片脚が離れていき、腹を捌かれるのを意に介さず。
残った拳が血と酒で煌びやかに彩られて顔面に埋まる。
加速と体重を限界まで乗せた一撃は、累の頭蓋を揺らし、脛椎を叩き割った。
片手片脚が離れていき、腹を捌かれるのを意に介さず。
残った拳が血と酒で煌びやかに彩られて顔面に埋まる。
加速と体重を限界まで乗せた一撃は、累の頭蓋を揺らし、脛椎を叩き割った。
決まった。
身を苛む痛みも吹き飛ぶ会心の一発に、痺れるような感覚だった。
着地が上手くいかず無様に地面を転がってしまうが、どうにも立とうという気が湧かない。
むしろこのまま暫く寝転がって掌に残った充足を味わっていたい。それぐらい爽やかな気持ちだ。
なによりメチャクチャに動いたからか、経験にないほどの眠気が襲ってきていてしょうがなかった。
身を苛む痛みも吹き飛ぶ会心の一発に、痺れるような感覚だった。
着地が上手くいかず無様に地面を転がってしまうが、どうにも立とうという気が湧かない。
むしろこのまま暫く寝転がって掌に残った充足を味わっていたい。それぐらい爽やかな気持ちだ。
なによりメチャクチャに動いたからか、経験にないほどの眠気が襲ってきていてしょうがなかった。
「あ、やべ。バイクなに選べばいいか、コブラに聞き忘れた……」
四肢を落とされた喪失感も彼方のまま、意識が落ちる直前。
唐突に浮かび上がった、他愛もないやり残しへの後悔が脳裏をよぎるが、まあ後でいいかと、痛みの先に手にしたものに包まれたまま、安らかに両の瞼を落とした。
唐突に浮かび上がった、他愛もないやり残しへの後悔が脳裏をよぎるが、まあ後でいいかと、痛みの先に手にしたものに包まれたまま、安らかに両の瞼を落とした。
【村山良樹 @HiGH & LOW 死亡】
◆
全身に縛りついて支配していた糸が、ぷつりと切れたのが肌でわかる。
全権を握られていた、体を操る手綱が一時的に取り戻されている。
自分のものであるのが当然なのに違和感がある。
永く続き過ぎた刑罰は自我が磨耗させて、理解力が戻るのにいっときの時間を要してしまった。
全権を握られていた、体を操る手綱が一時的に取り戻されている。
自分のものであるのが当然なのに違和感がある。
永く続き過ぎた刑罰は自我が磨耗させて、理解力が戻るのにいっときの時間を要してしまった。
「聞こえるかい、弟。そもそも生きてる?」
背後からの声と、首筋に刃物が突き刺さっているのをちゃんと知覚できる。
自分の首を支えてるらしい兄の、クロオの声に縋るように復帰をする。
自分の首を支えてるらしい兄の、クロオの声に縋るように復帰をする。
「へえ、首だけでも無事なんだ。凄いな。ラブデスター実験でもさすがにお目にかかれた事はないや。
ああ、今からこいつで君の力を活性化させる。そうすればあのお方っていうのにも抵抗できるんじゃないかな」
ああ、今からこいつで君の力を活性化させる。そうすればあのお方っていうのにも抵抗できるんじゃないかな」
「色々と予定が狂ったけど、なんとか目論見通りにはいけそうだよ」
意識が段々と明確になっていき、次第に周囲の状況が見えてくる。
累の主。鬼の少女。
血溜まりの中で倒れる青年と、主と真正面から戦い続けてる異形の童女。
青年はともかく、長髪の少女よりも幼い子供は初見だ。
累の主。鬼の少女。
血溜まりの中で倒れる青年と、主と真正面から戦い続けてる異形の童女。
青年はともかく、長髪の少女よりも幼い子供は初見だ。
「ああ、あの人達は僕が誘ったんだ。
前に捕まえた男はともかく、一緒にいたあのちっちゃい女の子はすごい強そうだったからね。
よくて殴られるか、最悪殺される覚悟ぐらいはしてたけど案外あっさり聞いてくれたよ。
もともと乗り気だったんだ、あのお方ってのを倒しにね」
前に捕まえた男はともかく、一緒にいたあのちっちゃい女の子はすごい強そうだったからね。
よくて殴られるか、最悪殺される覚悟ぐらいはしてたけど案外あっさり聞いてくれたよ。
もともと乗り気だったんだ、あのお方ってのを倒しにね」
つまり、二人は始めから鬼を倒しに此処に来たらしい。
鬼狩りには見えない、それどころかもう片方は鬼にしか見えない異類だというのに。
鬼狩りには見えない、それどころかもう片方は鬼にしか見えない異類だというのに。
「……うーん。誰かを死なせるなんてしょっちゅうやったけど、やっぱり心動かされそうなものもないね。一度死んだからって、そうそう変わるものじゃないか。
けれど君が助かったのは、まあ、よかったんじゃないかな」
「……え?」
けれど君が助かったのは、まあ、よかったんじゃないかな」
「……え?」
当の累にも不可解な疑問が、頭の奥の空洞に引っかかった。
鬼となって忘れていた、気づかないように封鎖して投棄していた記憶の蓋がひび割れて溢れ出だす。
