廻るピングドラム ◆7ediZa7/Ag
父が、嫌いだった。
漂ってくるアルコールの匂い、散乱するゴミ屑や煙草の吸い殻、乱れた衣装、そして──その中に倒れ臥すあの人。
母さん。
あの人は父に蹴られていた。殴られていた。
その度に肉が跳ねる嫌な音がして、後から見るとたまに赤黒い何かが床にこびりついているんだ。
母さん。
あの人は父に蹴られていた。殴られていた。
その度に肉が跳ねる嫌な音がして、後から見るとたまに赤黒い何かが床にこびりついているんだ。
知ってる?
フローリングについた血という奴は厄介なもので、一回乾いてしまうとなかなか取れない。
お湯をかけると凝固してさらに取れなくなるし、洗剤でゴシゴシやろうものなら床が傷つくしで、何かと面倒なんだ。
だが、なぜか血はコーラで磨くと落ちるんだよ。
母がたまに実践していた生活の知恵って奴で、服とかにも応用できる。俺も今でもたまに使わせてもらってる。
フローリングについた血という奴は厄介なもので、一回乾いてしまうとなかなか取れない。
お湯をかけると凝固してさらに取れなくなるし、洗剤でゴシゴシやろうものなら床が傷つくしで、何かと面倒なんだ。
だが、なぜか血はコーラで磨くと落ちるんだよ。
母がたまに実践していた生活の知恵って奴で、服とかにも応用できる。俺も今でもたまに使わせてもらってる。
ともあれ母に父はよく殴られて、それで母は泣きじゃくって、
そして母が殴られる理由はだいたいのところ──俺自身にあった。
あの家は、広々としているのに窒息するほどひどく息苦しかった。
そして母が殴られる理由はだいたいのところ──俺自身にあった。
あの家は、広々としているのに窒息するほどひどく息苦しかった。
ただ別に、そんなことは重要ではなかった。
もともとあの父は、本物の父ではなかったし(これは変に感情的な意味がある訳ではなく、本当の意味で義父という意味)振り返ると、俺があの人に疎まれる理由もわかるからね。
もともとあの父は、本物の父ではなかったし(これは変に感情的な意味がある訳ではなく、本当の意味で義父という意味)振り返ると、俺があの人に疎まれる理由もわかるからね。
俺は父のことが嫌いで、
父は他人の、そして気味の悪い子供であった俺のことが嫌いだった。
ただそれだけの話に過ぎないだろう。
父は他人の、そして気味の悪い子供であった俺のことが嫌いだった。
ただそれだけの話に過ぎないだろう。
でもね──母さんは、どうだったんだろうね?
俺は、母さんのことが好きだったのかな?
母さんは、俺のことが好きだったのかな?
母さんは、俺のことが好きだったのかな?
もうその答えは誰だって教えてはくれないだろう。
あの酔狂な異星人の愛情測定器だって、死んでしまった人の愛までは教えてくれないのだから。
あの酔狂な異星人の愛情測定器だって、死んでしまった人の愛までは教えてくれないのだから。
母さんを殴る父を俺が殺し、
父を殺す俺を見て、母は自殺した。
父を殺す俺を見て、母は自殺した。
そして、残された俺も──死んじゃったんだけどね。
◇
無名街、と呼ばれるその場所は、スラムと百人が聞いて百人が思い浮かべるであろうイメージを具現化したかのような街であった。
アスファルトの舗装は剥げ、窓ガラスが割れ放題。
錆びついた臭いのする風が吹き、積み重なった瓦礫が土煙を立てて崩れている。
街のジオラマを一度完成させた後、一度天地をひっくり返して何もかもメチャクチャにしたのち、元に戻してから野に五年放置でもしないとこうはならないだろう。
錆びついた臭いのする風が吹き、積み重なった瓦礫が土煙を立てて崩れている。
街のジオラマを一度完成させた後、一度天地をひっくり返して何もかもメチャクチャにしたのち、元に戻してから野に五年放置でもしないとこうはならないだろう。
そんな街に、神居クロオはいた。
十代の少年であり、小綺麗な学生服を身につけている彼は、スラムにはいささかなそぐわない身なりである。
が、その頭部にぐるぐるに巻かれた包帯は奇妙としかいいようがなく、そんな奇妙があるがゆえ、この街に溶け込んでいるようにも見えた。
実際、彼は普通の学生ではないし、ある意味、この乾いた街にそぐう人間性を備えているのだった。