鬼となって忘れていた、気づかないように封鎖して投棄していた記憶の蓋がひび割れて溢れ出だす。
昔、これよりもずっとずっと優しい言葉かけてくれた人がいた。
外に出るだけでも体力が続かない病弱な子供を、決して見捨てずに手を繋いで家に連れ帰ってくれた。
理想なんか思い描かなくても、最初から自分達の家族には本物の絆が結ばれていた。
先に断ち切ったのは自分で、この手で捨てたものが何処にあるかと探し続けた。
捨てた時点で、もう同じ手触りを感じられなくなってしまってるのに。
外に出るだけでも体力が続かない病弱な子供を、決して見捨てずに手を繋いで家に連れ帰ってくれた。
理想なんか思い描かなくても、最初から自分達の家族には本物の絆が結ばれていた。
先に断ち切ったのは自分で、この手で捨てたものが何処にあるかと探し続けた。
捨てた時点で、もう同じ手触りを感じられなくなってしまってるのに。
「そうだ───なら、もう、やめないと。こんなことは」
糸の排出を停止。強度の維持を解除。
背から突き動かされた強迫観念が薄れていくのを感じて、強張っていた体を弛緩させる。
背から突き動かされた強迫観念が薄れていくのを感じて、強張っていた体を弛緩させる。
首を抱えたクロオを見上げる。穴食いになった天井からの陽光で、鬼の視力がなくてもわかるぐらい部屋は明るくなっていた。
受け取った、形だけのからっぽの労いの言葉。打てばよく響いた音が出そうなガランドウ。
当人が与えられた愛の半分にも満たない、クロオなりに精一杯の歩み寄り。
受け取った、形だけのからっぽの労いの言葉。打てばよく響いた音が出そうなガランドウ。
当人が与えられた愛の半分にも満たない、クロオなりに精一杯の歩み寄り。
「兄さん」
「なんだい」
「わかったんだ。僕が、本当にしたかったことが」
「なんだい」
「わかったんだ。僕が、本当にしたかったことが」
謝るよりも先に、礼を言いたかった。
込められた気持ちの大きさはここでは重要ではない。
今にも切れそうな細い糸のような絆が、二人の間に繋がれているのがわかっただけ。
込められた気持ちの大きさはここでは重要ではない。
今にも切れそうな細い糸のような絆が、二人の間に繋がれているのがわかっただけ。
「あ」
そして何か真実の愛にでも目覚めたような告白をするよりも先に、累の頭部が内側から破裂した。
見慣れた散華。
さんざ目の当たりにしてきた、自分の誘導で起こさせもした光景が、クロオの眼前で起こる。
顔や服に飛び散る血や肉片、脳漿。
視線を下ろして、ああ、汚れを落とすのが大変だなあと、乾ききった感想を漏らした。
さんざ目の当たりにしてきた、自分の誘導で起こさせもした光景が、クロオの眼前で起こる。
顔や服に飛び散る血や肉片、脳漿。
視線を下ろして、ああ、汚れを落とすのが大変だなあと、乾ききった感想を漏らした。
【累 鬼滅の刃@死亡】
◆
命令が正確に実行できないとみて、躊躇いなく累の脳を遠隔で爆破した。
支配操作から抜け出た駒に用はない。
反逆者なぞ生きているだけで気分を害する邪魔者へと意義を貶める。糸を切るのを何ら咎める材料はなかった。
こと生き延びるという一点のみに全存在を費やしているからこその、損切りに関する恐るべき判断の早さだった。
支配操作から抜け出た駒に用はない。
反逆者なぞ生きているだけで気分を害する邪魔者へと意義を貶める。糸を切るのを何ら咎める材料はなかった。
こと生き延びるという一点のみに全存在を費やしているからこその、損切りに関する恐るべき判断の早さだった。
だが、この場限りではそれは裏目に出た。
たとえ即決の判断の、数瞬でしかない意識の分割でも。
深淵から目を逸らすべきではなかった。
目の前の怪物との戦いに集中を散らすことだけは、してはいけなかった。
たとえ即決の判断の、数瞬でしかない意識の分割でも。
深淵から目を逸らすべきではなかった。
目の前の怪物との戦いに集中を散らすことだけは、してはいけなかった。
「『千紫万紅・神便鬼毒』」
血に艷やかに濡れた唇から、奇跡を喚起する名が紡がれる。
瓢箪の酒を注いだ盃からこぼれ落ちた玉虫色の雫が、地面に広い波紋を起こす。
落ちた地点から間欠泉よりも勢いのある噴出が一面に水面を広がって全員の足を濡らす。
水面に映るのは色とりどりの花が咲き乱れる、酒の肴になるほどの甘美なる情景。
瓢箪の酒を注いだ盃からこぼれ落ちた玉虫色の雫が、地面に広い波紋を起こす。
落ちた地点から間欠泉よりも勢いのある噴出が一面に水面を広がって全員の足を濡らす。
水面に映るのは色とりどりの花が咲き乱れる、酒の肴になるほどの甘美なる情景。
真名解放。
サーヴァントの真髄。物理の壁を逸脱した超常を起こす貴き幻想。ノウブル・ファンタズム。
酒天童子のそれは酒の瓶蓋を開け垂れ流すもの。
幻想種の骨さえ溶かし、対象を文字通りの骨抜きにして、比喩抜きに酒に呑まれる対軍宝具。
サーヴァントの真髄。物理の壁を逸脱した超常を起こす貴き幻想。ノウブル・ファンタズム。
酒天童子のそれは酒の瓶蓋を開け垂れ流すもの。
幻想種の骨さえ溶かし、対象を文字通りの骨抜きにして、比喩抜きに酒に呑まれる対軍宝具。
毒物───。
目の前で展開されいち早く性質に気づいた無惨だが、その顔に焦りが増すことはない。
あらゆる毒に耐性を持ち、短時間で解毒を可能にする体質の無惨にとっては毒など恐るるに足らない。
それよりも、時間が経つ毎に当たる範囲を広げる陽光から逃れることこそが何よりも優先するべき事項だ。
足止めにもならない水溜りの中を駆けて壁を目指す。兎にも角にも日の当たらない場所を確保しなければならない。
触手の先端を爪から拳状に変化させて掘削して穴場を作る。そうして彫り続けて完全な暗闇に身を潜める。
敵に背を向けて逃げ去る、土竜の真似をしてでも生き延びようとする。恥を恥とも思わない撤退だが、それだけに逃げられてはどうしようもない。
『逃げ』の姿勢に回った無惨を再度捉えるのは二度とないといえるほど困難だ。
目の前で展開されいち早く性質に気づいた無惨だが、その顔に焦りが増すことはない。
あらゆる毒に耐性を持ち、短時間で解毒を可能にする体質の無惨にとっては毒など恐るるに足らない。
それよりも、時間が経つ毎に当たる範囲を広げる陽光から逃れることこそが何よりも優先するべき事項だ。
足止めにもならない水溜りの中を駆けて壁を目指す。兎にも角にも日の当たらない場所を確保しなければならない。
触手の先端を爪から拳状に変化させて掘削して穴場を作る。そうして彫り続けて完全な暗闇に身を潜める。
敵に背を向けて逃げ去る、土竜の真似をしてでも生き延びようとする。恥を恥とも思わない撤退だが、それだけに逃げられてはどうしようもない。
『逃げ』の姿勢に回った無惨を再度捉えるのは二度とないといえるほど困難だ。
それが『責め』の姿勢を崩さなかった酒吞との応酬に、明確な差を生んだ。
「『百花繚乱・ 我愛称(ボーン・コレクター)』」
壁に向かって一目散に走る無惨の頭上から降った両の爪が、肩口に深々と突き刺す。
貫通し脇を抜けたところで、無惨と対面になるよう身を乗り出して脚で固定する。
両脚を腰に絡ませた妖艶な態勢。唇が触れ合う近さで酒吞の表情もまた、情事の際と変わらず艶めかしく。
立ち込める酒気と逸らしようのない眼に、吐き気がこみ上げる。
消し去ってやると身体を変形させ───何故かそこで膝をついた。
意に反する落地に怪訝に目を下に向けると、すぐに疑問は氷解した。
貫通し脇を抜けたところで、無惨と対面になるよう身を乗り出して脚で固定する。
両脚を腰に絡ませた妖艶な態勢。唇が触れ合う近さで酒吞の表情もまた、情事の際と変わらず艶めかしく。
立ち込める酒気と逸らしようのない眼に、吐き気がこみ上げる。
消し去ってやると身体を変形させ───何故かそこで膝をついた。
意に反する落地に怪訝に目を下に向けると、すぐに疑問は氷解した。
足が、無い。
無惨の膝から下、水に沈んでいた部位は骨ごと溶かされていた。
それは、予想よりも水の勢いが強く講堂を沈めつつあるということであり。
無惨の膝から下、水に沈んでいた部位は骨ごと溶かされていた。
それは、予想よりも水の勢いが強く講堂を沈めつつあるということであり。
”水攻めだと……!?”
判断を間違えたと気づいた時には、もう遅かった。
腰元まで酒に浸された体は乾物を水で戻すようにふやけて、骨から剥がれていく。
対軍宝具の全開解放は、さしもの無惨の再生力でも無視できるものではない。
すぐ後ろの村山に貸与した時とは比較にさえならない濃度の溶解液が、波濤の勢いで空間内を満たしていった。
腰元まで酒に浸された体は乾物を水で戻すようにふやけて、骨から剥がれていく。
対軍宝具の全開解放は、さしもの無惨の再生力でも無視できるものではない。
すぐ後ろの村山に貸与した時とは比較にさえならない濃度の溶解液が、波濤の勢いで空間内を満たしていった。
「何のつもりだ、これは……!!」
「ん? なにって、もう、見ての通り。
鬼の前で鬼ごっこなんて、おかしなことするもんやから。逃げられんようこうしてきつうく抱き締めてあげんと。
まあ。ああほら、あれやあれ。
身の着ひとつで夜逃げした果てに、仲人連れての、身投げ?」
「ん? なにって、もう、見ての通り。
鬼の前で鬼ごっこなんて、おかしなことするもんやから。逃げられんようこうしてきつうく抱き締めてあげんと。
まあ。ああほら、あれやあれ。
身の着ひとつで夜逃げした果てに、仲人連れての、身投げ?」
────────────────────思考が、凍りつく。
一体、何を、言っている?