十代の少年であり、小綺麗な学生服を身につけている彼は、スラムにはいささかなそぐわない身なりである。
が、その頭部にぐるぐるに巻かれた包帯は奇妙としかいいようがなく、そんな奇妙があるがゆえ、この街に溶け込んでいるようにも見えた。
実際、彼は普通の学生ではないし、ある意味、この乾いた街にそぐう人間性を備えているのだった。
ラブデスター実験。
突如襲来した異星人に拉致された中学生による、「愛」を巡る奇怪なデスゲーム。
クロオはどういうわけかそんなものに参加させられている。
否、正確には参加させられていた、と過去形になるだろう。
ラブデスター実験においては彼はすでに脱落──死亡し、その後にたらい回しにするかのようにまた別のゲームに参加させられているのだから。
突如襲来した異星人に拉致された中学生による、「愛」を巡る奇怪なデスゲーム。
クロオはどういうわけかそんなものに参加させられている。
否、正確には参加させられていた、と過去形になるだろう。
ラブデスター実験においては彼はすでに脱落──死亡し、その後にたらい回しにするかのようにまた別のゲームに参加させられているのだから。
「ふふふ……」
そして──彼は再びまた、殺されようとしていた。
「…………」
きらり、と闇夜にきらめくものがあった。
それは糸であった。
極限まで細く、刃物のような鋭さをたたえた糸がクロオを捕らえていた。
学生服に食い込んだ無数の糸が彼を掴んで離さない。切り裂かれた衣服からは血が滲んでおり、その糸に込められた明確な殺意を表している。
それは糸であった。
極限まで細く、刃物のような鋭さをたたえた糸がクロオを捕らえていた。
学生服に食い込んだ無数の糸が彼を掴んで離さない。切り裂かれた衣服からは血が滲んでおり、その糸に込められた明確な殺意を表している。
「お前」
闇に溶け込むようにして、もう一体、何かがいた。
鬼であり、蜘蛛であり、子どもである。
和装に身に纏う彼の顔には不気味な斑点が浮かんでおり、そのずっとするほど白い髪や、赤い眼が、明らかに彼が人間でないことを示して居た。
鬼であり、蜘蛛であり、子どもである。
和装に身に纏う彼の顔には不気味な斑点が浮かんでおり、そのずっとするほど白い髪や、赤い眼が、明らかに彼が人間でないことを示して居た。
「お前──人間?」
人間でない鬼は、どこか不思議そうに首をかしげていた。
そんな鬼に対し、クロオは困ったように肩をすくめて、
そんな鬼に対し、クロオは困ったように肩をすくめて、
「さて、ね。正直、よくわからないな」
そう言った。
「はぐらかすな」
「違う。ちょっと本当に自信がないんだ。死んで、また蘇るなんて」
「でもお前は人間だ。鬼じゃない」
「……久々だな」
「違う。ちょっと本当に自信がないんだ。死んで、また蘇るなんて」
「でもお前は人間だ。鬼じゃない」
「……久々だな」
クロオの視線は逸らしていた。鬼は訝しげに、
「どこを見ている?」
「月だ。月が、きれいだな。そう思って。久しぶりなんだ、外からちゃんと月を見るの」
「月だ。月が、きれいだな。そう思って。久しぶりなんだ、外からちゃんと月を見るの」
ぐっ、と糸が強められ、クロオは苦悶の声を漏らす。
鬼の苛立ちが糸越しに伝わってくるようだった。
鬼の苛立ちが糸越しに伝わってくるようだった。
「おかしいな。なんで裂けない」
「痛いよ。拷問としては一級品だ」
「拷問する気なんてないよ。殺す気でやっている。
でも、なぜかお前は妙に硬い」
「痛いよ。拷問としては一級品だ」
「拷問する気なんてないよ。殺す気でやっている。
でも、なぜかお前は妙に硬い」
淡々と、そして不思議そうに鬼は語る。
クロオの身体を裂けないことが、ひどく不思議そうに。
クロオの身体を裂けないことが、ひどく不思議そうに。
──夜が始まって直後に、クロオはこの鬼に行き遭った。
そして出会い頭に糸で拘束され、殺されそうになった。
そこに一切の対話の余地はなかった。鬼に遭ったから殺される。
きっとこの舞台がデスゲームなどでなかったとしても、結果は同じことだっただろう。
そこに一切の対話の余地はなかった。鬼に遭ったから殺される。