意見など求めていないはずなのに、なおも脳髄にねじ込ませられる。
意味不明なまま、足先からとぐろを巻きつけられる。
意見など求めていないはずなのに、なおも脳髄にねじ込ませられる。
意味不明なまま、足先からとぐろを巻きつけられる。
これこそが鬼。
人の世、人の生の根本から外れた魔にして呪。
殺人を愉しみ略奪を楽しみ陵辱を嬉しみ、自らの死を夢見心地に笑う。
人と交わればありと汎ゆる総てを棚置いて恐怖と混乱を呼び起こす『相容れない為の』系統樹。
目の前の男に。背後の少女に。全身全霊を捧げて謳い知らしめているのだ。
人の世、人の生の根本から外れた魔にして呪。
殺人を愉しみ略奪を楽しみ陵辱を嬉しみ、自らの死を夢見心地に笑う。
人と交わればありと汎ゆる総てを棚置いて恐怖と混乱を呼び起こす『相容れない為の』系統樹。
目の前の男に。背後の少女に。全身全霊を捧げて謳い知らしめているのだ。
とうとう胸を埋める位置まで上がってきた。
再生の方に力を向ければ分解より早く肉体を構成し、自力で脱出するだけの余裕はあるだろう。
だがその為にまず自身と溶融した酒吞を引き剥がさなくてはいけない。しかし酒吞を外すだけ攻撃に集中してしまえば、溶解の速度が再生力を上回りかねない。
そしてこうしてる間も太陽は完全に天から姿を見せようとしている。
再生の方に力を向ければ分解より早く肉体を構成し、自力で脱出するだけの余裕はあるだろう。
だがその為にまず自身と溶融した酒吞を引き剥がさなくてはいけない。しかし酒吞を外すだけ攻撃に集中してしまえば、溶解の速度が再生力を上回りかねない。
そしてこうしてる間も太陽は完全に天から姿を見せようとしている。
鬼殺隊の襲撃。配下の統制。日没と夜明けの時間。
蓄えた知識と増設した脳による、難解で曖昧な計算結果を速やかに導ける高い知能。
だからこそ、己が置かれた状況を常人より早く突き当たり。
『ぞわり』とした感覚と共に、無惨の生で絶対に浮かんではいけない二文字が浮かび上がる。
永遠に遠ざけておかなくてはならない一文字が音を立てて近づいてくる。
蓄えた知識と増設した脳による、難解で曖昧な計算結果を速やかに導ける高い知能。
だからこそ、己が置かれた状況を常人より早く突き当たり。
『ぞわり』とした感覚と共に、無惨の生で絶対に浮かんではいけない二文字が浮かび上がる。
永遠に遠ざけておかなくてはならない一文字が音を立てて近づいてくる。
「_____ _____
────── !!!!!」
────── !!!!!」
思考も、感情も、本能も、彼方に置き去りにして。
その更に先にある、存在としての原初の指向だけが爆ぜた。
生やせる限界数の触手で滅多切りにする。
体内を抉っている両腕を周囲の細胞で磨り潰す。
形成した口腔から神経系を麻痺させる衝撃波を至近距離で叩きつける。
災厄を僭称するに似つかわしい、さっきのめだかをも凌駕する天変地異の具現。
サーヴァント、鬼の霊核といえども、ここを超えては限界を留められない閾値に到達する重傷。
その更に先にある、存在としての原初の指向だけが爆ぜた。
生やせる限界数の触手で滅多切りにする。
体内を抉っている両腕を周囲の細胞で磨り潰す。
形成した口腔から神経系を麻痺させる衝撃波を至近距離で叩きつける。
災厄を僭称するに似つかわしい、さっきのめだかをも凌駕する天変地異の具現。
サーヴァント、鬼の霊核といえども、ここを超えては限界を留められない閾値に到達する重傷。
だというのに離れない。
切り裂いても引き千切っても磨り潰しても吹き飛ばしても離れない離れない離れない離れない離れない離れない!
切り裂いても引き千切っても磨り潰しても吹き飛ばしても離れない離れない離れない離れない離れない離れない!
この戦いの終わりを決する分水嶺になったのは、どちらが音を上げるかの単純な根比べ。
それでもやはり膨大な生命力を保有する無惨の方に結果が傾くはずのない天秤の皿に、最後の賭け金(チップ)が乗せられた。
それでもやはり膨大な生命力を保有する無惨の方に結果が傾くはずのない天秤の皿に、最後の賭け金(チップ)が乗せられた。
「な───に……?」
無惨の頭蓋に重い何かが突き刺さる。
熱を持ってない金属質な物にも関わらず、異様な灼熱感があった。
水流に乗ってきた岩盤の破片だと見做して無視していた無惨にとっては慮外の不意打ちだった。
熱を持ってない金属質な物にも関わらず、異様な灼熱感があった。
水流に乗ってきた岩盤の破片だと見做して無視していた無惨にとっては慮外の不意打ちだった。
人間大の質量の漂流物の正体は、まさしく人間そのもの。
それはとうに死体だ。物言わぬ骸が偶然こちらに流れ着いて、勢いそのまま無惨の頭部に向かっただけ。
このタイミングで、そんな偶然がありえるのか。某かの操作があった方がまだ辻褄が合う。
確かめる術は誰も持たず、よって此処この場で言える事はひとつ。
殴りつけた骸─────村山の顔は、笑っていた。
それはとうに死体だ。物言わぬ骸が偶然こちらに流れ着いて、勢いそのまま無惨の頭部に向かっただけ。
このタイミングで、そんな偶然がありえるのか。某かの操作があった方がまだ辻褄が合う。
確かめる術は誰も持たず、よって此処この場で言える事はひとつ。
殴りつけた骸─────村山の顔は、笑っていた。
「あはははっ! なんや、小僧も殴りたかったんかいな!
ええでええで。前の喧嘩の続きや、終わるまで飲み明かそか……!」
ええでええで。前の喧嘩の続きや、終わるまで飲み明かそか……!」
体は脆く死ねば止まる人間が、死んだ後でも意地を見せに来て一華咲かせたのだ。
土産のひとつでも贈って応えるのが鬼の粋というもの。一切合切を出し惜しみなく投入する。
体内に埋まった酒吞の腕から放出される熱。魔力放出スキルの完全解放。内を熱、外を酸で、両面から細胞を焼き落とす。
土産のひとつでも贈って応えるのが鬼の粋というもの。一切合切を出し惜しみなく投入する。
体内に埋まった酒吞の腕から放出される熱。魔力放出スキルの完全解放。内を熱、外を酸で、両面から細胞を焼き落とす。
再生と破壊の速度が拮抗し。脱出に回せる分の力を失った時、仕込まれていた爆弾が作動する。
クロオ以外の誰もが気にも留めず放置していた仕掛け、漏電した暁光炉心が流した電気の網が絡め取る。
そして遂に水位は天井まで達し、空間を満たした。
かつて教会と呼ばれた土地は水の牢獄へと形を変える。
ふたりの鬼は衆合地獄を揺蕩う。日の脅威が沈み、どちらかの生命が尽きるまで。
固く抱擁を交わしたまま海に身を投げる、それはまるで夫婦のように。
クロオ以外の誰もが気にも留めず放置していた仕掛け、漏電した暁光炉心が流した電気の網が絡め取る。
そして遂に水位は天井まで達し、空間を満たした。
かつて教会と呼ばれた土地は水の牢獄へと形を変える。
ふたりの鬼は衆合地獄を揺蕩う。日の脅威が沈み、どちらかの生命が尽きるまで。
固く抱擁を交わしたまま海に身を投げる、それはまるで夫婦のように。
墜ちて逝く。
墜ちて往く。
底の見えぬ深き海へ。
墜ちて往く。
底の見えぬ深き海へ。
◆
「……いるな。あそこだ」
「千年男のことか? けどあそこはもう瓦礫の山じゃぞ」
「地下に潜ってるんだよ。気配のようなものを感じるんだ。一度鬼になった影響かな。ほぼ間違いないはずだ。
私は中に入るが、貴様にはここで待ってもらいたい。他に頼みたい事がある」
私は中に入るが、貴様にはここで待ってもらいたい。他に頼みたい事がある」
「なぬ?」
「私は何としても奴の足を止める。この身に換えても時間を稼ぐ。
その隙に、童磨の時のようにこの床一面を吹き飛ばしてほしい」
その隙に、童磨の時のようにこの床一面を吹き飛ばしてほしい」
「それは構わんが……今すぐやってしまえばいいんじゃないのか?」
「それでは逃げられる可能性がある。それに奴以外にも参加者がいるみたいだ。まずはその人たちを助けてからでなくてはな。
私ごと巻き込んでやってくれ。最悪生き埋めにする形でも構わない。嫌な役回りだろうが、今は
頼るしかない。この通りです」
私ごと巻き込んでやってくれ。最悪生き埋めにする形でも構わない。嫌な役回りだろうが、今は
頼るしかない。この通りです」
「…………分かったぞい。そこまで頭を下げられては断るわけにもいかん。お前の犠牲は無駄にせんぞい」
「ああ、存分に使ってくれ。見も知らぬ誰かの役に立てるなら、これ以上の喜びは私にはないんだから」
◆
「なんて、そんな戯言を守るわけないじゃろバカがーーーーーーーー!!」
非道を為す者を鬼と呼ぶ習わしがある。
あまりにも残虐な行いをした時、人とは思えぬ所業だと責め立てる。
その意味でいえば、現在の今之川権三はまさに比類なき鬼だった。
あまりにも残虐な行いをした時、人とは思えぬ所業だと責め立てる。
その意味でいえば、現在の今之川権三はまさに比類なき鬼だった。
「でも生き埋めにするのは望み通りにしてやるぞい! 千年男やさっき入っていった生意気なクソガキとメスガキ二人諸共死ぬがいいわ!」
黒神めだかはここで切り捨てることにした。
仮想敵にぶつける予定だった無惨を補足出来たが、これ以上この女と同行するのに無理を覚え始めていた。その予想は正しい。
黒神めだかに付き合っていくという行為に、たとえ短時間でもどれだけの体力と労力と精神力を擁するのかを、彼女を知る者は知っている。
なので苦労して味方に引き入れたのは惜しいが、ここで手切れとした。
利用しやすいカモなのではなく、厄介だが強力な爆弾でも放り投げるような気軽さで投げ捨てるぐらいの扱いでやるのが最適だ。
だいいち機があればいつでも実行してもいいと申し出たのはめだかの方だ。
権三にしてみればめだかの願いを叶えてやった形であり、寛大が過ぎる善行と崇拝されこそすれ非難される謂れはどこにもない。
仮想敵にぶつける予定だった無惨を補足出来たが、これ以上この女と同行するのに無理を覚え始めていた。その予想は正しい。
黒神めだかに付き合っていくという行為に、たとえ短時間でもどれだけの体力と労力と精神力を擁するのかを、彼女を知る者は知っている。
なので苦労して味方に引き入れたのは惜しいが、ここで手切れとした。
利用しやすいカモなのではなく、厄介だが強力な爆弾でも放り投げるような気軽さで投げ捨てるぐらいの扱いでやるのが最適だ。
だいいち機があればいつでも実行してもいいと申し出たのはめだかの方だ。
権三にしてみればめだかの願いを叶えてやった形であり、寛大が過ぎる善行と崇拝されこそすれ非難される謂れはどこにもない。