きっとこの舞台がデスゲームなどでなかったとしても、結果は同じことだっただろう。
だがクロオはそれでも死んではいなかった。
「ちょっと良いアイテムを持っていてね」
クロオはそう言ってどこか自嘲的な笑みを浮かべる。
そんな彼の笑みに、一瞬、雷の光が重なった。
それは彼の胸元に刺さっている短刀に発せられていた。
そんな彼の笑みに、一瞬、雷の光が重なった。
それは彼の胸元に刺さっている短刀に発せられていた。
悪刀『鐚』。
完成形変体刀が一本にして、12本のうち最も凶悪とも称される一振りである。
その帯電した刃を自身に突き刺すことで、所有者は肉体を活性化させ無理矢理にも生かされる。
死んで、どういうわけか生き返った彼に支給されていたのは、そんな物騒なアイテムであった。
完成形変体刀が一本にして、12本のうち最も凶悪とも称される一振りである。
その帯電した刃を自身に突き刺すことで、所有者は肉体を活性化させ無理矢理にも生かされる。
死んで、どういうわけか生き返った彼に支給されていたのは、そんな物騒なアイテムであった。
そんな刀を身につけていたことが──幸か不幸か──クロオの命を救うことになっていた。
「まぁ、いいよ。本当にただの人間みたいだし、ちょっと頑丈なだけみたいだ」
鬼はつまらなさそうに言う。
彼の言葉通りだった。悪刀は所有者の身を活性化させるが、別に不死身にさせる訳ではない。
このまま彼が無慈悲に糸を振るえば、そのままクロオはその身を散らすだろう。
要するに、出会って5秒で死ぬはずだったものが、5分に伸びた程度の違いにすぎない。
彼の言葉通りだった。悪刀は所有者の身を活性化させるが、別に不死身にさせる訳ではない。
このまま彼が無慈悲に糸を振るえば、そのままクロオはその身を散らすだろう。
要するに、出会って5秒で死ぬはずだったものが、5分に伸びた程度の違いにすぎない。
──まぁ別に、いいのかな。
ただクロオは、そうとも考えていた。
実際、彼は死んだ身だ。
ラブデスター実験の終盤にて、皇城ジウとの血で血を洗う死闘の末、自分は敗れた。
そのことに思うことがないとは言わないが──再び、執着するほどのものもない。
実際、彼は死んだ身だ。
ラブデスター実験の終盤にて、皇城ジウとの血で血を洗う死闘の末、自分は敗れた。
そのことに思うことがないとは言わないが──再び、執着するほどのものもない。
──……と、思ってたんだけどね。
糸に締め付けられ、1秒ずつ死へと向かっていく最中、クロオの脳裏には一つの名前が浮かんでいた。
同じくデスゲームに参加させられている者のなかには、いくつか知っている名があった。
とはいえもうそれはどうでもよかった。
自身を殺した皇城ジウの名さえも、クロオにとっては執着するものにはならない。
同じくデスゲームに参加させられている者のなかには、いくつか知っている名があった。
とはいえもうそれはどうでもよかった。
自身を殺した皇城ジウの名さえも、クロオにとっては執着するものにはならない。
──でも、あの名前があった。
まったく名簿なんて、律儀にあんなもの観るんじゃなかった。
今のクロオにとって、この世で意味のある名前は二つしかない。
そのうち、一つが載ってしまっていた。
今のクロオにとって、この世で意味のある名前は二つしかない。
そのうち、一つが載ってしまっていた。
彼がここにいること、そして今度のゲームにはこんな鬼が徘徊していること、着実に死に向かう意識の中、それらの事実を噛み締めたクロオの思考が急速に回転し出す。
「一つ、提案があるんだ」
だから──彼は、鬼に向かって口を開いていた。
「命乞い? どうでもいいよ」
「俺を生かしてくれれば、こういうアイテムを君にあげるよ」
「要らない。殺して、奪い取ればいい」
「それは無理だ。奪われないよう、さっき隠してしまったから」
「駆け引きにもなっていないよ」
「俺を生かしてくれれば、こういうアイテムを君にあげるよ」
「要らない。殺して、奪い取ればいい」
「それは無理だ。奪われないよう、さっき隠してしまったから」
「駆け引きにもなっていないよ」
絡みとられた糸がどんどん強まっていく。痛みが思考を乱す中、それでもクロオは言葉を続ける。
「じゃあ、こういうのはどうだ?