地下でどのような戦いが繰り広げられてるかは、外からでは窺い知れない。
だが聞こえてる轟音と本能に根づくナノロボの活性が、権三の生を危ぶまれるだけの凄まじさを物語っている。
ならば権三が選ぶのは援護ではなく、総取りだ。地下に潜り込んだ全員を一網打尽にする。
無惨が太陽を苦手とするのは看破している。めだかに足を止められてる間に天井を崩されては、たとえ生きていられても暫くは外に出れまい。
先に権三を通して中に入っていった二人組も同様だ。
幼い少女でありながら醸し出す雰囲気は無惨と大差がない。関われば手痛い火傷を受けたに違いない。
いかにも低学歴な男の方も敬老の精神というものが毛ほども感じられない。年配者の恐ろしさを思い知らせる必要があった。
だが聞こえてる轟音と本能に根づくナノロボの活性が、権三の生を危ぶまれるだけの凄まじさを物語っている。
ならば権三が選ぶのは援護ではなく、総取りだ。地下に潜り込んだ全員を一網打尽にする。
無惨が太陽を苦手とするのは看破している。めだかに足を止められてる間に天井を崩されては、たとえ生きていられても暫くは外に出れまい。
先に権三を通して中に入っていった二人組も同様だ。
幼い少女でありながら醸し出す雰囲気は無惨と大差がない。関われば手痛い火傷を受けたに違いない。
いかにも低学歴な男の方も敬老の精神というものが毛ほども感じられない。年配者の恐ろしさを思い知らせる必要があった。
「これでまとめて一網打尽じゃなあーーーっこんな簡単にいくなんて天もわしに微笑んでいるぞい!
しかし、酸の泉が涌き出て来るとは驚いたぞい……温泉でも堀り当てたと思った時は自分の才能が恐ろしかったが、ありゃ使えんな……」
しかし、酸の泉が涌き出て来るとは驚いたぞい……温泉でも堀り当てたと思った時は自分の才能が恐ろしかったが、ありゃ使えんな……」
住宅の屋根をひとっ飛びする跳躍力で崩落地から早々に立ち去る。
用心を重ねての事だ。それなりに派手にやったし、武蔵の様な徒党が来ないとも限らない。
もしめだかが生きていて再会するような事があっても、幾らでも言い訳は立つ。力はあっても頭が弱い。弁舌で幾らでも騙し通せる自信がある。
用心を重ねての事だ。それなりに派手にやったし、武蔵の様な徒党が来ないとも限らない。
もしめだかが生きていて再会するような事があっても、幾らでも言い訳は立つ。力はあっても頭が弱い。弁舌で幾らでも騙し通せる自信がある。
何も喪わず、傷つく事のなかった男を、真昼の頂点にそびえる太陽が祝福するかのように熱く輝いていた。
意気揚々と教会を後にする権三は邪魔者を始末したと思い込んでいた。
生き残ったとしても逃げ切れるだけの時間は十分稼げたと疑わなかった。
瓦礫で出来た小山の陰で身を潜ませていたクロオが見ていた事に、最後まで気づきはしなかった。
生き残ったとしても逃げ切れるだけの時間は十分稼げたと疑わなかった。
瓦礫で出来た小山の陰で身を潜ませていたクロオが見ていた事に、最後まで気づきはしなかった。
「……別に生き残る気なんてなかったのに、余計な真似をする弟だよ。
本当の家族でもないのにさ」
本当の家族でもないのにさ」
水が溜まってくる地下で運命を共にするのに不満はなかった。
上等な死なんて元から期待していない。
いや、あの時以上の死など自分には存在しないと溺死を易々と受け入れれていた。
こうして生きてるのは不本意な介入だ。
自分がいるところまで浸透しようとした時に、累を抱えて服にからまっていた糸が拾い上げた腕輪。
切断された腕がついたままのそれがクロオを巻き込んだ範囲で起動し、制止する間もないまま地上へと転移させられた。
上等な死なんて元から期待していない。
いや、あの時以上の死など自分には存在しないと溺死を易々と受け入れれていた。
こうして生きてるのは不本意な介入だ。
自分がいるところまで浸透しようとした時に、累を抱えて服にからまっていた糸が拾い上げた腕輪。
切断された腕がついたままのそれがクロオを巻き込んだ範囲で起動し、制止する間もないまま地上へと転移させられた。
隣に横たわるめだかを見る。数えればきりがないほど傷だらけだが気絶してるだけで死んでない。
引き上げたのはクロオではない。そして恐らく累でもない。
消去法的に、あの鬼の少女が身動きが取れないめだかの首根っこを掴んで屋外へ放り投げた、そんなとこだろうと推測する。
起きるまで待っておけば色々と話を聞けるかもしれないが、面倒事が増えそうな気もするし、話を聞く気も今はしない。
糸に一緒に引っかかっていた二人分の荷物をちゃっかりと調べ、中身だけ頂いて放置して行くことにする。
引き上げたのはクロオではない。そして恐らく累でもない。
消去法的に、あの鬼の少女が身動きが取れないめだかの首根っこを掴んで屋外へ放り投げた、そんなとこだろうと推測する。
起きるまで待っておけば色々と話を聞けるかもしれないが、面倒事が増えそうな気もするし、話を聞く気も今はしない。
糸に一緒に引っかかっていた二人分の荷物をちゃっかりと調べ、中身だけ頂いて放置して行くことにする。
適当に歩きながら、幕を閉じた継ぎ接ぎの兄弟ごっこを思い返す
累もクロオも、世の中にとっては少数派な部類の人でなしだ。