俺は君の奴隷になろう。
君の手となり、足となり、弾除けとなる。
君はこのゲームを優勝したいんだろう? その優勝の権利は譲るから、それまで俺を使って欲しい」
「要らない」
「さぁ? それは自信過剰だろう。
君は俺を瞬殺できるつもりだったみたいだが、できなかった。
この場所にはどうやら君の知らない技術のアイテムやらがいっぱいあるみたいだね」
俺は君の奴隷になろう。
君の手となり、足となり、弾除けとなる。
君はこのゲームを優勝したいんだろう? その優勝の権利は譲るから、それまで俺を使って欲しい」
「要らない」
「さぁ? それは自信過剰だろう。
君は俺を瞬殺できるつもりだったみたいだが、できなかった。
この場所にはどうやら君の知らない技術のアイテムやらがいっぱいあるみたいだね」
そう言って、クロオは、ニッ、と微笑みを浮かべた。
澄んだ、一片の曇りのない、最高級の出来栄えの仮面のような微笑みだった。
澄んだ、一片の曇りのない、最高級の出来栄えの仮面のような微笑みだった。
「そんな場所で──一人で戦うのは難しいと思うよ?」
その微笑みが効いた──という訳ではないだろう。
ただ、一人で戦う、という言葉に少し思うところがあったのか、一瞬だけ糸が緩んだことがわかった。
クロオはその瞬間──仮面の微笑みの奥で、別の感情を宿らせた。
ただ、一人で戦う、という言葉に少し思うところがあったのか、一瞬だけ糸が緩んだことがわかった。
クロオはその瞬間──仮面の微笑みの奥で、別の感情を宿らせた。
「俺はこう見えて、一個前のゲームではかなり終盤まで残ってたんだよ。
いろいろノウハウはあるつもりだし、結構手助けできると思うよ」
「二回目、とでもいうのか。この奇怪な催しが」
「ああ、俺が前にいたのは、ちょっとルールが違ったけどね。
でも何にせよ、一人で戦うよりは、二人で、なんならそれ以上の集団で動いた方が、いいんじゃないかな?」
いろいろノウハウはあるつもりだし、結構手助けできると思うよ」
「二回目、とでもいうのか。この奇怪な催しが」
「ああ、俺が前にいたのは、ちょっとルールが違ったけどね。
でも何にせよ、一人で戦うよりは、二人で、なんならそれ以上の集団で動いた方が、いいんじゃないかな?」
クロオは微笑む。
彼が持てうる最高のカードをここで切りながら、この鬼に対して言葉を告げていた。
その間も糸が彼の肌を引き裂き、激痛をもたらして居たが、それでも微笑みを崩すことはなかった。
彼が持てうる最高のカードをここで切りながら、この鬼に対して言葉を告げていた。
その間も糸が彼の肌を引き裂き、激痛をもたらして居たが、それでも微笑みを崩すことはなかった。
そうして──どれほどの時が経ったか。
二人は無言で向き合っていた。
鬼は一切の感情を見せることなく、クロオは鉄面皮を崩すことなく。
鬼は一切の感情を見せることなく、クロオは鉄面皮を崩すことなく。
不意に──
「いいよ」
──不意に、どさりとクロオの身体が落ちた。
糸が解かれ、解放されたクロオはその勢いのまま倒れ、はぁ、はぁ、と息荒く漏らしている。
その身を悪刀の雷が音を立てて走る。
致命傷をはるかに超える打撃を受けながらも、悪刀によってクロオは無理やりに生かされていた。
糸が解かれ、解放されたクロオはその勢いのまま倒れ、はぁ、はぁ、と息荒く漏らしている。
その身を悪刀の雷が音を立てて走る。
致命傷をはるかに超える打撃を受けながらも、悪刀によってクロオは無理やりに生かされていた。
「どうやらお前を殺すのは時間がかかりそうだし、まぁ、いいかなって気がしてきた」
それを無感動な口調で、鬼は言う。
その瞳に一切の慈悲や躊躇といったものはなかった。
対するクロオはそれを見上げながら、ふっと口角を上げた。
その瞳に一切の慈悲や躊躇といったものはなかった。
対するクロオはそれを見上げながら、ふっと口角を上げた。
「どうせどこかで僕の寝首をかこうとか、頃合いを見て逃げ出そうとか考えてるんだろうけど、いいよ」
「……やだな。俺は別に、そんなこと考えないよ」
「ただし」
「……やだな。俺は別に、そんなこと考えないよ」
「ただし」
そこで鬼は表情を一切変えず、すっ、とクロオに手を差し伸べてきた。
それはあたかもの傷つくクロオを慮るような優しげな手つきであったが、表情は何ら変わらない、無慈悲なものである。
それはあたかもの傷つくクロオを慮るような優しげな手つきであったが、表情は何ら変わらない、無慈悲なものである。
「お前は僕の奴隷じゃない」
そして大真面目な口調で、こんなことを言うのだった。
「家族だ」
と。
◇
累、という鬼がいた。
それは鬼舞辻無惨がこの世に生み出した鬼において、「十二鬼月」の「下弦の伍」という位を持つ、高位の鬼な訳だったが、一つ、奇妙な習性があった。
それは鬼舞辻無惨がこの世に生み出した鬼において、「十二鬼月」の「下弦の伍」という位を持つ、高位の鬼な訳だったが、一つ、奇妙な習性があった。
「お前は今から、僕の父になってもらう」
累は死を告げるのと何ら変わらない口調で言った。
「本当の絆で結ばれた、僕の本当の家族になってもらう」
累と呼ばれる鬼は、家族を作ろうとするのだった。
徒党を組めない性質のある鬼において、非常に例外的なことに、それは複数の鬼を束ねる形で活動をしていた。
累は己の力を他の鬼に分け与え、家族の一員へと加える。
元が何であるかは関係がない。たとえそれが幼子の姿の鬼であろうとも、空きがあるのならば、それを母という役割に押し込めてきた。
徒党を組めない性質のある鬼において、非常に例外的なことに、それは複数の鬼を束ねる形で活動をしていた。
累は己の力を他の鬼に分け与え、家族の一員へと加える。
元が何であるかは関係がない。たとえそれが幼子の姿の鬼であろうとも、空きがあるのならば、それを母という役割に押し込めてきた。
それゆえに、累はクロオに対し、そんな奇妙な申し出を行っていた。
「うん、わかった。家族になればいいんだね」
対するクロオは、笑顔でそれを受け止めた。
彼は、なぜ家族に、などと尋ねはしなかった。
彼は、なぜ家族に、などと尋ねはしなかった。
「いいよ。ただそうだな、父はできればやめて欲しい」
そう告げた瞬間、糸が闇夜を走り、クロオの身を穿った。
口答えをしたことに対する、反射的な動きであり、悪刀の力がなければ、十分致命傷になりうる一打であった。
口答えをしたことに対する、反射的な動きであり、悪刀の力がなければ、十分致命傷になりうる一打であった。
「……別に家族になるのが嫌な訳じゃないんだ。
ただ父さんは正直ちょっとやり方がわからない。
でも兄なら結構自信があるよ。だから僕を君の兄にして欲しい」
ただ父さんは正直ちょっとやり方がわからない。
でも兄なら結構自信があるよ。だから僕を君の兄にして欲しい」
血を飛び散らせながらも、クロオは笑って言う。
そんな彼を累はじっと見つめたのち、
そんな彼を累はじっと見つめたのち、
「まぁいいよ。どのみち、全部作らなければならないんだ。
兄も、父も、母も、姉も。
ならいいだろう。お前は今から僕の兄だ」
「わかった。よろしく、弟」
「お前はぼくの兄だ。そのためにまず顔を変えろ。僕の兄らしい顔にしろ」
「わかった。どうにかしてみよう」
「服も変えろ」
「いいよ。和服、あるといいね」
「思考も変えろ。お前は鬼であり、僕の兄である」
「わかった」
兄も、父も、母も、姉も。
ならいいだろう。お前は今から僕の兄だ」
「わかった。よろしく、弟」
「お前はぼくの兄だ。そのためにまず顔を変えろ。僕の兄らしい顔にしろ」
「わかった。どうにかしてみよう」
「服も変えろ」
「いいよ。和服、あるといいね」
「思考も変えろ。お前は鬼であり、僕の兄である」
「わかった」
クロオがそう答えた瞬間、びしゅん、と音が甲高い音が夜の無名街に走った。
またしても反射的な一撃だった。