一方は生まれつき普通の精神をしていない人殺しで、もう一方は人でもない。
二人とも、家族の愛を見失った同類だ。その気持ちを共有できる仲間が欲しかった。
累もクロオも、世の中にとっては少数派な部類の人でなしだ。
一方は生まれつき普通の精神をしていない人殺しで、もう一方は人でもない。
二人とも、家族の愛を見失った同類だ。その気持ちを共有できる仲間が欲しかった。
死者の気持ちなんて分からない。
もし分かるなら今頃クロオが追い落としてきた人間全てから呪詛を浴びているだろう。
死者の思いを汲むだなんて行いが出来るのは極一握りの人間だけで、自分とは縁遠い存在だと思っていたが。
もし分かるなら今頃クロオが追い落としてきた人間全てから呪詛を浴びているだろう。
死者の思いを汲むだなんて行いが出来るのは極一握りの人間だけで、自分とは縁遠い存在だと思っていたが。
『生きろ』
崩落と引き上げられる風斬り音で耳鳴りがする中で拾い上げた雑音。
少しだけ。ほんの少しだけ、都合のいい解釈を巡らせてしまっていた。
少しだけ。ほんの少しだけ、都合のいい解釈を巡らせてしまっていた。
【全体の備考】
※教会地下が神便鬼毒酒の毒で満たされています。
酒呑童子が解除するか宝具が破壊されるまで無くなる事はありません。
※教会地下が神便鬼毒酒の毒で満たされています。
酒呑童子が解除するか宝具が破壊されるまで無くなる事はありません。
【E-3 教会跡・地下室/1日目・昼】
【鬼舞辻無惨@鬼滅の刃】
[状態]:健康、極度の興奮、完成者への苛立ちと怒り、極限の不機嫌、無能たちへの強い怒り、鬼への吐き気を催す不快感、神便鬼毒酒で溶解中
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、
[思考・状況]
基本方針:あの忌々しい太陽を克服する。
0.太陽を克服する。
1.配下の鬼に有象無象の始末は任せる。
2.配下の鬼や他の参加者を使って実験を行いたい。
3.黒神めだか、雅、酒吞童子への絶対的な嫌悪感と不快感
[備考]
※刀鍛冶の里編直前から参戦しているようです。
※鬼化は、少なくとも対象が死体でない限り可能なようです。
※シザースのカードデッキは怒りに任せて破壊しちゃいました。ボルキャンサーは辺りを徘徊してます。
[状態]:健康、極度の興奮、完成者への苛立ちと怒り、極限の不機嫌、無能たちへの強い怒り、鬼への吐き気を催す不快感、神便鬼毒酒で溶解中
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、
[思考・状況]
基本方針:あの忌々しい太陽を克服する。
0.太陽を克服する。
1.配下の鬼に有象無象の始末は任せる。
2.配下の鬼や他の参加者を使って実験を行いたい。
3.黒神めだか、雅、酒吞童子への絶対的な嫌悪感と不快感
[備考]
※刀鍛冶の里編直前から参戦しているようです。
※鬼化は、少なくとも対象が死体でない限り可能なようです。
※シザースのカードデッキは怒りに任せて破壊しちゃいました。ボルキャンサーは辺りを徘徊してます。
【酒呑童子@Fate/Grand Order】
[状態]:左頬に打撲、腹部にダメージ、食道気管を荒らされてる、無惨の骨を捕食、神便鬼毒酒で溶解中
[装備]:普段の服
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品0~1
[思考・状況]
基本方針:楽しめそうなら鬼は鬼らしく楽しむ
1:小僧と遊ぶのは楽しかったなぁ。
2:鬼舞辻と遊ぶ。
3:気が済んだら上田と合流。
4:沖田総司とも再戦したい。
5:メルトリリスに傷を付けた鬼も面白そうだ。
[備考]
※2018年の水着イベント以降、カルデア召喚済
※神鞭鬼毒酒が没収されているため、第一宝具が使用できません
※スキル「果実の酒気」は多少制限されています。
※無惨の血肉を喰らって僅かに無惨の記憶を覗いてます。少なくとも鬼舞辻無惨の名を知りました。
[状態]:左頬に打撲、腹部にダメージ、食道気管を荒らされてる、無惨の骨を捕食、神便鬼毒酒で溶解中
[装備]:普段の服
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品0~1
[思考・状況]
基本方針:楽しめそうなら鬼は鬼らしく楽しむ
1:小僧と遊ぶのは楽しかったなぁ。
2:鬼舞辻と遊ぶ。
3:気が済んだら上田と合流。
4:沖田総司とも再戦したい。
5:メルトリリスに傷を付けた鬼も面白そうだ。
[備考]
※2018年の水着イベント以降、カルデア召喚済
※神鞭鬼毒酒が没収されているため、第一宝具が使用できません
※スキル「果実の酒気」は多少制限されています。
※無惨の血肉を喰らって僅かに無惨の記憶を覗いてます。少なくとも鬼舞辻無惨の名を知りました。
【E-3/教会跡/1日目・昼】
【今之川権三@ナノハザード】
[状態]:疲労回復、気分は上々
[装備]:
[道具]:飲食物を除いだ基本支給品一式、炸裂弾『灰かぶり(シンデレラ)』×20(残り10) 、めだかの腕の搾りかす
[思考・状況]
基本方針:全員ブチ殺してZOI帝国を作るぞい!
0.クソガキメスガキまとめて一網打尽じゃぞい! あの女も別れられてせいせいしたぞい。
1.慎重に立ち回って全員ブチ殺すぞい。
2.しかしあの千年男はヤバイぞい。でも日光が弱点くさいということは...チャンスだぞい!
3.他にもヤバイ奴が大勢いそうだぞい。
[備考]
※本編で死亡した直後からの参戦です。
※めだかの血を飲み体力を回復しました。
※真下で覗いてるクロオに気づいてません。
[状態]:疲労回復、気分は上々
[装備]:
[道具]:飲食物を除いだ基本支給品一式、炸裂弾『灰かぶり(シンデレラ)』×20(残り10) 、めだかの腕の搾りかす
[思考・状況]
基本方針:全員ブチ殺してZOI帝国を作るぞい!
0.クソガキメスガキまとめて一網打尽じゃぞい! あの女も別れられてせいせいしたぞい。
1.慎重に立ち回って全員ブチ殺すぞい。
2.しかしあの千年男はヤバイぞい。でも日光が弱点くさいということは...チャンスだぞい!
3.他にもヤバイ奴が大勢いそうだぞい。
[備考]
※本編で死亡した直後からの参戦です。
※めだかの血を飲み体力を回復しました。
※真下で覗いてるクロオに気づいてません。
【神居クロオ@ラブデスター】
[状態]:全身に裂傷、打傷。学生服ズタボロ
[装備]:悪刀『鐚』@刀語、二乃の睡眠薬@五等分の花嫁、転送機(3時間使用不可)@ラブデスター、ランダム支給品0~2(めだか)、ランダム支給品1~3(無惨)
[道具]:基本支給品一式
[思考・状況]
基本方針:未定
1:不明
[備考]
※参戦時期は死亡後
[状態]:全身に裂傷、打傷。学生服ズタボロ
[装備]:悪刀『鐚』@刀語、二乃の睡眠薬@五等分の花嫁、転送機(3時間使用不可)@ラブデスター、ランダム支給品0~2(めだか)、ランダム支給品1~3(無惨)
[道具]:基本支給品一式
[思考・状況]
基本方針:未定
1:不明
[備考]
※参戦時期は死亡後
【黒神めだか@めだかボックス】
[状態]:鬼神モード、疲労(絶大)、細胞破壊(重度、再生中)、無惨への(同族?)嫌悪、気絶
[道具]:基本支給品一式、 雅の鉄扇セット@彼岸島
[思考・状況]
基本方針:見知らぬ誰かの役に立つ、それは揺るがない。
0:気絶中。
1:善吉や球磨川と共に殺し合いを叩き潰しBBを改心させる!
2:お腹がすいた。
[備考]
※参戦時期は後継者編で善吉に敗れた直後。
※本当に鬼になったのかは不明ですが、それに類する不死性を獲得しています。日光は克服できましたが、人食いの能力は保持しているようです。
※いくつかのスキルに制限が加えられているようです。
※『光化静翔(テーマソング)』はアコースティックバージョン(5人まで)含め鬼神モードの時にのみ使用できますが、現状は時間切れで使用できません。
※鬼神モードを使用するとお腹が空くようです。
※石上殺害の犯人が無惨だと伝えられました。
※無惨の血(細胞)を大量に摂取しました。
[状態]:鬼神モード、疲労(絶大)、細胞破壊(重度、再生中)、無惨への(同族?)嫌悪、気絶
[道具]:基本支給品一式、 雅の鉄扇セット@彼岸島
[思考・状況]
基本方針:見知らぬ誰かの役に立つ、それは揺るがない。
0:気絶中。
1:善吉や球磨川と共に殺し合いを叩き潰しBBを改心させる!
2:お腹がすいた。
[備考]
※参戦時期は後継者編で善吉に敗れた直後。
※本当に鬼になったのかは不明ですが、それに類する不死性を獲得しています。日光は克服できましたが、人食いの能力は保持しているようです。
※いくつかのスキルに制限が加えられているようです。
※『光化静翔(テーマソング)』はアコースティックバージョン(5人まで)含め鬼神モードの時にのみ使用できますが、現状は時間切れで使用できません。
※鬼神モードを使用するとお腹が空くようです。
※石上殺害の犯人が無惨だと伝えられました。
※無惨の血(細胞)を大量に摂取しました。
| 前話 | お名前 | 次話 |
| 鬼神爆走紅蓮隊・轟 | 累 | Eliminated |
| 神居クロオ | Eliminated | |
| 今之川権三 | ||
| 黒神めだか | ||
| 村山良樹 | ||
| 鬼舞辻無惨 |