またしても反射的な一撃だった。
「お前は僕の兄だ。
兄というものは弟の命令に黙々と付き従うようなものではない。
今のお前の態度は奴隷そのものだ。兄をやる気があるのか?」
兄というものは弟の命令に黙々と付き従うようなものではない。
今のお前の態度は奴隷そのものだ。兄をやる気があるのか?」
累はやはり淡々とそう告げる。
言葉を返そうにも、応じようにも死の一撃を振り回す理不尽な言動であったが、クロオはしかし、
言葉を返そうにも、応じようにも死の一撃を振り回す理不尽な言動であったが、クロオはしかし、
「いや、それは違うと思うな」
やはり微笑みを浮かべて言うのだった。
「何がだ」
「君の言う兄像がだよ。
お兄さんというものは、可愛い妹や弟がこうして正面から物を頼んできたときはね、なんだって聞いてあげたいと思うものなんだ」
「君の言う兄像がだよ。
お兄さんというものは、可愛い妹や弟がこうして正面から物を頼んできたときはね、なんだって聞いてあげたいと思うものなんだ」
彼はきっぱりと断言するように言う。
その言葉の響きにはあまりにも強い確信が込められているようでもあった。
累は、しばし無言でクロオを見つめたのち、
その言葉の響きにはあまりにも強い確信が込められているようでもあった。
累は、しばし無言でクロオを見つめたのち、
「…………」
「兄の俺がそう言うんだ。信じてくれよ、弟よ。
たった二人の兄弟だろう?」
「これから増やす。二人ではない」
「でも今はまだ二人だ。この殺し合いの中で一緒に家族を作っていこう」
「兄の俺がそう言うんだ。信じてくれよ、弟よ。
たった二人の兄弟だろう?」
「これから増やす。二人ではない」
「でも今はまだ二人だ。この殺し合いの中で一緒に家族を作っていこう」
そこでクロオはかがみこみ、塁に視線を合わせて言う。
兄が──弟に対して、諭すような口ぶりであった。
兄が──弟に対して、諭すような口ぶりであった。
二人はしばらくそのまま視線を交わしていた。
荒れ果てた街のなか、月明かりに照らされた二人は、そうして家族になった。
荒れ果てた街のなか、月明かりに照らされた二人は、そうして家族になった。
「とびっきりの──真実の愛で結ばれた家族をさ」
【G-3・無名街/1日目・深夜】
【累@鬼滅の刃】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1~3
[思考・状況]
基本方針:家族を、作ろう
1:父、母、姉を作る
2:家族にならなそうな人間は殺害
[備考]
※参戦時期は首を切られたその瞬間ぐらい
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1~3
[思考・状況]
基本方針:家族を、作ろう
1:父、母、姉を作る
2:家族にならなそうな人間は殺害
[備考]
※参戦時期は首を切られたその瞬間ぐらい
【神居クロオ@ラブデスター】
[状態]:全身に裂傷、学生服ズタボロ
[装備]:悪刀『鐚』@刀語
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品0~2
[思考・状況]
基本方針:家族を、作ろう
1:別に優勝する気は特にないが、ミクニ君以外は流れ次第で殺してしまってもいいかなと思っている
[備考]
※参戦時期は死亡後
[状態]:全身に裂傷、学生服ズタボロ
[装備]:悪刀『鐚』@刀語
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品0~2
[思考・状況]
基本方針:家族を、作ろう
1:別に優勝する気は特にないが、ミクニ君以外は流れ次第で殺してしまってもいいかなと思っている
[備考]
※参戦時期は死亡後
| 前話 | お名前 | 次話 |
| Debut | 累 | Kでつながる僕ときみ |
| Debut | 神居クロオ |